きっかけは、本当に本当にささいなコトから
「おりゃあぁぁ!」
大上段に振りかぶって悪人を切り裂き
課外授業のノルマを達成したマカだが
勢いあまってバランスを崩し
「きゃあっ!!」
「マカッ!」
とっさに腕を取ったソウルが下敷きになる形で
二人は塀の上から路面へと落下する
「アイタタタ…ご、ごめんソウル…」
「ったくちゃんと周り見ろよな危なっかしい」
「だからごめんってば…
それよりケガとかしなかった?」
「してねぇから早く退いてくれ、重てぇんだよ」
本人としては意図して言ったつもりが無くても
年頃の乙女にとっては その一言は
かなり余計に気にかかった
「…なによソレ」
活気のある顔をした太陽が空へと上がり
珍しく 誰かが起こしに来る前に目が覚めて
ダイニングへとソウルがやってくれば
人数分の食事とテーブルに着いた二人
…いや 一人と"一匹"がいた
「あ、ソウル君おはよ〜」
「おぅ…今日は珍しく起こしに来なかったな」
「別に、自分で起きたんだしいいでしょ?」
素っ気無い言い方をされて、寝起きの彼は
若干不機嫌そうに眉をしかめる
〜A heavy word from unconsciousness〜
死武専へ登校した際にも二人の空気は変わらず
「おーい何だよソウル、ふて腐れてどうした?
悩みがあるならオレを頼れぇ!!」
「うるせぇなほっとけよ…」
ブラック☆スターに若干絡まれ気味のソウルを
横目に、彼女はこそりとマカへささやく
「ねぇ…二人とも、ケンカでもしたの?」
「そう言うワケじゃないんだけど…」
当人はやや口ごもっていたけれども
緑色の瞳でしばし椿を眺めてから、言葉を紡ぐ
「あのね椿ちゃん…後でちょっと
相談に乗ってほしいコトがあるんだけど」
「え?ええ、私でよければいいわよ?」
そうして…ワザワザ間を置いて
しかも一対一でわざと離れた所に呼び出された上で
持ちかけられた相談は―
「低カロリーなお料理…?」
「そう、カンタンなのでいいから教えてほしいの」
「それはいいけど どうして急に?」
訊ねられて、マカは言葉を詰まらせる
「ええとその…最近ちょっとお腹とか二の腕が
気になるから引き締めようかなーなんて」
「えぇっ、そのままでも十分だと思うけど」
「そんなコトない!もっとこう…
ビシ!っとした感じになりたいの!」
キッパリと言い切られ、ますますもって椿は
戸惑いを浮かべてしまったが
相手の真剣な様子に何かを感じ取り
「そんなに急いで変わろうとしないで
出来るコトからやって行きましょう、ねっ?」
「…うん そうする」
出来うる限りで協力するコトを決めたのだった
それからは教わった日本食を基準に
本などで調べて割り出したカロリー表に
従ったメニューでの食事と
身体を動かすべく、近所へのウォーキングを
日課とする無理のない計画を立て
「よ〜し…目指せ目標体重!」
マカの密かな"ダイエット作戦"は始まった
「おうおうおうマカ!なにやってんだ?」
「自主トレーニングにウォーキングしてるの
…なんでついて来るの?」
「オレ様のランニングコース上で
チンタラ走ってんのが目に入ったんでな!」
が、ウォーキングを始めて二日目くらいに
ブラック☆スターに見つかって
「そーかそんなに貧相な見かけに悩んでたか
けど安心しろぉ!オレ様と同じ筋トレメニューを
こなせばキッチリ筋肉がついてくるぜぇ?」
「いや気持ちはうれしいんだけど、別に
マッチョになりたいわけじゃ…」
「よーし、まずは腕立て1000回から
いってみるかぁ!カウント始めるぞ〜!!」
「だからやらないってば!」
やたらと筋トレを進められたり
「ねーねー、今日ケーキ食べに行こうよ!
おいしいお店見つけたんだ〜」
「ご…ごめん、今日はいいや」
無邪気なパティーの誘いや、お菓子の誘惑に
心を揺さぶられながらもどうにか振り切ったり
「なんか最近ムリしてねぇか?
やたらボーっとしてる時間が多いし」
「自主トレーニングがまだ慣れてないだけだから」
「向上心があるのはいいコトだが 職人の本分を
疎かにするのは些か思わしくない傾向だな」
「う…それは、そうかも…」
あくまでも"自主トレーニング"と言い張る手前
指摘通り、多少なりとも疎かになってきている
"本分"に対しやや申し開き出来ず うな垂れるも
「とは言え自らを磨き続けるその努力は
悪いものではないぞ…そこでだ!」
生き生きとした輝きを宿す黄色の瞳を見て
「オレが完璧にバランスの取れた
スケジュール表を作ってやろう!」
「気持ちはうれしいけどお構いなく!」
「つーかお前に任せると何ヶ月かかるか
わかんねーだろーがキッド」
逆に呆気に取られたりしながらも
持ち前の真面目さで継続を続けるけれど
努力の割りにあまり芳しい結果は出なくて
思い余って内密にシュタイン博士に相談し
「ふーん…ま、要するに余分な脂肪さえ
除去できれば問題ないわけだね?」
「はい…はい?」
「それじゃあ器具と機材揃えとくから
後でツギハギ研究所に来るように♪」
「お騒がせしましたぁ!!」
すんでのところで道を踏み外しかけたりと
前途多難の日々を送っていた
…さて、そんな変化が起こって一番
首を傾げているのは誰かというと
他ならぬ相方のソウル当人である
「アイツ…最近明らかに変だろ?」
「ヘンって?」
ピコピコと尻尾を振るブレアへ、彼はこれまでの
マカの様子を思い出しながら言葉を並べる
「朝メシが自分の分だけ やたら少なかったり
一人で自主トレーニングとか言って…」
やっている行動の意図は何となく理解していても
「今度は一体、何をがんばってやがるんだ?」
動機だけが今ひとつ分からないらしい
「さぁ…けど本当になにも思いあたんニャいの?」
「なんでオレに聞くんだよ」
訝しげな赤い瞳に、くすりと彼女は笑って返す
「だーって 勉強以外でマカがなにかする時って
身近な相手がからんでるじゃニャい♪」
決めたコースをひたすらこなして息をつけば
辺りはすっかり薄暗くなっていた
「…そろそろ帰ろうかな」
暦の上では既に春から夏へと向かっていたが
吹いた風は冷たく、汗を吸った薄手の外着を
張り付かせて鳥肌を立てるには十分だった
「さむっ…」
思わず両腕を抱いて擦り合わせ…
バサリ、とマカの肩へ覆いかぶさるように
ジャケットが舞い降りてきた
「ったく風邪引くだろーが…帰るぞ」
「え、あ…ありがとソウル…」
顔を赤らめつつもジャケットを羽織るマカを
横目でチラリと見やって、彼は続けて答える
「ほとんど削るトコねぇのに
ガリガリにでもなる気かよ?お前は」
「う、うるさいな 自主トレーニングだって
この前からずっと言ってるでしょ?」
「あんな一言を真に受けてんじゃねーよ」
ややケンカ腰な口調だったので、少しムッと
顔をしかめて言い返そうとするけれど
「…集中力途切れてマカがケガする方が
よっぽど答えるんだからな?」
続いた声音が真剣だったから
彼女はうつむいて、弱々しく言った
「……ごめん」
「ま、今回ばかりはお互い様ってコトで
水に流して行こうぜ?COOLによ」
励ますように笑ったソウルが差し出した手を
握り返して、マカも笑って頷いた
こうしてただ一言から引き起こされた
彼女の"ダイエット作戦"は
張本人の言葉により 幕を下ろしたのである
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:櫻園(オウエン)様のサイトと相互に
させていただいたのでお礼代わりに書きました
えー…初のソウマカ文です
マカ:普段は夢小説だもんね ちゃんとした文は
狐狗狸:そうそう、拍手だったら夢主は
一切出てないんだけど短いしね
ソウル:てゆーか あんま無茶させんな
マカにに風邪でも引かれたらオレが困るんだよ
マカ:え…
ソウル:看病すんのがメンドくせーからよぉ
マカ:オイっ!
なるべくは甘く…したつもりですが
色々未消化だったりしてスイマセン(土下座)
勝手ながら櫻園様へこの話を捧げさせていただきます!