今日も昨日と同じく、夜勤が無い日


 それなりに忙しい仕事も片付いたんで
 物陰で一服やってたら 近藤さんが現れる





 「お、いたいたトシ!探したぞ」


 「近藤さん 何かあったのか?」







 タバコを踏み消しつつ訊ねると





 近づいてきた近藤さんが、ビッ!
 勢いよく親指を立てて笑う







 「何かも何も 今から外で
 飲みに行くんだよ」


 「あん?今日何かあったっけ?」





 聞き返す言葉に返さず、この人は
 有無を言わさずオレの腕を引いて





 「いーから付き合えって!」











 「酒でなんのはトラでなくバカ」











 ちょっとその場で踏ん張りながらも





 やや強引な態度のワケを何となく察する







 この人がこう言う時は決まって


 お妙さんに袖にされたグチ
 誰かにこぼすヤケ酒だ





 …今だって明らかにちょっと涙声だし







 「何だよ、またグチに付き合わす気か?」


 「いーじゃん付き合ってくれたって!
 てゆうか付き合ってくださいお願いします!


 「わーったから泣くなっての
 ったく三十路間近になって情けねぇ…」







 今更着替えんのも面倒くさかったから


 オレらは制服のまま、適当に行きつけの
 飲み屋まで繰り出した









 ビールから始まってありきたりなもん頼んで





 メシ食いがてらコップ片手にグチって
 相槌打って、はや二時間







 「どーしてお妙さんはオレの愛に
 気付いてくれないんだァァァ!」



 「うるっせぇな、も少しトーンダウンしろよ
 近藤さん ほら他の客引いてんぞ」


 「ねぇどーして?どーしてなのトシ?」


 「んなこと知るか!」





 テーブルに突っ伏しながらこっちを見つつ


 同じ事を何度も繰り返し喚く
 酔いどれゴリラの一丁上がりだ





 …これだから近藤さんとサシで
 飲むのはヤなんだよ







 正直ウゼェにも程があるし


 時々本気で「死んでほしい」とか
 思ったりしないと言えば、まぁ嘘になる





 それでも、さっきの言葉に矛盾はするが


 飲みに誘われたら 出来るだけ
 参加するようにはしてる







 「もーオレなんて死ねばいんだろ!
 死んでやるよコンチキショォォォ!!」



 「はいはい、したら介錯は
 オレがやってやるから安心しろよ」


 「いやお前そこは励ましてくれよ
 ウソでもいいからぁぁぁ!」



 「甘ったれんな気色悪い」







 …まーこんなんでも一応上司だし


 そこそこ長い付き合いでもあるし





 酔っ払った後で面倒を起こされると
 真撰組全体の面子にも関わってくるから


 そうなる前に面倒見といた方が
 手間が省ける分、まだマシってもんだ







 「トシったら冷たーい〜お前カッコよくて
 モテるんだから オレにアドバイスの一つや
 二つしてくれよ〜勲一生のお願い!


 「あのな、オレだって好きで女が
 寄ってくんじゃねぇっての」







 でも…結局、何だかんだ言っても







 弱い所を臆面も無く見せるこの人が





 気に入ってる…のかな、うん







 「それに アンタみたいな男が好きって
 言ってくれる物好きくらい何時か出てくんだろ」


 「そーかな?本当にそーかな?」


 「……多分な、だから自信持て」


 「何その間!?」









 こうして店を変えて語り合って
 いい加減まで飲んだ後はお約束通り







 顔真っ赤にしてグデングデンになって





 オレが支えて歩かにゃならねぇ位
 近藤さんは酔いが回ってきてやがった









 「ったく、重てぇんだよこのゴリラ!
 ちったぁ自分の足で歩けっての」


 「ゴリラは二本足でなんか歩かないもーん」


 「歩くゴリラもいるっての!
 てーか声が無駄にデケェんだよ酔っ払いが!」


 「そーいうトシの声だってデッケーじゃん!」





 よく"酒を飲むと人は虎に化ける"って聞くが


 寄っかかっているこいつはさしずめ
 大型のバカゴリラだな







 「トシ、もう一軒飲みに行こ!もう一軒!」







 右肩にアゴを乗せるようにしながら


 酒臭い息撒き散らして、叫ぶように言う





 っだーからただでさえ声デケェんだから
 耳元でしゃべんなっての 鼓膜破る気か!







 「アホ 流石にこれ以上は明日の仕事に
 差し支えるっつーの、ほら帰るぞ」





 言いつつ一歩腕を引くと 途端に
 近藤さんは寄りかかるのを止め





 足を踏ん張ってオレとは反対方向に動く





 「ヤダヤダ!ボクもっと飲むもん!」


 「完全に正体無くしてんじゃねーかよ
 この酔っ払いゴリラ!これ以上飲むの禁止!


 「ちぇートシのケチ〜」


 「うるせぇよこのアホ上司!」







 本格的にイラついてきて、舌打ちしつつ
 タバコを取り出して一服







 「大体、ただグチるだけの連れ酒で
 正体無くすほど飲むバカがいるか」


 「正体無くしても トシがいるから
 安心して飲めるんですぅ〜」








 ヘラヘラと笑った顔は本当に嬉しそうで







 「その度オレに苦労かけてるって事
 気づけってのアンタは…」





 せり上がる、なんとも言えない気持ちを
 煙と共に吐き出した







 顔が赤い酔っ払いのクセに、妙に
 耳聡くその一言を聞いていたらしく





 「あ、そーかそか ゴメンねトシ〜
 それじゃこれは、オレからのお詫び〜





 笑いながら近藤さんがオレの身体へ
 再び後ろから抱きつくようにすり寄って







 右頬が 刹那熱くなった





 一拍遅れて、頬に口付けを
 落とされたのだと理解したら







 今度は顔全体が熱を帯びてゆく









 「機嫌直った トシ〜?」





 頬の筋肉緩みっぱなしの笑い顔で
 近藤さんが オレの顔を覗き込む







 ……本っ当、汚ぇ人だよ







 軽めのチョップを目の前のむさい
 酔いどれゴリラにかましてから





 「…バーカ、屯所帰んぞ」


 「うん!」





 少し加減して身を任せるこの人を支えて


 オレ達は屯所への帰路を辿っていった







 ―酒が回ってバカになったの
 どうやらオレも一緒らしい








        ――――――――――――――――――――――
        あとがき(というか楽屋裏)


       狐狗狸:文章化した初の近土です!蜜甘様お待t


        近藤:のんだくれてるだけじゃんオレ!?


      狐狗狸:一々うるさいんじゃ 気付いててもニブ族


       土方:番長!?つかオレの役割とか適当すぎだし…
          下の下レベルの話捧げるたぁ面の皮厚いな


     狐狗狸:をぃぃそれ言わないでくれる!?流石に
          反省してんだから今回の文の出来は!


      土方:転げ落ちてくんない崖からいっそ!


http://grayboard.sakura.ne.jp/sasage/Basara.htm


ありがちでスイマセン…駄文ながら蜜甘様に捧げます


読者様 読んでいただいてありがとうございました!