そうして太陽も大分高度を下げた頃合


マカ=アルバーン・ソウル=イーターのペアと
の計三名は


イタリア南部…シシリア島の大地に降り立った





国交盛んな都市や港町が多く存在するせいか

彼らのいる街"ラグーサ"もまた 夕暮れへ向かう
陽光を惜しむような賑わいを見せている







「ちょっと早く着きすぎちゃったかな…?」





いまだハトの群れる街並みを眺めるマカへ

どこか気の無い素振りでソウルが返す


「いーんじゃねぇ?どうせ巨人とやらを
待ち伏せしなきゃならねぇんだし」





事前に聞いた情報によれば、ミシェルカは
ローマとナポリで主に仕事を請け負い


アトリエ近辺の街や村などで拉致を
行っていたらしいが





現在 "巨人"の目撃と事件が頻発するのは

シシリア島の主だった都市や街ばかり


…それも、どうやらメッサナから下へ
島の形を沿うように事件が起こるようなので


次に拉致が起こると予想されるラグーサで
現れた敵を叩く段取りらしい





その為 下準備や下見を兼ねて

やや明るい時間帯での到着となったのだった












Il secondo episodio 懐かしき土地











「そういや、お前は今までで
魂どれ位集まってんだ?」





問われて彼はボンヤリと宙を彷徨わせていた
視線をソウルへと戻して返す





「うーん…君ら二人と比べれば大したコトは
ないかもしれないけど、52個かな」


「それって…一人で集めたの?」


いやいやいや、さすがに一人じゃ
そこまでは無理だって」


ブンブンと顔の前で勢いよく手を振りつつ





「フリーの職人と一時的に組んだりして
課外授業のノルマはいつも、どうにか
ギリギリでクリアしてるくらいだよ」





などと苦笑交じりで当人は言うが


冴えない見た目の割りには、ある程度
しっかり実力を持っていることに対し

二人はふぅんと感心する





…が、特にそれ以上話題が提供されないので

各々が結論に納得し 別の方へと意識を移す





「この国の建造物ってよぉ…魂揺さぶる
COOLな造りのモンが多いよな」


「絵画や芸術方面で有名なトコロだからね
歴史に名高い建造物も多いトコだし」





淡々と語る彼の台詞を引き継いで





「ゴシックやバロックにロココ、他にも
様々な様式が用いられているんだって


この辺りなんかも後期バロック様式の町々の
一つとして知られているらしいし」


辺りを見回しながら、マカは得た知識を
ガイドさながらの弁舌で語り続ける





「他にも代表的な建築物にはコロッセウムや
ピサの斜塔 カナル・グランデのリアルト橋
サンタ・マリオ・ノヴェラ教会とかの」


「その辺で止めとけよ、逐一上げてったら
キリがねーだろうが」


ちょっと!話の途中で腰折んないでよ」





水を差した相方へ不満げに怒鳴る彼女に


亜麻色の前髪に隠れた瞳を丸くしながら

今度はが感心していた





「べ、勉強家だねマカさんって」


「そうかな…ありがと♪」


「あんまホメんなよ コイツのは大抵
本から読んだ頭デッカチの知識だぞ」


「何でそういう意地悪言うかなソウルは」







ぷくっと可愛らしく頬を膨らませたマカへ


疎らな雑踏から現れた異国風の男が
無言のまま歩み寄ってきた





「え、何っ何!?





相手は彼らが対処するよりも早く
マカの手を取って無理やり"何か"を押し付け


たちまち周囲にいたハトが彼女へ飛び掛る


「うわわわわっ!?」


「マカ!おいコラ何しやが」





怒鳴りながらも詰め寄るソウルの手にも
男は慌てず騒がずに

持っていたトウモロコシの粒を押し込…


まれた直後、それは男に向かって
倍になって投げ返されていた






「ウワッ!?」


波が引くようにマカの周囲からハトが消え

先程と逆に、男へハトの群れがまとわりつく





驚きながらも彼女へと駆け寄り





「大丈夫かマカっ」


「な、何とか…それより何あの人」


「二人とも、とりあえず今は逃げよう!





無事を確認したソウルは、の提案に乗り


揃ってその場から離れたのだった









「で…さっきの人って何だったの?」


「ああアレ?典型的な泥棒だよ」





男を振り切り 路地を替えた所で息を整え


問いかけた彼女へ、さらりと答えが返された





「普通は観光客を狙ってて、あの手口で
金品をうばうかしつこくお金を請求してくるんだ」


そ、そうなの!?危なかった…」





話には聞いていたものの、まさか自らが
遭遇すると思っても見なかったらしく


タラリとマカの額から脂汗が流れた





「にしても…さっきのアレ
とっさにしちゃ やるじゃねーか」


「大したことしてないよ、てゆうか途中から
ソウル君も気付いて加勢してただろ」







…そう、あの男がソウルへ狙いを定めた瞬間


がマカの手からトウモロコシの粒を
もぎ取って相手へ投げつけ


間を置かず事態を理解したソウルもまた

手の中に押し込まれた粒を間髪いれずに
男へと投げ返していたのだ







「後ひょっとして…二人とも明るい時間帯に
この辺来るのって初めて?」





不意に問われ、両者は顔を見合わせて頷く





「まあね、イタリアには何度か来たコトが
あるんだけどねー」


「"課外授業"つったら大体が基本だしな」


その台詞と二人の態度に"やっぱり"と
心の中で呟いてから 彼は言う





「じゃあ住人にも気をつけた方がいいよ
死神様リストに無い相手でも


元々この島はマフィアを中心に
ロクでもない連中が多いトコだから」





思い当たる事があってか、マカが声を上げる





「聞いた事がある…マフィアって元々
シシリアから発祥したんだっけ」


「そう、今じゃ主に南部の権利も
両面で支配するほど力を持ってるみたい」


へぇ〜裏だけじゃなく表も統括してんのか
中々COOLな連中じゃねぇか」


「どーしてうれしそうなのよ…そういう奴らは
大半が死神様のリストに乗るくらい悪人でしょ?」


「まーな、奴らに比べればフィレンツェの
不良集団の方がまだ可愛げがあっかもな」





茶化すように笑うソウルに乗せられ
益々眉を吊り上げる真面目な彼女を諌めようと





「それでもこの辺は一応マシな方なんd」


言いかけたへ、駆けてきた青年がぶつかる





「あ痛たっ」


「ゴメンよ兄ちゃん!」





が、青年は尻餅をつく相手に短く告げて

そのまま振り返らずに立ち去っていく





「ちょっと、大丈夫?」


「ああうん平気 大したコトは…!」





よろよろと身を起こしてから


ハッ、と彼は何かに気付いた様子で

ツナギのズボン部分に据え付けられた
ポケットを慌てて探り…低い声で呟いた





「しまった…サイフ盗まれた…!」


「って早速注意した本人がやられて
どーすんだよ、本当にダッセェな」


笑い事じゃないでしょ!今からならまだ
間に合うから取り返そう!!」


「オイオイ、そんなモン地元の警察にでも
任しときゃいーだろ…」





けれども根が真面目な彼女としては


例え任務で来ていても、目の前で起こった
犯罪行為が見過ごせないようだ





「あの、別に大した額入ってないし
任務終わってから自分でなんとかするから」


「被害者がそんな弱気でどーするの!
ホラ行くよ二人ともっ!!」








気乗りしない様子の男子二人を促しながら
先へ進むマカへ、柔和な初老男性が声をかける





「可愛らしいお嬢さん、この国は始めて?」


「ええと、街は始めてなんですけど
それよりさっきここを通った人がいたと」


そーかそーか!ならこの街の名所を
色々と案内してあげよう!遠慮はいらんさ!」







戸惑うマカの問いなど丸無視で柔和に
口説くナイスミドル…といったやり取りを


ソウルはヨダレの垂れる口をぽかんと開けて傍観する





「マジかよ…ナンパしてるオッサン
マカの親父より確実に年イってんぞ」


「まあ国の人たち、特に南側の男性は基本
陽気で楽天家で女性好きだから…

特に珍しくないよ ああいうパターン」


「節操ねぇな…この国の男の大半は
あの親父と同類項かよ」


やめてよ 否定出来ないけどゴヘイあるから」





彼の口元がへの字に曲がった辺りで


口説いてた男がいきなりマカの両頬にキスした


「キャアッ!い、いきなり何なの!?」


「ハッハッハ驚かなくてもいいんだよ?
これはこの国じゃアイサツみたいなモンだ」





快活に笑い、さり気なく肩を抱こうとする
ナイスミドルにソウルが待ったをかける


「おいオッサン それオレのツレだから」





軽く睨みを利かせる彼の後ろから、やや遅れて
ツナギ姿の少年が側に現れたのを認め





「おっと!ボーイフレンドが二人もいたんだね
シニョリーナ それじゃあ失礼!」


ややばつが悪そうな顔をして男が立ち去った







彼女は、眉をしかめて両頬を擦る





信じられない…ホッペとはいえ
初対面のオジサンにキスされた!」


「ありゃアイサツっつーよりセクハラだな
しかしマカにナンパたぁ物好きもいたもんだ」


「まぁでも、あの程度で済むならまだマ」





言い切るよりも早く 彼らの頭に深々と
分厚い辞書が突き刺さる






「二人とも、もうちょっと早く助けてよ!」


「「す…スミマセン…」」





マカチョップの威力に脳天焦げ付かせながら

ソウルとは、弱々しく謝った








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:島とか国名などは原作をベースに
微妙にもじったりして使うことにしました〜


マカ:どうでもいいわよそんな事っ!それより
何で見ず知らずのオジサンがきっキスなんか!!


狐狗狸:作中でも語られた通り挨拶ですよ
米国でも握手やハグがあるでしょ?


ソウル:そりゃ相手との度合いにも寄るっつの


狐狗狸:その通り…後のはまぁ口説き補正が
入ってる感じで ついでに両頬キスは同性にも
行うんだそうです(もち親愛の印で)


マカ:うっウソォ!?


ソウル:マジかよ…それって日常的なモンか?


狐狗狸:そこまでは定かじゃないです




観光気分(?)から一気に戦闘モードへ!


様 読んでいただきありがとうございました!