―マリー/月面―





狂気のリミッターを外し


武器化した私と自らの腕を嬉々として敵へ振るうシュタイン





まるで彼自身が鬼神となったかのような振る舞いに
危うさと恐ろしさを感じずにはいられなかったけれど





「先輩は職人の波長を読み取りコントロールし
長所を特化させる、女性にモテるわけだ」


『まだ 解説する理性は保っているようね…』


元来の冷静さが残っていたコトに ほんの少しだけ安堵する







スピリットのサポートもあり、増殖していく敵の数も
ぐっと減って来たと思っていた矢先





「Schmidt(シュミット)!!」


「まずい!」「遅い!」





狂気によって増幅されたジャスティンの刃が、部隊の人間の
大半をあっという間に刈り取ってゆく


ほぼ同時に駆けだすシュタインにも地面から生えた断頭台が襲う


私の雷綱がある以上、捕えるのは残像だけだけれども


『気を付けてシュタイン ジャスティンは設置型のデスサイズス…
どんな罠を張っているか…』


「雷綱は職人の身体にかかる負担がでかい!
そう長くは使ってられまい!!」






地面からいくつもの枷がこちらへ牙を剥ける





「息切れした時が最後ですよ」


「この程度の罠で時間稼ぎが出来ると思っているのか?」





そう、これしきで私達が…シュタインが止められるワケがない


枷をかわしながら地を蹴り


次々生える断頭台の柱をくぐり抜けた勢いを生かして
奴の身体へ渾身の波長をぶち込んだ





『今まで重ねた罪、ここで償いなさい』





数メートル後ろへ吹き飛んだジャスティンの身体が膨れ上がる


けれども、血を吐きながらも奴はそれを耐えた





「身体の爆発をおさえたようだがそれも時間の問題だ
ジャスティン お前は死んだ





剥がれた道化の仮面の 下から覗く左側の顔が笑う





「昨夜のあの豚魔女といい貴方達といい
最後まで私の邪魔をしてくれる…」


「魔女…の事か?」





奴は、シュタインの問いには答えなかった





「雷綱がきれるのが先か…私が死ぬのが先か…
この身の限界まで鬼神様をお守りします





いくつもの柱のようになった四肢を月面に刺して支えにし

異形と化したジャスティンの殺気が膨れ上がる





「いいだろう、実にバラしがいがある」


つられるようにシュタインの狂気も加速する


彼だけでなく 未だ多く残る鬼神の兵隊や道化師
それと対峙するキッドの狂気も強さを増しているのを感じる





…けれど不安がっている場合じゃない


私に出来る事は、皆のために目の前の敵を粉砕する事!












Quattordicesimo episodio
 Questa la nostra battaglia.












―テスカ/廃病院本棟前―





普通の奴ほど土壇場になると何しでかすか分からんもんだ





「お前、何フツーに無茶してんだよ」


「ああでもしないとキリクのがヤバかっただろ
…さすがに今度こそ死んだかと思った」


仲間護るために敵目がけて自分を投げさせて
命張って囮になるとか、正気の沙汰じゃねぇ





しかし事前に仕掛けがあったとはいえ


一瞬にして本人を分身と入れ替え

なおかつ首を斬られるまでジャスティンにそれを悟らせないとは





"紙喰いの魔女"…ここまで厄介な存在になるとはな』


「それで待機班の被害状況は?」


「子供たちは無事ですか?」


『安心しろ、被害はさほど多くない…ガキどもも
無事に安全な場所まで引き渡されてる』





乱入してきた魔女へ標的を変えたジャスティンから
無事に逃げおおせたキリク達の班は


予定通りガキどもを外にいた待機班へと引き渡した


事前に作ったリストと照合し、残りはあと3人





「…夜明けも近づいてます、魔女の捕獲もとい討伐は諦め
児童救出と撤退に専念するべきでは?」





予想外の襲撃に対して 隊員からの当然の提案へ


死人が答えるより早くキリクがこう返す





「どっちにしろ邪魔されるんなら囮代わりに
オレらが反撃しに行った方が話が早いんじゃないっスかね」


「お前…囮にかこつけて魔女と戦うつもりだろ」





鏡を挟んで指摘するナイグスへ キリクは即座に頷く


「いい加減あの魔女一発ぶん殴りてぇんだよ」





私情交じりとはいえガキとに対する魔女の執着を
考えればその作戦はアリだが





『どうするよ?死人』





問いかけに死人はさして迷いなくこう答えた





「…児童の救出を終え次第、オレ達も合流する
最悪の場合 撤退も念頭に置いて行動するように!


「「了解!!」」





力強い返事の後、通信機代わりの手鏡はしまわれる


だが魔道具でも何でもないただの手鏡を丁寧に扱う
余裕も神経もこの隊にあるわきゃないので


雑に突っ込まれた隊員やガキどものポケットの鏡を通して
周囲の状況を見る事が出来る





「…キリク、覚えてる?もしアイツと殺りあう時の」


「移動中話してたアレな!
任しとけってビリビリ燃えて来たぜ!!」


「闘志を燃やすのはいいが先にやるべき事やっとけ」





的確なツッコミを待機組の隊員からもらいつつも
キリクは手を伸ばし、武器化したの柄の部分を掴む





「『魂の共鳴!』」


波長の同調と共に、片刃のハサミが両刃へと変わる





『制魔の波長・厭視状態
(リスポンデ・マニエラ ヴェデンド)』






両目へ魔力の光を灯して中央の棟へ乗り込んだキリク達へ
早速白いナイフの群れが飛んでくるが


進行方向の邪魔になるナイフだけを排除して


崩れかけた階段を、迷うコトなく上へ進んでゆく





「残りのガキは全員地下だ!
オレらは魔女が潜んでいる上を目指すぞ!!」



『偽の壁や仕掛けも地下に集中してるので
先生達も注意してください』


鏡の向こうでわかった、と叫び返した死人達の班も
裏手から中央の棟へと突入し地下を目指す







今のキリクの目には魔法の罠や偽物の壁どころでなく


どんな仕掛けが来るのか、人や物体に限らず魔力の干渉が
あるかどうかやその種類までもが見えている






共鳴による魔力の視覚化と反応速度の上昇
波長を映すオレには出来ない芸当だ』


平たく言えば"魔力版・千里眼"…コイツを使い
オレ達はガキどもの位置を大まかに把握していた





しかしこの能力 非常に便利ではあるんだが





「目にビリビリくるぜ…うぇ、気持ち悪


『僕はそれ毎回五感に直で受けてんだけど』


「お前すげぇのな」


職人にかかる負担がデカいから連続での使用に向かない





それでも万能職人と普通の魔武器とでお互い波長は安定している
コイツらが、魔力の仕掛けで不意を打たれる事はない





「他の棟に比べると荒れてるな…いや、これが本来の姿だろうが」


「足場の悪さは厄介かもしれませんね」





中央に据えられた廃病院の本棟は紙の張りぼてがぐっと
減った分、廃墟らしい内部の荒れっぷりが目立つ





侵入したオレらを迎え撃つ魔法の仕掛けをかわす合間





「アタシのかっわうぃいコたちを連れてくなんてヒドぉい
責任とって代わりのベイビー作ってくれなぁい?


しなだれかかるようにして派手な姿の魔女が
紙片を操ってはしばしばちょっかいかけてきやがる





切ったり燃やせば白い紙片に変わるんで偽物だとわかるが


亜麻色オールバックに山羊角と露出の高いスパンコールドレス


ついでに同じ材質のピンヒールブーツと網タイツの痴女
もとい魔女が何人もいる光景っつーのはキモい







…今までの苦労は何だったんだとばかりに


先陣切ったキリク達は 魔女の元へとあっさり辿り着く


まるでどこかの宮殿みてぇに整った
だだっ広いその空間には大小の白い紙がチラチラ漂い





「っあー退屈で死にそうだった!」


中央に浮かぶ紙製の箒に腰かけた魔女


辺りの紙片を手にとっては食らい 辿り着いた
ガキどもを見下ろしていやがる





「いっくら目的のためとは言え縛りプレイも変化がないと
あ・き・ちゃうわぅあ〜そう思わない?」


「「思わねえ」」


ベェ〜せっかちねぅえ?アタシがどうしてあの子達を
連れて来たかとか聞きたくなぅいんのぉ?」


「どーせロクでもねぇ目的だろうが、ごちゃごちゃした
能書きなんざいるか!テメーはきっちしぶっ倒す!!


「全く持ってその通りだ 加減なんかしてやるもんか」





自らの武器を装備したキリクの隣に立った


楽しげに見下ろす銀色の目玉を 真っ向から睨み返す





「家族として、男として、弟として僕の
いや俺の手でアンタの全てをブチ切ってやる


「血の繋がらない"家族"のために血の繋がった家族を
切り捨てるなんて…イイわねうぅえぇんvV」



「家族だから、切り捨てんだよ」





その気持ちは何となく理解できた


立場や状況が違えど…オレにとってのアイツのように
それこそがにとっての落とし前






「そう、ならアタシは家族としてアンタのコトを
飼い慣らしてあげるわぅあ?

それこそ何度でも人生を繰り返そうと永遠にねぇ





ラメをちりばめた毒々しい色の唇が弧を描き


辺りに舞う紙吹雪がいくつかの塊に別れ、数体の魔女と
白い山羊頭の巨人へ変わって床へと降り立つ





「といってもほとんどジャスティンちゃんのおもてなしで
ストック消費させられちゃったからぁ〜結構崖っぷちなのよん
あぁんでも燃えるわこの状況っ!





魔法の仕掛けと足場の悪さっつー悪条件が重なってか

死人達はガキどもの救出にいまだ手こずっている


死人の班が来るまでの間、こっちのガキんちょ組が
どれだけ魔女の攻撃に持ちこたえられるかが正念場だ





中々にクるな…見るだけしか出来ねぇ立場ってのはよ







―スピリット/月面―





シュタインがジャスティン、キッドとオレ達とで
残りの道化師と兵隊どもを相手取っている合間


死人は首尾よく鬼神探索へと行動開始していた





『昨日から連続しての潜入任務だが…頼りにしてるぜ』





今頃はマカ達もキリクやと合流してイタリアにいるだろうな


クロナを、あの子を救ってやれるならいいんだが





「鬼神の兵隊はあらかた片付けた あとはお前だけだ」


「妾の貞操と鬼神様を守る兵隊がこれだけだと思うておるのか?
ケタケタケタケ竹竹竹竹竹





キッドと対峙している道化師・迦具夜の言葉通り

留まる事のない狂気がいくつもの異形となって
月から湧き出してきやがった





「鬼神様の狂気が止むことはない 那由他よ
湯水のごとく使えるわ…湯水と聞いて妾の入浴シーンを
想像しておるだろ?破廉恥じゃ!!破廉恥極まりないぞ!!


『キッショ』 『今ならの気持ちがすっげー分かるわ
この女、余すことなく風穴開けてぇー』


ああうん…オレも痴女はちょっと…





「いいだろう…鬼神の居場所を吐かせるために
生かしておいたが、理由がなくなった





ともかく、キッドもまた抑えていた狂気を全力で開放し


迦具夜と新たに現れた道化師の軍勢へ攻撃を始める





『私達もいくぞ!!』


『あのデカブツは我々が!!』


残るデスサイズス二組は デカい目玉と仮面のような顔を
いくつも張り付けた一際巨大な異形を相手取る





ジンのランプから飛び出たゴーレムがツタを生やし


からまれたツタに引きずり倒されたデカいのへ
間を置かずデング達が飛びかかってゆく





「おっと…危ない危ない!」


スレスレで鬼神の兵隊の蹴りをかわし、勢いを殺さず
側にいた隊員の武器として戦いをサポートする







もはや人の形を失くしたジャスティンとギリギリで
踏みとどまってるシュタインもそうだが


切れ目なくキッドへと襲いかかり味方諸共攻撃する道化師軍団も





「うぉおおぉおおぉおぉお」





第一ラインを展開し、駆け抜け様にそいつらへ
波長を撃ち込み吹き飛ばしてゆくキッド自身も


こうして兵隊どもを相手取っているオレ達でさえ


形のない鬼神の狂気にいつのまれてもおかしくはない





だからこそ、この戦争はキッドの覚醒にかかっている


ライン・オブ・サンズが3本繋がり
真の死神として覚醒が無ければ鬼神には勝てない…





キッドの快進撃とほぼ同時に





「『レインボー!!』」


「『THE LOVERS!!』」






両デスサイズスの一撃が決まってデカブツが消し飛んだのを
戦闘の合間に目にしていた





「たわいもないぞ道化師…覚悟を決めるんだな」


再びキッドに追い詰められた道化師だが そのツラは笑っている





「ケ竹竹竹竹竹」


クセのある笑いにつられるようにして





「マジかよ…!」「どうなってやがる、さっきオレらがこの手で…」





オレ達の目の前に 先程倒したばかりの兵隊連中や

道化師やデカブツが繰り返し月からにじみ出た





鬼神様の狂気は尽きぬ
…おぬしの妾の裸を見たいという欲望ぐらいな」





マズいな、ジリ貧状態が続けば遠からず全員力尽きちまう





「ははは!!無限に尽きぬデク人形、最高じゃないか!!
バラバラにしてやる!!」



そうでなくてもシュタインの理性が持たねぇ…





「はらえどはらえどふりかかる狂気
勇気は次第にそぎ取られ 待っているのは絶望」



『…だとしたら、それがどうしたってんだジャスティン』





それぐらいでオレ達が諦めるワケがねーだろ、と

胸の内で毒づいてオレは戦場を駆け回る







/廃病院本棟最上階―





辺りに漂わせた紙を操り生み出す下僕や分身を





「うおおぉぉおおぉぉるぁぁあぁぁ!!」


「死刑決定確定執行っ殺(キル)!殺(キル)!
殺(キル)!殺(キル)!殺(キル)ぅぅぅぅあぁぁ!」



お互いの相性の良さを生かすより手数で押す方を
選んだ二人が、端から蹴散らしていく





「あららん、ちょおっと前髪伸びたのねぅえ
前のダッサイおかっぱより断っ然似合うわよん?」





死角から真横へ伸ばした手を亜麻色の髪へと向ける


当然 返事は突き出したハサミの刃で返されたけれど
紙を盾にして防いだから何も問題なし


死角から拳を振り上げて飛びかかるキリクちゃんだって、ね





持久戦でアタシの手持ちを減らしながら、隙を見て
ダメージを与えてゆこうとしたって無っ駄





ノアちゃんとのひと時と味見したエイボンのページは
アタシにとって新しい刺激と知識をもたらした


効率と燃費のいい術式を高まる狂気と合わせれば


紙を通してもうこの場所はアタシの寝室もド・ウ・ゼン♪





「くそっ、こんな所にまで仕掛けが…!





地下でガンバってる子達には、せいぜいゆっくり
追いかけっことビックリ仕掛けを楽しんでもらうわ





月だけじゃない大きな狂気はちゃあんと感じてた


アタシもお姉様に続いて習って作んなきゃ…最狂の魔武器を!





「紙仕掛けの白山羊(イプノスゴート・ビアンコ)」


「なっ…身体が…!?」





部屋に漂う紙吹雪は、手駒や武器を生むだけじゃない


特殊な動きと意識できないほど短い時間に映し出される映像とで
意識に働きかけ 相手の動きや感情を制御できる





さてと、"黒山羊(ネロ)"使って動きの鈍った
キリクちゃんを完全に堕とすのも楽っしそうだけど


アレ使って手が塞がって 地下のコ達が来ちゃったら元も子も


「Rifiuta!(伏せろ!)」





足を武器化してのの飛び蹴りが背中を掠めた





「あっぶないわねぇう〜不意打ちなんて意味ないわよん?」


つーか殺す気かテメェ!ちゃんと周り見て飛びかかれ!!」


ああ゛?あんなちゃちい足止め根性で振り払えよ!」





段々と"白山羊(ビアンコ)"による狂気と怒りの増幅が
効果を表して来ているわねぅえ?


せっかく距離を取り直してアタシに向かってきてるのに





「Striscia circa alla sinistra!(左に回り込め!)」


焦って母国語で指示出してるのがその証拠v


組んでる子の動きを教えてちゃ防御も迎撃もカンタンなのに
頭が回り切ってないのかしらぁ?おバカさぁんv





…でも我を失うまでに至らないタフさはそろそろ飽き飽き


分身と戦ってるのを見計らい紙で塞いでた床の穴を
露出させるけど、避けられて足止めにすらなりはしない





「もう手駒もない、チラチラ目障りな紙吹雪もわずかだ」


「そろそろブン殴られる覚悟は出来たか?思いっきり行くぜ!


「そうねぇう…時間もないし、終わりにしましょうか」





じっと待つのは性に合わない


器のコ達を連れていかれちゃったのは誤算だけれど
重要なのは魂、見合う転生先は後でいくらだって探せる


魂さえあれば他の魔武器に植え付ける研究だって完成させられる


だから逃げられる前に…回収しなくっちゃねぇん!





「ケプストゴートベェトゴトー…
ミメシスゴート・巨人の手(マノ デル ギガンテ)!





壁や天井 床に残る全ての紙を集めて

背景に溶け込ませた一対の巨大な腕を、二人の頭上へ振り下ろす





「Vola alla destra!(右へ飛べ!)」





忠告されたキリクちゃんは寸前で逃しちゃったけれど

はきちんと押さえつけた





「ガッ…!」!!」


衝撃と圧力でアバラがイった感触、もう気絶は目前ね





しばらく寝てなさいなぁ?大丈夫よぉう
すぐキリクちゃんも同じように隣に」


巨人の攻撃を続けつつ見下ろしたあの子の顔は


笑っていた





「待ってたんだよ…デカい一発がくるのを







見えざる腕を拘束に変えるより早く


触れたハサミの片刃を通じてアタシの魔力が断ち切られ

舞っている紙吹雪も 残る巨人の腕も魔力を奪われ弾け散る






余波を受けて箒も紙くずへ変わったけれど、とっさに
口に含んだ紙を変化させて落下の勢いを殺し床に降り立つ





「あっは…アタシのお仕置きが待ちきれなかったの?
はしたない子ねぇ〜キツめのをあげるわ!





袖口から出した紙をかみ砕き 練った魔力を

よろよろと起き上りかけているへ向けて―





「adesso!(今だ!)」





呼びかけに、アタシは自らの周囲と足元へ紙のナイフと
トゲを生み出して解き放つ


けれどトゲは何も貫かず

ナイフは前後で待ち構えた二人の、鋏と炎で防がれた


予想と違う…!?早く紙を食べて魔法を





「完魂総殺[Ballo doppia spada]!」


「T・T・T(トリプルティー)!」





床を蹴って 二人の攻撃が同時に迫る


寸前で生み出した盾の強度が足りずに左腕が斬られ

間を置かず胸へ受けた拳の、まといつく波長と雷撃に
耐え切れず全身と 特に両足がボロボロに変わる





「アンタ達、言葉で指示出し合ってたんじゃ…っ」


「キッドや博士じゃねーのに分かるかよ
言葉なんて無くたってオレらにゃ魂で通じんだよ!


「事前に言ったんだ、目立つコトをすりゃ食いつくから
俺のイタリア語に合わせてくれってね」





なるほど…まんまと、誘導されちゃったぁんv


ベェ〜あのラメ加工の長手袋、縁取りのデザインも
お気にだったのに汚されちゃうなんてガッカリぃ





吹き飛ばされ血塗れで床にへたるアタシを

お子様二人は逃がすまいと追い詰める





「じゃあな、これでさよならだ」


「あぁん残念…けど、楽しかったわ
それじゃ地獄でねぇん?arrivederci!





まるでお父様と同じ状況…とてもとても素敵な眺めだけれども





「それだけはゴメンだよ…姉さん」





止めを刺そうと腕を振り上げた
何とも言えない鳶色の瞳だけは 気に入らなかった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:時間かかりまくりましたが夜の任務終了!
こっからは月面&スパルトイ組で進行します


リズ:ホント頼むぜ?しかしよく動き合わせられたな


キリク:共鳴した時の感覚もあったけど、目ぇ見りゃ
何となくお互いの動きが分かるもんだぜ?


パティ:さすが直感型のキリちゃん!


スピリット:アイツも案外単純なトコあるからなぁ
本当 世話の焼ける連中ばかりだぜ


博士:ご苦労様です先輩、へらへら♪




次回…神父と博士の決着、クロナとの再会?


様 読んでいただきありがとうございました!