すかさず襲いかかる巨体の攻撃を全員が避け


ソウルと椿、リズにパティーは間髪入れず
武器化してそれぞれの職人の腕に納まり





「ひゃっはあぁぁぁ!!」


「歪な外見をしおって…虫酸が走るわ!





即座に迎撃された巨人は、あっと言う間に
引き裂かれ 穴だらけになり紙へと戻る







『さっすが死武専、その程度の下僕じゃ
スッキリバッサリ瞬殺痺・れ・るぅんvV





…だが、呼び出した当のの姿は無く


宙に浮いた紙製の鳥から楽しげな声が聞こえる





『けど鬼神復活を止めるのと、デス・シティーが
ガレキになるの、どっちが早いかしらぅ?
楽っしみねぇえん ベェー!





言い終えたタイミングで跳んで鳥を断ち割り





「魂が上の方へ離れていってる…本当に街で
暴れるつもりだ、あの魔女!」


「待ちなさい」





来た道を戻ろうとするマカを、シュタインが止める





「恐らく上の騒ぎはこちらの戦力分散
万一残った職人達への足止めが狙いでしょう」


「しかし、手駒を生み出せる魔女を
放置したままでは街にも甚大な被害が…!」


「よーし したらオレ様が即効でぶっ殺しに


「だったら俺がブチ殺りに行ってきます」





申し出たへ、苛立った表情で
ブラック☆スターが襟首を掴んで凄む





「テメェ…信者のクセに出張ろうってのか!?」


止めなさいブラック☆スター!君も
一人でなんて、無茶に決まってるでしょ!』


無茶でもやる!あのアバズレ魔女に因縁もあるし
居場所も分かる、それに俺が上に行けば
みんなはメデューサたちを追える…そうだろ?」





動じず真正面から言い切った彼の


長い前髪から、覗く瞳の真剣さを見て
首元を掴む手が緩む












Quarto episodio Ignited soul











遺跡の道順を知るシュタインはメンバーから外せない


複数の魔女と魔剣がこの先にいるのなら

高い主力を誇る職人達は一人でも欠かせない






それなら彼が行くのが、この場では最良の選択





「どうやら…覚悟は揺るがないようだな」


『変なトコで片意地張るからなコイツも…
本当に一人で大丈夫か?』





訊ねるソウルへ、彼は笑って答える





「どうってことないよ…片付けたら必ず
戻ってくるから 先に行ってて





マカとキッド、そしてシュタインは気付く


増幅した彼の魂と、刻まれた"魔法陣"から
青白い光と共に放たれる"特有の波長"





「そこまで言うなら止めないけど
君 これだけは約束してください…

命だけは落とさないように、いいね?


「…OKです、みんなも気をつけて」





八人が遺跡へと駆け出していくのと同時に


踵を返してはデス・シティーへ戻り始めた







―――――――――――――――――――――





空間魔法により、死武専の一室に閉じ込められた
死武専生達へ死神は言う





「死武専の下に鬼神がいるよォ〜」


「いや…話ハショり過ぎでしょう…」


「あっら〜そうだった?こんなトキ
シュタイン君がいないと不便ね〜〜…」





変わらぬのん気な口調が、逡巡して言葉を紡ぐ





「これはまだ死武専が出来る前 ある男…
「阿修羅」という名の男の物語であ〜る〜」







ロングマフラーを巻いて顔を隠し、服を重ね着し

決して人を信じず、誰に心を許すコトも無い

猜疑心の塊のような その男は


「死神八武衆」の中では最強の職人でもあった


けれどもその猜疑心ゆえか いつも何かに怯え

力へ執着し…規律を破り、善人の魂へ手を出した





「でも…阿修羅は職人だったんだろ?どうやって
善人の魂を食ったっていうんだよ…」


「彼はパートナーの武器に対しても
ビビりまくってたからね…」





恐怖に駆られ、狂気のあまり自らの武器を喰らい


そうして鬼神となった阿修羅だが…死神に
追い詰められ 自身の皮膚を剥がれて


その皮で作られた封印袋に詰め込まれた







「そして父上は魂も身もこの地に根を生やし
固定して鬼神を抑えこんだ」





遺跡を駆けつつ語るキッドへ、彼らは
足を止めぬまま口々に言葉を紡ぐ





「それで死神のダンナはここを動けないのかー…」


「でももし封印を解かれ、この場所から鬼神が逃げた
場合ー…死神様はまた自由に動くことができるの?」


「できませんね」





シュタイン曰く、死神は街に魂を固定し
この地に一体化しているため


もしも動くなら この地に足をつけるしかないが





『そんなコト、出来るはずも無いわよねぅえん
だ・か・ら鬼神ちゃんが復活したら成す術なんか』


「黙れ!」





一突きで喧しくさえずる鳥を黙らせ、
足元に散る紙クズの塊を踏み潰して 魔女を追う







―――――――――――――――――――――





頭が痛い、身体が痛い、世界がぐらつく





けど思考は変に落ち着いてて…あの女と


アイツの生んだ下僕がいる場所を理解する






「ひぃぃ!」


「罰殺!」





ガレキを生み出し、人を叩き潰そうとする

白い…あるいは赤まだらの巨人を引き裂き


空を這うを追っているうち







「うぎゃああぁぁぁ!!」





ズタズタにされていく街と、人と

それを引き起こす五人組の魔女が目に入る





徒党を組んだ低空飛行を保ったまま





「チチチ♪」


ヤツらの光るヒゲが俺の身体を裂こうとせまる





あの速度じゃ避けられない、あの強さじゃ
受けるコトも出来ない


普段ならバラバラに引き裂かれてオシマイ







だけど…俺はそこから避けも防ぎもせず


無意識のうちに鋏に変えた片腕を振る





「…チィッ!?





ヒゲが片方削ぎ落とされ 魔女どもは
バランスを崩してよろめく


その一瞬を逃さず胴体にケリをぶち込んだ





面白いくらいに勢いよく二体がふっ飛び





壁に叩きつけられる寸前で、角の生えた
白い巨人がヤツらを抱きとめて防ぐ





「危なかったわねぇん、先行っていいわよぅ?」


「逃がすと思ってんのか!」





宙へ舞い上がって逃げていく五人の魔女どもへ


追撃をかけようとして 巨人の腕に邪魔される


余所見しちゃダァメvアタシはこっちよぉん」


「…即効でテメェをブチ殺って、仲間共々
バラして内臓三割引セールで叩き売ってやる!」





ムカつきを吐き捨てて、邪魔な下僕を切り落として
嘲笑う魔女の姿を追う







―――――――――――――――――――――





地下の遺跡で偶然にも、メデューサを追っていた
スピリットとシュタイン達が合流した直後


鬼神復活に必要な「黒血」を護るため


阻止するべく進む職人達の前へ関門として
魔女・メデューサが現れる





「やはり あなたたちね…クス…待ってたわよ」


「…少しばかりオレから作戦を授けます」





シュタインは自らの予想を元に





自らがメデューサを抑える間に彼女を突破し


キッドに先へ行くエルカとフリーの追撃


ブラック☆スターに、先で待つであろう
クロナを抑えこむ役目


そしてマカへ、キッドと共に黒血の破壊を命じる






君にも言いましたが、最後にみなさん
これだけは守ってください

命だけは落とさないコト!!わかったな?


「「「はい」」」





メガネを外し、彼もまた魔女へと狙いを定め







「ベクトルアロー×3」





放たれた矢印のような矢の束を合図に、三人は
一斉に駆け出して…それぞれ突破に成功する





「うぉおおお のおおおお!!」





キッドはスケートボードに乗った勢いを
殺さぬまま、クロナの側を通過していった





「やばいよぉ〜あっさり突破されちゃったよ〜
また…怒られちゃうよ〜僕やだよ…」


「おや?お前が魔剣か?
お前の相手はオレ様だ!






続いてブラック☆スターが魔剣士と対峙するも


追いついたマカが、狂気に身を委ねたクロナを
前にして "自分に戦わせてほしい"と申し出る





『でもマカちゃん…シュタイン博士の作戦では
ブラック☆スターが魔剣を抑えると…』


『オレたちの攻撃は魔剣に通じないぞ』


「バカ野郎!に続いてお前まで
オレ様のステージを邪魔すんな!!」






口々に止める周囲にも、彼女は引き下がらない


その様子に殺意交じりの視線を寄越すも





横顔に先程、入り口で分かれた瞳
同じモノを見て取って…


のヤツしかりマカしかり
小物には小物なりのケジメがある、か)


彼は相手へ場を任す





「気をつけろ 無理はするな」


「うん」


「あぶなくなったらオレ様を呼べ
小物のため 助けに来てやるぜ!!」



もう!!わかったから さっさと先に進みなよ」







臨戦態勢を取ったマカは


"速☆星(スピードスター)"の加速で床を蹴り
頭上を飛び越えたブラック☆スターへ





「いいんだよ…それで
背後からの方が接しやすいもん」


背後から斬りかかろうとするクロナの動きを

鎌の刃先で制限し、留まった胴目がけ拳を振るう





『たたみかけろ!!』





鎌で左側を抑えたまま左腕でのラッシュを続け


力づくで抜けようとするクロナへ両足揃えての
飛び蹴りをお見舞いしてぶっ飛ばす





相手が身を起こすのを待ちながら


『意気揚々と魔剣に挑んでったんだ…何か
勝算があんのか?つーか…もちろんあるよな?』





訊ねるソウルへ、彼女は堂々と言う





「別に ないね」







一瞬呆気に取られるも…彼はその居直りっぷりに
笑いながらこう返す





ギャハハハハ♪お前 頭いいのに
本当バカだな!! いいよ♪サイコー
やっぱお前はクールなパートナーだわ』





道のりで感じていた不安や、今までの不満
全て吹き飛ばして 二人は魔剣と向かい合う





『まあ なんとかなるさ』


「なんとかするしね」







―――――――――――――――――――――





時折、破壊音や騒ぎ声が聞こえてくる路地で


生み出される手下をけちらし、術で身を守る
あの腐れ魔女に何度も何度も切りつけて


段々とうろつく手下の数が減ってきたから





…少しばかり、油断していた







「さぁて これでオイタ出来ないわよぉう?」





ノリが内包された巨人を切りつけて
動きが鈍ったスキを突かれて


ヤツの生み出した"紙の棺"に閉じ込められた





目の部分にあいたスリットを通して
は俺を眺めて楽しげに言う





「お姉さまに聞いたけど、だなんて
ダッサイ偽名使ってるんだってぅえ?
…あの女の苗字は忘れちゃったのぉん?」


「マンマを殺しておいて抜け抜けと…
地獄に落ちろ、ウソつき野郎!


「ウソはついてないわよぉう?アンタの生活と
あの女の"身の安全"は保っ障したじゃない」


「見殺しにしたなら同じコトだろ」


「当然でしょ?
アタシに病気が治せるわけないものぅ、それに」





ニッとイヤらしい笑みで、この女は言った





"命を保障する"なんて一っ言も言ってないし」


「ああそうだ…テメェはそういう
性根の腐りきったゲロカス売女だったよ!!」


ぅあぁんvVそうそうその目にそのセリフ!
ようやく待ってた反応来たわぁカ・ン・ゲ・キ〜





息を荒げて悶える姿は昔と変わらず、吐き気がする





「分かってると思うけど、棺を壊そうと動けばぁ
中で針が出て一発で串っ刺し昇天するわぅあ」


「動かなくても、テメェの指先一つで
針まみれに出来るじゃねぇか」


「わかってるじゃなぅいんvV」


一々腹の立つ態度と、自分が絶対者だと
確信してる余裕がこの女への殺意を上乗せする


けれど何も出来ずに睨むことしか出来ない


身動きも出来ず、身を焦がすような
肌のざわつきと憎しみを口にしか







出せなかった…昔なら





「安心しってぅえ〜アンタへのお仕置きは
下の騒ぎが終わったらゆっくりタップリしてあ」


三文ゼリフを待たずに、棺に刃を突き立てる


すかさず出てきた紙の針は俺を貫く…寸前で
押し留まり 引っ込むと





逆に目がけて飛んでいった





「ラヨーロゴート」





紙の盾が針を防いでいる間に棺を引き裂いて


胴体へ、武器化した片腕を突きだす





ハッズレ♪そんなミエミエのモノ「遅ぇよ」


間を置かずに 空いていた腕も武器化し





両腕が交差するようにすり合わせる







けれど間に挟まるように新たな下僕が生み出され


一瞬だけ阻まれたせいで、肝心の魔女は
腹に軽くキズを負っただけに終わった





「あはぁ〜…イケない子ねぇん♪」





気色悪い笑みを浮かべたツラごと
首をブチ切ろうと更に刃を伸ばす







けれども…あと少しのトコロで


アイツが指を鳴らす方がわずかに速かった





「へ…うわああああぁぁぁぁぁ…!?





踏みこんだ先の地面が、紙のように崩れて
いきなり深い穴に変わり


―俺を飲み込んでいく








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:どうやってメデューサの関門突破とか
やろうかと考え…こんな展開になりました


無駄に長くて急展開スイマセン、単行本5巻の
16〜17話辺りと一緒に読むのをオススメします


スピリット:アイツ口悪っ!つーか
オレの出番とセリフ丸削りされた…(ヘコみ)


狐狗狸:どうどう、次回にはセリフあるんで


ラグナロク:おいゴラぁ!オレのセリフも
ねぇじゃねぇか!どういうコトだ!!



クロナ:イダダ…やめてよ、髪の毛が抜けたら
僕十円ハゲとどう接したらいいかわからないよ


メデューサ:本当…役に立たない子
まだ遊撃を任せたあの子の方がマシね、おしおき


狐狗狸:ちょ、本編絡めつつ話進めてっから
クロナに八つ当たりはやめたげてよぉ!




地下にて再びの邂逅と、狂気の予兆…!


様 読んでいただきありがとうございました!