「まんぽけー、やっぱり寒い時にはコタツが一番だね〜」
肩までコタツ布団に埋まりながら、アゴを卓上に乗せて
ふやけた表情でが言う
「ちゃんもそうおもうよね〜冬の日のおこたは
もうオアシスだよね〜」
隣にいるも 卓上にあるミカンを剥きつつ
ユルユルな声で同意する
「…二人とも 幾ら最近平和だからって、気が緩みすぎだぞ?」
だらけきった雰囲気に ヤクモが少し眉をしかめる
「いいじゃないですかヤクモさん、たまにはこういう
ゆっくりした時間も必要ですよ〜」
「ちゃんの言うとおりだよ それにヤクモくん
いつも伏魔殿で寒い思いしてるんだしたまにはいいじゃん♪」
…確かオレは、にどうしても
天流同士で話し合いがしたいって言われて
ちゃん家に来たんじゃなかったっけ?
と ヤクモの脳裏に疑問が浮かぶ
本来ならば、ちゃんとした話し合いを
するつもりだったのだろう…が
その日、タイミングが悪いことにが
コタツを出した(正確にはに出させた)ばかりだった為
呼び出した当の本が すっかり本来の目的を
忘れて和み始めてしまったのだ
初めは何とか 本来の目的を思い出させようとしたヤクモだが
のマイペースさと、の暢気さと
ついでにコタツの魔力に とうとう根負けしたらしく
諦めて一緒に和みながらお茶をすすってたりする
「ねぇねぇちゃん、アイスクリームってない?」
そんな中 唐突にが上目遣いでに尋ねる
「こら 図々しいだろ幾らなんでも」
「だぁって コタツにミカンは美味しいけど、
コタツにアイスも定番だよ!」
「言われてみれば おこたのアイスも美味しいよね〜
ちょっと待ってて下さいね」
はに視線を向け ヤクモに会釈をした後
自分達がいる居間の奥の方に顔を向けて―
「、ちょっと来て!」
少し間があって 奥の方から居間にが姿を現した
「 最近式神使い荒くないか?無精ばっかしてっと太るぞ」
「大きなお世話よ、それよりあたし達アイスが
食べたくなったから 夕食の買出しついでに買ってきてよ」
のその言葉に が不満をあらわにする
「今からかよ…俺、お前の洗濯物とか洗ったから
疲れてっし一旦昼寝させて欲しいんだけど」
「何よ、あたしだってヤクモさんやちゃんと
話をするのに忙しいのっ!!」
「ぐうたらしてるその状態のどこが忙しいんだよ!
アイスぐらい自分で買いに行きやがれっ!!」
しかし はニッコリと微笑を浮かべて、言った
「いいじゃない 買いに行ってよ〜ね、お願い」
にとってこの状態のの微笑みは
もはや絶対王政に等しかった
言葉を無くして買い物の準備をするを
哀れに思ったのか
が自分の隣でずっと
黙って浮かんでいた半透明のを突く
「〜折角だから
ちゃんのお買い物に付き合ってあげなよ」
そんな訳で、とは
アイスを買いに出かけさせられたのだった
〜「何とも形容し難い温度差」〜
「…絶対 の奴、俺を邪魔者だと思ってやがる」
自分の扱いに対する不満を露にしつつ
エコバックを振り回す
「気にするな、も悪意があって
やっているわけではなかろう」
そんなをなだめる様に が呟く
「まぁな あいつのああ言う性格は元からだ…
つか、悪ぃな 買いもんつき合わせちまって」
少し気にしたようなの様子とは裏腹に
は全く意に介さずといった調子で
「それも気にするな について行けと
頼まれただけだからな」
「…そう言ってもらえると、俺も気が楽だ」
言いながら 突き当たりの角を右に曲がった
その先で、まるでお約束の様に牛丼の袋を持って
スクーターに乗ったマサオミが二人の前で止まった
「お、とちゃん二人だけって珍しいなー
どうしたお二人さん?」
「やな時に出やがった 妖怪ストーカー丼」
「ヤダなぁ、オレは人間だって〜」
ひらひらと手を振り フレンドリィに笑うマサオミ
サラリと掛け合いを流す辺り、伊達に口ゲンカを
繰り広げているわけではない
「それよりさー二人が一緒ってことは やっぱり
ちゃん家にちゃんもいるんだね?」
「やっぱりとか言いやがった、テメェ本当に
ストーカーだろ?」
ニンマリと笑うマサオミをこれ以上ない位
疑いの眼差しで睨みつける
ここでケンカして余計な時間を使うより、
一刻も早く買い物を済ませての元へ
帰ったほうがいいと判断したが
をマサオミから引き離す
「二人とも…こんな事をしている場合か?」
『そうだよ、何でとが
一緒にデートしてるのさ〜!』
声とともに半透明のキバチヨが神操機から出てきた
は事態をややこしくし兼ねないこの第三者に
ため息混じりに返答を返した
「でぇと、ではなく買い物だ」
「そうそう のバカに言われたアイス買って来いっつー
俺の用事に、ワザワザ付き合ってくれてんだよ」
素っ気無く言うにの言葉が続く
発言といい行動といい、デート以外の何者でもないのだが
…本人達には 恐らく自覚は無い
『…十分デートだよそれっ!僕も一緒に行く!!』
息巻くキバチヨに返ってきた返事は―
「気持ちはありがてぇが、いるしいいよ」
にしてみれば 特に他意は無かったのだろうが
キバチヨには一番応えたらしく、元々青い肌が更に青くなった
「まあ落ち込むなよキバチヨ ちゃん家に行けば
ちゃんとちゃんに会えるからさ〜」
「に何かしたら…」
臨戦体制を取ろうとするをが片手で制し、
不敵な笑みでマサオミに宣言した
「残念だったな丼、ん家にはヤクモさんがいるから
お前なんか相手にされずに門前払いだ!」
ショックを受けたマサオミが キバチヨ同様真っ青になる
「ざまーみろ丼!じゃ、またなキバチヨ…行くぞ」
ちらりと二人を振り返り またの方を眺めながら
は心の中でこう思うのだった
"マサオミのあしらい方を心得ている…オレも見習おう"
途中思わぬタイムロスはあったものの、どうにか買い物は
無事に終わり 帰宅できる……筈だったのだが
「………、やはりさっきのモヤの辺りで引き返せば」
「言うなっ そしてスマン」
これもお約束と言うべきか 帰り道で二人は
伏魔殿に迷い込んでしまったのだ
「それにしても…何だか暗くて暖かい場所だな
眠くなりそうだ」
「気持ちはわかるが寝るなよ、お前がいないと
多分俺一人じゃここから帰れねぇから」
欠伸をかみ殺すを 心配そうに見守る
二人がいる場所は森の中のような所なのだが
深さが半端ない上 何故か妙に暖かい
その特殊な場所のせいなのか、はたまた疲れたからなのか
「…スマン、少し休むから しばらくしたら起こしてくれ……」
そう言うと は近くにあった木に背を預け
まぶたを閉じ、ズルズルと木に座り込んで―眠ってしまった
「おい こんな所で寝るなーっ」
がどれだけ必死に身体を揺さぶろうとも
の目は頑なに閉じられたままだった
「はぁ…流石に伏魔殿にを置き去りに出来ねーし
ってか 置き去りにしたら俺も帰れねーしなー…」
溜息吐きつつ の隣に座り込む
「ふぁあっ、確かに 何かここ妙に 暖けぇ…」
元々買い物以外にもにこき使われていた
は、次第に 眠気に勝てなくなり
「ちょっとだけ…寝るか」
そう言いながら の横では目を閉じた
「ん、あの銀髪は…」
二人が眠り込んでしばしの間をおいて、何の因果か
通りがかりのオニシバが
木々の間から微かに見えた 銀色の髪を
頼りに森の中へと入ってきた
「やっぱりさん…どうやら寝ちまってるみたいだねぇ」
起こさないように静かに隣に忍び寄り、
「こんな所で寝てると風邪引きやすぜ、さ…」
耳元でささやこうとしたオニシバの目に
に寄りかかって眠るの姿が入った
間髪いれずにオニシバは のこめかみに
銃口を突きつけて引き金を絞り―
まさに発砲寸前に目を覚まし、は奇跡的に銃撃を避けた
「なっ…何だお前は!?」
「そいつぁ、あっしの台詞でさぁ…
何の縁があってさんの隣で寝てんのか
死ぬ前に聞かせていただけやすかね?」
「状況がよくわからんが…戦うつもりなら容赦はしない!」
寝込みを襲われた恨み込みで がオニシバ睨みつつ
懐から花火をズラリと取り出す
「そんなちゃちな火薬で あっしが仕留められると思ったら
大きな間違いですぜ?」
こちらもかなりの黒いオーラを纏ったオニシバが
いつの間にか二丁銃スタイルでと対峙していた
この後 すぐさま始まった野郎二人の死闘で
叩き起こされたがぶち切れ
最大火力の狐火をお見舞いし
式神二匹を巻き込んだ大きな狼煙を上げたお陰で
無事、お迎えが来て帰れる運びとなったのは
自明の理だと言えよう
ー――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:葉々緑眼様 予告通り共演夢書かせて頂きました〜
はい 何ていうか…駄作でスイマセン!(ホップステップ土下座)
ヤクモ:あ、新技…じゃなくて、結局オレは何の為にいたんだよ
狐狗狸:設定上ではさんがも交えて
これからの神流対策?かなんかを話し合う予定が コタツのせいで
単なる交流会になったんだから…二人の子供のお守り?(爆)
ヤクモ:とちゃんに謝れ(真顔)
狐狗狸:まー考え方を変えりゃ 両手に花ってことで(汗)
マサオミ:ヤクモばっかりズルいぞ!!オレだって
ちゃんとちゃんを両腕にはべらしたい!!!
狐狗狸:でたー変態丼(汗)
キバチヨ:マサオミはまだいいよ 僕なんかに
とのデート先越されちゃったんだから!(泣)
狐狗狸:安心しろキバチヨ、本人達 無自覚だから
成立してないよ(苦笑)
オニシバ:…それよりも さんの隣に寝てるって事が
既に許せないんで、先ずあんたから先に地獄に送らせて
いただきやしょうか?(超黒オーラ)
狐狗狸:不可抗力ですからーーー!!(爆速ダッシュで逃げ)
葉々緑眼様 こんなんでよければ貰ってやって下さいまし!
そして 読んで下さりありがとうございました!!