それは 二年程前の話―







任務が終わって 報告書の提出もすみ

一息ついたが 自販機でコーヒを購入したときだった





さん…明後日 お暇ですか?





ゆっくりとした足取りでやって来たミズキが
挨拶もそこそこににこう聞いてきたのだ





明後日?うーん、多分ヒマだと思うわよ…
それがどうかしたのミズキちゃん?」





コーヒーを一口含みつつ 問い掛ける


ミズキは 少々照れながら言葉を紡ぐ





「ここ最近仕事ばかりで 中々皆と話が出来ないから
内輪でちょっと、お茶会でもしたいと思って」


「あら それって本当?」


「そこで さんにも来ていただけると
嬉しいんですけど…」


「私を誘ってくれるの?」







親しい者が今まで身近にいなかったにとって
この手の誘いは初めてだった





「はい、ご迷惑でなければ…」


そんな事ない!嬉しいわミズキちゃん…
是非参加させてちょうだい」


は迷わずお茶会への参加を決めたのだった













〜「ささやかなお茶会」〜













当日、は少しお洒落をして外出した





『やけに張り切ってるな 





神操機から 少し顔をしかめたゲンタロウが現れる





「だって こういうお誘いは初めてだもの
いいじゃない、たまには少し浮かれたって♪」







そう言われて 返答に困るゲンタロウ


…それもその筈







唯でさえ普段 その目立つ顔立ちで注目を集める


滅多にしないお洒落をした嬉しそうな顔が

道行く人 特に男性の視線をより集めている





彼女に思いを寄せているゲンタロウとしては

それが面白くないのだろう







『それにしても、がお洒落とは珍しいのう


『やはり 女の子なんじゃなぁ』





こちらも神操機から出るなり 物珍しい目
を眺めるイザヨイとゲンパク





「何よ 私がお洒落してるのがそんなに変?」


そんな事ない、可愛いぞ
…あ、いや 別に変な意味はないんだっ』


「変なゲンタロウ」





顔を真っ赤にしながらバタバタ手を振るゲンタロウを
は可笑しそうに笑った







『…気づいておらんのかワザとなのか、
それはそれで興味があるのぉ』


『というより 色恋沙汰に縁がないだけではないかぇ?』


イザヨイとゲンパクは ゲンタロウにほんの少し同情した











待ち合わせ場所のカフェテラスには
少し大きめのバスケットを持ったミズキがいた


まだ午前だからか 店内の客は数えるほどで

周囲の植え込みを、業者の人がハサミで整えている





「お待たせミズキちゃん!」


さん おはようございます





駆け寄ってきたに気づき、ミズキは軽く会釈した





「今日はお茶会のお招きありがとう」


「いえ こちらこそ参加していただいて嬉しいです」


「所で…お茶会は私とミズキちゃんの二人だけなの?」


「いいえ あと、私の親友も一人来ます…あ 来ました







ミズキの視線の先にも顔を向けると、一人の少女が
ロングスカートをひるがえして こちらへと駆け寄って来るのが見えた







金色がかった綺麗な茶髪 白くて艶やかな肌


瞳の色が黒でなく青なら、フランス人形のような美人






「お待たせ、ミズキ!」


「珍しいわね 遅刻よ


「ゴメンね、ちょっと支度に手間取っちゃって」





苦笑を漏らしてミズキと短い会話を交わした後

少女はの方を振り返った





「初めまして、私は と言います」





笑顔でお辞儀した彼女の顔に は見覚えがあった


(確か彼女は、同じ地流の闘神士だったはず)





だったはず と言ったのは

まだが、一度も会話した事がなかったからだ





それでも 彼女が地流の中で格上の実力者だと言う事を聞いていた







…実際に会ってみると、随分イメージが違うな

ふと思いながらも はニッコリ微笑んだ





「こちらこそ初めまして、私は 
よろしくねちゃん」







ちょうどが自己紹介を終えたタイミングで


の後ろから タタタ…と何かが駆け寄って来た





がそこに視線を向けると

小柄な女の子が睨み返してきた







金色の眼、本当に白い肌、淡い青色のキレイなドレス


そこだけ見れば妖精のような女の子には

銀色の髪と同じ色の狐の耳と尻尾がついている





ちゃん…後ろでこっちを睨んでいるのは?」





のその問いかけに答えたのは ではなかった





「…俺は六花の の式神だ」


外見に見合う高く澄んだ声で 外見にそぐわぬ
男っぽい口調で 式神が答える





ゴメンなさいさん この子、まだ人になれてなくて」





の頭に手を置きながら に謝った





「もう 他の人を睨んじゃだめよ?
綺麗な服を着て笑顔でいれば 可愛いんだから


「… 俺が式神だって事忘れてないか?





笑顔でいさめるに、不服そうに返す







 ひょっとして、遅れたのってちゃんが原因?


「ええ、本当は朝早くに用意してたんだけど
この子ったら中々ドレスを着てくれなくって」





ミズキに苦笑交じりで返す







当たり前だ いくら休みだからって
また、こんな動き辛い服着せやがって…」


「え…またって事は いつもそんな事してるの?


の言葉に驚いて 思わず問いかける





「ええ、やっぱり触れ合うことが
一番コミュニケーションが取れると思いまして」


「そんな事が言えるのは だけよ?





こともなげに さも当たり前のように答える
呆れ交じりの微笑でミズキが言った







「朝からずっと式神を降神していて 平気だなんて…」





普通ではとても そんな事は出来ない


実力に違わず 相当な気力の持ち主なのだろう








ふとそんな事を考えていた


唐突にが言い放った





「アンタ その場所から離れろ


「…え?」





言葉の意味を理解するより早く


に突き飛ばされた





「ちょっと!何す―」


その直後


さっきまでがいた場所に

枝切りバサミが刃を下に向けて落ちてきた







三人が凍りついてその場を動けなくなる中


業者の人が謝りながら ハサミを持って立ち去った





「危なかったわ…ありがとう、ちゃん





ようやく立ち上がったに礼を告げた





別に 予測の像が見えただけだから」


少し照れたような顔をして 素っ気無く返す





「…それじゃ 皆揃った事ですし、行きましょうか





ミズキが微笑んで を促した













お茶会の会場である自然公園の一角に レジャーシートを広げて


ミズキがバスケットの中から道具やお菓子を取り出して

お茶会の準備を整えていく







「この紅茶美味しいわミズキちゃん」


「ありがとうございます、さん」


「クッキー美味しい?


「…ん 美味いよ」





女の子達四人は 風景とお茶を楽しみながら


それぞれ取り留めのない話に花を咲かせた







『ミズキ様は意中のお方がいて
よくさんに相談なされるんですよ?』


「クラダユウ 余計な事言わないで


『ほう、女子らしい話題じゃのううちのとは大違いじゃ


「ちょっと どういう意味よイザヨイ!





ちゃっかり その会話の中に、神操機から現れた
イザヨイとクラダユウが加わっていたりする





『ずるいぞイザヨイ…オレだって、オレだってと…っ


『こういう時は 無闇に口を挟まんほうがいい
昔から立証されているぞ ゲンタロウ』


…勿論 後の男二人は置いてけぼり(笑)









「そういえば、ミズキちゃんとちゃんは
どのぐらい長い付き合いなの?」





紅茶をひとすすりして、何気なくたずねる






「かなり昔よね えっと…何時からだったかしら?」





少し考え込みながら に尋ねるミズキ







「そうね、確かあれは 私とミズキが初めて
二人でコンビを組んで任務を行ったときよね?」


「そうだった、思い出したわ…確か初めて
私たちが口論をしたときよね」


「ミズキちゃんが?」





初めて聞いたその事実に は驚きを隠せなかった





「そうなんです、標的の妖怪を掃討する任務だったんですけど
警告をしただけで 妖怪を見逃したから…」


「襲ってきた奴もいたのに 金縛りしか使わなかったから
しばらく、謹慎させられたんだよな」





苦笑するミズキの言葉に その時の扱いが不満と言いたげに
が顔をしかめる







「任務を無視して?一体 何のために?


信じられないといった表情で は問いかけた







「あの時の妖怪は、ただ住処を追われて仕方なく
周りを攻撃していただけだったんです だから…」


深く息を吐き出してから、ゆっくりと は言葉を紡ぐ





私は争いごとが嫌いです 争って傷ついて…
悲しい思いをするのもさせるのもどちらも嫌なんです」





一旦言葉を切ってから 少し寂しげには微笑んだ







「だからなるべく害を及ぼす相手じゃない限り
闘わないようにしたいだけなの


あの時もそう言ったら口論になったのよね?」


「…ええ、そうだったわね





ミズキが苦笑交じりに同意する









今まで はそんな事を考えたこともなかった





敵である者達すら 傷つけたくない、なんて

にはとても考えられなかった







けれど そんな風に考える少し羨ましく思った









「あなたは少し優しすぎるわ
でも、嫌いじゃないわ その考え方





心の底から はそう言った







気が合うな 俺も…そう思う、ドレスはゴメンだけどな」


の台詞に同調するように も苦笑いする





「そんな寂しい事言わないで
にはドレスが似合うのよ!


さっきの雰囲気はどこへやら、急に意気込んで
の腕を取った







「…ねぇミズキちゃん ちゃんって
ちゃんのこと大好きなの?」


「ええ、ほとんど親バカに近いくらい溺愛してます」





にささやかれ、ミズキが何とも言えない複雑な表情をした











その日のお茶会は とてもとても賑やかで楽しいもので
は束の間の幸せを感じた





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おまけ





お茶会がお開きになり 片づけが終わった直後


「あれ?ちゃんは?





の言葉に気がついてみれば、の姿が消えていた







「本当だわ!大変 また迷子になっちゃったのかしらっ!
悪い男に引っかかってたらどうしよう…!!


 心配しなくても、きっとまた
伏魔殿名落宮に無事でいるわよ」





戸惑うに 落ち着いて答えるミズキ







その時点で既に無事じゃないと思うんだけど、とか


そもそも式神なのに迷子になっていいのか、とか


ツッコミたい所はいろいろあったが

はどこからツッコんでいいのかわからなかった







一方







「…何でゴミ捨てた帰りで 伏魔殿にいるんだよ俺は」





ミズキの言葉通り 伏魔殿に迷い込んでいる





「ん お前は……の式神か、またそんな格好をしているのか


ちょうどそこに 何故かユーマが通りかかった





「好きでしてんじゃねーよ ってか何でここにいんだよ


「人の勝手だ その言葉はそっくりそのまま返す…
まあ、また迷子になっただけだろうがな」


うるせえ大きなお世話だ…そっちこそ、どうせ修行だろ?」





この直後 何気にケンカ腰になってる二人の前に
が現れて色々とひと騒動あったとかなかったとか








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:希沙斗さまの夢主様との共演夢です〜一万ヒット
おめでとうございます……って 激遅くなってもうすぐ二万ヒットの上
頂いたものと釣り合わない駄文ですいません!!


ゲンタロウ:全くその通りだな しかも前回よりも
とオレとの絡みがすくなゴファッ!


狐狗狸:(ゲンタロウに飛びヒザ蹴りかましつつ)やかましっ!
てゆうか 夢になってないかもですね…アハハ(空ろ笑い)


イザヨイ:しかもユーマなんぞ 無理やり出てきておるしのう…


狐狗狸:はい仰るとおりですとも、ぶっちゃけリクエストに
添えてるかすらも不安なんだあぁぁっ!!
(逃)


ゲンパク:相変わらずテンションの上げ下げの
激しい管理人じゃな(溜息)




こんなんでよろしければ贈呈します…ってか 返品や
書き直し等OKですので!



希沙斗様 本当にスイマセンでした、では!