DEATH ROOMにて、主の死神は
どうしたものかと呆れかえっていた





男二人と行動する方が危険すぎるぅ!
マカに何かあったらあの二人…!!」


「落ーち着きなさいってスピリットく〜ん」


三人がシシリア島へ旅立った事を聞いて

すかさず様子見…どころかぶっちゃけ
現地まで赴こうとした


マカの元父親&デスサイズのスピリットに





いやいや落ち着けませんって!ソウルは
パートナーだからまだアレですけど
は余計じゃないですか!!」


「だから言ったでしょ?他の職人と複数の
ペアとして経験を積ませるって」


「でもアイツだって男ですし、オレのマカに
余計な事をしでかす可能性だって!!」



「君じゃあるまいし 彼がそーいうキャラじゃ
無いことぐらい知っているでしょ?」


「けど万が一ってコトがあったらっ…
ああああっマカぁぁぁ〜!!


あまりにも喧しかった為、ついに彼の頭に
脳天直撃死神チョップが炸裂した







盛大に煙を上げて倒れ伏すスピリットを
やや哀れみの眼差しで見つめてから





「…オレも、彼の意見には同感っす」





成り行きを見守るだけだった死人が口を開く


は現在、職人のいない
魔武器…なのに何故単独で組ませたんです?」


そーですよ!おまけにアイツ成績も実績も
とこっとんフツーじゃないすか!!」





顔を向け、死神は変わらぬ口調で言った





「これは一種の賭けってトコかな」












Terzo episodio 巨人襲来











言葉の意図を掴めぬ二人を置き去りに
彼は人差し指を立てて続ける





「最近イタリアじゃ"巨人"以外にも魔女らしき
目撃例が確認されてるんだよねー しかも複数


「まさか…その魔女達を三人に
討伐させるおつもりで!?」



「そこまでは考えてないさ♪たーだ
今回の件はほぼ間違いなく魔女絡みだろうね」


だからこそ緊急に備えての定期的な報告や
状況の監視 及び教員の待機はより万全を期する





けれど…死神の声音にはどこか明るさがあった





「マカちゃんやソウル君もだけど、私は
君の"成長"も期待してるんだ」


「アイツの成長…っすか?」


「もっとも、当人には自覚が無いだろうケド」







――――――――――――――――――――







すっかり日も落ち、暗くなった通路で
三人は待ち伏せを開始していた





「本当にこの辺りで大丈夫なの?」





訊ねるマカへ彼は辺りへ気を配りつつ頷く


「自信はないけど…拉致が狙いなら構造上
ここが人通りもまばらで狙いやすいと思う」


「にしてもお前、やけにこの国の
妙な事情に詳しいじゃねぇか?」


「そ…そうかな?普通だと思うけど?」





普段から顔は半分隠れてて分かりづらいが


その分、挙動と声に動揺が滲んでいるので

二人は益々疑わしげな眼差しを向け続け…







「じ、実は僕…元々この国育ちなんだよね
住んでたのは北部寄りの州だけど」


顔をそらしながら、彼は渋々白状した





「そうなんだ…じゃあ最初からそう言えば
いいのに何で隠そうとしたの?」


「あーうん、色々ありまして…」





困惑した様子で言葉を濁す相手へ
興味が失せた風にソウルは言う





ワケありなら聞かねぇよ、それよりよぉ
マジで巨人とやらが出るまで待つつもりか?」


「仕方ないじゃん、全然探知引っかかんないし
プロテクトが使えるとしたら厄介ね」


「手っ取り早くでも用意した方がよくねぇ?」


「え…ちょ、なんで僕を見てるの?
まさか僕がやるの囮っ!?





向けられた赤い瞳に思わず彼が抗議した所で





オウオウオウ!ガキがこんな時間に
揃ってほっつき歩ってんじゃねーぞ!!」


「とっととマンマのトコに帰ぇりな!!」





スーツ姿の"いかにも!"な男達の集団が現れた







うげ…このタイミングでマフィア…」





嫌そうに身を引くとは対照的に
目つきを鋭くして一歩踏み出すソウル





あぁん?うっせぇな消えろオッサン」


「んだとテメェ、マフィアの恐ろしさ
身を持って分からせてやろうかクソガキが!」



「やめなよソウル…そいつら死神様のリストに
乗ってないし構うだけムダだって」





ケンカ売り出した相方をたしなめようとするも





「舐めた口利きやがってイタズラすんぞ
チンチクリンのメスガキが!


「なんですってぇ誰がチンチクリンよ!
お前の魂狩るぞゴラァ!」



逆に挑発されてマカもまなじりを釣り上げる





「あのースイマセン、僕らここからスグ
退散するんでカンベンしてくれませんか?」





慌てて間に入り、頭を下げるだが





「はぁ!?ふざけてんじゃねーぞテメェ
何でオレらが譲らなきゃなんねーんだよ!」



「下手に出りゃすむと思ってんのかガキぃ!」


「先にケンカ売ったのはあっちでしょ!?」


「テメェもこいつらの仲間だっつーなら
キッチリ落とし前つけてもらおうか!!」


マフィア側と死武専コンビ、両方から
入り乱れての集中砲火を食らい立ち往生





そのまま双方の睨み合いが続行し


「あぁもう、面倒くさいコトになった…」





結局怖気づいて身を引き、どうやって
この状態を収めるべきか悩み始め







…彼は 微かな"異変"を感じ取る







「っな、何だアレは!!





声を上げたマフィア側の後列の一人が


次の瞬間 横薙ぎに殴り飛ばされる





『なっ…!!』


全員の視線が通路の先へと集中する







薄闇を縫って現れたのは…正に"白い巨人"







山羊に似た頭で大柄の逞しい体


だが形はどこかイビツで、顔には目や
鼻などの在るべき部位が見当たらず


肥大化し捻れた角が悪魔の如き印象をかもす





到底自然界にいるべきでない異形達が


全員の視界に入る全ての通路から一体
また一体と群れを成して現れ、その場を囲む







「ウソっ…魔女の反応が全然無いのに!?


「マジかよ…それでコレだけの数かっ!!」





呆然と辺りを見回す彼らを他所に





「テメェェ!どこのモンだコラァァ!!」


すかさず銃を出し、応戦するマフィア達だが

弾丸は身体にめり込むことなく弾き返され





「ぎゃああぁぁっ!」


「や、止めろっ来るな…があぁ!!





数人が振りかざされた腕の爪に裂かれ
或いは貫かれて倒れ伏し






「ひぃぃっ…!!」


辛うじて残っていたマフィアの人間も
ほうほうの体で逃げ出していった







じわじわ包囲を狭める巨人達へと向き直り





「数が多いけど、行くよソウ…きゃあっ!


戦闘態勢に入りかけたマカの頭上から
一回り小さな巨人が落下して


咄嗟に避けたもののバランスを崩しよろける





「マカっ!テメェェェ!!」


彼女へ手を伸ばす白く歪な巨体へ駆け出し


鋭い刃を閃かせたのは…ソウルではなかった





「罰殺(バッサイ)っ!」


今までの何よりも一番機敏に鋭角に

ハサミの片刃に変えた腕が、ただ一撃で
頭から真っ二つに両断した






巨体が重い音を立てて 床へと崩れ落ちると
煙を上げて紙の固まりに成り果てる





「「(君)!?」」


「コイツらは魔法で生み出された従僕だよ
数は多いけど媒体は紙、叩き切れる!!





それだけを告げ、自らへと覆いかぶさる
巨体を切り裂くツナギ姿へ続くように


今度こそ鎌の形状へ変化したソウルを手に





「はぁぁぁっ!!」


マカもまた、襲いかかる巨人の胴を寸断する





『硬ぇ、密度の高い紙で出来てんのか…
でも所詮は紙だな!


「休んでるヒマは無いよソウル!
君、右から来てるっ!!


忠告を受けて身を捻る彼の側を巨人の腕が掠め


突き立てられた床にヒビとヘコミが刻まれる





「っうわ!危ないトコだった、ありがと!」





威圧的に両手を上げ、押し寄せる異形どもに


微塵も怯む動作を見せず三人は動きをかわし

爪を防ぎ そして切り捨て元の紙へと変えていく





『力の割にゃー頭はねぇなコイツら!』


「でもこの数は流石にキツイって!
それにこいつら、全員私達だけを狙ってる…?」





抱擁さながらの両腕交差を擦り抜け様に
切りつけながら呟くマカへ


懐に入り逆袈裟で切り上げた彼が答える





「…多分ヤツら 僕らを拉致しようとしてる」


「かもしれない…ねぇ君、
どうしてコイツらの正体を知ってたの?


「う…やっぱり話さなきゃダメ、だよね」


「当然でしょ!」


『マカ、問い詰めんのはとりあえず後だ』





たじろぐ相手を睨む彼女を諌めながら





『奴らがオレら狙ってんなら…逆にソレを
利用してやろうぜ?』



言って、ソウルは不敵に笑った





「いいかも知れない…ってコトでよろしく」





付き合いの長さから言葉の意図に気付いた
相方の台詞と視線で、遅れて彼も気付く





「え…やっぱり僕!?」


『当然だろーが、オレのバイクの定員は
運転手込みで二人までだしな!』





亜麻色の髪を掻き ため息をつくと


「分かった…じゃあその役引き受けるよ!」





は群れる巨人へ突進し、同時に
二人は逆の方向へと走り出す








…程なく彼は巨人に捕獲されて担ぎ上げられ


数の減った異形はそれに満足して町から
立ち去るべく素早く歩き出し





「…動き出したよ、見失わないでね!」


「そいつぁオレの台詞だろ!
飛ばすからしっかり捕まってろ!!





の姿と魂をナビに、バイクに乗った
二人が巨人の尾行を開始した








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:サブタイ通り巨人襲来しました、彼が
イタリア出身な所 一応由来がありますが…
多分分かるのはもっと後の長編(予定)です


マカ:イタリアって言っても、結構範囲が
広いんだけど…土地カンはあるの?


狐狗狸:住んでた地域とかにはね ついでに言うと
彼の母親はナポリ育ちだから


ソウル:んなコト聞いてねーよ…それよりアイツ
いきなり技出しやがったけど、何だアレ


狐狗狸:ネーミングについてはノーコメで
技の部分とかはまあ、次回以降に説明します


マカ:結局何も説明してないじゃない!


スピリット:オレのマカにイタズラだとぉぉぉ!
あのマフィアぶっ潰しにいってやる!


死神:よーしなさいっつーの


死人:しかし異国で一人生きるのは大変だろう…
生徒の支えになりたい、オレはそんな男だった


狐狗狸:……ガンバッテクダサイ




城にてかち合う 諸悪の根源達…!


様 読んでいただきありがとうございました!