BREWを求め、ピラミッドへ急ぐマカチームは





「どうせ命令無視するならとことんやった方が
いいだろ?魔道具はどこだ?」


「あんたらといるとどんどん悪い子になる…」


信者じゃあるめーし まわりのツラ気にすんな」


軽口を交わしつつも門へとたどり着き





「誰かいる」


「…こっちに気がついた よく見たら
前に会ったな、あのジィさん」


「じゃあ あの手に持っているのが…」





入口で、カバンを携えたモスキートと対面する







「死武専の者が見あたらぬと思ったが
ずいぶん小さなエージェントだな」


その手に持っている魔道具をこちらに渡せ!
そうすれば見逃してやる」


「見逃す?見逃すだと?なめられたものだな」


「なめるも何も 自分の体をよく見てみろ」


キッドの指摘により、モスキートは身体が
磁場によって映像化しつつあることに気づく





私たちにはまだ10分ある この勝負
私たちの勝利は目に見えてるわ」





マカの宣告に…しかし老人は慌てる事無く

シルクハットへとカバンをしまいこんで被り直し





「いいだろう…少しばかり昔を取り戻すか
400年…いや 100年で十分





"ぐねねねねね"と独特の唸り声を上げながら


自らの魂と姿とを変化させる





「老人を敬え!!これが100年前の姿だァ!!」












Sesto episodio 胸をはって無茶をやれ











コートを破るほど肥大化した両腕で、筋肉によって
球体のようになった身体を支えつつ





「これで私もあと10分もつ イーブンだ」





臨戦態勢となった老人が 尖った鼻をヒクつかせる


その様子と物騒な台詞に三人も身構え―







彼らの合間を、奇妙な姿の人物が通りかかる





「何だ コイツ…また映像か…?」


「まだ 映像かどうか…」


戸惑うマカ達とは逆に、モスキートは表情を崩さず


目の前の相手が "エイボン"だと呟く





エイボンだと…?こいつが…エイボン…」


「知ってるの?キッド君」


マカに問われて、彼が気まずげに視線を外して





「グダグダやってるヒマはねぇんだよ」


その直後にブラック☆スターがモスキートへと
勢いよく飛びかかっていく





シカトだ!!よこせジジィ!!」





"魔道具は全て自分の物"と主張しながら攻撃を
始めたブラック☆スターを、キッドが呼び止める





待てブラック☆スター!エイボンを…」


「バカか!?キッド!!10分しかねェんだぞ!!
10分しか目立てねェんだよ!!」






だがロクに話も聞かずに当人は 彼へ罵声を
浴びせながら老人へ斬撃を与え続けてゆく





『ブラック☆スターの言う通りだ 魔道具を
手に入れるのが先決…行くぞ!


「うん!!」





ソウルの言葉にマカもまた、戦いへと参加して





呆然と過ぎ行くエイボンの背を見つめるキッドへ
リズとパティもまた 戦闘を促し







ええい!!言いたい放題 言いおって…」





銃を構えた彼は…ほんの少しだけ、外にいる
の苦労を理解する





「しかしアンバランスな爺さんだな!
虫唾が走る!!






怒りと共に撃ち出された波長にモスキートが
怯んだのを見て取って





そう!!それでいいんだよ」





懐へ入ったブラック☆スターの掌底
その巨体を真上へと跳ね上げ、彼の頭を踏み台にして
飛んだマカが上からの追撃で石畳にめり込ませる


…だが





「ふふふ 所詮子供…3人でこの程度か…」


身を起こしたモスキートには傷一つ無い





「百年前の姿…それすなわち!!
私が一番硬かった時代だ」






『まずいな…』


そして、ソウルも…磁場のせいでチームの全員が
波長を感じ取れていない事に気づく







――――――――――――――――――――





撤退した廃墟の物陰で、負傷した隊員の
手当てに回っている死人達の下へ





「「死人先生い〜〜〜!!」」


合図を出したキムとジャッキーが合流する





キム、ジャクリーン よくやった
…ほかの皆は?全員で戻る約束だろ?」


「それが…」





深刻な面持ちで彼女らは マカチームが
先に入った二人を連れ戻しに磁場へ入った事と


残るキリク・オックス・の三人が
磁場の外で敵と交戦している事を伝える







「何だって!?勝手な事を…」





梓の千里眼による目視を頼むも、磁場の影響で
そこからでは確認が出来ないとのこと





「この天候の中 磁場まで…15分…」





動けるもの10名を集めて救助に向かう、と
梓へ宣言した死人は ナイグスに傷の手当てを頼む





――――――――――――――――――――







空は淀み 辺りには容赦なく寒風が吹き付ける





雪の上には、倒れたアラクノフォビアの兵隊と
ゴーレムの残骸などがあちこちに転がり


渦巻く磁場の まさに水際では


ボロボロになった三人の少年が肩で息をしていた





「華麗にきめられたのは最初だけでしたね
相手もさすがに精鋭」


「形なんてどうでもいいさ
勝てたんだからよ…つか生きてるか?」





連戦で疲弊しながらも、しっかり大地に
立ち続けてる二人を改めて尊敬しつつ


へたり込んでた彼は弱々しく身を起こす





「…どうにか それより手当てはいるかい?」


『それは僕らより キミにこそ必要だと思うけど』


「ハーバー君も、案外キツいコト平気で言うね」





苦笑して少年が "大したこと無い"と続けようとして







磁場を抜け出てきたマリーが、シュタインを
担いだ状態で三人の前に倒れこむ






「博士!マリー先生!」


いったい何が!?どこかに負傷を!?」





オックスに視線をよこされ、戸惑いつつも頷いて
駆け寄ったが 二人の状態を確かめる





「どうだ?」


「特に傷はないみたいだけど…博士の様子が…


「キリク…オックス君、 博士を見ていて」





バンダナを外して身体を起こすマリーへ


倒れたままで、シュタインが呟く





「一度…外へ出たところで受けた磁場の影響は
消えない 行った所で…無駄死に………だぞ


「それじゃあ あの子たちは!?」


「皆まだ中にいるのか?」





両者のただならぬ様子を見て取って、キリクと
オックスが磁場の中へ行くことを志願するが





「絶対に駄目よ!!これ以上生徒をこの中に
入れるワケにはいかないわ」



彼女は映像化しかけた身と言葉を持って強く
二人の行動を押し留める





「命令が聞けないなら全教科赤点 退学よ」







重い言葉に、しばし三人は硬直していたけれど





「愚問だな」


「仲間を守ってこそ死武専生でしょう」






そう言って キリクとオックスは磁場へと踏み出す





「…っアンタも二人を止めなさい!!」





博士の側から立ち上がった彼は前髪越しに


僅かに止まる二人と 必死な面持ちのマリー
両方の視線を、受け取って―







「仲間を助けるのが救護班(ぼく)の役目です」





首を横に振り 仲間と磁場へ入る事を選ぶ





ニッと笑って、キリクとオックスが先に突入し





「ま…待ちなさい!!


「それじゃあ、行って来ます」





手を伸ばす彼女を置き去りに、もまた
磁場へと身を投じていった







――――――――――――――――――――





磁場へと突っ込み、マカ達がいる内部へと
三人がたどり着いた 正にその瞬間





空気を割くような甲高く鋭い"耳鳴り"

島にいる全員の耳へと届いていた







…けれども それに気がついたのはほんの数名





「っ…あんだぁ?今のミョーにイラつく耳鳴りは」


「戦いの最中に余所見ですか?」





―雪崩の後も、ずっとジャスティンとギリコの
崖上の攻防は決着がつかず続いていた





繰り出される拳の乱打を捌いたその脚で

"鋸脚2速"の蹴りを放って相手を吹き飛ばし





気付かねぇか?まー気付いちゃいねぇよな
涼しい顔してるけどよ」


"音のせいで攻撃が単調だ"、"イヤホンを外せ"と
笑いながら挑発するギリコだが


逆に"思考が単純"と挑発し返されて苛立つ





ほらッすぐ顔に出る 貴方イヤホンを
取らせたいだけでしょ?違いますか?」



「ち…ちげェよ!!


図星をつかれたギリコが足元の雪を巻き上げ





「鋸脚3速 虐殺風潮!!





視界を遮られた直後、カカト落としの要領
ジャスティンへ足刀が振り下ろされた







…だが 真空の刃を生み出す威力の一撃を彼は





「法を守る銀の銃
(ロウ・アバイディング・シルバーガン)」



交差した両腕で受け止め、その状態で反撃に出る





「「放射」(レイディアント)」





強烈な波長が、崖の一部と雪を一直線に削り抉った









―時 同じくして 別の場所にいたエルカも





ゲロぉぉっ!こ、この音…
まさかあのツナギ男がこの島にいるの!?」


まともに顔色を失って辺りを見回していたのだが





「へ、変に悩んでても時間のムダってもんよね」





気を取り直すと、磁場から出てきた五匹の
ネズミ達へと笑顔で呼びかける


「…それより お帰りなさいミズネシスターズ
どう?上手くいった?





変身を解いたミズネシスターズは、一人残らず
彼女に向かって親指を立てて答えた







「あぁん、鳥肌立つくらい最高に気っ色悪い
"オト"ねぅえん…ゾクゾクしちゃうわぅあ〜vV


―楽しげに言うのは、紙の巨人に乗った





「結局横取りは上手くいかなかったけど…まぁ
それもソレでいいわぁん♪」





"それぞれ"の動きに気を配りながらも、最後の
悪あがきとばかりに呪文を唱えだす









―そして場所は戻り


磁場の外でへたり込んでいた マリーの涙が止まる





「な…何なの?今の、耳鳴り…?」





彼女の側で、仰向けになって跳ねていた
シュタインも ウソのように笑うのを止めた





「やはり、この音…」





虚ろな目を空へ向けて それきり黙った彼の
脳裏に……の"魔法陣"が浮かんで消える







――――――――――――――――――――





磁場のせいか、それとも現在進行形で
モスキートと激戦を繰り広げているからか


マカチームには"耳鳴り"は届いていないようだ





「既に"力"の差を感じているだろ?」


「だまれ!魔道具を渡せ」


「お前たち…この帽子の中の"BREW"
どんな魔道具(もの)か知っているのか?」





何も知らず、不利な状況でも諦めずに
立ち向かう七人の若さをせせら笑い





「"BREW"を手にアラクノフォビアは
世界を手に入れる!!アラクネ様のモノだ!!
何もかも!!最高級の世界を!!



老人は 余裕綽々に両手を広げて言い放つ





そんなモスキートの言葉も、魔道具もそれを巡って
争うアラクノフォビアも死武専も全て否定して





「やれよッ!!オレ様争奪戦!!!」





椿の妖刀モードを発動させたブラック☆スターが


二人へ自らの補佐を端的に告げて、床を蹴る





「影☆星」


「その程度の攻撃では私の肉のカーテンは破れん」





真正面の一撃が両腕でガードされ、間を置かずに
左右からマカとキッドが迫るも





「はがぁあ」





即座に振り払われた両腕に全員が吹き飛ばされ


床に倒れたマカが身を起こすよりも早く
老人の巨体が突っ込んでくる





すんででブラック☆スターが 身を挺して突進を
阻止するも、モスキートは瞬時に身をたたんで





「一度にふき飛ばしてやる!!」


身体ごと回転しながら 体当たりで三人を
弾き飛ばし その勢いで空中に飛び上がり





「体感したまえ これが
100年前の重みだ!!






左右の腕で彼らの身体を捕まえて落下しざま


床と挟み込むようにして押し潰す







「そろそろ幕を閉じようか」







"このままじゃ勝てない"と感じているソウルへ





いや幕開けだ そうだろ?ソウルさんよ
…まだそこで、さんざん悩んでみるつもりか?」





―戦い始めてからずっと、そして今もなお


小鬼はささやき続けている








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:モス爺とのバトルの辺りとか、アノ人の
行動をもう少し掘り下げたかったんですが
ジャスティンさんvsギリコで尺押しました


ギリコ:あぁ?オレのせいだってのかコラァ
どっちかっつーとこのクソ神父だろ悪いのは


ジャスティン:おやおや、人のせいにするとは
口だけでなく性格も悪いんですね?


狐狗狸:スンマセンけどバトるなら余所で
お願いします…っと、なんすか小鬼さん?


小鬼:ちょーっとオイラの出番削りすぎだろ
今回ソウルの"苗字"っつー重大発言かましてたのに


狐狗狸:次回はちゃんと出番ありますってば
"苗字"は短編か別の長編で触れます 機会があれば


ブラック:オレ様を一番に目立たせろぉぉぉ!!


狐狗狸:あっぱあぁぁぁ!?(一発KO)




ソウルの力により、苦戦を強いられていた
マカチームがついに反撃に…!


様 読んでいただきありがとうございました!