フィールドを制限される中、どうにか
懐に潜り込んで攻撃する機を伺うシュタイン





だが…どれほどの大降りの技をぶつけても


メデューサは魔力で生み出した蛇の尾を支えに
体勢を崩さぬまま反撃に転じるため


依然として、膠着状態が続いていた





『シュタイン…悪いが長い間現役を
離れていたせいか、今のお前にはキレがないぞ』


黙ってろ 今それを取り戻そうとしている…」





隙の無い魔女を打ち滅ぼすため





「オレが何をしたいかって…
ヘララ…そんなコト決まってるでしょ」


彼は…狂気に偏る自らの性をさらけ出す





「解体したい」


『そう…このイカれた馬鹿を制御してやるのが
オレの役目だった』





"サディストな快楽主義者"としての性格は
幼い頃から背負っていたらしく


スピリットは相棒として、それを
抑えるストッパーの役目を果たしていた







枷を緩めた彼の踏み込みは鋭さを増す


それをかわし、続けざまの連撃を蛇の尾で
防ぎながら彼女は相手を勧誘するが





「昔ね…オレの凶暴性や利己的な考えを恐れた
バカな医者どもがオレを分析したんだよ」


「私がその医者たちと同じだって言いたいの?」


「成長して"力"をつけ、オレの中の狂気が
可能にする範囲が増えていった…

オレを止めたのが何か分かります?


「恐怖心」


そう♪怖かったんだよ
自分がどんな人間になるか…」





シュタインは過去を交えながら、答える





自分に必要なのは "エゴの無い神の秩序"


私欲の為のものではない、背徳心を
背負う事なく何かをバラバラに出来る


狂気染みた…自らに許しを求める規制だと





「それがあなたの狂気の使い道ね!!」


返り討ちで腹を刺され、差し向けられる
矢印の追撃を受けながらも





「魂威!!!」


強引に懐へと潜り込んだシュタインの波長が
メデューサの身体へと打ち込まれる





まともに受けて口から血があふれ出すも





「終わりね その首刎ねてあげるわ」


魔女の蛇の尾が彼の首へ真っ直ぐに伸び―





「先輩ッ ボヘッとしない!!」







すんでのところで、その動きが止まる





…!!何…!?テイルスネークが
止まった…?いや…全身も…」


「魂糸拡散縫合」





打ち込まれた波長が"糸"となり、彼女の
全神経は封じ込められた





しかし…"糸"を精密に操作する作業だけで
スピリットもシュタインも手一杯


更には懐に入り込んだコトが仇となり

彼の首元はいまだ蛇の尾に狙われている





「これほどの波長操作 そう長くは続かないでしょ?
解けた瞬間が最後…あなたは死に…」


「鬼神は復活する」












Settimo episodio Footstep of catastrophe











―――――――――――――――――――――





黒血を湛えた注射器を抱えたエルカへ
スケボーの勢いを利用して突貫し


それを防いだフリーへ照準を合わせたキッドは


次の瞬間、現れた鬼神の幻覚に惑わされ

ありもしない場所へと波長を撃つ





「あいつも幻覚を見ている!!今のウチだ!!」





エルカへ指示を飛ばしたフリーもまた
鬼神の幻覚に苦しめられるが


互いにそれを自覚して振り切り…





「どけェェェ!!」


ぐふぅ さすがに本物は効くな」





盾になったフリーをキッドが狙い撃ちし





「黒血に標準を合わせておけば狼男は動けん!!
今だブラック☆スター 行け!!


「オウヨ!!」


第六感が鈍いため狂気を感じない
ブラック☆スターが両者を追い越し


妖刀モードを解禁して黒血の破壊に向かう





「できたておたまボム!!」





抵抗するエルカが魔法で相手を吹き飛ばすも

反動で注射器を取り落とし


幻覚に足止めを喰らって我に返ったところで





ずるッ!!ちょっとッ…タンマ!!」


「もらったぁ!!!」





注射器へ相手の一撃が入りかかる







…が、使い魔のオタマ=ジャクソンが
尾で跳ね返してそれを阻止し





「っだあぁぁ!ん時といい
トコトン邪魔しやがって両生野郎!!」



「オタマ=ジャクソン!!」





直後に蹴りを喰らわされた使い魔の行動を
無駄にすまいと


エルカはキャッチした注射器を

鬼神の封じられた袋へと突き立てようとする





「急げ!!エルカぁ!!」


止めろ!!ブラック☆スター!!」





中々刺さらず悪戦苦闘する彼女へ


妖刀モードの発動時間 限界間近の
ブラック☆スターが飛びかかって







―すべては…瞬間の出来事だった







振り上げた妖刀の一撃が
エルカの持つ注射器を両断し


容器から零れた黒血が床を汚す





敵も 味方も目を見開いて呆然とし…





「勝った!鬼神復活は無しだ」





勝ち誇った彼の声が、社の空気を震わせる…







―――――――――――――――――――――





結界に閉ざされていたパーティー会場で







「うっ…」


「な、なんだ、この感覚…!?





死武専生の職人が、死人が、そして


「死神様…これは、まさか!





呼びかけられた死神が…感じ取り、気付く





(……間に、合わなかったか)







地下深くから夜の空気を…空間を
支配していく"狂気"の存在に






―――――――――――――――――――――







アイツの罠の残りを片付けながら
入り組んだ遺跡を先へ先へと進むうち


"鬼神が復活した"とマカさんが言った





彼女の魂感知を疑うつもりはさらさらないけど

やっぱり信じられなくて







でも…足を速めてようやく鬼神の封印された
場所へとたどり着いた途端







始めに感じた"痛み"が より強く襲いかかった





「あぎぃあぁぁぁぁっ!!」


「っぐ…!


『マカ!?!?どうした!!』





答えられない僕に代わり…マカさんが口を開く





「間違い、ない…この狂気…鬼神が…!





一歩ごとに感じる倒れそうな痛みをこらえて


彼女の後ろへついていくように、誰かの
叫び声が聞こえた奥へと進めば…


信じられないような 信じたくない光景が
僕らの足を止めていた








「黒星☆ビッグウェーブ」





ズタボロになって…それでも波長を
鬼神らしき半裸の人間へ撃ちこんで


続けて攻撃しようとしたブラック☆スターが





鬼神が軽く一振りした腕の動きだけで


顔面から血を吹きだして、弾き飛ばされる






「ブラック☆スター!!クソォ!!





距離をすばやく縮めたキッド君が、銃撃を
いくどとなく繰り出すけれども


全く動じないまま 相手は腕の皮を伸ばし


それが彼の額を軽く叩いた瞬間





『キッド!!』





同じように…血塗れになってその場に倒れる







あんなに強いブラック☆スターとキッド君が


たったの…こんな冗談みたいな一撃で?





ウソだ…こんなの…笑えないよ…





「スッポンポンじゃないか!!!!!」





ワケの分からない言葉を吐き出して


自分の皮を引き伸ばしてまとった鬼神は
天井を突き破って飛び立って行くけど


見ているだけしか出来ない…





だってあんな、あんなヤツに立ち向かったって


普通の武器の僕なんかが、かなうワケ―








『っ、おいマカ!





あわてたソウルの声に現実へと戻されれば





一直線に駆け出したマカさんが


悪趣味な像を足場に…長く伸びた鬼神の皮を
つかんで一緒に飛び上がっていくのが見えた






無茶だ あんなの止めようだなんて







呆然としていられたのも束の間で





すぐに白い鳥に似た物体が…


の声で、魔女っぽい女と
マッチョのおっさんへささやきかける





『外出る前に、そこの二人に一っ応
トドメ刺した方がいいんじゃなぉあいん♪』





武器化を解いて彼女たちが身構えるけど

白い紙が吹雪のようにまとわりつく







「ウールッフウルフズ…」





倒れた二人へ狙いを定め、呪文を唱える
おっさんから…あの"痛み"が伝わってくる







させてたまるか


あんな、オゾマシイ魔女野郎なんかに





お前なんかに…お前なんかにお前なんかに
お前なんかにお前なんかにオマエナンカニっ!!





痛みも怖さもなにもかもを飛び越して


俺は床を強く強く踏みしめて、






―――――――――――――――――――――







ゲコッ…なんか今、変な耳鳴りがし」





エルカの呟きに気を取られた刹那







フリーの左目を掠めるようにして


迷い無く跳びかかったの武器化した
片腕が、深々と頭部へ潜り込む






「フリー!?」


「っは、けははは、ははははははははははははは
あははははははははははははは!






断続的な 叫び声にも似た哄笑を響かせて


は腕を捻じ込み、刃を貫通させ

そのまま横に頭を切り開こうと試みる





君!?」


「アンタなによっ!何して…ヒッ!?


睨まれ、魔女はビクリと身を縮める





「安心しろよ、次はお前だ





亜麻色の前髪から覗く、鳶色の瞳は

ドロドロに濁りきった暗黒で満たされており


一目で、人目で"異常者"と認識できるような
様子に…周囲は息を呑む





「その次は上の魔女ども、その次は
魔女は全員、全員全員全員ブチくびり殺ってや





が、愉悦と憤怒の混じる独白は


腹へと直撃したフリーの拳によって遮られた







上へ殴り飛ばす形で本人ごと刺さった刃を抜き





「今のは危なかった…ああ、間一髪さ!


傷口を塞ぎながら、床に倒れたツナギ少年を
見下ろして魔眼の男は笑う





ごふ…な…なん…で…!?」


「効かないさ、不死だから」





悔しげに呻いて…はそのまま床へと倒れ





「さて…こいつはどうする?」


ソレはアタシが連れてくわぅあ〜もういいから
二人はそのままこっちに上がって来ちゃってぅえぇ?』


ゲロっ言われなくてもそのつもりよ
封印も解いたしモタモタしてらんないわ!」





白い紙が集まって出来たいびつな一体の怪鳥に
身体をつかまれて上へと連れ去られ


魔女と狼男も、大穴から地上へと脱出する





「「君!」」


!!」





地下には…負傷した職人二名と
相棒である武器達三名が取り残された









―この時フリーも、当人も


そして周囲の者達も気付かなかった





眼球を掠めた、あの一撃の…ほんの一瞬にも
満たない隙間に彼の魔法陣が"作用"





魔眼を通じて"ある場所"へ


些細ながらも決定的な綻びを生み出したコトに―








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:次くらいで前夜祭の戦いは終わる…
予定、かな?ちなみに夢主の活躍はこれで終了


椿:ブラック☆スターもだけど、マカちゃんも
君も無茶しすぎですよ…


リズ:つーか…アレ本当に


パティ:今回の博士並にイカれてたよねー
ちょっとビックリかも


狐狗狸:ガマンしてた分、仲間のピンチで
一気に場の空気に飲まれたってコトで


エルカ:もう散々よ!メデューサと狂気だけで
沢山なのにあの変態のせいで余計怖い目に
合わされるなんてぇ〜!!


フリー:落ち着け、泣くことはないぞエルカ




復活した鬼神を阻むのは、やはり…!


様 読んでいただきありがとうございました!