「とりあえず、テメェら兄妹の他には
遅れて来る奴ぁいねぇんだな?」


「僕は知りませんが 他の方々で意義が
ないならそうなんだと思いますよ?」





土方の問いに平然とは答える







「んじゃの旦那は
山崎辺りからルール聞いといてくだせぇ」


「あい分かった総悟殿」


「それじゃあ少し端の方で、怪談の邪魔に
ならないように伺おうか」







片隅にて百物語大会の説明がなされる合間
中継ぎで何人かが会談を再開し





二人がルールを飲み込んだ所でちょうど
妙の番が回ってきた







「さて…これは私がある晩 実際に体験した
とても怖いお話です」





ロウソクの明かりに仄かに照らされながら


妙は、静かにこう言った





「怪奇・床の下の男」


「スンマセン姉上、タイトルの時点で
もうオチが見えたんですけど」


何ぃ!?お妙さんの家の床下に男ぉぉぉ!?
なんて太ぇヤロウだチクショーめ!!」


「「「テメェだぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」





銀時とと土方によるトリプルパンチは
見事に近藤へクリーンヒットした







「次は僕だな…これはずっと前からなんだが

寝る前に部屋へ移動すると、何故か
布団の上にゴスロリ衣装が」


だからそれ犯人モロバレだろ!
つかストーカー被害は警察で話せっての!」


「旦那、オレ達警察なんですけど」









出オチした二人の分まで思いを背負い
が語りを始める





「これはある基地での訓練中に体験した
本当のお話です」


「おっ、ちゃんの話は期待できそうだな」







しかして話が進んでいくうちに妙な具合になり





「…実はあと一歩連絡が遅かったら
RPG−7をその場所に撃ち込んで大惨事に」


「「「戦場のあるあるネタは止めてぇぇぇ!
別の意味で怖いけど!!」」」








その後に続いた者達の怪談も





「鏡ノ中ニ恐ロシイババァノ顔ガ!」


「うん それお前の顔だろ?」


「むかーし昔、ある所にセイタ節子という
大層仲のいい兄妹がいたそうな」


「「何で怪談話なのにほたるの墓!?」」





話の腰を折られたり自ら脱線する展開が目立ち


すっかり会場内はいつもの喧しさを
取り戻していた







「ったくテメーらに任せてるとロクな話に
なりゃしねぇ ここはいっちょオレが
マジ怖系の怪談語って聞かせてやらぁ」







ロウソクをいい感じの位置に持って行き





普段よりもトーンを落とした声で
銀時が自分の話を語り始めた







「これはオレが町内会の肝試しで脅かし役
やってた時の話なんだがよぉ…」


「ほう、銀時は何をやっていたのだ?」


ちゃん 今オレが話してんでしょ
空気呼んで声かけてよ」


「すまぬ…しかしどうしても気になるゆえ
良ければ教えて欲しいのだが」


「分かったよ、ドラキュラだドラキュ」







そこで不意に顔色を失ったに気付き





「ん?どうした君 顔が土気色だ」





思わず近藤が、肩を叩いた次の瞬間







目にも止まらない早業でCQCが繰り出された





「ぞぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「ぐぶるっ!?」





引き倒された近藤の腕が不運にも
のアゴへクリーンヒットし


二人分の身体が床へと沈み込み







「局長が倒れたぁぁぁぁ!?」


「ついでにちゃんが巻き添え食らったぞ!
タンカ二つ持ってこい誰か!!」





バタバタと何人かの隊士が動き出す









あまりにも早業過ぎたのか、二人は単に
話の途中で気絶したと認識されたようだ







「え、ちょっと何?まだ話途中だったのに
何で気絶者が出てるの!?」


「言ってる場合ですか!ちゃんの顔色が
死人みたくなっちゃってるんですけどぉぉ!?」


「一々気にすんな、そいつの日常だそりゃ」


「逐一気にしていたら神経持ちませんよ?」


「そーそー 後でケロッと復活するだろ」





戸惑うに対し、彼らは至って落ち着いている





「土方さんはともかくさんにまで…
何でそこまで薄情なの?信じられない」


「いや、今回に限っては三人の言う事は
正しいんです」







沈痛な面持ちで眉を潜めた新八に


他の何人かも、無言で同意する











「しっかし何でぃ こんなショボイ噺家どもじゃ
旦那方や土方さんの肝は揺れねぇぜぃ」







呆れたように嘲笑する沖田へ
挑戦的に挙手したのは 







「それじゃー僕が怖いと思った話を一つ
ここでお披露目いたしましょう」


「精々がんばってくださいねさん?」


ピーマン兄貴のお手並み拝見ってトコか」







室内がやや静寂を取り戻した辺りで





「これは知り合いの実体験が元になっています
名前や場所は、先に伏せさせていただきます」







もったいぶった前置きをして、
語り始めたのは





祖父の家に移り住む事になった 若者の話









大層有名な資産家であった彼の家は
その祖父の代で衰退の一途を辿り始めた







彼の祖父は 人形が好きだった





熱心な収集家で、数多の人形を
資産をつぎ込んで買いあさっては


それらと遊んで過ごしていたという







愛想を尽かし祖母が出て行っても


傾倒しすぎた趣味に資産が傾いても


祖父は人形を手放す事無く、死ぬまで
人形達と過ごしていたという







…貧窮した際に家の調度品を売っても





亡き祖父の遺言か、はたまた
気味の悪さからか人形と家だけは売れず残り





彼は仕方なく それらを継いで暮らし始めた







「始めは何も起こらなかったんですけどね
しばらく経ったある夜…彼は聞いたんです


…自分以外には人形しかない家の中に
毎夜響く 不気味な足音を」







先程まで騒がしかったハズの室内は


今や誰かがツバを飲む音が聞こえるほどに
痛々しいまでの静けさが支配していた







「おっ、おーい土方くぅーん
ニコチン切れたの?タバコ吸ってくれば?」


「ててテメェこそ 外の空気でも吸ってこい
ついでにも連れて行ってやれよ」


「バっバカいえ二人のが大分ヤバそうだろ」







三人はそれぞれ青い顔を見合わせて
引きつり笑いを浮かべる









「動かしたハズの無い品物がズレていたり
時折ふ、と誰かの視線を感じたり…

彼は段々と不安になり友人に相談したんです」







語りの上手さと培われた演技力を
遺憾なく発揮するの話を





遮れる者はもはや誰一人としていなかった









友人を待つ間、ただ一人家の中で待ち続ける
彼の耳に 何かの足音が近づいてくる





ぎこちない音の群れの正体が気になり
懐中電灯を片手に家の中を見て回るも


部屋や廊下などには普段と同じように
人形達が虚ろな瞳を自分へと向けているだけ





その内にパッタリと音も止んで


安心し…一息ついた彼の背後から
カタン、と小さな音がした







「人形の一つがバランスを崩して
倒れたのかと彼が後ろを―」



"ぎょにゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…"







肝心な部分を馴染みの汚いだみ声が遮ったので





満ちていた異様な緊張感が途端に解ける







「んだよ ゴリラが便所でハマったアルか?」


「ったくあの人は…ちょっと見てくるわ」


「オイ、逃げようったって
そーは行かないぜ大串くーん」


「そりゃアンタもだろ…俺も同行しよう」







言いつつ立ち上がり 近藤の様子を見に
部屋を出て行く銀時と土方と





…が、三人は一瞬で取って返して来た







「おや ヤケに早かったではないか」


「どうしたんだぃアンタら?」


「ミナサン、唇ガ紫デスヨ」







明らかに怯えを張り付かせた彼らを囲む
会場の参加者の前に―









「兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」







復活したらしいが現れた







背中に、宙に浮かぶ恐ろしげな女を引き連れて









『ぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!』





勿論全員は即座に悲鳴を上げて逃げ始める







「「「ちょっ!
何でそれ引き連れてるのっ!!」」」






平然と追ってくる彼女から逃げる銀時と
、そしての声がハモる





「道に迷っていたらしくてな、とても
困っているようなので連れて来た」


『元の場所に戻してきなさい!!』







この時ばかりは全員の声がシンクロした













結局、この騒ぎで参加者が逃げ回る内に
何本かのロウソクが倒されて


そこからあっという間に炎が広がったので
急遽全員で消火活動をする羽目になり


百物語大会は中止





よって順位などは有耶無耶になった







……ちなみにが背負っていた女は


以前真撰組に現れた蚊の天人と
同じ種族の人だったと後に判明した







「何だ、皆案外肝が細いのだな」


『お前が言うなKY娘ぇぇぇぇぇぇ!!』








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:退助様からのリクでさんと
ウチのピーマン兄妹を共演させていただきました


銀時:ちょっ何コレ…え?何で共演夢が
二部構成なの!?何でBパートがあるの!!?


狐狗狸:話が思いの他大きくなったんで
共演、いつも二つもらってるしイイかなーと


新八:よくねぇぇぇぇよ!てーか何ででさん
CQCかけちゃってんの!?


狐狗狸:咄嗟の脊椎反射でしょうね


長谷川:つかオレだってちゃんと招待されて
来てんだからな!?


桂:しかし…銀時は何を話すつもりだったやら


狐狗狸:あー、多分屁怒絽伯爵絡みかと(汗)








兄の語ってた怪談はベタなものからの創作です
"メリーさん"と"一人かくれんぼ"がベース


夏っぽいとお気に召したなら幸いです
駄文ながら退助様に捧げさせていただきます


様 様 様 
読んでいただきありがとうございました!