―キリク/ノアのアジト前―





本から吐き出されたら、外の様子は
中々とんでもねーコトになってやがった





目の前にいるサソリみてぇな怪物


足元に転がる血まみれの クマのかぶりものの死体


グロい芋虫にくわえられてる傷だらけの先生達





こっちへ飛びかかってくるサソリもどきを
キッドとブラ☆スターが沈めて


オレ達は…原因らしい魔導師の野郎と向かい合う





「オレの思い描く世界に貴様の存在はない
死刑を執行する





退くように叫ぶ博士と死人先生を逆に止め


戻ってきた二人が、武器化した椿
リズとパティを手にする





『『おかえり キッド(君)』』


「心配かけてすまなかった、ただいま」







よーやく普段通りの光景になったと喜ぶヒマもなく





「鬼神も何もかも私のモノだ欲しい!!

この世界を手に入れるのは私だ!
死神には渡さない!!なぜなら欲しいから!!






勝手なコトほざいてノアは芋虫操って

マリー先生を石柱に向けてぶん投げやがった





「マリー!!」





シュタイン博士が受け止めたのを見て
安心するが、怒りはおさまらねぇ


同じようにブラ☆スターとキッドもビリビリ怒り





「今必要なのは貴様に対する…"冷静な殺意"だけだ





途端、アイツらの雰囲気ががらりと変わる





「この波長は!?」


『キッド!!』 『ブラック☆スター!!』


まとう空気がビリビリと肌を差すが





「連戦で申し訳ないが付き合ってもらうぞ
マカ ソウル」





支えあうマカ達に声をかけ、駆け出していった
アイツらは…頼りがいのあるツラをしていた





「お前達の"力"がオレ達の支えになる」


「ナイグス先生とあの生物はオレらに任せろ!」


「わかった、ソウル」 「オウ!!」





共鳴連鎖で戦い始める三人が、ノアと
でけぇスピーカーへ立ち向かう間


オレはグロい芋虫みてーなヤツへ殴りかかる





「先生を放しやがれえぇぇぇぇ!!」





牙を避け、残りの二体のドタマへカボチャが
直撃したのを見計らい


ありったけの雷を叩きこめば


苦しむ芋虫の口からナイグス先生が解放された





「大丈夫かナイグス!」





キャッチした死人先生の元へ歩み寄ろうとして





白い壁が、地面から急に競り上がって
オレらと先生達を遮ったる





邪魔すんじゃねぇ!ポットオブファイア―」


「あぁん乱暴ぅ、アタシにもして欲しいぃん」


「キリク君!上ニャ」





ブレアの言葉に拳を下げて 顔を上げりゃ


壁の縁に座るオールバックにピンヒールブーツ

網タイツと長手袋で下乳の出たぴっちりスーツの
魔女…うわ変態くせぇ





怖い顔しないでぅえ?私は基本見物しとくわぅあ
ヤリまくって疲れたものぉうん」





周りを飛ぶ白い蝶をむしゃむしゃ食って
くねくねしながら笑う姿は、余計キモい





「そ・れ・よ・りあっちを一緒に観戦しなぁい?
面白いわよぅ?ホラ


ケバい魔女が示したのは、スピーカーをぶっ飛ばす
マカ達三人…いや





芋虫に乗って ブラ☆スターへ迫るノア





「私のコレクションのお披露目会に
付き合ってもらいましょう 巨人の剃刀





やたらデケェ黒い刃を避け、お返しにと
刀を振りかぶるブラ☆スターへ





「行け!!厳選されたグレムリン!!」


「何!?」


ちっけぇヤツらが空中から突っ込んできた





「させるかよ!」





地面を蹴り、左腕で一匹を叩き落し

落下しながら身体をひねって
右腕で何体かを焼き払う





「細けぇヤツはオレとブレアに任せて
お前達はノアをやれ」












L'ottavo episodio
 Perch io proteggo la famiglia.












二人は頷き マカのサポートを受けて本から
出てくるモンを叩き落しながらノアへ迫り


オレ達は芋虫とちっこいのを潰しにかかる





だがぶっ飛ばしても後から後からわいて来て
うっとおしく周りを飛び交ってやがる





ちっ…こんな時 でもいいから
も一人くらい戦えるヤツがいたら楽なんだがな





更にメンドくせぇコトに


白い壁がいくつかの鳥になって、クチバシを
先端に回転しながら三人へ向かう





「ハロウィン砲!」 「F・F・F!」





マカを狙ってたヤツを中心に迎撃して
ほとんどの鳥を落としたが





「危ない!!」





鳥への反撃で反応が遅れたブラ☆スターと
キッドの頭上に、デカブツが落ちてくる





キッドを蹴飛ばしブラ☆スターが
デカブツの下敷きになったが


アイツは…それで終わるほどヤワじゃねぇ





「お前みたいな小さい奴に
BIGなオレ様をつぶせねぇよ」






逆にデカブツを持ち上げ 奴を踏み台に飛び上がり

いくつもの黒い刀と椿の一撃で仕留めた





「すごい!!」


「でもキリがないぞ!一人相手にしてるはずなのに
大軍を相手にしてる様なものだ」







さっきの邪魔はともかく ソウルの言う通り
相手は一人だけだってのに


肝心のノアは、疲れた様子もなく
まだまだ戦る気満々だ





「さて…そろそろ終わりにしましょう」





本の中からドス黒い煙が吹き出す





「我は汝を使役する!ホラードラゴン」





煙がどんどんデカくなって…





オレ達をひと飲み出来そうなデカい口が

三つの首が その内二つの顔面についた
白い妙な仮面と縫い付けられた皮が


異常な数の墓を背負った馬鹿でかい背中が





ビルみてーにクソでかい黒いドラゴンが現れた





「マジかよ…こんなの、勝てんのか…?」


思わず口から出た声は 情けねぇほど小さい





吠える声に、ノアは笑いオレらは身を固くして





「何だ、どうしたホラードラゴン!?」


急に奴らの様子がおかしくなる







叫び声をあげ続けるドラゴンの腹から

二本の両刃が生えて、上へと駆け上がって





ざっくりと開かれた黒い胴体から





「俺の、友達にっ…ナニしようとしてんだ
こんのクソッたれ野郎ぉぉぉぉ!



!!』





これ以上ないぐれぇビリビリ来る登場を
かました普通の地味男は





これ以上ないぐれぇ無様に地面へ顔面ダイブした










―シュタイン/ノアのアジト前―





魔法生物と戒めを振り切り、退くよう指示した
オレと死人をブラック☆スターは腕で制する





オレ達にやらせてくれ!
博士達はマリー先生達を頼む!」


バカか!!ワガママ言って!指示に従え!」


「これは新支配者を決めるキッドの闘いだ
指をくわえて見ていろなんて言わねぇ…

オレ達を見守っていてくれ





二人の背を見て、オレは何らかの答えを
出したのだと確信した





「人の魂の生き死にも私の自由だ
死神が決めるべきではない!!

とりあえず不必要なモノは―死ね!!






投げつけられたマリーを庇い 石柱に
叩きつけられたオレを見て


憤る二人が放った狂気の波長も気がかりだったが





キリクによって助け出されたナイグスを
死人が残る右腕で受け止めた直後


白い壁に分担され…オレ達は子供らの言葉と
力を信じて、ジャスティンと対峙する





お前はどうする?相手になるぞ」


「いくら手負いでもあなたたち二人を
相手にするつもりはありません」





言葉とは裏腹に余裕に満ちた態度でヤツは

"ここを去る"と宣言する





「また仲間を裏切るのか!?」


仲間?僕の信じるモノは鬼神様だけ…」


自分の信仰心を"狂気"、元凶である鬼神に
仕えるのを当然と口走るジャスティンは





「ノアさんに我が神の居場所を聞きました」


"鬼神の元へと向かう"と笑った





「お二人は生徒さんの死に逝く様をゆったり
観戦してなさい、あそこの魔女のように」


待て!!鬼神の居場所だと!!」





止めたかったが 今の状況では返り討ちに合う
可能性が高く、の邪魔も考えられる


何より…万一の場合 ノアから生徒達を
命がけで護らなくてはならない







ジャスティンの姿がその場から消え





立ち塞がる白い壁へ視線を移せば


壁は瞬時に崩れて消え…何匹かの鳥に
変化してマカ達を襲う





気が付いた三人が鳥の奇襲をかわし


或いは迎撃した所でキリクとブレアによって
鳥が落とされ、息つく間もなく

巨大生物がブラック☆スターを下敷きにする





…が アイツは逆に巨大生物を持ち上げ
飛び上がると数本の黒い刀を背へと刺し





「黒星☆零の型「正宗」―…伝授技 無限


落下の勢いを乗せて追撃を叩き込み
生物を仕留める





「アレは…ミフネの技か…!」





キッドとブラック☆スターからは、いまだ
狂気の波長を感じてはいたが


その狂気に飲まれる事無く力を発揮していた





……成長したな 二人とも







だが奴は、まだ余力を残しているようで





「私は新支配者…私がすべてなのです」





巨大な三つ首のドラゴンを 本の中から召還した


流石にこれは分が悪い…ん?







敵の内部から感じた波長に気付いた直後





その腹を切り裂いて、が飛び出し
避けられてノアから少し離れた地面に顔面着地する





おまっ、そこで着地しくんなよ!
何でいるんだよ!てか何しに来たんだバカ!」


苦手なんだよ!てか助けにだよバカ!」


「バカばっか言ってないで落ち着きなさい」


「博士、先生…
そうだ!マリー先生無事ですかっ


「だから落ち着け、今は敵から目を離すな」





足を止め 鳶色の瞳が鋭く
…ノアへ向けられた





「多少の傷など瞬く間に再生する」


奴の言葉通り、が切り開いた傷口は
あっという間に塞がっていた





ドラゴンが側にいたグレムリンを食らい

背中に生える墓がひとつ増える





「この世のすべてが私のモノだ
すべてを手にいれ私が新支配者となる」






豪語するノアへ…キッドが口を開いた









―リズ/ノアのアジト前―





マカ達の波長と勇気を支えにして、どんな
ヤツが出てこようと戦っていた私らだったけれど





「抵抗するなら仕方ない
殺して素直にするしかないですね」






ノアがとんでもない怪物を本から引っ張り出して


さすがにやばいかも、と怖気づいていた


けど…







「俺は―ただの"普通"の魔鋏だっ!!」





が思わぬ登場をして





神に代わる存在になる、とかほざいてたノアへ





「オレが死神だ
お前の支配節は間違っているぞノア!!



いきなりキッドが熱弁を振るいだし





「「すべて」に何の美学がある?
節操のない美学は美しくない!!


やはりバランスだ、シンメトリーのような
美しいバランスなのだ

お前は支配者にふさわしくないのだ!!


「何でいきなりシンメトリー?」


「さすが神…人間には理解できない…」





呆れながらも何となく いつもの空気が
戻ってきたのを感じて、怖さが消えていく







「リズ…パティ 今までついて来てくれて
ありがとう、そしてこれからも頼むぞ」


『な…なんだよ改まって』 『そうだよ』


「そしてみんな…デカイのをぶっ放す
君達の力が必要だ」






先生達へ見ているように言って





「行くぞ」


キッドの一言を合図に みんなは怪物へ挑む





火力の高いキリクとブラック☆スターが
率先して怪物へ攻撃を叩きこみ


ブレアの魔法が、奴の背へ追撃をかける


ものともせず怪物の牙がブレアを狙うけど

割り込んだマカがそれを阻止する







「魂の共鳴 死刑執行モード取得」





回路の接続と共鳴率の安定





『この波長は…!?』


「これからのオレには必要ないものだ」





背後へ五つの棺桶(コフィン)構築

第一、第二ライン オブ サンズの展開を行う中





逃げ惑いながらもちまちまと怪物へ攻撃し


戦うみんなへ声を張り上げるに気付く





「今のはちっとビビった、しっかしお前よく
あんなデカいのの攻撃よけれんな」


「アイツに飲まれた名残かな…次の行動が
なんとなく読めるんだ、それと」


素早く駆けて振り払った両刃が





回転開始してチャージを進めるキッドと私らへ
接近した白いナイフの束を切り裂く


「テメェのちょっかいもだ 


「節操のニャい女も嫌われるわよ?」


だぁって楽っしそうなんだもの、ちょっと
死神くんにコナかけただけよぉん?」


「死んでもキッドに触らせねぇ」







みんなが稼いだ時間で チャージが完了する


死神様に…父親の力に頼らないと決めた
キッドの 最初で最後の必殺技






『棺桶開放』


「親の七光(ペアレンツ セブン レイズ)」





七本のレーザーが空へと高く撃ち上がり


降り注いだ光が、怪物の黒い巨体を貫く






「終わりだ ノア」









―ゴフェル/ノアのアジト前―





しつこい変態魔女をようやく振り切って





「ノア様ァアア!!」


ノア様を護り、敵への迎撃に備えるも





「誘惑の暗礁(セイレーン)」


オレの背後にコレクションが召還され


動揺し、遅れた一瞬に不覚にも

あの死神のガキの攻撃をまともに受けてしまった





「貴様に受けた"右"半身への仕打ち
"左"で受けてもらう」






放たれる波長の連撃に意識が刈り取られ







…次に気が付いた時には 全てが終わっていた





いくつもの光に貫かれるノア様の僕





「この光もすべて すべて私のモノだ」


「やるよ、そいつが神の光だ」





忌まわしい光に貫かれて消える、ノア様





「そ…そんな…ノア様…







エイボンの書を あの雌や知らない雄が
見ている…見るな!汚い手で触れるな!


すれすれで本を奪って距離を取る


奴らが何かを叫んでるがそんなの関係ない





「貴様達は 貴様達だけは絶対許さない!!


悔し涙をこらえてオレは空へと飛び去った







―マカ/ノアのアジト前―





ゴフェルには逃げられ、
いつの間にか姿を消していた





それでもノアは倒した…私達は勝ったんだ





「それでどうして君がドラゴンから」





武器化をといた椿ちゃんが話しかけた、その途端







「よかった…みんな帰って来てぐれで…
無事で、ホンドによがっだ…!


うおっ!お前なに泣いてんだよ!?」





いきなり彼は ボロボロと泣きはじめた





「だっで…安心じだんだから
じがたないじゃないか、ごれぐらいっ」


「おい泣きやめよみっともねぇ」


「心配かけた方が悪いんだろバカっ!」


「うるせー泣き虫バカ
そんな面して説得力あると思ってんのかよ」


肩を支えるソウルがため息をつくけど

その顔は、どこか嬉しそうだった








「おかえりキッド…あの時
あんなコト言って、本当にゴメン」


「気にするな…オレ達は友なのだろう?





キッドのその一言のあと





いつもの曖昧な 後ろめたそうな笑みじゃなく





「ありがとう、みんなと友達でよかった!」





初めて、自然に笑うを見た







「私もだよ」 「私もー!」


「つかよーお前、骨にヒビ入ってたよな
あんな暴れまわって平気なのか?」


「って今気づいたけど腕の血どうしたの!?」





よく見たらあちこち焦げてたり、左腕に深めの
切り傷があったり私と同じレベルでズタボロ





「あ、そう言えば痛い…いだ、いだだだ!


こら!オレ様の信者ならその程度のケガで
泣くんじゃねぇ!」


あだだだだ!叩かないで傷口に…うっ」


追い討ちをかけるなブラック☆スター!
おい、しっかりしろ!」


見慣れたやり取りに、あわてる死人先生に
みんなも私もほっとしていた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:時間が遡ってたり重複部分があるのは
流れ通りにするとぶつ切りになりすぎるからです


キリク:今までと違ってテンポ悪いな


キッド:きっちりかっちりバランスを取れ
それだから余計な時間がかかるのだ


狐狗狸:ええ十分自覚してますよ…これだって
ホントは一月に余裕で更新するハズでした


ブラック:遅えぇ!オレ様のBIGな活躍を
待たせるなんて万死に値するぜ!!


椿:止めなさいブラック☆スター何する気!?


リズ:にしてもは結局
ちょっかいしかかけてこなかったな


パティ:うざかったねー何のためにいたのかな


狐狗狸:楽しむためでしょうね、妨害とかが
手抜きなのも魔力温存を優先してです




次回、ついに彼らが動き始める…


様 読んでいただきありがとうございました!