ガラリガラリと、今にも壊れそうな車を運転し





「料金さえもらえれば、どのような事でも
請け負いますよ 何か仕事はありませんかー」






ゆったりとした桔梗の染め抜かれた着流しの


切りっぱなしの黒髪をした女が声を張り上げる







「ちっ、しけてんねぇ…」





艶のある黒耀の瞳で周囲をつまらなそうに一巡し


女は、低い声音で毒づいた







彼女の名は 様々な武器や暗器を得意とし
料金次第で仕事を請ける、ある種万事屋と同じ





「誰が勝手に紹介しろっつった?」





あ、スイマセン…







「あーあ、金が無いのは首が無いのと一緒だねぇ
あいつらの貧乏がうつったんじゃないよな」





ぶつぶつと言いながら車を進めていたが


路上に見えたものに、ブレーキをかけた





の車の前に 倒れた作務衣姿の少女がいた











「何でも屋に普通を求めるのは間違い」











一旦路上へと降り、は少女の側まで
歩み寄り その身体を揺する





若い娘が行き倒れ?ちょっとしっかりしなって」





三つ編みを持ち上げるが、無反応







その整った顔をじっと見つめ





「あ…確かこの娘、この間…」





の脳内に 二月のある日の光景が浮かぶ











仕事を終えて帰る最中、進行方向上に揉め声が聞こえ





何かと思い見た先に 黒髪の美しい女が
ヤクザどもに絡まれている様子が見えた







「なぁんだ…よくある揉め事パターンか」





その時は懐も潤っていたので、特に助ける気もなく
成り行きを見つめたまま帰るつもりだった







…が 黒髪女とヤクザの間に割って入った
少女の行動の足を止めさせた







頭からぶつかり、少女は身体を回転させると


槍の柄底で七三ヤクザのアゴを打ち上げ
突き出た腹に膝蹴りを打ち込む





「ぐあぁぁぁぁっ?!」


「このクソガキ!よくも兄貴を!!」







飛びかかる二人組もただの一撃で撃沈させ





襲い来る内臓の苦痛に身を屈めたヤクザの
喉元に、槍の刃先が突きつけられる







「…私の目の前で兄上に指一本でも触れてみろ
潜った修羅が生温かった事を教えてやる」








怯えるヤクザへ 年に不釣合いな冷たい眼差しで


槍を振るおうとする少女へ
爆竹を投げつけようと―するより早く





彼女の頭へ見覚えのある木刀がぶっ刺さった





!?」


「な、何や知らんがここまでにしといたるわ!!」







ドサクサ紛れにヤクザ達はほうほうの体で逃げ







入れ違うように木刀の飛んできた方から
銀時達が現れた







「何やってんのちゃぁぁぁん!
あのセリフはマズイから版権的に!!」



「な、何をするのだ銀時 私は兄上に災い成す
愚か者どもを成敗せんと」


ヤクザにケンカ売る方がよっぽど無謀ですって!
てーか木刀大丈夫なんですか!?」


「案ずるな新八、私はこの程度で…は…」





表情を変えぬまま少女は木刀を頭から引き抜き


結果、激しく流血しその場に倒れた





「あ、倒れたね 今夜が峠アル」


「エンギでもねぇ事言うなァァ!!」







倒れた少女に慌てふためく面々を目にし





は面倒ごとに巻き込まれる前に
さっさとその場を後にしたのだった











…とか呼ばれてたっけ ここで
倒れてるって事はあの後なんとかなったのね」





けどここで死んでもなぁ…と思いつつ





脈を計ると 非常に微かながら心臓が
動いている事が感じ取れた







「…とりあえず拾って どっかで様子を見るか」





両脇から身体を持ち上げ、半ば引きずりつつ
は少女を車に放り込み 自分も乗り込んだ









少女を調べれば何か住所や素性が
分かるかもしれない





その間に体力が続くなら病院へ運ぶなりして
本人を回復させるもよし


死んだら死んだで親族だろうあの女へ連絡を取り


死に水を取ったと報告するもよし







「何にせよ、金をふんだくる手はある
後は適当な場所…ああ あそこにするか」







言っては 車をとある路地に止めた







彼女は少女を車に残したまま外へ出て


スナックが一階にある二階建ての建物
二階部分へ足を運び


玄関の扉に手を伸ばし…





あ゛?カギかかってるし…」





面倒くさそうにため息をつき、
裾にしまっていた仕込み刀を取り出すと


それであっという間に玄関のカギを開錠


何事も無かったかのように刀をしまいつつ
万事屋へと上がりこ





「ちょっとぉぉ!何普通にピッキングして
上がりこんでんですかさんんんん!!」








三角巾に割烹着姿の新八が へと叫ぶ







「何だいたんならさっさと開けなよ新一君」


「つかよぉ、何しに来たんだよ





いたってマイペースなの前に


ジャンプを携えた死んだ目の銀時が
居間の方からやる気なくやって来る





よー銀 ちょっと場所が欲しくて
休憩がてら借りに来たのさ」


「ここはラブホじゃねぇぞーつかよ
万事屋もどきの事してねぇで嫁行け嫁」


「余計なお世話だ 何で今更」


「いやだってお前そろそろ嫁行っとかねぇと
いかず後家になんぞ 何たってもうすぐ三s」





手を出しつつ歳を言おうとした銀時へ





瞬時に間合いを詰めた
の強烈なアッパーが炸裂した







「歳の事は言うな 潰すぞ銀」


「そうアル、女の歳バラすなんて最低ね
いくら若作りといえ」


神楽?アンタも余計な事は言わんでよろしい」





いつの間にか側にいた神楽へ言いつつ


は男二人を見やり、外を指し示す





「じゃ新一君に銀 あたしの車に
倒れてる小娘がいるから部屋に運んどいて」


「倒れてるって何したんですか!?」


さーん、ここオレん家なんですけどぉ?」


「いいから運べやコラァ」


「「はい」」







どす黒いのオーラに負け、二人は車から
少女を万事屋へと運び込む









「オイオイ、何でよりによって
拾ってくるわけ?」


「ああ そういやあんた等顔見知りだっけ
じゃ話が早い、この娘の住所教えて」


「人の話聞いてる!?」


「うっせぇな、こっちはどうやって
この娘から金ふんだくるか考えてんだよ」


「そんな理由でさん拾ったんですか!?」


「世の中はだよ新一君」





手で円を作るに銀時と新八は呆れるばかり







そこで ソファの上に寝かされていた
少女の身体が震え始め





「う…ここは……万事屋か?





まるで普通に目が覚めたように起き上がった







 やっと戻って来たアルか」





これまた普通に声をかける神楽へ、少女は
無表情のまま頷く







「おっどろいた…何あの子」


「あーの奴ぁハタ迷惑な事に、よく
三途に行くんだよ で今戻ってきたの」

「大抵はアンタが原因でしょーが」





端的な銀時の言葉を理解したかしてないのか
はどうでもよさそうに言う





「ふーん、そりゃまた妙な子だねぇ」







ようやくの存在に気付いたらしく


少女…の緑色の目が彼女へと向けられる







「この女人は誰だ?」


「あたしに言わせりゃアンタが誰よ」


「人に名を聞く時はまず自分から
名乗るのが礼儀だ」






すかさずのチョップが入った





「生意気言うんじゃないよこの小娘が」


「痛いではないか」







人形のように眉一つ動かさないまま
頭を擦るを、は少々いぶかしむ







、こいつはって言って
兄ちゃんと住むブラコン能面の槍女ね」


「それ紹介になってないよ神楽ちゃん…
さん この人はさんって言って」


「オンボロ車で万事屋もどきの事やってる
銀ちゃんの同期アル」


「ってオィィ!
人の説明横から取んないでくれる!?」






手短過ぎる二人の説明に便乗し、銀時が
を指差しながらへ言う





「ちなみにコイツ「悪鬼姫」っつー
あだ名の通りおっかねーから気ぃつけろ」


「お前が言うか銀」





射殺すような漆黒の目に銀時は怯む







「悪鬼…名だけは聞き覚えがある
"武暗器の申し子"との誉れの高い女侍と聞いている」


「へぇーよく知ってるね…ちゃんって
そっちの仕事してるの?」


「うぬ、裏稼業を生業としている」







その一言で は何となくの素性を察する







「なるほどねー、それでちゃん
助けてあげたお礼の相談がまだだったわよね」


「おお、お主が助けてくれたのか ありがとう


「お礼を言えるのはいい事だけど、
感謝してるならもっと具体的「銀時ぃぃぃ!
今日こそは攘夷志士になってもらうぞぉぉ!」






彼女の恫かt…否、商談を遮り


窓から大音声張り上げて桂が入ってきた





「オメーはどっから入ってきてんだヅラァ!」


ヅラではない桂だ!
…ん?もいるのか」





二人の姿を認め、桂が彼女らを見る







「げ、ヅラ」


「おお桂殿 こんにちは」





彼の出現にはあからさまに嫌そうな顔をし
は表情の変化なしに挨拶をする







「どうやらいい所に居合わせたようだな
ついでに二人も攘夷志士に





言葉半ばに、は爆竹をあるだけ桂へ投げる







「うぎゃああああああああぁぁぁ!!」





悲鳴と共に 万事屋に汚い花火が咲き





「テメェはおとといきやがれヅラぁぁぁ!!」





焦げてピクついた桂を間髪入れずにシュートし
空の彼方へとジャストミートした







「お〜ナイスコントロールね


「あたぼうよ、アイツしつっこいから」


殿 何もそこまでせずとも
というか桂殿は大丈夫なのか?」


「いーのよちゃん、アイツしぶといから」


「いやさん そーいう問題じゃ…」







新八の声も もはや二人の耳には
届いていなかったのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:野良ネコ様からのリク小説でウチの子と
銀魂共演と相成りました〜


銀時:オイィ!これアイツんとこのネタ
引っ張って来てんじゃねぇかぁぁ!!


新八:てーかさんもさんも
本当に何やってんですか!


狐狗狸:ネタは置いといて…概ねいつもの通り
さんはお登勢さん似の性格だから
ちょいがめつくしてしまいました(謝)


神楽:てか源氏名とかついてるアルか
ズリーよチキショー!


狐狗狸:あー「悪鬼姫」は銀さんの「白夜叉」
同系統だと思っていただければ


銀時:後のは何?あとのせサクサク?


狐狗狸:そーです、裏にも関わってるらしいし
勝手につけましたスイマセン




着物の裾に爆竹&仕込み刀を常備してるけど
武器は何でも使えるから…でつけました


勝手捏造&オチなしでスイマセンでした


様 
読んでいただきありがとうございました!