全てが終わった後ほど、あっけないものはない





魔女達も退散した 凶器のような驚喜に満ちた
狂気の夜の後、


残っていた数体の白い巨人は
他の職人達によって掃討され


死人やシュタイン達は、地下で戦った
職人や武器全員の救出と


取り残された魔剣士・クロナの保護を

滞りなく完了させた





けれども…望んで、或いは巻き込まれて
戦った者達の負ったものは


街同様―もしくは街よりも深く大きい





されど、それは当事者にしか理解できず


蚊帳の外からはただの記録と記憶に
留められ…いずれは時の流れに忘却される







夜は終わった だが人生は終わらない





己の裡で続く"事件"へ向き合うのか


受け止めるのか、決着をつけるのか


或いは他者と同様に忘却するのか






ソレを決めるのは―等しく当事者のみとなる












L'ultima storia Continuing youth logic











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目を覚ませば…どこかの白い天井が見えた





ここは…見覚えがガアァァ…ある、そうだ

たしかゴオォオォォ…死武専の保健室の天jグアァ





この世のものと思えない、ものすごい音が
耳に痛くて寝たまま首を向ければ


並んだベッドの隣で大イビキをかいてる
ブラック☆スター君が…





「ようやく目が覚めたんだね、君」


「え?…あ、マカさん」





視点を変えれば、読んでた本から目を上げて
彼女も僕を見つめ返す


頭や顔には手当てのアトがいくつもあって







―あの夜のコトが、一気にフラッシュバックした





「って、キッド君とブラック☆スター君は
だいじょっ…〜〜っ!!





勢いよく身を起こし、引きつるような痛み
意識してシーツへと前のめりに倒れこむ





「戯け 起き抜けなのに無茶をするな」


「だ、大丈夫君!?」


「な…なんとか…それより、二人とも
ホントに平気?痛くない?」





肩で息しつつ首をひねれば、心配そうな
マカさんの肩越しに、見慣れたキッド君のあきれ顔


それでもケガのアトは疑いようもなくある





「おかげ様でな…言っておくが、オレたちより
お前たちのケガの方が重症なんだぞ?」


「私はそうでもないんだけどね」


…実力差から考えれば 当たり前なハナシか





改めて見れば身体中包帯だらけで、あちこち
とても痛くてしかたなかったけど


心が壊されそうな"痛み"はなかった







「よーっす、元気してるか?
…って お!起きたんだ」


「あ、リズさんにパティさん…おはよう」


「おはよー!」





元気よくドアを開けて入ってきた二人へ

アイサツをしたら、リズさんはそのまま
まっすぐ僕に向かって歩いて…え?





強めのデコピンをかまされた、痛い





「つーかよ、お前魔女とバトっといて
あの狼男に特攻かますってどんだけ無茶すんだ


「そーだよ普通だったら死んじゃうかもだよ?」


う、四人分の視線がイタイ…ケガより辛いかも





でも……ほんの少しだけ、うれしいと思った





ゴメン、ちょっとハリキリすぎちゃった」









―後からおとずれた死人先生の話によると


あのデキゴトの後


マカさんとソウル君 それと僕は路地で
倒れていたトコロを保護されたらしい





特に僕は、あの女との殺り合いでのキズのほか


全身ダボクと片足と肋骨にヒビがあるから
少し回復に専念しろと言われた





「まさかまで巻き込まれるとはな…
オレの責任だ、本当に済まない


そんな!頭を上げてください」


「そうですよ、死人先生のせいじゃないです
アレは僕が自業自得で」


「いいや、そもそもオレがメデューサを
仕留めていればお前達にこんなケガなど…!」






違うって否定したくて、出来なくて





結局 僕はなにも出来なくて悔しくて







……泣きたくなった







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差し入れを平らげ、口の周りに米粒を
くっ付けたブラック☆スターが問う





「オイ、どこ行くんだよ?」


「電話 このケガだしバイト先には
早めに連絡しとかないとマズイから」


「大変ね…無理しちゃダメよ?」


「ありがと、椿さん」







保健室を出て、数人の生徒とすれちがい


は人気がないコトを確認して
いくつかの電話を済ませ







「はい、はい 失礼します…ふは


「おー終わったかぁ?長電話」





直後に死角からソウルへ声をかけられて
危うく受話器を落としかけた





「びっびっびびビックリしたっ!いつから」


「ギャハハ、お前のビビり方おもしれ〜
ついさっきだよ単なる通りがかり」


「ヒドいよもう…」


"油断してる方がワリーんだよ"と彼は笑う







全身打撲と数箇所の骨へのヒビはどちらも
同じように負ってはいるけれど


回復は銀髪の少年の方が早いようだった





「武器のクセにボロッボロじゃねぇか
そんなんでバイト行けんのか?」


「無理だから電話してたの、あっちも被害が
ヒドいからしばらく仕事ドコロじゃないって」





件の兼で、街は復興作業に大忙しで


あの夜 現場付近に居た"店長"も例に漏れず
半壊した店を修復している最中とか





「なら落ち着くまでゆっくり出来そうだな」


「うん…そうだね、ソウル」





普段のシニカルな笑みでなく、穏やかに
笑うソウルへ は小さく笑み返す





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改めて、みんなやシュタイン博士とで
あの夜のコトを意見交換して


今更ながら…全部が現実だと実感する





鬼神の復活も マカの中に黒血があるコトも
あの恐ろしい死神様の声も、全部





メデューサは死んだ…先生達が消滅させた


だから、背骨に冷たい氷を詰められたみたいな
恐ろしい感覚を感じるコトも、ない







あの戦いは終わって、僕らは失敗して、なにも出来なくて





でも それでも…生きていて







オイどうした!?どっか痛むのか?!
メソメソしてねぇで何とか言えっオイ!!


「落ち着きなさいブラック☆スター、大丈夫かい?


「…っだいじょうぶ、です…」





少しだけ泣いた みんなが、無事だったから







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DEATH ROOMに集められた四人の
デスサイズとシュタインへ


普段通り鏡の中に佇む死神は言う





鬼神「阿修羅」の復活―これについて
ちょっと語り合おうじゃないかと…」







最狂ゆえに臆病な鬼神本人の動向よりも


鬼神の放つ"狂気の波長"に刺激されて
引き起こされる悪人の目覚めとパワーアップ





それを危惧した上での対策として

呼び出したデスサイズそれぞれへ命令を下し





「これから死武専も少し変わっていかなきゃならないけど
基本「殺伐だけどウキウキライフ」で」





あくまで以前と変わらぬように、死神は

ファンシーな面とのん気な口調で解散を告げた







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…私服で外へと出たのは、久々で





「それじゃあ、急いで買ってくるから」


「ダッシュで頼むなー間違えんなよ?」





自腹切ってまで人に飲み物をおごるコトに
なったのは、初めてだったけど


…こうなったのはやむを得ないワケがある







"見学でもいいから"と誘われたバスケに


リズさんが来れなくなったから、

代わりにマカがメンバーに入れられ


あげくにキャプテンにされて
バツゲーム対象にやりこめられる一部始終を


人数的に余った僕は外野で見てたんだけど





「くそォオオ!!キャプテンやりてェエ!!」


だから替わるって…あ、そうだ!
君替わってよ!!」





けど、僕がなにかを言い出すより早く

ブラック☆スターは手を交差させて首を振る





ダメだダメだぁ!キャプテンはマカ!
信者は大人しく見学でもしてやがれ!!」



「そーだそーだ、まーどうしてもって
言うならお前交代要員な?」


「えーと…みんな まだケガ人だよね?一応
いいの?バスケなんてしちゃってて」


「い〜じゃん、家ン中いたらヒマすぎて
腐っちゃうよ?ドロッドロだよ?」


「パティ…人は腐らんぞ」


キッド君、ツッコミどころソコ?







…ともかく、これ以上ややこしいコトに
巻きこまれるのはイヤだったから





「だったらついでに飲み物でも買ってくるよ」





それを口実に、一時的に逃げた







…戻ったらヘルプくらいはあるかもとか

マカのウラみ買っちゃったかなーとか


色々考えるとイタイけれど(特におサイフ)





まあでも、こういうのもたまには悪くない









「っと、たしかコーラは…あ」


オイこら、完治するまで自宅でじっとしてろ
っつったろーが地味メン」


「ご…ゴメンなさい」





あわててあやまれば、見下ろしていた
スピリット先生は小さくため息一つ





「…アパートにもいないみたいだったし
マカ達も外にいるんだろ、どうせ」


「はい、あの…案内しましょうか?」







買い物を終えつつ、道すがら少しだけ話をした





デスサイズが召集されたコトとか
サセンされなくて本当によかった、とか


マカと離れ離れにならなくて
心底ホッとしたとか、そこから半ば
ノロケに入るいつものパターンとか


あの魔剣士の…クロナ君がおとまり室に
かくまわれていて、近いうちに入学するとか







相づちを打つうちにバスケコートが見えてきて


楽しげにボールを追うみんなと、ちょっと
離れて見てるシュタイン博士と


金髪で黒い服の女の人とがそこにいて





「あの…スピリット先生」


「あんだよ?」





立ち止まった先生へ、僕は呟く





あの力の他に、もう一つだけ
僕に出来るコトを考えてみたんです」


「ふぅん…で、答えは出たのか?」







…勇気も、度胸も、力も、優しさも、冷静さも
明るさも、経験も、余裕も、何一つ足りないけど


僕に出来る ただ一つのコト





何度間違えて、悔やんだって





信じて 学んで…選ぶコトかな、って」







瞬間…頭をグシグシと力強くなでられた





「地味だけどお前らしいな、


「あ、ありがとうごおーいタイム!
と椿交代で!」



えぇっ!?わ、わかったちょっと待って」





戻りギワに来るとは予想外だったけど

断れないのは火を見るよりも明らかだから


先生たちへ頭を下げてから
飲み物の袋をテキトーなトコに置いて走り出す





いまだにとまどったマカと、楽しそうに
笑って待ってる みんなのモトへ









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:前夜祭編はコレで終了です…バスケの
結果は7巻に載ってる通りです


キッド:安直なまとめ方をしおって、貴様は
もう少しきっちりかっちり期限を守ってだな


リズ:はいはい…けどアイツがバイト蹴って
しかもオゴりなんて珍しいな


椿:なんだかちょっと申しワケないかな…


マカ:せっかくだし好意に甘えとこうよ


狐狗狸:そうそう、それよりバスケの腕前は
いかがですか?あの地味っ子の


ブラック:普通すぎて椿よりパスの連携
とれなくて参ったぜーマジ使えねー


ソウル:だったら交代させんなよ…つか
ルール知ってた分マカよかマシだろ


パティ:ねぇねぇ、買ってきてくれた飲みモン
ゲロかかったりしてない?


スピリット:してねーよ!!(涙目)




長編拝読ありがとうございました、次回は
原作間の捏造話となります


様 読んでいただきありがとうございました!