磁場の影響で"魂感知能力""通信機"
まともに機能しない このロスト島に


先にたどり着き、待ち伏せていた兵からの情報が
モスキートの耳へと届いた





「死武専が島の東部に上陸しました!!」


「いよいよか…"BREW"をアラクネ様の下へ!!


勢いづく兵達を率い 命令を下しながら

アラクノフォビアの一群は磁気嵐へと向かう





同時刻 山の一角で、待機していた兵の一部が
集団から離れゆき その内の一人が仮面を軽くずらす





ゲコッ!さっぶぅ〜…ヤツらに紛れてどうにか
島までこれたわ ここからが正念場ね」


「チチッ♪」





背後からついてくるミズネ達へとそう返し


仮面を直し エルカが磁場の見える位置を目指して歩く







あちらこちらに 廃墟や施設の残骸が残る雪原を
磁場を頼りに進軍していく道中で





「ねぇキム なんで君のコト嫌いなの?」


『授業で足引っ張られたとか?こいつドンクセーし』


ハァ?冗談、こんな探せばどこにでもいそうな
無個性まっしぐらのヤツに何が出来るってのよ」





周囲に気を配りながらも、両チームは雑談を交わす





「いつもよかアタリキツくね?キムのヤツ」


「そうですかねぇ?普段どおり愛らしいですよ?」


「いや、無個性があるからこそ個性が際立つのだ
無個性も馬鹿には出来んぞ?もっと誇るといい」


「オックス君は論点違うし、キッド君は
それあんまホメてないよね?」


「ま他人の空似っつーから小物に似通ったのが
二 三人いても不思議じゃねーけどな!」


「ちょっ止めてよブラック☆スター、こんなのが
他にもいたらマジでキモいから」


『にしし、同じ顔だったら双子か三つ子だね』


『いやにゃ兄弟は…あ、いや何でもない』





うっかり口に出しかけ、背後からの無言の抗議に
気づいたリズは寸前で口をつぐむ












Quarto episodio 音無く、形無く











雪原地帯を迂回していた死人が率いる本隊を
待ち伏せの兵達が襲撃するも


いち早く迎撃態勢を整えた死人は、次々と兵へ
攻撃を叩き込んでは魂へと変えていく





態勢を整えるよう隊員達へ怒鳴った直後


武器化している梓から、遥か下方の廃墟で
ミフネによって前衛隊が壊滅寸前と伝えられ





「さすが梓…よく眼が届く」





死人はパートナーのナイグスへ部隊の指示と
指定ポイントへの待機を任せ 雪原を駆け行く







一連の光景を"依代"を通して眺めて





あらあらぁ〜あっちこっちで派手に
シ始めちゃって楽しそぉうぅん…けど」


言いながら、は目を開いて笑う





「手を出すのは、場が荒っれてからの方が
より楽しそぉうよねぇうえ♪ベェ〜!」






白い箒に乗った彼女へ 空を走るギロチンの刃
向かうも紙の盾によって阻まれる





「私に追われているというのに余裕ですね」





ぱかりと割れた盾の隙間から、


追うジャスティンの瞳と魔女の銀目とがかち合う





「うぅ〜ん 刺激的な追いかけっこをもうちょっと
楽しみた・い・け・ど…後ろも注意してぇん?」





指差され、ジャスティンが肩越しに振り返ると


スノーモービルと 備え付けのスピーカーから
垂れ流される爆音の振動によって


積み重なった雪が 大量に崩れて押し寄せていた





「おや」


やだ大きいぃん…逃げなきゃアタシも巻き添えね」





広げた手の平から紙のつぶてを目晦ましに放ち


はその場から飛び去った







攻撃を回避するも、魔女を見失った彼は


規模を増していく雪崩から逃れながら山中を
駆ける内に 崖の側にいたゴーレム部隊と接触し





「鋸脚!!3速!!」


「うわァア!!」





わざと雪崩をぶつけるような形で突進する事で
彼らのほとんどを崖へ押し流して





「オオー神よ…私のスペシャルチューンの
スノーモービルが流されてしまいました…」


「ふざけんな、ふざけんなよマジで…!
降りてこい騒音神父 おがくずにしてやる


「また会いましたね」





モービルから離脱する寸前で、腕の刃を
食い込ませぶら下がってた枯れ木から降り立ち


自らの技で 難を逃れたギリコと対峙する







――――――――――――――――――――





真冬の吹雪のような唸りを上げる 磁場の嵐を
目の当たりにして





「これが磁場か…」


「イカツイな」


マカ達はしばし圧倒された





「これからマリー先生と磁場の中に入ります」





シュタインは 自らの部隊の面々へマリーと
磁場の中へ突入する事と、戻るまでの待機を命じ


続いてキムヘ、自分達が20分経っても
戻ってこない場合のプランを指示する





「キミはランタン(ジャクリーン)を使って
死武専全部隊に退却の合図を出す そして君たちも
シドの本体と合流しこの島から出るんだ」






けれど二人が残される事に納得いかなくて
マカが反論を試みる





「磁場の中には敵も来ます…私たちも中に入り
博士たちの手助けを」


「中に大人数で押しかけては戦闘が大きくなって
しまいます 長き戦いになっては磁場により共倒れ
そんなコト 相手も望んでいない」





理路整然とオックスに説き伏せられ、ついでに
"それでも学年トップか"と付け加えられ


二の句に詰まった彼女への助け舟のつもりで
ついついは口を挟んだ





「そこまで言わなくても、マカなりに心配…ッ!







不意に天と地が回りだすような眩暈に襲われ





君!?」





その場に倒れかけた少年は 呼ばれた声に
反応して歯を食いしばり どうにか踏み留まる





「あらやだちょっと平気!?無理しちゃダメよ」


「だ、大丈夫です、けど…マリー先生は?」





頭を抑えながらの生徒の問いを、先程のマカ同様
磁場へ入る自分への心配だと考えて


安心させるようにマリーは明るく微笑む





心配ありがとう♪けど先生なら平気よ
コレでも結構タフなんだから!」


「だな、少なくともマリー姉ちゃんのが
お前よか男前だから」


「いやそれは言い過ぎ…でもないか、あながち」


そこ認めないで!引っ込めないであげて!』





そんないつも通りのやり取りに、自然と
シュタインの口の端にも笑みが宿った


「心配するな マリー先生の"能力"を使えば
相手が何人いようが5分で帰って来れます」







行ってくる、と告げて磁場の渦へ足を踏み入れ


飲み込まれてゆく二人の姿を見送ってから







「とりあえず…プラン通り僕たちは待機すべき
ポイントまで移動しましょう」





オックスの一言を契機に、六人は磁場から
少し離れた地点へと移って行く





…だが 亜麻色髪の少年は磁場を睨んだまま





『どうかしたのかい?』





ハーバーの声に反応し、我に返った
振り返りつつ慌てて言葉を返す





「ああゴメン、耳鳴りで頭がボーっとして…」


「信者のクセにオレ様無視してポケーッと
棒立ちしてんじゃねぇぞゴラァ!」



丁度そこに不機嫌になったブラック☆スターが
放り投げた即席の雪玉を食らって


顔を白くしながらはしりもちついた





わぷっ!つべたっ!!」


「おい力加減ぐらいしろよブラ☆スター!
顔半分雪まみれになったじゃねーか…ププッ





あまりの見事な食らいっぷりにキリクが吹き出し

それが呼び水となって周囲から笑いが上がる


身を起こし、彼は引きつったように笑いながら
雪を払って全員の下へと歩み寄る





――――――――――――――――――――







「強すぎる…」





隊員二名と向き合って尚 隙を見せないミフネの
死角へと回り込んだ死人が波長の矢を放つ





しかし、彼は即座に矢を跳ね返し 背に負った
刀の束から数本を岩棚へ穿ち


それを足場に一足飛びで死人と距離を詰めた


大上段の一閃を小手で受け止め


返す刀でボウガンの柄による殴打をミフネが
反射的に左腕で防いだ一瞬を利用し





「雪の中にもぐった…」





相手の遥か後方へ抜け出した死人が勢いを
殺さぬままに崖を滑り降りる





『死人さんッ 追って来ます!!』


「了解」





梓の声を合図に滑走する侍へと矢の連打を浴びせ


侍はそれを弾き 横へ飛び退いて死人へと迫る





「追って来いサムライ」


「斬る」









両者の追走劇を観覧する傍ら、磁場へと続々
たどり着くモノ達の姿を認め





「あぁん そろそろ食べごろかもぉあ〜んv」


紙を口に が呪文を唱える





「ケプストゴート、ベェトゴトー…!」







――――――――――――――――――――





待機の合間、死武専生組はジャクリーンを
掲げるキムを囲って暖を取っていた


…やや離れてた位置で腕を擦る少年を覗いて





「いいなァキリク オレにもチョコバーくれよ」


「これしかねェな」


「ウソつけ!右手に隠したの見たぞ」


雪でも食ってろよ、これはオレんだ」





約二名がしょうもないケンカを行っているのを
横目に見ながら、椿がおずおずと口を開く





「ねぇキム…君にも温まらせてあげても」


イヤ 近寄られると殴りたくなるのよアイツ」





ひと睨みされ、彼は思わず苦笑いで返す





「いいよ寒いの慣れてるし…てゆうか博士たち
まだ戻ってこないのかな?」


「確かに遅いですね、5分で戻れると
言っていたのに」


「もう15分になるぞ…」


オックスとキッドが不審を抱いたのと同じくして





『どうした?マカ』


「博士とマリー先生の「魂反応」が消えた…!」





磁場嵐を見据えて、彼女がハッキリと言った





「こんな磁場の中で二人の「魂反応」がわかるのか?」


「ノイズがひどすぎてギリギリだけど…
中で何か起こってる…





それを聞き、気がかりになったキッドが
中の様子を見てくると言い出した





「リズとパティはここで待っていろ オレの
死神の身体なら磁場の影響もそう受けないだろう」


待って!一人じゃ危険だって…」


「しかし…「オレたちも行くぜ」





ケンカしていた武闘派二人がそこへ加わって


磁場へ突入するか否かで意見が分かれ始める





「シュタイン博士の命令はどうするんです」


「私も行ったら5分後に「合図」出せなくなるよ」


「やっぱり全員で見に行くのはマズイよね?」


「…おい あの変態女近くにいねぇだろーな?」


「正直自信ない…あの磁場があるし、ちらちら
覗かれてるっぽいような気配するし」


「何ボソボソ言ってんのか知らねぇけど オレらに
ついてくなら止めとけよ?お前救護班なんだし」





悪気は無いものの、戦力外とみなしている
キリクの態度へ も少しムッとする





「あのさ、僕そんなに頼りな」







次の瞬間 物陰からマカへと放たれた手裏剣を





「せいッ やッ」


オックスが弾き飛ばして 奇襲を防ぐ





たちまち集まってきた仮面の兵隊達を目にして


全員は 無言のうちに素早く身構えた





「どうやら敵に見つかってしまったようですね
丁度いい ここは僕達が引き受けましょう


「あんたたちは磁場の中に入りな」





言うや否やアラクノフォビアの兵隊へ


「野外の雷王をなめない方がいい」


先陣を切って突進したオックスの雷槍が閃く


その衝撃で吹き飛んだ敵へ、彼は言う





「室内はガリ勉…野外の雷王は…獣だ」







流れで間髪いれずにささやかれた愛の言葉
適当に受け流したキムも





「ここが通りたければ通行料払いなさい!」


敵に向けて炎を吹き出し、焼き払う







チームの二人を残して行けないと呟いて





「これでも食ってスタミナつけろ」


いいさ…オレたちが帰って来るまで
お前に預けとくぜ…「食え」





キリクが 餞別代りのチョコバー
ブラック☆スターへ渡している合間





「博士と先生なら無事だろうけど…気をつけて


「ありがと、そっちもガンバって!」





からの言葉を受け取り、マカとキッドは
力強い笑みと共に頷いた









磁場へ向かったマカチームを見送ってから





「かますぜファイア サンダー 魂の共鳴」





キリクは 二つの壷へ呼びかけ、両手に溜めた波長を


眼前に迫るゴーレムへと叩き付けた





AFX・T
(アーム・フォース・エクストリーム・ツイン)」








「か…カッコいい…!」





派手に巻き起こる爆発と、技名に感心する少年の


死角から獲物を振り上げた兵が接近する





「ってうおわっ!


間一髪で腕をハサミ化して攻撃を弾いた彼が
反撃に出ようと構えた矢先に





馴染みのある嫌悪感に圧されて その場を下がり


逆に距離を狭めてきた兵が、何かに足を取られて
つんのめるようにその場へ倒れこんだ





どわぁっ!?なんだ、足元に何かが…!」


相手のアゴを思い切り蹴飛ばし、倒れたのを
見て取ったが下を見れば


雪に紛れるような白いツタが 針のように
鋭い棘を振りかざし 足をからめ取ろうと伸びてきた







当人は瞬時に踏みつけながら刻んで事なきをえるが





「あぁ邪魔!何よこの変な茨みたいなの!!





見れば他の死武専メンバーの足元でも、ムチのような
白い茨が這い回り 動きを阻害しようと襲いかかり


前髪に隠れた瞳が、たちまち怒りにつり上がる





「よりによってこんな時に、あのクソ女ぁ…!


「あの小僧を潰せぇぇぇぇ!」





小さく毒づく彼へ ゴーレムの一体が狙いを定める







だが拳が頭蓋を砕くより前に、余計な乱入で
殺気立った八つ当たり気味な足刃が直撃し


蹴り貫かれた胴からヒビが入って…動きが止まった





なっ!?一体どうしたゴーレム!?」


「よく分からないけど、チャンス!」





すかさず追撃を叩き込み、完全にゴーレムを粉砕した
オックスが渋い顔つきで呟く





「これは流石に一筋縄で行かないようですね…
キム、キリク君、それと君も用心して下さい


「「「おう!」」」








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:月一ペースみたくなって滝汗ってますが
なんとか今月中にもう少し話進めます!


梓:少しご自分のペースを自覚すべきでは?
それと、やはり詰め込み過ぎは自重すべきかと


ナイグス:あまり書き込む事が多いと、読む側も
書く側も負担にしかならんからな


死人:無理にまとめなくともいいんじゃないか?


狐狗狸:…図星ながらも、的確なアドバイスを
ありがとうございます 励みます


ジャスティン:神は真面目に取り組むアナタを
いつも見守ってくださいますよ?


シュタイン:もしくは集中力を増強できるように
人体改造でも施してあげようか


マリー:そこまでしなくても 真面目にやるわよ
ねっ?管理人?(ニッコリ)


狐狗狸:アレ?後半なんか怖いんですけど




BREWを巡り、武力と思惑とが交錯する


様 読んでいただきありがとうございました!