新しく出来た 店の早食いを制覇して
外へ出ると、雨が降っていた





「あちゃ〜降ってきちゃった
折りたたみの傘持ってくればよかったな」


『だからアレほど言ったのに…』


半透明のコタロウが 溜息混じりに呟く







確かに今日のお天気、雨が降りやすいって
言ってたけどさ


大丈夫だと思ったんだもん…





「まあ もう起こったことを悔やんでも
仕方ないよ、少し雨宿りしていこう♪」


『そんな余裕があるのか?
今日は反省文提出の締め切りだぞ?』


コタロウにそう言われて







「…明日まで待ってやる、それまでに反省文を
書き上げて 提出しに来い、





この間の請求書の件で、反省文を
明日まで期限を延ばすから書き上げてこいと


タイザン部長に言われていたのを思い出した












〜「雨が呼び込む一波乱」〜













「うわーそうだったっけ、じゃあ急いで届けに行かなきゃ!」







反省文は出来上がってて 非番ながら
持っていく所だったんだけど





割と最近出来たお店で早食いチャレンジ
やってたから、つい…





今から行って タイザン部長の雷
もらわないかどうか微妙なところだ







私は溜息を一つつくと 闘神符を取り出した


まず一つで傘を作り出して、雨を防いで

続けさまもう一枚取り出す





 あまり闘神符を乱用するな』





コタロウが心配そうに私を見つめる





「大丈夫大丈夫 これ一枚だけだし
ちょっと近道するだけだよ」





だって、背中にしょってるカバンの中の反省文


某月刊雑誌ぐらい量があって重いんだもん









移動用の闘神符を発動させる為に


人気のない所を探して、近くにあった
雑木林の側まで移動した







その時 雑木林の向こうで銀色のモノがちらついた







よく見ると、それは銀色の髪と
狐の耳に尾を持つ 見覚えのある式神だった





「ねぇコタロウ あれって確か、さんの…」


『ああ、間違いないな


指差す私に コタロウは深く頷いた









二年前まで地流に所属し 高い実力を
持っていた闘神士― さん





違う部隊に所属していたけど


彼女はミズキちゃんの親友で たまに話を聞く事もあった







生憎 私は当人に会ったことはなくて

とある件をきっかけに地流を抜けた事しか知らないけど





そのさんの式神が、あの六花族だった筈







名前もちょっとだけ聞いたことがあったけど

すっかり忘れちゃってて出てこない…









「何でこんな所にいるんだろう?迷子なのかな?」


…式神は普通、迷子になどならんぞ』


「そんなのわかんないじゃん、一応
声かけてみるね……おーい!





呼んでみたけれど ちょっと距離があるせいか
声が届いてないみたい







雑木林の中を少し進み、私は再度呼びかける





「おーい、そんな所で何してんの!
雨降ってるから そのままだと風邪引くよ!!






今度は聞こえたらしく 六花族がビクっとこっちを向いて







「……だ、誰だ あんた?


何故かおっかなびっくり、こっちによって来た





近くの木陰に移動しながら 雨を防いでいるみたい







「あなたさんの式神よね?
二年前まで地流に所属してた…」


「そうだけど お前、の知り合いなのか?」


「直接じゃないけどね、私のこと 知らないかな?
って言うんだけど」


「…言われてみれば、俺もあんたに見覚えがある





金色の目が ジッと私を見つめている







やがて、思い出したのか目を見開いて


「お前 ひょっとして青龍族で最強の式神使いって
言われてた奴だろ?」


大当たり〜ちなみに一応、現在進行形だけど」


「…あと、ビル内の食堂でブラックリスト
乗ってたよな 確か」


「うっ、余計なことは思い出さないでほしいな〜」





苦笑して、ふいに私は 彼女の名前を思い出した





「所で、どうしてこんな場所にいたの
えっと…


「名前知ってたのか…ちょっと、道に迷ってな」


妙に歯切れの悪い答え方するなぁ





私の心を代弁するかのように





本当に 道に迷っただけなのか?』


さっきまで黙ってたコタロウがさらに問い詰める





「っそれだけだよ、迷ってちゃ悪ぃ…」





言葉の途中で 顔をさっと青ざめさせて





急に が私の後ろにある
大きめな木の陰に隠れた







「…どうしたの?」


何も聞くな!俺はここにはいない
俺の事は黙っててくれ!!」


ワケが分からない返答をされて 少し戸惑っていると







「おや、嬢ちゃんじゃねぇですかぃ」


「…あ オニシバさん、こんな所で
会うなんて珍しいですね」





白いコートにサングラスをかけた式神が

番傘を差して、こっちにやってきた







オニシバさんは、タイザン部長の式神だけど


何を考えているのかは
契約者のタイザン部長も分からなくて





最近 妙に一人でうろつく事があると聞いている







「…タイザン部長は一緒なんですか?」


「いや、あっし一人でさ」





その言葉に 今回はちょっとホッとした





「でも何で 一人でこんな所に?」


「ちょいと野暮用がありやしてね…嬢ちゃん
この辺で六花族を見かけやせんでしたか?」


「六花族が、どうかしたんですか?」


「恥ずかしながら逃がしちまいやしてね
追いかけてきたんでさぁ









何でか知らないけど 彼が探してるのは
恐らく 後ろのだろう





……どんな事情かはわからないけど





かなり困ってるみたいだったなぁ







「見てないですよ?」


「おかしいねぇ、こっちに来たと思うんですが
本当に 見てやせんかねぇ





射るような視線が 真っ直ぐ私に突き刺さる







うーん、この人 タイザン部長と同じくらい勘が鋭いみたいだし


長く嘘をついてられる自信はないなあ





…何か別の話題を持ちかけられれば いいんだけど





「あ!」





私は思い立ったように 背中のバックから


「そうだオニシバさん 私、反省文
書き上げてきたんですよーはい!





今日提出の反省文の束をオニシバさんに手渡した





…式神といえども、やっぱり今回の量は重いみたい







「それ、タイザン部長に渡してもらっていいですか?」


嬢ちゃん こういうのは、自分の手で
渡した方がいいと思うんですがねぇ」





咎めるようなオニシバさんの視線に


私は少し罪悪感を憶えながらも口を開く







「そうしたいのは山々なんですけど、期限ギリギリ
結構遅くなったから 直接渡すの怖くって…」


「だったら、もう少し早く仕上げるよう
心がけたらどうなんだ 







いつの間にか オニシバさんの後ろから


タイザン部長がやって来ていた





…腕を組んで顔をしかめてる、かなり機嫌が悪そう







「タイザン部長、来てたんですか…」


「ああ、たかが反省文を期限内に提出する位で
愚図つくお前に迎えを出そうとしたのだがな」





言いながら、オニシバさんを睨みつけて





「こいつが勝手にどこかに行ったせいで
こうしてワザワザ出向かされたわけだ」


「ご…ごめんなさい、部長」





雷が落ちる前に、私は素直に謝った









部長は オニシバさんの方に歩み寄って





「それが反省文か…貸せ


「ヘイ、旦那」





反省文を受け取ると ザッと目を通し始めた









「……あの、どうですか?」





一通り目を通し終わってから、黙ったままの
オニシバさんに反省文を手渡し返して


タイザン部長が私の方を見た







「…ふん まあいいだろう、ご苦労だったな
もう帰っても構わんぞ







幾分か柔らかくなった口調でそう言われて

私は、肩の荷が下りた気がした





「ありがとうございます!」


「…さて、私はそろそろ本社に戻るから
余り寄り道せず帰るんだぞ」


子供扱いしないでくださいよ〜
寄り道しないでちゃんと帰りますって」


「だといいがな…明日は遅刻するなよ」





そう言って、タイザンさんが本社に向かって歩き出す







「こんな所で油を売るな、行くぞオニシバ!」





怒鳴りつけらて オニシバさんは溜息を一つつき





先を行くタイザン部長に続いて、


反省文をしっかり両手に持って立ち去った











「…… もういいよ?」





少し あたりを確認してから、ゆっくりと
が姿を現した







 助けてくれて、ありがとよ
何か礼がしたいんだが…」


「いいよお礼なんて」





少し謙遜して手を振るけれど、は承知しなかった





「それじゃ俺の気がすまねぇよ」


真剣な眼差しに 私は少し戸惑った







真直ぐで、男らしい子なのね


ふとそう思って 自然と笑みが零れた







「そうだね…じゃあ お礼に何か
おいしいものを作ってきてよ」


「ああ、任せてくれ これでも料理は得意なんだ」





その言葉に 私は目を輝かせた





「本当!?じゃあ今度 さん家に行くから
おいしいもの、たっくさん作ってね!


「…ああ!望む所だ!!





自身満々なの様子に 逆に私が心配になった







―いいのかな?私 結構食べる方だけど…











後日 私はさんの家での手料理を頂いていた







おいし〜いって本当に
料理上手なんだね〜羨ましいな〜」


「……良く食うな





が苦笑交じりで 私の席に
出来たての料理を運んできた







「でも 見ていて気持ちがいい食べっぷりよね」





隣の席に座るさんが 楽しそうに笑う





ありがとうございます!


「食うのはいいけど、喉につっかえんなよ?


カラになったお皿が 大盛りの料理が
乗っかったお皿と取り替えられた





「わかってるって、この料理も美味しそう…」


『… もうその位にしておけ』





コタロウが圧し留めるように呟く







「うー…あと、もう一品だけ!
それでもうおしまいにするから」





そう謝ってから 食べ始めると


諦めたようにコタロウは黙り込んだのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:大変遅くなりましたが 小豆様のサイトが
十万ヒットという事で、お祝いに共演夢を書きました〜


タイザン:…小豆よ 私も心から祝わせてもらおう


オニシバ:あっしにも出番があるのはいいんですがねぃ
…旦那に雷食らうのはもうこれっきりで勘弁でさぁ


狐狗狸:仕方ないじゃん それは自業自得って奴だよ


コタロウ:…今回の話もやはり 恋愛よりは
キャラクターの絡みが中心だな


オニシバ:この管理人は 意識してても恋愛っぽい雰囲気
いまだに書けやせんしねぃ


タイザン:こやつは時間と労力を、相変わらず
無駄にする奴だな(溜息)


狐狗狸:それは言ってくれるな!!




様お借りした上に 恋愛要素がないような
駄文で本当にスイマセンでした(←最悪)


小豆様、こんなんでよければ差し上げます
改めて10万ヒットおめでとうございました!!