遥か昔、巧妙かつ強力な呪いや魔法を操る魔女に
対抗できる新たな力として


エイボンはエクスカリバーをモデルに"魔武器"を作った


武器と魂を通わせれば膨大な力を産む

人を武器に出来たならそれほど頼りになるモノはない


変身能力を持つ魔女の魂を繋ぎに

人の魂と武器との合成が考えられたのは自然な流れ





非人道的な実験の為 死神とエイボンは封じたものの


アラクネがそれを実現し量産した結果


世界中にいる魔武器の遺伝子を持つ子供達
ひとところに集め、回収する必要に迫られた





『死武専の誕生ですね』


「その子供達は魔女の魂を持っていない未完成の状態

だから"真の魔武器(デスサイズ)"になるためには
魔女の魂が必要になってくる」





それ故に成り立った死武専と
魔女との間に出来た溝は


テスカでなくても果てしなく深いように思える





『本当に来てくれるといいんですが…』


「テスカ君!まだ言ってるの?我々死武専が
魔女を信じなければ来るものも来なくなっちゃうよ」


『しかし…いくら世界の危機という利害が一致したと
しても魔女達の恨みつらみが簡単に消えるでしょうか』





場に縛られた死神は、最もな鏡の中からの疑念を
受け止めながらこう答ええる





「それを決めるのは我々ではない

それでも我々は信じるしかないんだよ」






直後、前触れなくDEATH ROOMへ一直線に
何かが撃ち込まれ





『敵襲か!?「おのれ魔女のメス豚!!!

やはりこの機に攻めて来やがったか!!」



一気に場が緊張と怒号に包まれるが







ボン・ジュール 私のウワサをされたような
気がしてなエッキシ!クシャミが止まらんのだエッキシ





それは、魔女の攻撃ではなく


来訪した聖剣エクスカリバーだった





『な…なんか今
死神様すごいこと言ってませんでした?ばりの』


「何のことかね?テスカ君…」





さらりとシラを切りながらも来訪の目的を訊ねる死神へ


杖を回しながら聖剣は、世界の傍観と言い放つ





「エクスカリバーが協力してくれれば
かなり楽なんだがねぇ?」


「それを言うならそなたも同じだろ
"規律"の旧支配者よ」





その返答へ、死神は"バカを言うな"と心の中で返す












Terzo episodio
 La strega certamente viene alla luna!!












民家や大地がある場所から海へと到達した時点で





ブラック☆スターをぶら下げる形での飛行を
余儀なくされたマカとソウルは


力の限り踏ん張って雲海を抜けた





「近くで見ると迫力あるなぁー」


「オレ様のデカさで霞んで見えるな、早速降りようぜ」


「軽く状況確認したいし 少し上空から様子を見よう」


「あぁ?信者みてぇに眠てぇコト言うんじゃ…
おい!何か来たぞ





様子見していた四人に、気づいた道化師・月光からの
容赦ないビーム一斉砲撃の洗礼が浴びせられる





「避けてソウル!!」


『むちゃ言うな
でっかいストラップのせいでしりが降られる!!』





すんででかわすもブラック☆スターという重りを
つけたままで連続の回避は厳しいと判断し





おいマカ!!どんどん来るぞ!!」


「月面に着くまでに共倒れになる!!」





次のビームが発射される直前にマカは





「オリャアアアァア!!行ってこい!!


「何ィイイ」





鎌ごと円を描くようにブラック☆スターを振り回し
三日月形のビットへ向けて勢いよく投げつけた


が、投げられた当人は動ずることなく





『ブラック☆スター』


「オレ様を!!なめんなぁあああっ!!」





放たれたビームを拳で弾き…のみならず自らの直撃を
逸れて真横へ散ったビームを両手でつかみ


月面にいる月光へ向けて投げ返した






「あいつホントに私達と同じ人間…?
ビームを掴める理屈がわからない」


「理屈は至極簡単よ 椿!!」 『はい!!』





中空で呆れるマカへ、彼は自らの襟巻きの影から
顕現した妖刀モードの椿の柄を握って答え





「オレが超絶スーパーすげぇからだぁぁ!!!」


派手な土煙をあげて月面への着地を果たす





「オレ様の出迎えにしちゃあ、少なくねぇか?」







月を埋め尽くすようにひしめく道化師連合のただ中に
落ちたブラック☆スターに続くのを





「うわすごい数…降りたくねぇ……」


空中でためらうマカへ、月光は再び狙いを定める





「もう一人は迎撃する!」


『マカ!あの月型のビットを制御してる
波長を感知してくれ!』



「了解」





射出されるビームをかわして広げた探知で
相手の波長を捕えたソウルが





『SOUL hack!!』





ピアノによる共鳴を利用し周囲のビット全てを
自らの制御化へと置いて


放ったビームで進行先の道化師達を薙ぎ散らしながら
マカと共に月面へと滑空





「新手が来ようがお前達の体力は既に限界!!
死ね!!






シュタインを押し包もうとした数体へ


彼女は勢いを乗せた魔女狩りをお見舞いして降り立つ





「話は聞きました、死武専の為 世界の為に
殿を務めたコト…ご苦労様です…!!


『マカ!!』


「まさか生徒に助けられる日が来るとはね…」


「私も戦います」





晴れて肩を並べ、共に戦う決意を現すマカに
シュタインとスピリットは心強さを感じるが


ビッドの制圧も増援も…敵はさして答えてもいないようだ





「あなた達も無限に続く恐怖を味わうがよい
繰り返される狂気を味わうがよい







月光の言葉通り、月内部から溢れた狂気は道化師を
無限に増やし蘇生させてゆく





戦線を張っていた部隊もほとんど壊滅した今


彼らに残された希望は"来るかもわからない"魔女の
全面的な協力による作戦だ





それでもマカ達は





『魔女が来るまで、粘るとするか』


「うん!今度は私達の番だ!!」





月までの道中で聞いた魔女界での交渉と結末


そして、キッドと


"魔女を信じる"と決めた その想いを信じていた







身体全体で鎌を振り回し、一撃ごとに道化師の胴を薙ぎ
或いは顔面へ刃を喰いこませ


そこを支点に自身の体重をかけ


巴投げの要領で眼前の敵へと投げつける





構わずに一体が硬化した両腕を叩き付けるも
柄で防ぎ、間を置かずビットでの砲撃で片づけ


そのまま彼女はビームで包囲を敷く敵を焼き切る


「次!!」





また一方では、縦横無尽に地を駆ける脚力を持って
上へと突き上げた道化師達を





何だこれ?鬼神戦の準備運動にもならねぇぞ!」


彼は己の影と妖刀とでバラバラに切り裂いてゆく







…そんな圧倒的な光景は


デスサイズのパートナーを務めるズパイダと
アレシャンドラにとっても目覚ましいモノだった





すごい!これが現役死武専生の力なの…」


「あの子たちがバケモノなだけだけどね」





"普通"を知るシュタインには余計、進んで先陣を切る
マカとブラック☆スターが規格外に思えた





そんな規格外の猛攻を受けても


狂気はなお収まらず、道化師の攻撃も止まない





『倒しても倒しても復活してくるわ』


「適当に遊んでりゃキッド達も来るだろ」







―――――――――――――――――――





月面でのブラック☆スターの軽口へ示し合わせたように





「確認いたしますが本当に直進してよろしいのですか!」


「安心しろ、魔女は絶対月に来る!!」





飛空艇もまた敵射程圏内に突入していた





「この速度では回避行動はとれません!!」


「そのまま突っ込め!!」


レーザー攻撃の直撃を喰らってもなお直進する





船を撃ち抜かんと宙高く浮かび上がった
月光の身体を砲身として、迦具夜が力を放つ





竹美迦筒(タケミカヅヅ)!!
妾(わらわ)には突っ込ませぬぞ!!」






その魔力と狂気の波長が先に伝わってか

脂汗をかいたが、頭を押さえて歯を食いしばる





「前方より高エネルギー反応!!」


「総員!!衝撃に備えろ!!」





命令を飛ばしたキッドは





「さあ魔女よ!!これがオレ達の誠意だ!!

オレ達の前に姿を現すのだ!!」






まっすぐ伸びる一撃へ向かい合い 両手を広げて叫ぶ







―そんな強い期待と信頼を







裏切るかのように、飛空艇へエネルギー弾が直撃し
上半分がごっそりと抉り取られた






「敵弾直撃!!機体大破!!
魔道飛空艇 墜落します!!」






衝撃に総員が耐える事こそ出来たものの


被害は甚大で、急ごしらえの修理である事も相まって


船は炎を上げ破片を撒き散らしながら急激に高度を下げる





「こ…来ないのか…」





起こった現状と無残な現実が、彼らの心に絶望を貼りつける





「そんな…やっぱり…!」


「アイツら始めから、これを狙って…!?」





けれども、沈みゆく船の轟音と悲鳴に似た仲間達の呟き


何よりも己の疑心に負けないよう





「いや!!オレは信じる!!」


張り上げたキッドの声に応えたのは









「にゃむ」


前触れもなく船内へ姿を現した 魔婆だった





「魔婆殿!!」





ほぼ同時、飛空艇から目と鼻の先に
月面に勝るとも劣らぬほどの大きなゲートが現れ


―そこから 魔女達全員が飛び出してくる







「ごめんごめん!月はジャミングが強くて魔婆様でも
ゲートを固定するのに手間取っちゃって

って遅かった?」





エルカのオタマ=ジャクソンに相乗りしたキムへ
オックスとジャクリーンが、嬉しそうに首を横に振る





狐の魔女も不機嫌そうながらも空を舞い





おお!すごい!!一瞬で着いたな」


「いつの間にかデケェのがいる!!」





船内には魔婆の他にもフリーが到着していた





「やった!!来ましたよ先輩!!」


「良かったわね…ってあれ?は?」


「そこで気絶してます」


うおっ!?おいコレ白目剥いてるぞ大丈夫か」


「うひゃ〜ホントだ!叩いて起こしちゃう?」





…が、喜んでいられたのも束の間





「オイオイ!そんな悠長なこと言ってんじゃねぇぞ!!」





現在進行形で落下していた飛空艇は墜落し


船体は月面に叩き付けられ、粉微塵に砕け散る









…だがしかし





「にゃむ」





乗っていた者達は魔婆が張り巡らせた空間魔法
空間を支配したバリアーにより全員無傷で着陸していた





「さすがだな…オレの空間魔法とは魔力の精度が違う…」


良かった、みんな無事みたい…」


「早速作戦に入りましょ」





空に浮かぶ魔女達の大多数と、計算に長けたエルカとキム


そして月面の魔婆とフリーが呪文を唱え始める中







気を失っていたが意識を取り戻し 起き上がる





「…っぶは!?アレ、生きてる?てかお前ら急すぎ!
いやそれよりクソ痛っ!何だこの魔力!!


「おお!気が付いたか」


「まあね、てゆうか遅ぇよ…俺達を殺す気か」


「そうならんようわざわざ貴様自身に処置を施したのだ」





和装の魔女は刺々しく言い放つが、見上げる彼の鳶色に

怒りはあれど憎悪は鳴りを潜めていた





短時間の解析を元にした阻害防止及び耐久措置は荒く


互いに信用が無い者同士、こんな状況でもなければ
絶対に許可しないモノだったのだが


きちんとソレは作用を果たして魔法を邪魔せず


彼もまた、瀬戸際ながら魔力と狂気に飲まれずにいる





「ああ、おかげさまで最悪な気分だが
それでも動ける マジで感謝してるぜ





言いつつ彼が浮かべたぎこちない不敵な笑みは

死武専の者達にブラック☆スター





古き魔女には


当時恐れられていた"双剣"を十分に想起させた





鼻から息を吐いて、狐魔女も呪文を唱える







『ソウルプロテクト!!』


「マジックカリキュレーション!!」





次々と魔法が展開されてゆき





「船は堕としたが…魔女だと!!
女も妾(わらわ)の体を狙うか!!



「どういうことです?」


虚を突かれ、事態を飲み込めずにいる道化師達と





「きたか!!」 「なんと!」


『こりゃ歴史が変わるぜ!』


信じて待ち望んでいた死武専側の視線を受けて





「フリー!魔婆様!!」


固定した座標の情報を魔力越しに受け取り





「「フォワーディングプロテクション!!」」





シンクロ発動させた両者の魔法により、空中の魔女が
張っていたソウルプロテクトは剥がされ


無事に道化師達へと転送されて発動する






「キッドが魔女の増援を連れてきた!」


『よし!これで!!』





鎌で再び斬り伏せられた道化師へまたぞろ狂気が這いよるが


プロテクトによって弾かれ、復活を許されず
斬られた身体はぐずぐずに崩れる






戸惑う道化師の軍勢を他所にプロテクト弾は次々と
生み出され、敵の無限増殖へ歯止めをかけてゆく





「どうやらギリギリで間に合ったみてぇだな」


「ええ…一時はどうなる事かと思ったよ」





キッドを先頭に増援として駆け付けた死武専生は





「さあ、反撃開始だ!!」





世界を護る逆転への狼煙をあげるべく 立ち上がる








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:半年以上お待たせして本当にすまねぇ!(土下座)


フリー:待たされたな、ああ待ちくたびれたさ!
それにしてもあの小僧は何故気絶したんだ?


狐狗狸:飛空艇大破の辺りで膨大な魔力を
急に受け取ったからキャパオーバーしたんですよ


狐魔女:軟弱な、"双剣"の血も安くなったものよ


マリー:本当どんな人物だったのかしら…何にせよ
魔女が来てくれてよかったわ


キッド:はい、から最上級の謝罪として
"土下座"がいいと教えてもらったのが役に立ちました


ブラック:おお!それオレが教えたヤツな


マカ&ソウル:今管理人がやってるアレやったの!?




次回、魔女達との共闘による道化師掃討へ!!


様 読んでいただきありがとうございました!