死神武器職人専門学校―略して"死武専"


鬼神を生み出さぬため、"悪人の魂"と
"鬼神の卵"を狩り"デスサイズ"をつくる


その志の元、死神が作り出し
職人と武器とを集めたこの学校も

創立記念の日を迎えようとしていた







「検査の結果、どうだった?」





椿が訊ねると マカは笑顔で答える





「正常だって…それはそうと、ソウル!


急に険しい顔つきに変わって睨むパートナーへ

怪訝な顔をして彼は言う





「あんだよいきなり大声だしやがって」


「なんだじゃないでしょ!メデューサ先生から」


「うわあっ!?」







険悪になりそうだった雰囲気は、叫んだ
ツナギ少年へ視線が集まる事によって霧散する





「脅かすんじゃねーよ!」


あ痛っ…ゴメン、ちょっと寝起きで
キズが痛んで…」


「大丈夫?保健室に行った方がいいんじゃ…」





ブラック☆スターにこづかれた頭をさする彼へ
椿は優しく言葉をかけるが


相手はブンブンと首を振って





いっいいよ!ほとんど治りかけてるし
逆に先生のメーワクになると思うから!!」


「けど顔色も悪いみたいだし…」


あ!僕そろそろ行かなきゃ、じゃあね!」


「ちょっと待って君!」





マカの声を背に、彼は飛び出すように教室を出る












Primo episodio Preparing it now











他の生徒にしてみれば"少し不審だけれども
取るに足らない行動"にしか見えないソレは





「…なんだアイツ、急に慌てて出てったぞ」





本人の事情をある程度知るソウル達には


"若干奇異なモノ"として映った







このところバイトのシフトを増やしたせいか


休み時間や放課後などの僅かな合間に
席で仮眠を取るの姿はよく見かけた


…よほど疲れているのか、近頃では
ちょっとやそっとじゃ起きなかった





さっきみたく、隣でブラック☆スターが散々
がなるように騒いでいても平気なぐらい






(なのに…どうしてあの一言で?)







で、マカお前なんか言いかけてなかったか?」


「あ…うん、ゴメンなんでもない」





沸きあがった彼女の疑念と怒りは、新たな疑問に
押し潰される形で沈んでいく







―――――――――――――――――――――





メデューサの家を中心に爆風が四散する





引き起こした張本人は、それを背に
アタッシェケースを担いだまま歩く





「ゲコリ 破壊はいいわ
魔女に生まれてよかった♪」



そう言って、エルカは口の端を上げ







ベェ〜奇遇ねぇん、アタシも同感♪」


「へ?」


唐突に聞こえた声に その場で足を止めた







彼女の行く手にあった岩の一つが


不意に動いて、バラバラと解け…





岩肌を模した紙の中心から一人の魔女が現れる





ねぇねぅえん?楽っしそうなコトしてるなら
アタシも混ぜて交ぜてぇぇ〜vV


!?なんでアンタがいるの!!」


「ベェ〜平たく言えばストーカー?
放置プレイ損にならなくってよ・かっ・たぁん♪」





笑うと彼女は、すかさずエルカへ抱きつく





「ゲコッ!ちょっ、離しなさいよ!
私行くトコあるんだから!!」



「あぁん一人でイクなんてずっるぅいんv
一緒に気っ持ちヨクなりましょうよぉ〜」


「気持ち悪っ!離れてよぉぉ〜!!」


その顔イイわ!もっと強く蹴って罵ってぇんV」





ハァハァとヨダレを垂らしながら身悶える
ケバい魔女にしがみつかれ


エルカの全身から鳥肌が立ちっぱなしである





「とまぁ冗談はと・も・か・くぅ、アンタ
メデューサお姉さまのトコにイクんでしょ?」


「な…なんで知ってんのよ!?」





どうにか相手を引き剥がそうとしていた
エルカが、その場で固まる





腰だめの辺りに下がっていた顔が上を向き


円らな銀色の瞳が、驚愕に彩られた顔を捉える


「だぁって魔道生命体の作り方って、アタシが
お姉さまに教えたんだもぅぉん」


ゲロォォ!?それマジ?!」


「えぅえ、その時からずぅっとお姉さまのなのぅ♪
会いたくてお側に仕えたくて踏っまれたくて!

やぁっとアンタが手がかりって掴んだんだから〜」





狼狽する彼女の腕を取り、は指を弾く





「とりあえず、お姉さまの所にイキましょ?
話はそ・れ・か・らvV」



その言葉に続いて 紙で出来た白い怪鳥が

二人の目の前へと舞い降りていた







―――――――――――――――――――――





「おい、今日はもう上がっていいぞ?」


「え…?」


まだ終業まで時間がある…ヘマをした覚えは
ないハズだけど…なんでだろ?





顔を向ければ、店長はニコリと笑う





「明日は死武専創立記念の前夜祭だろ?
そこの生徒が欠席じゃしまらねぇからな!」


「店長…!ありがとうございます!





従業員は目一杯コキつか…もとい働かすのが
信条みたいな人だと思ってたけど


こんな気づかいもしてもらえるなんて!







感謝して頭を下げた僕が、バカだった





「その代わり、当日ちっと頼みがあんだけどよ」


「な、なんでしょうか?」









…前言撤回 やっぱり店長は店長だった





「まったく、人使い荒いよあのヒト…」





不満があっても、雇ってもらってる手前
断るコトもできずにアパートまでトボトボ歩く





前夜祭かなり楽しみにしてたのに…


その為に目一杯バイト入れて、休日とって
色々やってたのに…





台無しにしてくれやがって店長のハゲ野郎





イライラしながらすっかり暗くなった
人気の無い道を歩いていると







―不意に、肌が寒気を訴えた





「な…!?」


足を止めて辺りを見回すと





「ひっ、ひぃぃぃいい!!





かすかに…細い路地の奥から人の悲鳴が聞こえた





普段なら、とっととここから逃げてたけれど


僕は一歩 路地の闇に向けて足を踏み入れる





間違い、ない


この寒気は外の気温が低いからじゃない…!





よせばいいのに、胸騒ぎにかられて
奥へ奥へと進んでいけば





…そこに、へたり込んでいる中年と


黒い服で黒い剣を持ったピンク色の髪の子がいた





「うじゅ〜…」


振りかぶった剣が 中年の人めがけて落ちてくる


とっさにそれを弾けば、その子は目を丸くして
僕から距離を取った





「君…ダレ?


「それこっちのセリフだよ…なにしてるの」





中年の人は這うようにして逃げ出していく





けれど、目の前の子はそっちじゃなく
僕の方をじっと睨んでいる


人形みたいな顔で…暗い、クライ眼で





「僕のジャマしないでよ…君みたいに
目が隠れた人とどう接していいか」


『喰っちまえよぉ!!』


剣から甲高い声…アレは魔武器!?





驚いている僕に構うコトなく





「うん」


構えた剣ごと、黒服の子が突っ込んでくる


防ごうとして腕をハサミの片刃に…





変えかけて、不意に違和感が強さを増して


気づけば無意識のうちに突進と剣とを
横跳びに避けていた







空を切ったはずの剣の軌道が…


路地と壁とにやや深めのキレツを残す





「ウ、ソ…なにあの切れ味…!」





マトモに受け止めてたらヤバかった
いいや、それよりも





さっきからこの子に感じてる

背骨に氷を詰められたみたいな違和感は…







「分からないよぉぉ!!」





我に返れば、小刻みに振動する剣が
僕の首めがけて迫っていた


ヤバい!反応が間に合わ―









あと十数センチのトコロで、突然剣が止まる





思わず腰を抜かした僕をよそに

黒服の子は虚ろな目でブツブツとなにか呟く


ほとんどはあまりよく聞こえなかったけど







「はい…分かりました、メデューサ様


…その一言だけはハッキリと聞こえた





「っねぇ君!今『ぴぎぇぇええぇぇ!!』





叫んだ言葉を遮ったのは派手な水音と


引っ込んだ剣の代わりに、相手の黒い服から
出てきた黒くてマッチョな上半身の変なモノ





あんだよクロナぁ!あのガキ喰わねぇのかよ!」


「だってしょうがないじゃないか…帰らなきゃ
僕怒られちゃ…イタイイタイ、やめてよ」





剣から聞こえた声と同じ声で、変なモノは
その子をひたすら拳でこづきまわってる





あ然とするしかない僕を置き去りにして


目の前の子は、服から黒い羽を生やすと





「じゃあ僕帰るから…バイバイ」





そこから飛び去って…消えた









色々いきなりすぎて意味が分からなかったけど


壁と床に残る破壊のアトが、起きたコトが
まぎれもない"現実"だと証明していて





震えた身体を 両腕で抱きしめて抑える





「ワケが…分からない…」





でも…いくつかのコトはハッキリしてる







あのまま"あの子"と戦ってたらきっと死んでた


僕の聞いた言葉と、感じた違和感はそのまま
イコールであの人に繋がってる"確信"





それと…違和感のせいなのか、さっきの
二人のやり取りがどうしてか心の中で引っかかる






クロナ…その名前、どこかで…」





こめかみから…いやな汗が一筋つたった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ついに前夜祭編スタートです、お待たせ


マカ:しすぎ(マカチョプ)


狐狗狸:ぐぼぁ!…カドは止めてくださいマジで


ソウル:つかこれ、前夜祭の前の日のトコから
スタートする意味あんのか?


狐狗狸:一応ある(姉が出る理由とクロナ絡みで)


ブラック:オレ様のありがたい口上の途中で
寝てるとはふてぇ信者だあのヤロ!


椿:君だって疲れてるんだから
寝かせてあげてブラック☆スター…




ここから前夜祭に入り…店長の頼みや
諸々の伏線回収する予定です


様 読んでいただきありがとうございました!