「ひとまずこんなモンかな…俺としては
もっと強いのがいいんだけどな」





手にした袋を眺め、呟く







「あくまで酔うのが目的じゃないし」





並んで袋を携えたが答える







「まーな…でも、問題はアレをどうすっかだよな
屯所は男所帯だから絶対ねぇだろうし」


「誰か知り合いの家で借りるか…後は
私達で手作りしちゃう?いっそ」







提案に しかしは眉をしかめる





「手作りって、それはちっとわびしい気が」


「でも 出来あいのヤツって
みんな顔が怖いじゃん」


「…確かに 良くあんなんで子供泣かねーよな」





うぅんと唸る様子に は我が意を得たりと思い
さらに彼女の説得に力を入れる





「だから手作りがいいってば、最悪二つだけ
作ればそれで体裁取れるし」


「…あのさぁ、それをどうやって 誰が作」





会話を遮るように 目の前に何かが落ち
はその場で足を止める。







それは 黒いひと束の三つ編みと


般若のバックプリント作務衣(黒)を
まとった、まごうことなく人間の姿だった





…しかも、二人にとって見覚えのある







「「(さん・ちゃん)!?」」











「雛人形の顔はちょっとしたトラウマ」











思わず駆け寄り 彼女のケガの具合を
確かめる二人







落下による外傷は額を少し切った程度で
流血の割には大したことが無さそうに見える





…が、彼女等の顔は晴れない







「ねぇ、 さっき落ちたばかりなのに
さんの脈が無いみたいなんだけど」


言うなっ怖いから!にしても誰だよ
上からちゃん突き落としたのは…!」





を抱えて上空を睨むに釣られ
も顔を上へ上げた所で





すぐ側の屋根上から、人の声が降ってくる









やっべ落ちたよぉぉ!今度こそオダブツか!?」


「銀ちゃんが勝手にやったことネ!
私何も知らないアルよ!!」


「元はと言えばお前がくだらねーコト
言い出したからこんな悲劇が起きたんだろ!」


「責任なすりあってる場合かぁぁぁ!
大丈夫ですかさーん!!」








路上から見上げるの視線と


屋根から覗く万事屋トリオの視線が





『あ』





見事なまでに、かち合った













「…で?何でこうなったのか
キリキリ自白してもらおうか なぁ銀時







屋根上から下ろさせた万事屋トリオを正座させ





仁王さながらに腕を組んで問いただす







「いや聞けよ こいつぁれっきとした
事故でオレに悪気は無かったんだよマジで」


「悪気が無くてもさんには
いい迷惑だと思います」





いまだに目覚めぬの様子を見たまま
が銀時に淡々と告げる


ちなみに出血は彼女の手当てで止まっている







「それ言うなら毎度死亡フラグ立ってる
につき合わされてるオレらの迷惑は
どうなんだコラァ!」


「逆ギレかよ いい年した大人が見苦しいネ」


うっせーよ神楽!元々お前のせいだろがぁ!!」





そのままメンチ切り合う二人を呆れ混じりに見やり





「じゃあ お前らが屋根の上なんかで
何をしてたのかから聞こうか?」





は そう言って新八へ視線を向ける







彼は観念したように話し始める





「実はですね…」











今日 万事屋は屋根瓦の修理を多数
請け負っていたらしい…が







「依頼受けすぎにも程があるでしょコレ!」


「私達を過労死させる気アルかこの天パぁぁ!」





やたらと多すぎる依頼に二人から
早速文句が飛んできた







しょーがねぇだろ!こんだけやんねぇと
今月も万事屋火の車なの!!」


「ウチがビンボなのは今に始まったことじゃないネ」


「ほとんどはお前と定春のメシ代に消えてんの
分かってんのかそこのチャイナ」





火花を散らす二人を 新八は押し留める





「あぁもうケンカすんなっつの!
それにしてもこの量は今日中に回れませんって」


「そう悲観的になるんじゃねぇよ新八
人間、信じりゃきっと奇跡が起こる…って
どっかの有名人が言ってた気がする」


マジでか銀ちゃん!信じていれば
大盛りカレーも目じゃないアルか!?」


「いつのネタだよ!てゆうかその人
逮捕歴あるしぃぃぃ!!」






そんな下らない言い合いの最中





「なんだ、皆ここにいたのか
玄関で声がしたが誰もいないのかと思ったぞ」





カギが開いていたから入ってきたらしい
が、ひょっこり顔を覗かせる







途端に銀時が目を光らせて手招きした





「おー、ちょうどいいトコに来た!
ちょっと仕事手伝ってけ」











「って何フツーに寄っただけの人
こき使ってんですか銀さん!」





のもっともなツッコミに、新八は
諦めたような目で頷いた





「僕も言ったんですが聞きやしませんでしたよ
正直、万事屋の財政難の事もありましたし」


「それに、ヒマだからいいって言ったネ」


「なるほど それで屋根の上からちゃんが
落ちてきたのは何でだ?」


ちゃーん、そんなコワイ目で見られると
ボク話しにくいんだけど…」





汗をだらりとかきつつ引きつった笑みを
浮かべる銀時







そこでちょうどが目を覚ました





「…ただいま戻った、殿と殿
こんにちは 何故ここに?」


「お帰り、ってやっぱ三途の川行ってたんだ…」


「ちょっと通りかかって…屋根から落ちる直前
何があったか説明できます?さん」







は表情を変えず、首を縦に振って





「弾みで滑って、突き飛ばさ」


「「省かない!」」





間髪入れず二人のツッコミチョップを受けた









簡単に説明すると…屋根の上での仕事中に
先程同様 銀時と神楽がケンカし始め


それを二人が止めていた際







「邪魔アルこんのダメガネぇぇぇ!!」


「何でぼぶっ!?」





神楽のパンチですっとんだ新八と
がぶつかり


彼女は弾みで足を滑らせてバランスを崩す







っ危ねぇ!」





気付いた銀時が駆け寄って手を伸ばすが







勢い余ってそっちも足を滑らせ





助けるつもりが逆にを屋根から
突き落とす格好
になってしまったようだ









「事故っつーかお前ららしいっつーか…
何にせよアホだな」


「ちょ、冷めた目で見るのやめてくんない!?」


「そうか 二人が私を介抱してくれたのか
ありがとう、本当に助かった」


「いやあのさん…それでいいんですか?」


「そういやは何してたアルか?」





問いかけられ 彼女等は顔を見合わせる





「実は珍しくオフがこの日に重なったから
と二人で買い物に出てたんだよ」


「今日、ひな祭りじゃないですか
だからと一緒にお祝いしようって」





二人の持っている袋の中には、確かに
甘酒の材料ひなあられなどが見える







「そうなんですか でも真撰組に
ひな段なんてあるんですか?」





新八の問いに は揃って首を横に振る





「あるわけ無いだろ、元々男所帯なんだし」


「だから私達二人で人形を手作りしようかって」


なんと!殿と殿は人形師の資格を
持っているのか…!?」


『どこをどう聞いたらそうなる!?』





全員が一斉にの言葉にツッコんだ









少し沈黙し やがて何かを閃いたように
銀時が二人に向かってこう言った







「じゃあよぉ、仕事終わったら万事屋で
ひな祭りってのはどうだ?」


「お〜それいいアル!甘酒飲み放題ネ!」


「いや、ウチにもひな段ないでしょ」


「それに人形作るなら屯所でも一緒ですし」


あん?段も人形もいらねぇよ
オレ達で人形の役をやりゃいーじゃん」







意図が分からず首を傾げる五人に構わず
銀時はの肩に手を置いて続ける







「オレおだいり様でオレの嫁だから
おひな様、んで神楽と
三人官女辺りで 新八はビョウブな」





正に名案思いつきました!的なしたり顔で
銀時が彼女達の顔を見回せば





『ふざけんなあぁぁぁぁ!!』


「ぎぃやあぁぁぁぁぁぁぁ!!」





たちまち全員の猛抗議&袋叩きにあった







「誰がいつテメーの嫁になった、あぁん?」


「アタイがんなやっすい役で満足できると
思ってんのかコラァ!」


「ふざけるのも大概にしてくださいっ!」


「僕にいたっては人ですらねぇよ!」


「第一おひな様は兄上と決まっておろう!」


『性別違ぇぇぇぇぇぇ!!』







再び全員からへのツッコミが入る







「し、しかし兄上は何よりも麗しいのだぞ
ならばおひな様になるのが一番いい」


「よっく考えろ いくら美人でも
あの兄ちゃんにはチ○コついてるからね!」





真顔のへ力説する銀時の頭へ





「ちょ!銀さん女性の前でその発言は
完全にセクハラですからぁぁぁぁ!!」


「「「一辺三途に行って来い天パぁぁ!!」」」







新八のツッコミと共にと神楽の
トリプルキックが炸裂したのだった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:兇様からのリクにより、様&様と
ウチのを共演させてみました〜


銀時:オィオィオィ 何でオレの嫁
いんのにこんな役回り!?


神楽:自業自得アル、このダメエロ天パ


新八:またさんに蹴られますよ…てか
さんに何させてんだアンタは!


狐狗狸:いやいや、アンタも結局は
手伝わせてたよね?


神楽:男どもはどうでもいいけど、
とはひな祭りしたかったネ


銀時:チ○コついてるヤツはハブかよ
チキショー!ひな祭りのバカヤロー!


新八:だからそれがセクハラだっての!!




一ヶ月ほど遅れながら、お誕生日祝いも兼ねて
兇様に捧げさせていただきます


様 様 
読んでいただきありがとうございました!