五月晴れした空に煌々と輝く太陽が傾き

夕暮れに近づいていくその中で





「…どう言う事か、説明しろ


眉間にシワ寄せ渋い顔した十四郎へ





「どれについて?」





わざとぼかす様に訊ね返す







彼が差す"説明"して欲しい事柄は


現在、共同使用中の自室に
ちゃんが寝ている事についてか


その隣でニマニマしつつ、並べた服を
選んでいる私についてか


…それともチョコチョコ様子を見たり
部屋の外とかにたむろする

退くんやら勲さんを始めとする隊士全員か


「全部だ」


「だよねー…まぁ隊士達については
何となく察しがつきそうなモンでしょ?」





小さく頷き、深い溜息の後に


ギロリと鋭い視線を周囲へ寄越す十四郎





「……仕事もしねぇで人の部屋の前で
ウロウロちょろちょろ何してんだテメェら?


三秒以内にまともな理由を吐かねぇなら
士道不覚悟で全員切腹な」


「いや待ってくださいよコレには
ちゃんとしたワケがあるんです副長!」






暴君にも程がある言い分とオーラに
怯え、慌てて彼らは弁解を始める





ちゃんが妙な汚ぇ固まり引きずって
帰って来たもんだから驚いたのなんのって」


ハゲ頭に汗を光らせ、言う原田さんに続き





そうそう!そんで風呂から出されれば
ちゃんだったから更にビックリで」


退くんも そりゃもう力一杯首を縦に振る





「で、聞けば目の前で起きた事故
巻き込まれて倒れてたのを介抱ついでに
連れて帰ったらしくてな」





と再び現れた勲さんの台詞まで来た所で





「事故?」


訝しげな視線がこちらへ向いたので

私もその"事故"について説明を足した











「少比率なトコの女子成分は貴重です」











「ぶっちゃけ目撃した私ですら
まだ信じられないんだよねーアレは」





…まさか故障したバキュームカーが逆噴射して


中身の滞留に巻き込まれて死にかける人間
この世にいるなんて想像もしなかった





でも、今現在目の前にいるんだから仕方ない







似たような経験があるのか その辺については
十四郎もあっさりと納得してくれた





「死神に好かれやすいっつっても…それで
死ぬって悲惨過ぎるだろ別の意味で」


「でしょ?それもあってこうなったの」





ちなみに彼女は現在、適当な浴衣を
羽織って寝てます


これはこれで新鮮だからグッと来るけど


折角女子比率増えたんだし、可愛い服
着せて飾ってみたいじゃないの


「で、目ぇ覚ましたら代わりの服着て一緒に
遊んでもらおうかなって思ってさ〜」


「つまりテメェは仕事ほっぽらかして
槍ムスメにうつつ抜かしてたんだな?」


事故に巻き込まれた市民保護及びその後の
アフターケアだって立派な仕事でしょ?
それに
私よりも責められるべき人はいるんじゃない?」


「…それもそうだな」





捲くし立てて水を向ければ

上手い具合に相手の怒りは再び
群れ集う隊士達へと向かう





「だって、ずっと目を覚まさないから
オレら心配で心配で」


『そうそう』


「んな大勢で見に来る意味が何処にある!?
コイツ一人いりゃ十分だろうが!!」








言った台詞にウソは無いんだろうケドさぁ…





必然的に野郎率が高くなるこの組織で

"可愛い女の子"は貴重な癒しだから


最もな理由を付けて目の保養にしてる
下心が多分に混じってるのはお見通しだ





…でも私には特に関係ないからいっか♪





「ねぇねぇ コレとか似合うと思わない?
私のお古だけどいけるよねー」


「知るかよ!」





じゃあコレは?と別の服を摘み上げて
勲さん辺りに聞こうとしたら


 そんならこれとかどうでぃ?」





隊士達を器用に掻き分け、総悟が
言葉と共に脇に抱えた服を並べてみせる





可愛らしいミニスカ半袖の黒メイド服
(ご丁寧に絶対領域の為の黒ニーソつき)



背中バリ見せの、かなりセクシーな
黒いボンテージジャケット&ミニスカート



多分フリーサイズのだぶっとした
ドラ○もん着ぐるみ






いくつか広げた私の服を占領しつつ


その計三着は一層際立って周囲の目を引いた





「総悟…何でそんなの持ってんの?」


「旦那とこないだトンキで漁って見繕った」


「万事屋の旦那と一体何しに行ったんですか
てーか見繕ったって誰に…?





怖いもの見たさでツッコむ退くんはさておき







服のチョイスは、中々基本を押さえてる
うーん…恐ろしい子





って総悟ォォ!テメェも仕事しろ!」


保護した市民のアフターケアって奴でさぁ」


それ私の台詞、何しれっとパクってるかな」


「……む?ここは…屯所?」







むっくりと身を起こしたちゃんは

事態を理解できず辺りをぼんやりと見回していた





「あ!起きた〜!!」


「うぬ…殿、何故ゆえ私はここに?」


「えっと…バキュームカーの事故
巻き込まれた事は覚えてる?」





こくりと首を縦に振ると、ニコニコと
笑顔で続ける勲さん





ちゃんが巻き込まれた君を保護して
ここまで連れて来てくれたんだそうな」


「そうか、ありがとう殿」


「どういたしまして〜」


あーもう素直でかわうぃ…vと衝動のまま
頭をぐりぐりと撫で回した





「あの…それで私の服は?」


「ゴメンね、着てた服すっごい汚れてたから
今洗ってるの〜だから乾くまでの間
代わりの服を選んでもらいたいんだけど」


「遠慮せずこの内のどれか一つを選べぃ」


「「ってその三択から選ばせんのかよ!」」





総悟の割り込みに思わずツッコミがハモる







無表情のまま服に視線を這わせ





「…コレで」





彼女が指差したのは…ドラ○もん着ぐるみ


『え゛ぇぇぇぇぇぇまさかの?!』


「うるせぇよ!何期待してんだテメーらは!」





今回ばかりは 十四郎の意見に同意かな







…処置のついでに服を着替えさせた際


衣服に隠されてた腕や足や背中とかの
あちこちに、幾つか傷があるのを見たから






関わってる"仕事"が"仕事"だろうし


そこについては私も似たようなもんだから
触れないことにしておいた







「はいはーい、女の子が着替えるんだから
男は部屋から出た出たホラ早く!」






立ち上がって両腕を振れば、渋々ながらも
彼らはその場から離れていく





「って元々はオレの部屋だろソコっ!」


トシ、着替える間だけでも貸してやれ」


「そーっすよさんも一緒なんすから
大丈夫ですって」





勲さんと原田さんとに両肩叩かれ
引きずられていく十四郎を見届けてから


部屋の戸を閉めて、彼女へ服を手渡す





「はい どーぞ?」


「か…かたじけない」







"後ろを向いてて欲しい"と言われて





一応は背後に気を配るものの、妙な動きは
全くといっていいほど無くて





程なく着替えを終えたちゃんの姿は







…少し丈が長い服のようだ」





フリーサイズのせいか余って長い袖に
すっぽりと手や指が覆われて


裾も少し引きずり気味でどこかこう

"キャラパジャマを着させられてる子供"
連想させるようなスタイル


おまけに被ったフードを気にして
上目遣いになっている様は―





『よ…

予想外のクリーンヒット…っ!!』



破壊力バツグンの可愛さでした(特に私)





「ドラ○も〜ん!道具出さなくてもいいから
ずっとここにいてぇぇぇぇぇ!!」



「ぬぉあ!?」


「却下ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


抱きついた私の 魂の底からの叫びを
僅か0.2秒で全否定する十四郎





なんでぇ!?こんな可愛い生き物に
心動かされないなんておかしいでしょ!?」





腕を放さぬままの私の言葉に


周囲の隊士達はそりゃもう力一杯
首を縦に振って賛同してくれている





おかしいのはお前らだぁぁぁぁ!

着てる服抜きで考え直せ!そいつの胡散臭さ
もう一度根底から考え直せ!!」


「分かってないなー十四郎、ドラ○もんは
主人公でいるだけであの家の癒しなの!」


「道具すら出せねぇドラ○もんなんざなぁ
単なるドラ焼き好きの居候なんだよ!!」



「瞳孔マヨ殿…論点がずれている
お主も落ち着いた方が」


「いらねんだよ余計な気遣いは!」







口論を始めたこちらを他所に、彼女は
総悟に手招きされてそちらへ寄る





、あとコレ持てコレ」


「…コレは何なのだろうか?総悟殿」


あん?こいつぁ今からやる身振りで
取り出すもんだ 一度しかやんねぇから覚えろ」





みんなの注目が集まる中、某の○代ボイス
真似た裏声で「ほん○くコンニャク〜」と言って

片手に出来たてぷりぷりっぽい灰色の物体を…





剥き身!?それは色々ダメだから!!」


「よーしドラ○もん、次はうるせぇ奴らに
この空気砲を発射でぃ」


「ええと、これだろうか?」





言われるままに動きを真似し、装着した
妙な筒から空気が勢いよく発射されて





「うぎゃぐがふぉあぁぁぁぁぁっ!!」


『局長ぉぉぉぉぉ!?』


直撃した勲さんをふっ飛ばし、側にいた
原田さんを初めとする隊士達が目を剥いた





「おーよく飛んだ じゃ次は土方辺りに
ショッ○ガンを「ちょっと待て総悟ぉぉぉ!」


「ソレどっから入手したんですか
沖田隊長ォォォ!」



「旦那とこないだトンキで」


あったの!?スゴイなトンキ…じゃなくて
アンタ銀時と何やってたの本当!!」


「…そのお陰で完成度の高ぇドラ○もんを
見れた事に感謝して欲しいぜぃ、








いまだうろたえる彼女を、私へ差し出した

この子が本気で魔王に見えたので


現実逃避と同時に 戦場になりつつあった
部屋からドラ○もんを連れて逃げたのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:総悟…じゃね相互記念と舞様のリクにて
ウチの子を屯所へテイクアウトして頂きました


土方:またこんなノリかよ!つーかこの屯所に
仕事する奴ァいねぇのか…!(頭抱え)


山崎:にしてもバキュームカーが死因って
…実現してたら目も当てられませんね


近藤:しかし総悟、お前モノマネ上手いな


土方:感心すんのそこじゃねぇだろ!
てか、今だったらわ○びボイスだろ


沖田:いーや土方さん、オレぁしわがれ声
ドラ○もんしか認めねぇぜぃ


原田:あのー沖田隊長…コンニャクは何に


狐狗狸:そこは深く考えん方がいいですよ


土方&山崎:余計なトコで空気読んだ!?




あの後、二人で街中デートに繰り出してたら
いいと思います(←管理人の妄想)


前回より更にヒドイシロモノですけれど
舞様へと捧げさせていただきます!


様 
読んでいただきありがとうございました!