―梓/アフリカ中部―





中央情報局との協力により…


正確には、共鳴状態での君の
"魔力波長"による特定が決め手となり


複数の魔力反応と鑑みて、街の地下に
メデューサの研究所の存在と


近隣の遺跡に、類する魔力を確認できた





「今回のミッションの責任者および
バックアップに回ることになりました

よろしくお願いします」


よろしくっス こっちは
予定のポイントに到着したぜ』





スパルトイとしての初任務も兼ね


研究所の捜索を、万一の戦闘に備えて


万能職人(ユーティリティーマイスター)
キリクとトンプソン姉妹のペアに


突入後の調査で同時に"千里眼"を使い


キリクの目を介した情報を上空の
キミアールへと転送し


魔女文字の解析と内容解読を行う





「ミッションの概要は以上です」





通信用の魔道具"陰会夢(インカム)"から


早速、大地の交信を行っていた
ファイアーとサンダーが研究所の入口を
見つけたとの報告を耳にする


程なく彼らは内部へと潜入する…のだが


お姉ちゃん見て見てっ♪
すげぇ目玉が見てるよ』


『いいよ見たくない勝手に見させとけよ』


やんのかコラッメンチ対決だ負けないぞ〜』


『勝たしてやれよ
奴のアイデンティティー守ってやれよ』


『あちゃー、アイだけに
アイデンティティーか?つまんねぇな…』


『まぁ眼力なら梓お姉にはかなわねぇけどな』





任務だと言うのに、緊張感無く
ペチャクチャ楽しそうな…まったく





「おだてても何も出ないわよ!!
無駄口叩いてないでサッサと進みなさい!!」








思わず一喝したが、以後余計なおしゃべりも無く


資料を手にしたキリクと視界をリンクして
順調に…全ての資料のコピーを終えた





「私の視界が見えますか?"千里眼"で
あなたと私の視覚をリンクさせました」


『わーすごい 見えます見えます』


「では私の見ている資料の解析を
始めて下さい」





目を通したキムの口から 鬼神とクロナの名


…そして"狂気を操る魔術"の単語が
発せられるのを、確かに聞いた





『キリク!!
壁、抜かれるぞ!場所移せ!!』



間を置かぬ動揺と銃声に気づき


急ぎキリク達へコンタクトを取る





『なんか街の連中から攻撃を受けてる
こちらも応戦に入る





街の様子を"千里眼"で探れば


銃火器を手に、瞳に意志を移さず
彼等へ迫る街の人々の姿が視えた





『げっ起き上がった…またゾンビかよ!


『キリちゃん!!R・P・G!』





キリクだけでなく、上空のキムと
ジャクリーンも対象として捕捉されている





…リズは"ゾンビ"だと口走っていたけれど


奇妙な統率がとれている点については


ドイツで起きた一件で討伐された
"悪魔"の手口を想起させる





あの任務には クロナも関わっている


そこからの着想か偶然かは不明だけど


君が街で特定した"魔力の波長"は


街の人にかけられた"狂気を操る魔術"の
可能性が、高いかもしれない





とにかく今は二組の脱出を優先しなければ





私は キリクとキムへ呼びかけた





「今から"千里眼"で二組の合流ポイントを
探します…!私の指示通り動いて下さい












Terzo episodio Marx dei tempi nuovi











―メデューサ/???―





やはりあの街は封鎖されるみたいだけれども


私にとっては、もはや何も価値が無いから
興味はない…それよりも今は





『我は黒の道化師…メデューサから
生まれし狂気へ誘う者 狂気に堕ちるか?


『何だこれは!?』


『ババ・ヤガーの城で受けた
狂気攻撃と同じ…』


『攻撃したら自動的にカウンターがくるのかよ』





水晶に映し出された交戦の一部始終こそが


私にとっての、最重要事項





「始まったわね」





やはり純正道化師に比べ、狂気感染能力は弱い


戦闘の実験へと切り替えて
"黒の道化師"の実験の成否を確かめる


最終目標は 鬼神と魂の共鳴を行い


鬼神を手に入れるコト…その準備として


「もう一つの実験も始めるわよ
クロナ 準備を」 「合点了解です」





ノアに先を越させはしない







『カウンターの液体は…!?』


『硬ぇ…』





キムの炎で黒血の攻撃は無効化されるので
反撃ではなく 硬化実験へと移行する





彼らのデータは死武専時代から把握している


「瞬間最大火力に定評のある
キリクの攻撃をしのぎきれば、この実験は
まずまずの結果になる―…」





攻めあぐねたキリク達の共鳴連鎖により


魔力を注がれ 大地の祈祷師として
覚醒したファイアーとサンダーが銃を構え





『キム!!衝撃に備えてアンカーに!!』


『うん!』


『かますぜみんな!!E3!!
(エクストリーム・エレメント・エフェクト)』






最大高出力の二発の波長が発射され


"黒の道化師"へと直撃し 盛大に
火の粉を上げた







……流石に、その威力は予想外だったけれど





収まりゆく煙の隙間から 地にこびりつく
道化師の破片を目にして


耐えた事実と、自らの理論の正しさを確信した





「もういいわ黒の道化師…
クロナの元に戻りなさい」


『ビリビリ蒸発する…』


道化師が地面へ溶けるように潜ったのを
見届けず、私は映像を一端打ち切る





「さて、もう一つも手早く片付けなきゃね」





どういう経緯でノアと組んだか知らないが

あの男が、私を諦めるとは思えないし


忌々しい…あの男さえいなければ
資料を処分する猶予があったというのに





とはいえ死武専側もあの場所の特定が早かった


拠点探索に…"千里眼"だけでなく


魔鋏()の"魔力探知"が
絡んでいるかもしれない





『メデューサ様…到着しました』


「そう、ならばそこで待っていなさい」





告げて私は水晶に力を込める


この砦のすぐ側へ…狙い通りに近づく
ブラック☆スターと椿が映りこんだ


彼らはすぐにクロナの波長に気づき


内部に入り…接触を果たして交戦へ入る





「さぁ実験はここからが本番よ」









―椿/砦跡―





キリク達と同じように、スパルトイの
初任務として二人でこの砦へやって来た


けどブラック☆スターは乗り気じゃないみたい





「メデューサたちの捜索なんて退屈な任務…
誰か他のやつにやらせろよ…」





メデューサはソウルプロテクトを使う


魂感知は役に立たない パートナーのいない
君には荷が重すぎる


「だから五感の優れている
ブラック☆スターが適任なの」


「何だよ…こんなの人間レーダーのマカか
魔女レーダーのにやらせろよ」


「聞いてない…」





そもそも研究所やここの特定に
貢献したのは紛れもなく彼だと言うのに


…けれど





「クロナがいるかもしれねぇんだぞ…

マカがやるべきだろ…オレの役目じゃねぇ」






そう続けたブラック☆スターの目は真剣で


私は、任務に参加できずにしおれる
マカちゃんの顔を思い出す







直後 ブラック☆スターの顔色が変わる





「何か感じた?」


「この頼りない足音―…行くぞ椿!!


「はい!!」





打ち捨てられた砦の内部へ潜入し…


階段の上にある台に、腰かけている
クロナの姿を認めた





武器へ変身した私を手に





「A


「何だそのツラは?マカが泣くぞ」





ブラック☆スターが段を降り切った
クロナと対峙した









―テスカ/中央情報局―





情報局へ顔出せば、白いツナギっぽい
カッコしたガキが人待ち顔で突っ立ってた


おぉ〜コイツがスパルトイ二軍のハサミか!





軽く挨拶代わりに声をかけると


少年は、面白いぐらい目ん玉まん丸くして
オレを熱く見つめ返す





とか言ったっけ?
お前さんと会うのは、コレが初めてだな」


「へ?あ、あの 僕のコト知って」





なるほど…こいつぁ確かに妙な魂





オレは人を映す鏡…ならお前を
知っていたとしても不思議じゃないだろ?」





たいていの奴は、それでも不思議そうに
オレの顔をじっと見つめている


こいつも例外じゃないようだ





「ま、もし機会がありゃコーヒーでも
おごってやるから楽しみにしとけよ?」


「コーヒーって、そもそもどこかで
お会いし「ギャギャガウガーガウガウッ!」


ぎゃははは!そいつぁお子様にゃ
ちょいと刺激が強すぎて怒られちまわぁ」


猿と会話!?てゆうかアナタ誰ですかっ」





挨拶もそこそこに雑談して別れ…


オレはコピーした
魂で"魔力波長"を追いかける





少しばかりクセがあったが







「…いたぞ、ジャスティンも近い」


メデューサとジャスティンの居場所を
あっと言う間に断定できた


あの"伯爵"も…こればかりは誤算だろう





「まだ間に合うはずだ…行くぞ猿里華」


「ガウ!」





逃げられる前に、今度こそ
ジャスティンをとっ捕まえてやる!









―ラグナロク/砦跡―





奈落・不浄・そして"黒の道化師"の暗黒


この魔剣三刀で、あのガキなんざ
あっという間に刻めるハズだった


だがあのトゲガキ 怯むドコロか

テメーも"三刀流"だとか張り合いやがって





悲鳴共鳴でクロナと攻撃に移っても


まるでビビらねぇ上に、かわして
クロナを真っ向から殴ってきやがった





「お前!!この程度の力を手に入れる
ために マカを裏切ったのか!!!






…バカなガキどもだ


『マカちゃんだってクロナを本当の
友達だと思っていたわ』


「だから「マカ」って誰だよ!!
そんなコ知らないよ!!」






何度呼びかけようが、狂気に染まった
クロナは何一つ覚えちゃいねぇのに







「スクリーチδ(デルタ)」


『[絶影]がかき消された!!』





いくつものうぜぇ影を薙ぎ払って





『逃がすなクロナ!!』





共鳴攻撃で天井に逃げたアイツを追い詰める





だが 迫った特大の一発は





「椿!!なぎ払え」


『影星☆弐ノ型 [月夜葉]』





十字の手裏剣に刻まれて消されちまった





真っ直ぐ向かう獲物を防いだクロナに
トゲガキの拳が、もろに直撃し


『ぐぎゃ』





吹っ飛んだクロナと…オレ自身に痛みが走る


ありえねぇ!黒血を拳で砕くなんて!!





「何だよ…アイツ…強過ぎるよ…
恐い奴は殺さなきゃ『そーだ!殺しちまえ』


『もうやめましょクロナ…誰もクロナ
あなたを裏切らないわ』


くそっ!混乱につけ込みやがってうぜぇ女だ





『戻ってきて…みんな待ってる…

クロナは死武専で大切なモノを
手に入れたじゃない






更に厄介なコトに


"大切なモノ"の一言に クロナが反応する





「仲間のコト…マカって誰?ソウルって…?
キッド?リズ?パティって誰なの?」





あの小生意気な小娘だけじゃなく





「マリー先生って…誰なの…
って誰さ」


眼帯ねーちゃんや、地味男まで
思い出しかけてやがる





はぁ!?何の話してんの?
知らないよ知らないよ」








やべぇな…狂気に委ねてる今の精神が
崩れちまったら面倒だ





「オレ様は世界中から頼りにされる男だ
オレを頼らないお前はバカだ!!」



殺す 殺す、頼りがいのある男と
接し方がわからないから 殺す、殺す」





と、カエル女が今頃加勢しに来やがっ





「おたまボム!!…キャッチ!?





爆発も 後から出てきたネズミ女どもの
ビーム攻撃も余裕で受け流すとか


マジでどーいう反射神経してんだ!


『クロナ!!オレたちもいくぞ!!』





ぴぎぃえぇぇえ!マジムカつく!!









―キッド/ノアのアジト―





ここに連れられ 三日は経っただろうか


…流石に、頭上高く縛られている両腕が
しびれて感覚が鈍くなってきたな





だが


は母親から引き裂かれ

実の姉である魔女に虐げられて暮らしていた


クロナは実の母親である魔女
いまだ、不当に虐げられ続けている





あの二人が味わった苦しみや痛みに比べれば





「このやろ、このやろ このやろ
命乞いをしたらどうだ!!


この男の陰湿な暴力など、取るに足らん





「貴様のへの字口を見ていると
監禁生活もあきんな…」





などと嘲笑っていられたのも





奴の顔を…じっくりと注視するまでの
つかの間の一時だけだった







気づいてしまった


奴の口があろうコトか左右対称でないコトに





「誰か助けてくれええ!!」





更に、ヤツもオレの弱点に気づいてしまい


卑怯にも袖を片方千切り 右側だけ
落書きをし…あまつさえ右胸だけ





「どうせいじるなら両方いじってくれ!!」


「アッハッハハハハハハハハ」





苦しむオレを見て、満足そうに笑う奴の顔が





「やり過ぎですよゴフェル…」


背後から現れた"魔導師"によって凍りつく





地獄のように陰湿な責め苦は終わったが


オレは…再びエイボンの書へと
とりこまれてしまった









/デス・シティー―





局で共鳴のために組んでいた人が





…ちょっと、来てくれないか?」





戻ってきて、開口一番にそう言ったので

とりあえず 後について行ってたんだけど





「あの…そっちは袋小路ですよね?」





薄暗く、人気が無くなっていくのに


僕の問いに答えず 相手は無言で歩いている


疲れてるから早く帰りたいのに…







っ!この人、うっすらとだけど
"違和感"がある!





気が付くと同時に振り返ったその顔には


人間らしい感情が なにひとつなかった


同時に横から知らないオッサンが飛び出して


不意を突かれて羽交い絞めにされた直後





僕の…いや、俺の前と後ろの路地が


馴染みのある気持ち悪さをともなって
風に乗り 集まった白いモノで封鎖される





「いつの間にっ、全く油断も隙もねぇ…!!





どうやって魔力を誤魔化したか知らねぇが
それは後だ!今はここを切り抜けないと!!


完全に武器化し、オッサンの腕を
すり抜け落下して


拾われる前に戻りながら路地を這って


走り様に変化した足の両刃を 思い切り







蹴りいれようとした…目の前の白い幕が





『何だ…このおぞましい波長は―…』


白い空間に漂いながら、とても気持ち悪い
足元の何かを見つめるキッド君を映す





「き、キッドく」


ぐらり…と視界が急に点滅した





頭がガンガンする 紙から漂ってくる
変なニオイや音に合わせて辺りが揺れる


ナンだコれ 気持ち悪い


力が入らない…足が、勝手にへたりこむ






『ちょっとの改造でこの威力、あぁん
まさに道徳操作器サ・マ・サ・マぅあんv





ねっとりとした気色の悪い声


指が鳴って 他の二人が路地に倒れた






「ちき…しょ…テメェが、テメェ…」


『紙を隔てた"エイボンの書ライブ中継"
アタシの新作魔術の同時プレイ中に
しゃべれるなんて成長したじゃなぅあぃ?』





必死で動こうとするけれども





意識を保つので、もう、精いっぱ…






オトモダチの場〜所知りたいんでしょうん?
なら…取り戻してみなさぅいな♪』



その言葉を最後に 目の前が暗くなった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ホントは出張チュバキャブラスの
下りまで納めたかったですが、断念


ブラック:やいやいやい!テメェ懲りずに
オレ様の出番まーた削りやがったな!?



メデューサ:私の出番も巻き添え食らったわ


テスカ:オレとジャスティンとの語り合いもな


狐狗狸:ごめんなさい、それでも容量
めっちゃ詰め込んでるんです


キリク:なのに話はぶっ飛びすぎてるって
…これ読者ついてこれんのか?


パティ:梓っさんかウチらの一発
ドたまにぶちこんでやれーきゃははは♪


狐狗狸:…(笑顔で逃亡)




思わぬ形でキッド救出の目途が…!?


様 読んでいただきありがとうございました!