―スピリット/DEATH ROOM―





本の中のブレアちゃんからの報告と


シュタイン達四人が、テスカの案内で
ノアの拠点へ向かった事を伝え


警備へと戻るジャクリーンを見送り





死神様は、いつも通りの様子で 軽ーくこう仰った





「これでうまくいけば挟み撃ちのような
形になるわけだねー」


「そうっすね」


確かに、首尾よく事が運んだならば


写し取ったジャスティンの魂を
追ったテスカ達と


キッドを助けた本の中のマカ達とで


"魔導師"ノア一味を叩く事が出来るが…





「やっぱりマカちゃんの事が心配?」


「ええ、それに昨日の今日で
敵に動きが無いとも限りませんから」





どういう意図があったのかは不明だが


被害にあったの報告によれば

昨日、大胆にもデス・シティーの路地裏


魔女に洗脳された人間二人と
当人の操る魔法の襲撃を受けたらしい


だが どうにか必死に抵抗してるうち


他の生徒が通りかかったのをきっかけに

相手の攻撃が、ピタリと止んだそうな





「三人とも、特にケガとかもなくて
よかったけ〜ど…なーんか怪しいよねぇ





腑に落ちないのは、オレも同感だ







路地に倒れていた状態で担ぎこまれた
局員一名とオッサンは いまだ気絶中


交戦したらしいには
特に、何も変化はないようだが


だからこそ…かえって疑問が残る





メデューサ達の鬼神復活に加担し

現在、ノア一味と行動していると疑われる魔女が


「パートナーもいない魔武器と
ちょっとやり合った程度で退散するってのは
やっぱ、引っかかりますよね」





何か、まだデカい裏がありそうだ





オレの感じたその嫌な予想を裏付けるように


保護したはずの件の二人が"消えた"という
報告がこの直後、もたらされた












Cinque episodio
 Io credo al pensiero di uno e lo confronto












―インデックス/"エイボンの書"内―





"7つの大罪"に魂をひかれた者は
本の中の一文となる…


耐えられるか、耐えられぬかで


魂の真価が問われる







『いつもソウル先輩におんぶに抱っこ…

あなたはソウル先輩をまるで
理解しようとしていない



「そんなコトない!!」





『そう…オレとお前は違う
それでアノ娘を選んだのか?』


「違う!!」





はぐれた小娘とデスサイズの少年は


第三章で 自らの"嫉妬"を垣間見、戸惑い





「さあ行こう、ここは読破したんだろ…?
またはぐれるといけない」


「うん…」





罪に目を背けたまま、次のページへ進んだ







あぁーハラ減ってイライラする!!
ちくしょおおおハングリーでアングリーだぁ!!」



「ふざけんな!!ダジャレかよ!!
殺すぞ!!キリク!!」






私と残る者達がいるのは憤怒の章―…





「オイ!!何で私と椿だけ
まだ男の姿のまんまなんだよ!!」



   「「「うるせぇぞ!!エロババァ!!」」」


「ババァってお前らと2つ3つしか
違わねぇだろ!!」



赤く燃え盛る世界で、例外なく

ほぼ全員が怒りを露わに吠えている







『ムシズガハシル…』





一番奥のページにいる死神の息子…

旧支配者(グレートオールドワン)の断片


八武衆(ヤツ)の魂と出会い、闇に呑まれた









その様子を 本を通じて"強欲"
罪を持つ魔導師ノアと


そして紙を介して魔女ともう一人





『また…だ、これは、昨日の子と マカ…?





"伯爵""双剣"…の出来損ないが閲覧している


名は、と言ったか?まあ名前など
単なる記号でしかないのだがな







どうも無作法な読者が多いが


いかにもたこにも私は目次
こやつらが望むまま、導くのが定めなり





だがしかし…それとは別に






「私は昔から根無し草でね よく風のような男だと言われたよ …新しい家を見つけても飽き性の私はすぐ引っ越しを 繰り返してしまうんだ…新天地は怖いと言うのかい? 住めば都と言うだろう?私の場合は住めば街が 私色に染まるんだがね しょうがないのだが それが退屈なのだ そして私は新たな地を求め いつもの洞窟に刺さっていた 別にあの洞窟にずっといても 良かったのだが
ある日エイボンの書を持った男が現れ
ここに連れてこられたのだ」


「結局捕まったんじゃねぇか!!」





出会い頭に無意味な長台詞でページを圧迫するわ





「私の力が欲しいのか?」


「バカっ誰がおm「だがそう簡単に
貸すわけにはいかないのだよ」
rかよ」



話は聞かない、人の台詞どころか
こちらの呪文さえも 邪魔する始末





人を怒りに誘う旧支配者と知ってはいたが


エクスカリバー…いかにもたこにも心底ウゼぇ









―ノア/ノアのアジト―





退屈しのぎに、しばらく彼らの動向を
半ば楽しみながら眺めていたのだが





【エクスキャリバ〜♪エクスキャリバ〜♪
フロム ユナイテッド キング♪
アイム ルッキング フォ ヒム♪
アイム ゴイング トゥ♪キャリフォルニァ〜♪】



【   !!   !!】





憤怒の章にて聖剣が現れた時点で


聖剣以外の人物の台詞が読みづらくなった





「ノア様 本の中の状況は?」


というか、本のノドに字があるせいで
あの少年が何を叫んでるのか非常に見にくい…





【私のフォルムはエイボンがいつか
エクスカリバーの鼻っぱしらを折りた【そうなのだ!!
私はあらゆる創作物の原点なのだ】






まあいい どうせ彼らは次の章へ行くだけだ


見飽きたページから目を離し、はぐれた
マカ=アルバーンの居場所を探る





…どうやら 怠惰の章へ移動しているようだ





「ノア様、何か出来る事は」


「喉が渇いた…紅茶と茶菓子でも用意しろ」





適当に命じられ、嬉々として走っていく
ゴフェルなどには脇目も振らず


ペンを取り 本へと命令を書き込む





【ギリコ…ただいまあの二人がそちらに
向かっています…あとは頼みますよ





彼女がワザワザ口にするまでも無く


この男は、アラクネの敵を討つチャンス
ずっと楽しみに待っていたのだから





きっと…期待した働きを見せるだろう







「…美味しそうねぅえんvノアちゃんのトコに
ご奉仕する前に、つまみ食いさせてぇん」


断る!この菓子も紅茶もオレも
全てノア様のモノだぁぁぁ!!」






遠くで、ゴフェルの怒号と破壊音がした


からかわれて魔女に手を出したか…?





何にせよ 壊れたのが私のモノだったなら
二人には、後で制裁を加えなくては











―ジャッキー/死武専―





本の中で、マカとソウルがキリク達と
逸れたみたいだけれども


皆は順調にエイボンの書を進んでいる





本同士をリンクさせる魔法も乱れは無く

脅威らしき脅威は見当たらない





「そっちはどうだい?」


「特に異常はないわ…は?」


訊ねるけれど、ハーバーは首を横に振る


まったく何やってんのよ…アイツがいれば
見回り任せて キムの側に極力いられるのに





極力抑えているとはいえ


例の"波長"があるからか

アイツは 基本部屋に入らず
周辺の見回りや偵察に集中してた


それでも何だか顔色が悪くて





ごめ…ちょっと、外の空気、吸ってくる』


申し訳なさそうに情けない声で
何度かの離脱と復帰を繰り返してたけど





少し前に部屋を離れてから、ずっと戻ってこない





「アイツ…大丈夫なのかしら?」


「彼の性格からして、サボりって事は
ないだろうけど「大変です!!」





廊下で立ち止まっていた私達へ


駆けつけた職員らしき人が
これ以上ないほどの青い顔して報告してきた





「魔道具倉庫の扉が開いていて、覗いたら
魔道具がいくつか破壊されていました!!





顔を見合わせ、私とハーバーはすぐに
発見者を伴って現場に駆け付けた







「これは…」





両開きの 巨大なドアの向こう側


隙間から、ボロボロになった魔道具
破片が覗いているのが見えた





暗いから片手をランタンに変えて


用心のため、私だけが中に入る





「魔道具の破壊が目的と言うより…
ここで何者かが暴れた結果、魔道具が
壊れたように見えるな」


「ええ、それにこの切り口…まるで刃物
めちゃくちゃに叩きつけたみたいな」


昨日まで何もなかったのに、どうやって





と足元の散らかった破片に混じって

白い何かがあるのに気がついた





「ハーバー!見てこれ…!」





拾って入口のハーバーへ ソレをかざす


バラバラになっていたけど、ソレは間違いなく
の操る"紙の蝶"だった





「やはり魔女が侵入してっ」


いきなりハーバーがぶつかって来て

私達は倉庫の中で尻もちをついた





「な、何よいきなりっ」


「怒鳴るなよ、誰かがオレを突き飛ばし」


口論する間もなくドアが閉まり


暗闇の中で、一人…また一人
人影が現れるのがぼんやりと見えた





「どうやら…ハメられたようだな」





立ち上がり様、向かってきた一人へ
ハーバーが雷を帯びた当身をお見舞いする





私も炎を吐いて牽制するけれども


襲いかかって来ているのは、死武専の生徒や
職員の人ばかり…しかも





「様子がおかしいわ、これって」


「ああ…おそらく道徳操作器、もしくは
それに類する魔術で洗脳をされている」





無表情やニヤニヤした顔で、怯まずに
こっちへ迫ってきているのを見ても


その推測は間違ってないと思う





けど…さっきの職員も含めた彼らの行動が
あの時みたいな 魔女の洗脳によるものだとしても


魔力を使うモノである以上

の感知に引っかからないハズがない





「なのに、どうして…!?」


どうしてアイツは "洗脳された人"のコトも

"紙の蝶"のコトも口にしなかったの?









―ソウル/第六章―





途中で再会した時から、マカの様子が
おかしいのには気づいてた





私と別れて…もう ソウルと一緒に戦えない…」


「な…何言ってんだよ…」


「ごめん…ソウルは全然悪くないの
悪いのは私―…」






イスとベッドばかりのこの世界で


近くのイスに腰かけたマカが、ひどく
沈んだ声であやまっていた





だってソウルにとって私はお荷物でしょ?
ブラック☆スターやキッドみたいに強くないし…
私ひとりじゃ何もできない…」


「何言ってんだよ、いつかのじゃ
あるまいし そんなコト…」





必死で言葉を重ねるけれど


うつむき気味のマカに、前の章でオレが
"何かを見た"と指摘され


思わず 口を閉ざす





『お前は音楽から 家から…
オレから逃げたかっただけだろ


頭の中で、兄貴がオレをあざ笑う







「何も 見てないよ」


ウソつくなよ、見ないフリだろ?
知ってるよ…あの日から君が僕を避けてるの』





とっさに絞り出した声を、似たような顔で
が否定す「ずっと待ってんのによぉ
何こんな所で油売ってんだよ」






いつの間にか後ろにいたノコギリ男に
キツい蹴りをかまされ


「ぐあっ」 「ソウル!!」





イスの群れへ、無様に吹っ飛ばされた





あの野郎…何でここにいやがるんだ





「ふざけんなよ!クソッたれが!!」


いや、それよりもマカがあぶねぇ!





叫べ!!怯えろ!!
ドテッと寝そべったマグロ女ぶっ殺しても
おもしろくねぇんだよ!!」






起き上がって駆けつけた勢いでオレは


マカをベッドに押し倒して


腹にチェーンソー突き立てようとした
ノコギリ男を蹴り返す






「きゃあああ きゃあああ
ぎゃああっはははっははっはは」






げらげらと笑いながら 相手が体勢を立て直す





「アラクネを守れなかったあてつけか!
殺すぞテメェ!!」



マカ!何やってる!!早く闘う用意しろ!」





棒立ちになってるマカへ呼びかけて
武器化して、奴の攻撃に備える





けれど次々繰り出される蹴りに対して


マカの動きは、明らかに鈍い


指示を出しても…心ここに非ずって
顔したまんまでロクに反撃すらできず





揃って、また吹っ飛ばされてイスに
マカの身体が叩きつけられた


「マカ!!今は闘いに集中しろ!」





いくら呼びかけても…アイツに声が届かない





『対等なんかじゃない奴の声なんて
届くわけないじゃん わかってるだろ?』



「オレもなんかめんどくさくなっちまったなぁ
…速攻で済ませるか」


どいつもこいつも 好き勝手言いやがって…







考えるのが面倒になって、人の姿に
戻ってオレはマカの前に立つ





「お前はそこで見てろ」


あの地味で普通なだって
パートナーなしで、何とか戦えてんだ





「ここはオレ一人で闘う」





今のマカを戦わせられねぇ以上


一人で、やるしかねぇ





「鋸脚」





突っ込んだ所を蹴り一発で返り討ちされて


それでもめげずにノコギリ男に食らいついて





「オレの職人に手を出させない!」


ああ!?オレの主人をザックリやっといて
ワガママし放題は許さねぇよ!!」






顔面にヒザ食らったお返しに、武器化した
腕を振り回すが軽く避けられて


逆に飛んだ拍子に 反撃もらっちまって
かすめた肩口に血がしぶく





「デスサイズになったからってテメェ一人で
闘えるワケねぇんだよ!!」



「お前ぐらいオレ一人でやれる!!」





叫び返して足掻いてみても


防いだつもりの足が、いつの間にか
腹へとぶち当てられて 息が止まる






「オレやジャスティンとは違うんだよ!!
自分の身の丈を考えろ!!」



『認めろよ、お兄さんみたいな才能も
誇れるものも無いウソつき野郎だってさ』


奴の声と 頭に浮かぶの声が重なる





追い打ちで腕を引かれて、押し付けられた
足の裏からの刃が身体を刻む






「ぐあぁあああああ」





耳障りな歯車の音と、ノコギリ男の笑いが
痛みとシンクロして頭を揺らして


ヒザを付いたと同時に 鳶色の瞳がチラつく





『バレるのが怖くて、仲間ヅラしてるけど
持ってる奴のフリが辛いんだ…って』





間髪入れずの追撃にオレの身体は
あっけなく飛ばされ


床を滑って…マカの足元で止まる







くそ、馬力も早さも違い過ぎる…





「チクショウ…
オレ一人じゃ何もできないなんて…」


『そう、カッコつけても これが現実だよ』


ああ…ムカつくけど、お前の言う通りだ





でもな、オレはあきらめたわけじゃねぇ





「だけど 今までマカが見せてくれた勇気は
こんなものじゃない!!」


勝てなくてもいい、オレがどうなったって構わない


マカだけは 必ず護る!


痛む体を起こして、刃を構えて立ち上がった





「今度はオレが勇気を見せる番だ」








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:時間軸が語り部によって微妙に
違ってるのはご容赦


オックス:てゆうか、死武専での先行きも
不穏になっているのですが…


ジャッキー:魔道具いくつか壊れてるって…


狐狗狸:あ、ゼンマイとかは展開上 無事です


ハーバー:…身もふたもないネタバレだね


狐狗狸:楽屋裏だから仕方ないね、ついでに
描写しきれんかった性別変化も暴露してってね


ブレア:男子二人とパティはすっかり
元どーりにニャってたよ〜


マカ:私とソウルは、再会した辺りで
自然と元通りになってたよね


ソウル:まぁお前は男でも並みに
地味だからさして変わr(マカチョップ)


リズ&椿:早く女に戻りたぁぁい!!




刻々と近づく足音…訪れるのは希望か、破滅か


様 読んでいただきありがとうございました!