死神からの司令を受け、魔道具の回収任務へ
向かったため 主催したキッドは中座し

結局、パーティーが終わるまで戻らなかった





「一人で死武専のお泊まり室まで行ける?」


「うん…大丈夫だよ」





マカへの返答から間を置かず、満面の笑みを
浮かべてブラック☆スターと椿も言う





クロナ!!今度はうちに遊びに来い!!」


「ラグナロクみたいに食べっぷりがいいと
料理も作りがいがあるわ」


「う…うん「うるせェ誰が行くか」


「そんなコト言って、椿さんの料理に
一番がっついてたの君じゃない」





呟いた殴りかかろうと伸び上がった
ラグナロクをクロナが押し留める一面を経て


六人は別れの言葉を告げて、各々の住処へ
夜の路地を歩き出して行く







アパートへと帰る道中、彼は方向が同じの
ブラック☆スター・椿と しばしの間

過ぎた楽しい時間を口にしていた





「にしてもキッド君たち、大丈夫だったかなぁ…」


「オイこら オレ様が側にいんのにスター性に
欠けるヤツのコト考えやがって信者失格だぞこの!」


イダダダダ!いやだってここんトコ妙な事件
多くなってきたし仲間が気になるのは当たり前で」


「どーせ明日になりゃケロッとしたツラで
会えんだろ?あのシンメトバカにはよぉ!」


止めなさいブラック☆スター!
君 本気で痛がってるでしょう?」





かけられていたプロレス技から解放され





「じゃ、僕こっちだから」


「おう また明日な!」





互いの分かれ道に差しかかり、笑顔で手を振り
三人は自らのアパートへと足を向ける







―刹那 背骨に氷を詰められたような


息の詰まりそうな感覚が身体を駆け抜けて






ハッとして立ち止まったが辺りを見回す












Primo episodio そして言うんだ[And say,]











けれども、暗く静まり返った街には彼ら以外
人っ子一人 物音一つすら無い





「…う、ウソだ そんなハズない」





過去にその感覚を呼び起こした相手は

ある事件の際、シュタインとスピリットの
手によって魂ごと消滅させられた


少なくとも 彼は当人達からそう聞いていて


それ以来、一度たりとも"彼女"の存在を
感知する事は無かったのだ





…だが 捉えた"感覚"と記憶の合致に
間違いが無いのは自身が知っている







「どうかしたの?」


「あ、ううん…なんでもないよ椿さん」





青くなった顔色を誤魔化しながらも、彼は
二人に"お休み"と告げて道を別れる





――――――――――――――――――――







本格的に活動を始めたアラクノフォビア
各地の魔道具を集め始めており


死武専はその阻止及び魔道具確保へ動いていた





先日の件から夜が明けて、図書室へとこもり
キッドは単独に"エイボン"を調べ始めるが





彼のパートナーであるリズとパティは
クロナも交えて他愛の無い会話に打ち興じていて


あの時のパーティーの内容から、リズとマカとで
交わされたソウルのピアノの話になり


そこから周囲がピアノを聴きたいとせがむ





「もったいぶらずに弾けよー」


「人に聴かせるレベルじゃないの」


「私には聴かせてくれたでしょ?
そのトキ上手かったじゃん」


「…お前は音楽IQ低いからいいんだよ」


何ぃ!?「ぽんぽこダンス」バカにすんな!」


ぷっと頬を膨らませて憤慨するマカ


しかし、友人達からの評価は一様に辛口
ブラック☆スターまでもがバカにしていた





「好きで聴いてんだからほっといてよ!!」


「いやいや、年頃の乙女としてアレはねーよ
だってダセェと思うよなー?」


「え、ええと…いいんじゃないかな
個人の趣味ってコトで」


「なによそのビミョーそうな顔っ!?」





音楽を聴く趣味を持たない彼でも、流石に
その曲はどうかと思ったらしい







まったくみんな失礼しちゃう!ねっクロナ?」





ヘコまされ、同意を得ようとするマカだが

相手は虚ろな瞳を床へと落として答えず


再度の呼びかけにも上の空な様子を見せて


二言三言交わした後、お泊まり室へと戻っていった







「どうしたんだろう…?何か元気ないみたい…」


そうか?いつもあんなノリだろ?」





それでもどこか浮かない顔をする彼女を見かね





「きっと慣れない場所に馴染もう
ガンバってんだよ、あせらず見守ってあげよう?」


「そうね、一人で心細いのだろうし
私たちでクロナ君の力になってあげなきゃね」





励ましの言葉をかける二人の内、ツナギ少年の方に
ブラック☆スターが顔を向ける





「そういやお前、最近筋肉痛がどーとか言わねぇな
あのスプラッターバカの特訓のおかげか?」


「いや、それは違うと思うけど…」





だが、言われれば彼にも思い当たる事があった





バイトと学業の両立に、波長の訓練及び調査が
新たに加わり肉体的には辛いのだが


課外授業と ついでに"前夜祭"の事件にて


技を繰り出したにも関わらず、その後に
やって来るハズの"筋肉痛"は確かに訪れていない





「って、なんだって僕の筋肉痛に話が飛ぶの?」


「そりゃークロナの次に弱っちそうなのが
お前だからじゃねぇの?」


「きゃはは言えてる〜ちゃんと寝てるかオラー!





容赦ないソウルとパティによって前髪を
めくられたりヒジで小突かれたりとからかわれつつ





「ちょっ、やめてってもう…!」


彼はこの場にいない、もう一人の事を気にかけた







――――――――――――――――――――





調べ物が難航し、自然と眉をしかめた表情を
浮かべているキッドを見かけて





「砂漠での任務、ご苦労様





声をかければ、亜麻色髪の少年を目にして

相手は顔つきを若干和らげた





「わざわざそれを言うために呼び止めたのか?」


「それもあるけど…あの任務から戻ってきて
キッド君、なんか悩んでるみたいだったから」


"何か力に"とか"悩みは何なのか"などといった

言葉を口にしようとしているのを見越して





キッドは、彼の口元へ手をかざした





「悪いが、これはオレの問題だ」


「…分かってるけど、あまり背負いすぎちゃ
ダメだよ?リズさんやパティも心配するし」


戯け お前が気にしすぎるまでもなく
分かっているさ、オレを誰だと思っている」





苦笑同士で会話を終えて、二人は廊下を後にする





けれど思い切ってぶつけた言葉をはぐらかされ

疑問と不安とが募ってしまった結果に


は、少しの無力さと寂しさとを覚えた





――――――――――――――――――――







悩みなど何も知らないかのように、家路を
目指し廊下を通る生徒達に挨拶するマリーへ





接近を試みようと近づくクロナの肩を叩いて





「…クロナ君、一人でぼーっとしてどしたの?」


うわぁっ!?べべべべ別にっ!!」


「ご、ゴメン!なんかおどかしちゃって…」


いきなり来んじゃねーよ地味ぃ!つーかテメ
バイトはどうしたんだ?無断欠勤かコラ!」



「人聞き悪っ、まだ出勤の時間に余裕あんだよ」





言いつつ、反射で飛んできたラグナロクの拳を
スレスレのところでは避けた





「マカもみんなも気にしてたけど
なんか分かんないコトとか、ムリとかしてない?」


「だっだ大丈夫だよ…みんな、優しいし」





頬をうっすら赤く染めつつ小声で呟くクロナの


手にあるペンを目で差し、彼は続ける





「ならいいけど…トコロでそのペンはダレから
「なっななななんでそんな事聞くの?」


「…ああいやゴメン、単に気になったから」





本当は、そのペンが"何かよくないもの"のように
感じたのもあって声をかけたのだが





怯えているように見えるクロナを前にして


それを追求できず、言葉を濁す





「母親からの形見を持ってちゃおかしいってのか?
オメーの許可がいるのかよツナギ野郎!」


「ら、ラグナロク!


え、あ…そっか…なんか、ゴメン」


「い、いいよ気にしないで 逆に謝られると
僕どう接していいか分からないから」





気まずげな相手に対し、おどおどと視線を
泳がせていたクロナが逆に訊ねたのは


近しい雰囲気の少年の"母親"が気になったから





「…君は、お母さんとかいるの?」





直後、ほんの一瞬だけ彼の顔から表情が消えた


…が すぐにそれはお得意の曖昧な笑みに変わる





「いないよ…家族はだれも、いない









男手一つで育ててくれた祖父の話以外

親類縁者の話を、彼の母親はしなかった





『ねぇマンマ、どうして僕がハサミだって
ヒミツにしなきゃいけないの?』


ある日抱いた子供らしい疑問に


彼女は…とても寂しそうな微笑で答える





『父さんが言っていたの…魔武器だった
ご先祖様の、二の舞にはなるなって』





死武専が作られる以前…魔武器の存在は
一般的ではなく、迫害の対象にもなりえた


の先祖や親類達もその例にもれず


故に、イタリアへ移ってから彼らはその事実を
ひた隠しにして生きてきたのだという





『だから、信頼できる人にしか教えてはダメよ





たった一度のその会話と誓いを、彼は今でも
忘れずに護り続けている







「一人で、辛くなったりとかしないの?」


「慣れればなんてコトないよ…だから君も」







―肌に走る感覚に、少年は思わず言葉を途切る







「ど、どどどどうしたの?」





戸惑うクロナに構わず、彼は辺りを見回す





昨夜と違い気のせいではないソレは…例えるなら


生暖かい粘液が張り付きながら足元から
じわじわと這い上がるような、湿った不快感






切り揃えた前髪の奥の 鳶色の瞳が鋭さを増す





「…ゴメン クロナ君、僕行かなきゃ」


「う、うん じゃあね君」





短く言って別れ、少年は歯を噛みしめながら
不快の元を突き止めようと走り出す





けれども相手も移動をしているらしく


徐々に死武専の外から通りへと出て行く





「こっちの角を曲がった…!」







細い路地の合間へと入り込んだ彼は足を止めた





爆音を耳に流してたたずむ、黒い法衣の
見知ったデスサイズの姿を目にして





「おや、ごきげんよう君」


「あ…ジャスティンさん、こんばんは
こんな時間にどうしてこんな場所に?」





唇の動きを読んでか、彼は穏やかに答える





「私は神から仰せつかった使命の為、世界を
歩き回る神の足となっているのです」


「あの…スミマセン、もう少し詳しくお願いし」


おぉ〜神よ!私はアナタの従僕にして使徒!
今日も世界は平和と幸福に満ちています…」





いつもの如く通じない会話に見切りをつけ

辺りを探るも、いつの間にか不快感は消えていて





「それじゃあ、僕はこれで失礼します…」


ため息を一つつき は彼に別れを告げた





――――――――――――――――――――







ひっそりと静まり返った夜の通りに、カエルに
化けたエルカとクロナの姿はあった





『あの女にどうやって飲み込ませたの?』


楽勝だったぜ マリーのコーヒーにポタリと
忍ばせてやった…途中地味が絡んだ時は焦ったが』


『ああ、あのツナギ男ね…まあバレずにすんだなら
いいんじゃない?私も殺されずに済むし』





俯いたまま右腕を押さえて黙るクロナの片手には

に問いただされた、ペンが握られている





『あのヘビには盗聴器とメデューサの魔力が
こめられている…これであの女の近くにいる
シュタインの狂気も加速する』



スピーカーを通して聞こえる、マリーと
シュタインの会話にせせら笑うエルカ





…の声を聴きながらニヤニヤと彼女は笑う





あらあぅら♪中々楽っし・そ・うぉんな
状況ねぅえん、ベェ〜」





くりっとした銀色の瞳の瞳孔を横に細めて


手の中にもてあそぶ白い蝶を通して"魔女"
見聞きした全てへ思いを馳せる







―先日、ババ・ヤガーの城にて起こった
アラクネとメデューサの邂逅や 城内へ
潜り込んだエルカ達の行動などなど


そしてモチロン、クロナと彼女らの接触





「同じ手を使うだけでなく、姉まで敵に回して
行動を起こすなんてさっすがお姉さまぅあvV





自らの確信の正しさと共に、"盗聴"の行動が
一緒であった事に歓喜を浮かべ





あぁん、以前の麗しい姿もヨカった・け・ど
今の愛らしい姿も最っ高だぅわぁんvあの小さな
おみ足で野良犬みたいに蹴りつけられたいわぁ」





彼女は闇の中、息を荒げてクネクネと身悶えして


…やがて誰にとも無く呟く





「アタシも派手に動き回ろっかしらん♪」








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:お待たせしましたBREW争奪戦!
待たせた分 今回、のっけから盛り込み気味です


ソウル:の割には言葉が相変わらず足りてねぇな


★:オレ様のスターっぷりもな!


リズ:いやそこは関係ねーだろブラック☆スター


マカ:君ってクロナの家庭事情知ってたっけ?


狐狗狸:姉貴づてでね〜詳しくは前夜祭編の
五話目を見てもらいたいです


パティ:きゃはは手抜きだ手抜き〜


キッド:全く持ってけしからんな


狐狗狸:…マカの曲の批評並に辛口だなぁ君ら




不穏さと不吉さを漂わせつつ、魔道具BREW
情報をキャッチした死武専で動きが…


様 読んでいただきありがとうございました!