めっきり温かくなり、暁を覚えないくらいに
なった時期の 昼少し前





「頼もう!」





真撰組屯所の門前で、一人の少女が声を張る







「頼もう!誰かおらぬのか!」





もう一度呼びかけるも 派手な音は
しているにもかかわらず返事は無い







「…おかしい、一人くらい誰か隊士が
いても良さそうなものだが」





訝しげに呟く声音と裏腹に、表情は硬いまま





「致し方ない もう一度呼びかけて
返答がないようなら今日は早く帰るか」







ため息をつき、作務衣の少女は門を見上げ





「頼もう!」







それでも変化のない状況に、諦めて
帰ろうと少女が踵を返した時だった







「あーちょい待て皆!一旦ストップ!


スイマセーン ちょっとだけタイム!」





門の内側で女性二人の声が上がり、音が止む


しばらくしてから、扉が開いて
そこから先程の声の主達が現れた











「シミュ?シュミ?どーでもいーし伝わりゃ」











「おぉ、殿に殿 こんにちは」


「「あ こんにちは」」





少女の礼に二人も釣られてお辞儀してから





「じゃなくてちゃん、何しに来たの?」







呆れ混じりに金髪の女性―が訪ねる







殿…この間の約束通り
お主との手合わせに参った」





門前の少女―はまるで機械のような
無表情さのまま へとそう告げた


始めは何のことか分からず首を傾げていたが





「……ああ、あれか」





思い出し、はぽんと手の平を軽く打つ







両者の話題に取り残されていた少女―
側にいる彼女を見上げて言った





、そんな約束してたの?」


「まぁ当たらずとも遠からずってトコか」







言って は苦笑する









以前、二人が深夜の見回りをしていた際
コンビニにたむろする不良の集団を
一斉検挙したことがあった





その時 通りがかりに貢献してくれたのが
何を隠そうだった







大捕り物の後、協力の礼に家へと送った時


手合わせしてほしいと言った
了解の意を示したのである







…尚、ついでに銀時もその場にいたのだが


べろんべろんに酔っ払っていた
おそらく本人は覚えていないだろう









「この所は特に大きな事件も無く
穏やかなようなので参ったのだ」


「そらワザワザ心遣いしてくれてありがたいし
確かにおいでっつったのは俺だけどさ…」







頭を掻きながら一つ唸り


は片手を顔の前で立て苦笑交じりで言った







「折角来てくれて悪いんだけどさちゃん
今日は、遠慮させてくれるか?


「そうか…了解した」





やや寂しげに頷いて、その場を立ち去りかけ







ふと先程の疑問が頭を過ぎり 
彼女等へと再び向き直る







「所で 普段は門前にいるはずの隊士の姿が
見当たらぬのだが、事件でもあったのか?」





違う違う、とパタパタ手を振って





「見回りの人以外は屯所内での行事に
全員参加してるだけだから、安心してさん」


「全員参加の行事…瞳孔マヨ殿の葬式か?」


「違うから!沖田隊長に感化されてない!?」


、この際ハッキリ言った方がいいだろ」







ふーとため息つきつつ、は口を開いた







「実は今、テロ訓練のシミュレーション
やってるトコなんだよ 屯所内で」


「シミュレーション…お主らテロ壊滅に
あんな隕石を呼び寄せる気なのか!?」


「「何処の地球滅亡!?」」





色々間違ってる知識にWツッコミが炸裂してから





「要するに"もし屯所にテロが侵入したら"って
状況を想定して、役割を振って行動するの」


「つってもほぼゲームみたいなもんだけど」







首を傾げるへ、二人は説明を始めた









発案者はの義理の父・松平片栗虎







"新しく入った隊士の訓練も兼ね、臨機応変な
戦略と行動をじかに肌で学ぶ"








仮想テロ集団との戦闘で様々な戦略や
迎撃、或いは情報戦などでの相手の制圧方法


逆に仮想テロとして攻め入る事により
彼らの視点からの防衛の弱点などの発見





そして訓練によって全員に


強い結束と連帯感を体感していく…





と、言えば実に聞こえがいいが


平たく言えば新人のオリエンテーションを
兼ねた警察版の大規模なけ○ドロである







チームは大きくテロ班と防衛班の二組に分かれ


テロ班は防衛班のリーダーを倒せば勝ち
逆に防衛班はテロ班のリーダーを倒せば勝つ





使用武器は赤い色水の水鉄砲と木刀が原則


…だが、要はひどい怪我をしなければ
大体のモノは使用可能でトラップもOK





勝ったチームには特別給金が支給されるらしい









ここまでを聞いて、は感心したように頷く





「なるほどよく出来ている…二人もこれに
参加していたから返答が遅れたのだな?」


「ああ、俺が防衛側でがテロ」


「でと沖田隊長のコンビが結構強くて
攻めあぐねてるんだよねー」





ため息混じりにが呟いた時だった







しばらく戻らぬ二人が気になったらしく







「オィオィ いつまでタイム取る気だ?」


「どうしたー…って
おお!ちゃんじゃないか!





真撰組トリオを含む何人かの隊士達が
門に集まってきた







「つーか何しに来た槍ムスメ」


殿と手合わせを頼みに」


「何でぃ、どーせなら今やってるゲームに
参加して一緒に土方埋葬しよーぜぃ」


生き埋め方向かよ!つーか門の近くに
いた山崎がなんで対応してねーんだよ!」


「山崎ならあっちでミントンしてたぜ?」


「山崎ぃ!テメッ仮にも訓練中だろがぁぁ!!」


「うわあぁぁぁぁぁぁ!!」





おおむね普段通りの光景に苦笑しつつ





「ねぇ近藤さん、テロ側にさんの参加を
提案しちゃダメかなぁ?」







が、唐突に近藤へと申し出た







「いきなり何でまた?」


「だって沖田隊長との壁が厚すぎるもん
それに外部の助力がダメって言われてないし」


「んーまぁ、そりゃそうだろうけど…」





考えあぐねる所に、ボロボロの山崎と共に
戻ってきた土方が真っ向から否定する







オレは反対だぞ 警察の行事に
部外者を入れんのは筋が通らねぇからな」


「別にいいじゃないですかぃ、オレぁ
がどっちついても負ける気はしやせんぜぃ」


「そーそー、目立った事件も今んとこないし
こーいう想定外も悪くないんじゃないっすか?」





しかし、他の隊員達は彼ほど反対の意を表さず
むしろ少なからず賛成しているようにも見える







さんが参入するの、反対?


「いや 俺は別にどっちでも」


「そこは反対しろよお前!」


「まぁまぁ落ち着けよ、ちゃんの意見も
聞こうじゃないか なっ?」


「私は殿と手合わせできればそれで」


「だったら参加しちゃえば一石二鳥ですよ♪」







のプッシュに約一名を除き、特に反対する
理由のない彼らはあっさり丸め込まれ







あれよあれよと言う内に


のテロ班特別参加が決定したのだった







やった〜!これで戦力アップ!
一緒にがんばりましょーねさん!!」


「うぬ、無論だ殿!」


「今回は特別だからな?それとテロ班に
いる以上はオレの命令に従えよ」


「言われなくとも 命令は守る」


「…っとムカツクなテメーは」









大まかな人員は以下の通り







防衛班=リーダー:近藤・参謀:沖田・他:
テロ班=リーダー:土方・参謀:原田・他:







何人かこれまでの行動で倒れたりしているが
大体現在は両者とも同人数が残存





現在は、テロ班に+一名でというわけだ







しかしこの追加一名により テロ班は
驚きの快進撃を見せ始めた







『槍ムスメ、その先には十中八九総悟の
トラップがある テメーの槍で蹴散らせ』


「了解した」







渋々ながら承諾した土方の命令に従い





はトラップや待ち伏せされた防衛班の
人間を、渡された竹槍で蹴散らしていく







『うおぉぉ〜!スゲェ〜!!』


さんがいれば二人の壁を破れるかも!
やっぱテロ側に引き入れて正解だったよ!」







彼女の活躍により防衛ラインを次々と突破し
勢いづいていく達テロ班









…が、隠れてやり過ごしつつトラップを
仕掛ける命令の最中


の姿を見つけた途端





殿、ようやく見つけましたぞ
いざ尋常にお手合わせ願おう!





は物陰から飛び出し、彼女へ勝負を挑んだ







『オィィィ!何勝手な真似してんだ槍ムスメ!』







通信越しの土方の怒号も何処吹く風





「テロ班なのに清々堂々とした態度に免じて
本気で相手してあげる、来な ちゃん


「参る!」







三つの木刀を構えたと、竹槍の先を
斜めに向けたの戦いが始まった









「っ、やっぱ結構やるじゃんちゃん」


「それはこちらの台詞だ 殿…」


「「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」」







戦いながら移動する両者の一風変わった
戦闘スタイルが壁や床を構う事無く破壊







独自で行動していた人間を、テロ班・防衛班
関係なく巻き込んでブチ倒し







「えっちょっと!?何でちゃん
連れてオレんトコまで来るの!?」



「うるせぇぇぇ!」





なだれ込んだ先にいた近藤を
勢い余ってが張り倒し







「お前ら目的完全に見失ってんだろ!」





駆けつけ様に怒鳴り込んできた土方を





「うるさい!」







が槍底であっという間に喉元を
強打して床に転がす







大型台風と化した二人を止める者はもはや…







ズキューン!









「二人とも…暴れすぎでしょ?





愛用の傘から紫煙をくゆらせたまま
ニッコリとが佇んでいた







「う、うぬ すまなんだ殿」


「つい熱が入りすぎてたんだよ
悪かったから俺らに銃口向けんな







彼女の怒りに、二人は慌てて構えを解く









シミュレーションはこうして終わりを告げた


結果は 両者が味方に
倒された事によるダウンのため、勝者なし


したがって給金もナシ…だそうな





屯所内の後片付けのため、全員があちこちを
移動したりゴミをまとめたりしている







「手合わせありがとう殿」


「おー、こっちこそシミュレーションの
手伝いしてくれてありがとな…でも」





そこで作業の手を止め 二人は口を開く





「「何故(俺ら・私達)だけ片付け範囲が広い?」」


「一番被害を出したのはさんでしょ?」







呆れたように言うに 沖田も続く







「文句を言わずにキリキリ働けィ、ほらここにも
でっけぇ粗大ゴミがあんだろぃ」


「オレが粗大ならテメェは有害ゴミか?」


「しかし総悟殿、この袋に人一人は流石に入りき」


「テメェはマジで入れんじゃねぇぇ!!」







片付けまで屯所が騒がしかったのは 言うまでもない








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:相互記念と兇様のリクにより、再び
共演夢と相成り 今回は真撰組サイドでお届け


沖田:口上が長ぇ(後ろから踏み倒し)


狐狗狸:痛い!地味に痛いからぁぁぁ!


土方:つーか何でオレらがこんなくだらねぇ
ゲームにつき合わされにゃならんのだ


狐狗狸:とっつぁんの独断と強権ですから(苦笑)


近藤:ちゃんの言ってた隕石ってナニ!?


狐狗狸:…大方NA○A系の番組を見たんだと
思いますよ、万事屋で




グダグダ駄作で失礼しました…
相互記念として兇様に捧げさせていただきます


様 様 
読んでいただきありがとうございました!