「よし…とりあえず一人終了っと」
魂も無事に回収したので、僕は一息ついて
近くの古木に寄りかかる
本来はまだ狩る魂が残ってるんだけれど
ここまでで結構しんどかったので
少しだけ休んでから 二人と合流しよう
…ソウル君がおそわれた経緯について
詳しく知らされることはなかったけれども
あの一件以来、"課外授業"は二組ベースになった
でも僕は組んでくれる人を見つけ出せないまま
仕方なく一人で 彼らと行動するコトになっている
基本、魂の波長を使って戦うのは職人で
武器は彼らのサポートでしかないけど
中には特定のパートナーがいない職人や武器もいて
その場合 一時的に組んで戦うやり方が主流だ
…けど一部の職人ないし武器だと単独で
"課外授業"や"任務"をこなすコトだってある
かくゆう僕もその一人なんだけど
「やっぱり一人はキツイなぁ」
早いトコ職人の誰かと固定でパートナー組みたい
だけど肝心のパートナーが 中々見つからない
「はぁ…」
今更ながらのため息を少し深めについた
さほど成績がいいワケでもないし、今だって
なんとか補習をギリギリで免れてる感じだ
「こんなのいつまでも続かないだろうし
本当に、どうしたもんか」
「ひゃっはぁぁー!お、じゃねぇか!!」
Primo episodio 躁天霹靂
呼ばれた方を見上げれば 側の岩山から
落下して見事な着地を決める人影が一つ
「あ、ブラック☆スター君…魂集まりました?」
「実は…また逃げられちゃったの」
苦笑混じりで答えたのは、鎖鎌から
人の姿になった椿さん
「そうなんだ…大変だったね」
「オレ様のBIGな口上に恐れをなして
逃げやがるとは…まったくなってねーヤツだぜ!」
名乗りを上げたから逃げられたんじゃ…とか
思うけど、それを口に出来る勇気はない
「ええと、君の方はどうかしら?」
「はい あの一個はなんとか」
「一個とか見た目通りショボイな〜
まっ、信者だからしょうがねーか!」
「…あのーやっぱり僕、信者確定なんですか?」
たずねれば ブラック☆スター君は
当然!とばかりに胸を張って言う
「おうよ!お前は遅まきながらもオレ様の
偉大さに気付き 心から賞賛しただろ?」
…その言葉にウソはない
あの時は、彼のそーいう姿勢を本気で
スゴイと思ってたから
けどそれがこんな形で裏目に出るなんて
「じゃあ信者でいいですけど…それより
この後のノルマ、どうします?」
「あん?小せぇヤツだな そんな目先に
こだわってちゃオレの時代について来れねーぜ!」
「た…たしかに、ついて来れないかも」
その強引さとハイテンションっぷりには
「まったく…そんな事言ってたら
また補習になっちゃうかもしれないわよ?」
「補習が怖くてスターが目指せるかぁ!」
ため息をつく彼女の気持ちも分かる気がする
…暗殺者として、本当に実力はあるんだから
目立とうとするのだけをガマンすれば
あっという間に椿さんをデスサイズに
出来そうなのに…つくづくもったいない話だ
まあ僕がそんなコト言う筋合いないんだろうけど
と、黒い瞳がジッとこっちを
見つめているコトに気付いてビックリした
「な、なんでしょうか…」
「そういやと組んだのは初めてだがよぉ
…パートナーの職人はいねぇのか?」
今更な質問を真顔でなげかけられてちょっと戸惑う
「ああうん、特定の人は中々…」
「そっか でも君もがんばってるし
いつか素敵なパートナーが現れるよ」
「気持ちはうれしいけど…少し難しいかも」
特別相性がいい人か、僕みたいな武器を
上手く扱ってくれる人がいれば別だろうけど
中々そう上手く行かないんだよね 現実は
「なんだヘコんでんのか、なっさけねぇ信者だな
よーし!ここはオレ様が一丁自信つけてやるか!」
「「え?」」
あのー、ブラック☆スター君
どうして指鳴らしたり肩回してるんですか?
「じ、自信って…あの一体なにを?」
問いかけると思い切り肩をつかま…痛っ!
イタタっ加減してよっ!!
「BIGなオレの波長を受け取れば、お前も
成長するきっかけになんだろ?ってことだから
一発共鳴試してみよーぜ!」
いや頼んでないんですけど…それより
今はそもそも課外授業中なんですけど!
こっちのあせりが伝わったらしく
「ね、ねえブラック☆スター それは授業が
終わってからでもいいんじゃないかしら?」
椿さんが止めに入るけれども、彼はそれで
大人しく言葉を聞き入れるタイプじゃない
「安心しろって椿ちゃん、オレが本気出せば
すぐケリがつくからよぉ!つーことで、なっ」
「う…は、はい じゃ変化します…」
渋々ながらも了解し、本来の姿で地面に横たわる
そう言えばちゃんとハサミに変身するのって
マカさんたちとの任務以来だなぁ…
「お〜意外とデケェな!」
『さすがに一般的な大きさだと武器には
なりにくいと…思いますけど』
持ち手に相手の両手がかかって
やたらと鼻息を荒くしながら、ひどくゆっくり
身体が持ち上げられていくけれど…
「ぐおっ…お前も重てぇのか!?」
『"も"って…てゆうか僕が重いって
それ、単に波長が合ってないだけじゃ…?』
腰だめの体勢からピタリと止まって
それ以上は持ち上がりそうになかった
たしか、ソウル君と共闘しようとした時も
"鎌に変わった彼を持ち上げられなかった"
とかって聞いてるし…
『あの、僕が悪いってコトでかまわないので
無理して持ち上げなくても大丈夫ですよ』
出来るだけ相手の機嫌を損ねないように
やんわりと断りの言葉を口にする
下手して"魂の波長"を打ち込まれるのはゴメンだ
「あん?オレがテメェ程度持ち上げられねぇと
思ってんのか!?バカにしてんじゃねーぞ!!」
『いやあの、そんなつもりじゃ』
「ブラック☆スター 彼だって困ってるし
続きはデスシティーに戻ってからでも…」
椿さんからのフォローが入るけれども
「椿、悪ぃけどよぉ…コイツはオレの
意地の問題だ!黙ってそこで待っててくれ!!」
彼はガンとして首をタテに振らなかった
……何だかゼイタクな人だ
僕なんかに、そんなにムキにならなくたって
もう強くて理解し合えるパートナーがいるのに
それをないがしろにしてまで意地を張ることに
意味なんてあるんだろうか?
一時的にでもソウル君とコンビ組もうとしたり
伝説の聖剣をキッド君と取りに行こうとする
行動力は本当にスゴイと思うけど
本来のパートナーをおろそかにして
申し訳ないとか考えないのかな…
チャラリ、と耳障りな音がかすかに聞こえた
そう思った途端に いきなり僕は地面に投げ捨てられた
『痛っ!急に放り投げな…』
手放されて打った腰をさすりつつ人の姿に戻れば
そこに見えたのは、ヒザからくずおれる椿さんと
さっきまでいなかった男の姿
「おいテメェ!椿に何しやがった!!」
叫んだブラック☆スター君へ、黒い影みたいな
相手がこっちに振り返って…
その時 なにが起きたか分からなかった
地面を蹴って、一瞬で距離をつめたハズの
ブラック☆スター君の身体が
次の瞬間には後ろに吹っ飛ばされて
「ぶ、ブラック☆スター君っ…グアァァ!!」
駆け寄ろうとした僕もまた
顔の真横を、重たいなにかで殴られたような
衝撃を受けてなぎ倒される
「ずっと観察してたけど 普通のハサミには
興味がないんだよ、残念ながらね」
「オレ様無視して信者に語りかけるとは…
いい度胸してんじゃねぇかコラァァァァ!!」
痛む頭とゆがむ視界の中で
金属がこすれる音と、ブラック☆スター君の
叫び声が耳に響いて
「降りてきやがれ!
椿をどうする気だ!!」
「何、彼女は武器として興味があるのでね
大切に飾らせてもらうだけだよ」
顔を上げればあちこちがえぐれた岩山の頂に
ぐったりとした椿さんを抱えた男が、下にいる
僕らを見下ろしていた
「それでは私はここで失礼させてもらおう」
「逃がすと思ってんのか!待ちやがれ!!」
男の姿が消え去るのを待たずに
彼は、すぐに岩山を登って後を追い始める
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あとがき(というか楽屋裏)
ブラック:ヒャッハアァァ〜!!(ベベン!)
待たせたな小物ども!ついにオレ様の話だぜぇ!
椿:ブラック☆スターったらあんなにハシャいで
…ゴメンなさい管理人さん
狐狗狸:大丈夫諦めてるから、てゆうか
捏造長編二回目にてイキナリ拉致られ(?)展開で
こっちこそゴメンね
ブラック:おぅおぅおぅ、なーに二人して
ヘコみまくってんだ?オレを見れば元気になるぜ!
椿:そうね…所で舞台や今回登場したあの人は
どういった方なんでしょうか…?
狐狗狸:一応おぼろげには決めてますが
まーその辺りは 恒例の次回以降で
時期は妖刀編が終わった辺りのつもりです
割合原作に近めながらも、オリジナルな
要素とか出せればいいなーと奮起します
様 読んでいただきありがとうございました!