ここん所のアイツの様子がおかしい


…いや、妙な奴だってのは入隊してから
ずーっと変わっちゃいねぇんだが

何ていうか 最近の言動がおかしい





例えば、真顔でイキナリ駄洒落
引っ切り無しに連発してきたり


例えば、唐突に背後に回りこんで
首筋やら脇やらをくすぐる暴挙に出たり


かと思えば、厠に行ってた隙に

座布団にブーブークッション仕込まれてたり





で怒鳴ったり呆れたりしてやると
謝った後に溜息を一つして出て行く





…この奇行っぷりは間違いなく総悟が
一枚噛んでると確信して奴を問い詰める





「オィ総悟 お前の奴に何吹き込んだ?」


が、相手は片眉を僅かに上げ首を振る


「言いがかりは止してくだせぇ
オレぁそっちにゃ関与してやせんよ」





そっちってどっちだ、とか聞きたい事は
色々あったにはあったが





小バカにした憎たらしい笑みも
吐いた言葉にも妙な含みも、何もなく


丸々信用するワケじゃねぇが


一応は様子を見るだけに留めておく





「…"お立会い、血止めは無いか?"ってね」


「ふぅん…中々その、上手ぇもんだな」





が、滅多に言わねぇ褒め言葉まで吐いたってのに
は笑う所かため息をひとつ零すのみ







…やはり本人の口を割らせた方が早い

が、下手に手を出して険悪になるのはご免だ





となると、後を尾行て真偽を確かめるしか
取れる方法は見つからねぇワケだ











「笑わせるって大変なもんだね」











「ったく これじゃ近藤さんの事
笑えねぇじゃねぇか…」





苦々しく吐き捨て、思わず吸い口を噛み潰す





前ん時は大勢で尾行てたから 今回は
比較的バレにくいはず…


てーかまぁ、バレたらそん時はそん時か


いやだったら最初から正攻法で行けば
いーんだろうけどよぉ…







埒の明かない自問自答を脳内で
リピートしながらも道を進むうち





忌々しい銀髪天パが、視界に現れる





「よぉーじゃねぇか」


「あ、銀時 ちょーどよかった!あのさ…」





互いに呼び合い駆け寄って、そのまま
会話が始まったようだ







万事屋なんぞと何親しげに話してやがんだ?





もう少し近づけりゃ話の内容が聞こえ―


「…一辺地獄に堕ちとけエロ天パぁぁぁぁ!





ソバット!いきなり大の男に
ローリングソバット決めたよあの子!?






地面にめり込んだ万事屋放置して
アイツはそのまま一人で先へと進んでいく


どちらへ構うかを迷い…





結局、話の内容が気になって
いまだ地面でへち倒れた天パへ歩み寄る







「…オィ万事屋、地獄に行く前に
どーしてそうなったか教えとけ」


「み…見てたなら止めろよ大串君…」


「誰が大串だ」





面倒ながらも助け起こして聞いた
先程のやり取りを要約すると


はこの男に、人を笑わせる話術
請うていたらしい





「あん?何でワザワザ?」


「最近ね、笑わせたい相手がいるのさ
でもかなり手強くてね〜なんで協力してよ」







そう言ったアイツいー笑顔してたぞ、と

続けてから万事屋はオレを指差す





「アレ、お前のことじゃねぇの?」


「え…そうなのか?」





確かにオレぁ人からよく"無愛想"だの
"怖い"だの"偉そう"だの言われるが…


それを和まそうとしてアレか?





「だーから鉄板は内輪ネタか失敗談か
シモだろ…って色々言った結果がコレだよ


お宅のじゃじゃ馬娘にやられたって事で
損害賠償請求していい?真撰組に」


「ざけんな、そりゃテメェの自業自得だ」







呆れ混じりに一服すると 万事屋んトコの
ガキども二人も寄ってきた





「遅いですよ銀さん…あ、こんにちは」


「銀ちゃんとマヨラーが一緒なんて
明日はが降ってくるアルな」


「リアルな予想止めて神楽ちゃん」





槍とか言うなチャイナ…今の状態で
あの女の事は考えたくねぇ





「よーオメェら、赤い髪のヤクザな
女警官見かけなかったか?」


「何か用がアルあるか?」


「ちっと慰謝料請求しに」


「させるか腐れ天パ」





引きつった笑みを浮かべつメガネが答える





さんならさっき、向こうの公園に
入っていくのを見ましたけど」


「そうか…あと、最近あのバカが
気にかけてる相手に心当たりねぇか?」


「ああ、それなら「きっとアイツのことね」
ちょっ神楽ちゃん!?


「「アイツぅ?」」





期せずハモるオレらへ 酢昆布かじりつ
チャイナはうんざりしたように言う





「ここんとこ私達質問攻めだったネ
の趣味とか、好きなものとか









「…おーいちょっ急ぎすぎ、てか何で
そんな眉間にシワ寄ってんの?」


「寄ってねぇ」


いや寄ってるから、瞳孔も割り増しで
開いてて通りすがりの人々も引いてるから」


違う、と反射的に返す言葉にトゲが
篭っているのは自分でも気がついていた





…別に槍ムスメに興味を掻っさらわれたから
機嫌が悪いとかじゃねぇぞ


ただ単に厄介な女同士で問題が起きたら
廻り回ってオレの…ひいては屯所の問題
発展する可能性を懸念しての行動であって





「…って何でテメェも着いてくんだ万事屋
ガキと仕事ほったらかしてていいのかよ」


「ソバット喰らった慰謝料もらうまで帰れま」


パン、とやけに乾いたチープな音が言葉を遮る


自然と目を合わせたオレらの足は速くなり





現場へ駆けつければ…そこには







"真撰組女隊士、白昼堂々少女銃殺!?"って
見出して新聞の一面を飾りそうな光景





「「どうしてそうなったぁぁぁぁ!?」」


私に聞かないでよ!てーか十四郎ヒドイ!
殺ってないからね!無実だから私!!」


「地の文にツッコミ入れんなぁぁ!」





ツッコミ返しつつも近寄ってよくよく
状況を見てみると







微かな硝煙を漂わせる銃口からは
小さな赤い花が生えてて


倒れた槍ムスメのすぐ側には


中身の零れたトマトジュース缶
カッチカチの…何だコレ?





「えー普通分かるだろ、冷凍ご飯じゃん
ラップで包まれてっし」


「だよねぇー庶民の間じゃ常識でしょ?」


「だから地の文にツッコミいれんな
テメェらぁぁぁぁ!!」








介抱の後、意識を取り戻した槍ムスメを
交えて事情を聞きだした所





会話作戦が芳しい成果を見せなかったから





「手品を披露しようとこの銃を出したら
この子がビックリしちゃって…」


「撃たれるかと思い構えた刹那、背後から
続けざまの衝撃が来て 気付けば三途だ」





近くには民家の開いた窓と、そこから未だに
漏れ続ける喧しい痴話ゲンカの嵐







「つまりはお前が撃ったのとほぼ同時に
痴話ゲンカ中の住人の投げたシロモンが
こいつの頭に直撃したってことか」


「「そういう事(ね・だ)」」


「たく…本当紛らわしいんだよテメェら」





全くだ、と万事屋の言葉に内心同意する







「それより、何だってまたコイツを
笑わせようとしてたんだよ」





根本的かつ これまでの疑問のたけを
込めた問いかけに対して


それはもうイイ笑顔でこう返した





「知り合った友達が常時無表情だったら
笑わせたくなるのが人情ってモンでしょ?」







…んなアホらしい理由の為にオレは色々
いらん気を回したのか、と額を押さえ絶望







え、そんな理由なの?ソレで助言した
オレに対してローリングソバット?」


「つけあがんなバーカ、あんなエロ助言
一ミリも役に立たんわ」


「私などの為にそこまでしなくとも…」


「何言ってんの!ちゃんくらい
可愛い子はもっと笑わなきゃ損よ損!!」



「そ…そうだろうか?」


そーよ!私より年下の青春真っ盛りな
お子様なんだから人生楽しまなきゃ!」


「いや…私は兄上が幸せで皆と平和に
過ごせるならそれ以上を望まぬのだが」


「そーいう所素直じゃないなぁもう…
もっと子供らしくワガママもいいなさい!
何か欲しいなら大抵の物は買ってあげるし!





頬を紅潮させ、妖しげににじり寄られて

無表情のまま若干引いてるっぽい槍ムスメ


とりあえずオレは暴挙を止めるべく口を開く





「…オィ、この槍ムスメもお前の感覚じゃ
ガキに入るモンなのか?」


「言ったでしょ十四郎 私より身長低い
年下の子はみーんなエンジェルなの!」


「聞いてねぇし言われた覚えもねぇよ」


「つかよぉ…こいつ年下だけど、身長お前と
そんな変わんなくね?精々一センチだろ」


「だとしてもこんな可愛くておバカで素直で
可愛らしくて真っ直ぐな子なんて
最近じゃ本当希少価値だもん!!」



「「どんだけフィルターかかってんの!?」」


希少つか絶滅種だがな、手遅れ過ぎるダメさ





「銀時、瞳孔マヨ殿…もしや私は
褒められているのだろうか?」


「初っ端からそーだろ 気づけよ


「つか最近のコイツの行動見てりゃ
分かるだろーが、バカかテメェ」





直後に「アンタら口悪過ぎ!」と後頭部に
一発ずつもらって同時に頭を押さえ悶絶


テメッ…銃底で殴んのは反則だろ…!







ようやく状況を理解したのか
槍ムスメが表情を変える





無表情から、ハッキリとした"微笑"に





「ありがとう…殿」





…明日は本当にが降るかもしんねぇ


と考えた瞬間、礼を言われた本人は
奴にがばりと抱きついた


そりゃもう"押し倒す"ぐらいの勢いで





「あぁぁもう可愛いぃぃ!
ちゃんお持ち帰りぃぃ〜!!」



「「ソレだけは止めろぉぉぉぉ!!」」





この日、忌々しい筈だった男と手を組み

始めて一つの犯罪を阻止したのだった


…って感想文んんん!?








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:通っている銀魂サイトの管理人様と
最近仲良くなりまして、共演リクを受けたので
夢主様との絡みを書かせていただきましたー


土方:てーかオレらの被害デカくね?


銀時:オレに至っては謂れの無い暴力受けてっし


狐狗狸:だって"君ら(&万事屋)の絡みで
こってりギャグ"って指定いただいてたし


土方:ギャグ=被害者増大って何その思考!?


銀時:てか大串君の語りの上に、さり気に
総一郎君まで出張ってね?真撰組ヒイキじゃね


狐狗狸:それはあちらの夢主様のポジションと
話の成り行きを考慮した結果です




ご都合な部分とかグダグダとか、最終的に
版権キャラが得しないのは通常営業です(謝)


色々とアレすぎるギャグではありますが
舞様へと捧げさせていただきます!


様 
読んでいただきありがとうございました!