無様に落下し、闇へと消えるを見下ろし





「まさか、さっき作っておいた秘密の出入り口
このタイミングで役に立つなんてねぅえぇ…」


は 細長い紙を包帯のようにして

術で腹へと巻きつけながら呟く





故意に穿たれた穴の周辺には


彼女が"地面を模して"配していた紙のフタの
千切れカスが所々に散らかっている





「…お父様も厄っ介な"遺産"
残してくれたわねぇん 面白いけ・れ・どぅ」


化粧っ気のない顔でニヤリと微笑み


騒がしさの収まった市街と、一つにまとまった
魔女の波長に気付いて





「ミズネちゃん達も遊び相手に夢中だし?
ちょっと地下に集中しちゃおっかしらん♪」





の口は再び呪文を唱えだす





「ケプストゴート、ベェトゴトー…
スプケスプトストベゴースド…!」








―――――――――――――――――――――





マカとソウルへ魔剣の相手を任せ


先へ進んだキッドへ追いつくべく歩を進めていた
ブラック☆スターと、椿だったが…





「CROAK!」


「邪魔だ両生野郎!!」





白い巨人数体と動物、そしてエルカの
おたまボムに絶賛取り囲まれ中だった





「クソッ、やっぱあのカンバン罠だったか!」


『私最初にそう言ったじゃない!』





辺りに爆音を響かせながら、紙の残骸を散らして

どん詰まりから脱出しようと試みるも


絶妙な位置に配置されている罠のせいか
中々分岐まで戻れずにいる












Cinque episodio Desperation etc











こうなってしまったのは遺跡の分岐点に遡る





ん?何だコリャ?」







片方の通路を指し示す矢印と、"近道はコチラv"
描かれた真っ白な看板が立っていた





『あからさまに怪しいわ…無視して行きましょ』


なんでだよ?短縮ルート通ってキッドを
追い越した方が早ぇじゃねぇか!!」


『怪しいわよこんなカンバン、きっと罠だわ
戻ってブラック☆スター!』



心配すんなって椿ぃ!BIGなオレ様が
そんなくだらねぇ罠にかかるかっての!!」





自信満々にドヤ顔して突っ走った結果…

この有様、である







それでも半数以上の罠を蹴散らし





「しゃらくせぇ、一気に行くぜ!速☆星!!





残る巨人達を振り切るべく、椿と共鳴し
ブラック☆スターが一気に通路を駆け


両腕を上げた白い巨人の頭上をも跳び越す





がその瞬間、前方の空間が唐突に剥がれ


…いや"周囲の空間に溶け込ませた"紙
剥がれて 中から大き目のボムが現れる





「なっ…」


「CROAK…!」


光を放った おたまボムが破裂する―刹那







『…ぁぁぁぁぁああああああああああああ!!


悲鳴を上げて、一抱えほどの亜麻色の柄をした
鋏が刃を下にしてボムを貫く





突き立った一瞬 魔鋏が全体的に青白く輝くと


貫かれたボムは、二度ほど点滅を繰り返し





―その場で砂が崩れ去るように消滅する







「っはー、はー…し、死ぬかと思った…」





武器化を解いて 尻もちをついた
汗びっしょりになりながら息をつく





君!地上で魔女を追ってたんじゃ…』


「情けないけどその腐れ魔女に落とされてね
…で、この状況を説明してもらえないかな?」





着地し、立ち上がる彼を片目に相手は笑う





「見ての通りだぜ、ったくBIGな男
敵も放っておかねぇらしいな!」


「やけに下僕が少ないと思ってたら…あの女
地下にも術を使ってやがったのか!」


「ま、オレにかかれば足止めにもならねぇがな」


『思いっきり引っかかってたでしょ…もう』





呆れ交じりのため息に、思わず笑みを零すも







感じた"魔力"に再びの表情が険しくなり


遥か上空から彼らの前に、白い歪な箒に乗った

ド派手に飾った"本来の姿"の魔女が降り立つ





やだもう帰っちゃうのぅ〜?もっとここで
遊っんでてぅいぇえぇぇん?」


「邪魔だそこ退きやがれクソ女ぁ!


艶めいた声ごと捻じ伏せるように手裏剣で
相手の身体を切り裂くも


それは白い紙となって散り、別の場所に固まり


再び露出の多い魔女の姿になる





う・ふ・ふvアタシの分身をいっくら倒しても
無駄無駄、いくら絶倫でも叶わないわよぅ?」





パチン、と鳴らした指に従って

またも"紙包み"おたまボムが飛来するが





姿が現れる前に蹴り飛ばし様に切りつけ


爆炎を他所へ撒き散らせながらが叫ぶ





「何乗り換えてんだ、この尻軽が!
テメェの相手は俺だろ!」



「あうら嫉妬?大っ丈夫そこの子の後でちゃぁんと
お相手シテあ・げ・るからコレでガマンしてぇうぇんv」





ニィっと笑って彼女が指を鳴らすと


たちまち、背後から現れた紙のナイフ
目がけて降り注いでいく





「つっ…!」





果敢に避けるも何発か喰らい


よろめいたところに致命傷の一撃が迫る







「盾☆星!!」





間一髪でブラック☆スターの防御が間に合い


は途端に距離を取る





『大丈夫…?』


「ありがと ちょっとかすめたくら
…何?その手、どうして止めるの?


「やっぱここはお前の出る幕じゃねぇよ
、テメェは引っ込んでろ!


逆だろ!変態魔女の挑発に割く時間なんか
BIGな男には必要ない!早く先に行け!!」








一瞬沈黙が支配し…素に戻った彼が呟く





「あ…ご、ゴメン言い過ぎ…痛っ


「生意気なんだよ、けどよく言った
それでこそオレ様の信者だぜ!


拳骨一発喰らわせ、ブラック☆スターが駆ける





頭をさするツナギ少年も同時に駆け出し


襲いかかろうとする魔女と下僕を足止めする





「さあ、雑魚は任せて行って!ブラック☆スター!


おぉよ!頼りねぇ小物どものために
一肌脱いでくらぁ!!ひゃっはぁぁ!!





その叫びで、青い髪の少年の勢いは更に増し


あっという間に罠の通路から見えなくなった







―――――――――――――――――――――





黒血と魔剣のコンボで怪我を負い、屈みこむ
マカの眼前へ迫ったクロナの中では





『あなたみたいな聞き分けのない子は
私の前から消えてなさい』


『真っ暗とどう接したらいいかわからないよ…』


『ほら来なさい この前の続きよ
あのうさぎちゃんを殺すの』


『…そんな接しかたできないよ』


『何回こんなコトを繰り返せば気が済むの?』





『見て…僕の血は黒いんだ』





狂気に目覚めさせられた記憶が駆け巡り


それに従ったまま、マカの首を狙う








「バイバイ うさぎちゃん」







けれども彼女と…そして"狂気"
悩まされ続けているソウルの中でも





共鳴し、向き合った状態で会話が行われる







『お前…黒血を使ってクロナと同じ
「狂気」を持つ気か!!?



『魔剣と対等の"力"を手に入れれば
何かがつかめそうな気がするの…』


『戻れる保証はないぞ』


『でも やる価値はあるでしょ?





のあの意固地は、マカのが
絶対うつったんだな)





軽くため息をついて…ソウルは覚悟を決めた





『お前がどんだけぶっ飛んじゃっても
武器として必ず引き戻してやる!!』








そして、首を落とすはずの剣は片腕で防がれ


狂気に染まったマカがクロナの胴を
鎌の刃で跳ね上げて天井近くまで吹き飛ばす






―――――――――――――――――――――







武器には"狂気"なんて感情、無縁だと思ってた





でも…今 僕は、俺はそれを体験している





罠と、魔女の多すぎるこの地下遺跡は

ひどく居心地が悪くて苦しい


頭が痛い、胃の中が逆流しそうだ





苦しい 苦しい苦しい苦しいくるしい苦しい
くるしい
苦しいくるしい苦しいクルシイ!!







巨人どもに押さえつけられた俺を


いけ好かない笑みを浮かべたアバズレ魔女
踏みつけながら、楽しそうに言う





「トべたら楽なのにねぅえん、このままじゃ
アンタの精神崩壊も時間の問題かしらぅ?」


だま…れ、クセェ足どけろクソの掃き溜め」


「いいわぅあその目…あっちでも魔剣ちゃんと
いつかの女の子ちゃん二人が狂気まみれ
ヤリあってるし楽っしそう〜」


マカさんまで狂気に…!?どういう意味だ
それよりも足を退けやがれテメ」


頭を強く蹴飛ばされ、一瞬視界がにごる





前髪をつかまれ 無理やり持ち上げられて


吐き気がする銀色の、横に細い瞳孔
いつもよりも鮮明に目に入る





黒血のおかげってトコん?メデューサお姉さま
本当天才よねぇえぅv」


「なんで…メデューサの、名前が出る…」


「覚えてるぅ?昔してあげた
とぉっても不幸な子のハ・ナ・シ







忘れるわけがない あんな悪夢でしか
ないような境遇の子の話


この腐れ女ブタが並べ立ててた"不幸な人間"で

一等強く、心に残った例





魔女…しかも"実の母親"


狂気と魔武器の溶けこんだ血を
身体に入れられ "命を奪え"と育てられた






「そんな…まさか、あの子が…クロナ…!?


「そう!彼の血こそ黒血 狂気を含み
その血で鬼神ちゃんがおっきするのぅ〜vV」








―――――――――――――――――――――





メデューサにより張り巡らされた魔術の結界の中
満身創痍となった二人は


クロナが彼女の"実の子"だと聞かされ





シュタインは…咥えタバコのまま訊ねる





「あんた…初代鬼神を復活させたら
あの魔剣の子をどうするつもりだ?」





"退屈な質問"と切り捨てて彼女は言う


「あれはダメね 失敗作だわ」





彼の苛立ちが増し、手に挟んだタバコが
ぐしゃりと折れる





「お前の子供だろ
あの子をどうするつもりだ!!





メデューサは…その怒りを嘲笑う







「子供だからって何か違いがあるの?
棄てるわよ当たり前じゃない





"黒血が出来た以上、用済み"だと哂う





「おさがりで良かったらどうぞ♪
実験にでも使ったらいいわ…クロナよりも
魔鋏の魔法陣の方が余程興味がわくしね」







シュタインが次の行動を起こすより早く





「テメェ…」


武器化を解いたスピリットが、魔女の
胸倉を掴み上げて唸る



けれども次の言葉も行動も起こらず





「呆れた…私と話したければちゃんと言葉を
用意してからにしなさい」





メデューサの身体から飛び出した矢印に
傷つけられて、シュタインの元へ戻る







先輩!!武器があまり無茶…」





言いかけて 彼の暴走の理由に気付いて


ため息混じりに職人は言う





「いい年して泣くなよ…みっともない」





尻もちをついて、泣きじゃくったまま

スピリットは悔しげな声音でもらす





「親だからとか なんつーか…そういうの
…上手く言えないけどさ…許せねェよ…





(ひょっとしたら、君の分まで
抱え込んじゃってんのかな…面倒見いいし)





「親が子を見捨てたら誰がその子を
信じてあげるんだぁ〜!!」


「そう そんな感じの言いたかったの」


やる気のなさそうなセリフに共感しながら





「とにかくあいつにはぜってぇ勝つ」


「最初からそのつもりですよ」





立ち上がった"父親"とその相棒が魔女を見据える








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:キャットファイトのカットとか
博士&父コンビvsメデューサ戦前半カット
…載せ切れなくって本当にスイマセン!!


スピリット:オレのカッコいいトコ
全然ねーじゃん!バトルかけよバトル!!


博士:この後ぐらいには書くんじゃないですか?
ま、管理人の力量じゃ無謀ですがね(へらへら)


狐狗狸:…善処します 次回長編(予定)じゃ
博士とクロナ出すつもりなんで割合
あっさり目に書くと思われますが


メデューサ:ったらいつの間に
別のルートなんか作ってたの?抜け目無いわね


狐狗狸:足止め用の罠配置しても、地下が
楽しくなると踏んでたんでしょうね…あと
アナタにいつでも会いにいけるよう


メデューサ:…生憎その気は無いわよ


スピリット:あ、その怯えた表情はいいかも


博士:懲りませんね先輩…マカに本気
チョップくらいますよ?




次回、追って追われて追い詰められて?


様 読んでいただきありがとうございました!