むかーし昔、ある台所に





一つの刺殺死体が転がっていました


「出落ち!?」





玄関から上がりこんだ途端、
そう叫んでその場に固まっていた







ちょっと前に買い物中の神楽と出会い





「色々買い込んでるけど、どうしたの?」


「お金入ったから 久々に鍋やるんで
材料買って来いって銀ちゃん言ってたネ」


「って女の子に買いに行かせるなんて
あのクルクル天パ…個人的に有罪決定


「自分の分買いに行ったら、余ったおつりで
酢昆布買っていいって言ってたネ!」






慌てて答えて 沸き上がる黒いオーラと
ソレに伴うフラグを壊して神楽は続ける





「なんかにも声かけてたし
よかったら、も一緒にどうアルか?」


「喜んでぇぇぇ!!」





と、ウキウキしながらやって来た万事屋の


入って直ぐの台所でツヅラをかぶって背中に
包丁刺さった作務衣少女が転がっているなど


彼女は思いもしなかったからだ











「鍋は正しい具材とマナーを守って
おいしく食べましょう」












「だっ誰がピーマン妹殺したアルか!?


続いて上がった神楽が、側に寄りながら
室内にいる男達へ向けて訊ねれば





それは私、とヅラが言った」


「ヅラじゃない桂だ!勝手に殺人犯にするな!」


「それにまだ死んでませんからこの人!!」





目で差された桂当人と新八の非難が発言者に飛んだ





「てゆうか まず怪我の手当てが先でしょ…
ちょっとそこの部屋借りるよ神楽ちゃん」


「あんまり汚さなきゃOKヨ」


「ってコラ神楽 元々ここの家主はオレd」


即座に突きつけられた銃口と殺気

銀時は、それ以上文句を告げれず押し黙った







「な…何このネバネバした物体は?」


「あ!コイツ口に生きたカエルくわえて…

うわわっ!?虫が出てきたアルゥゥ!!





かぶっていたツヅラをどけた途端に


謎の粘液塗れの頭と一緒に、カエルや虫が
何匹も這い出してちょっとした騒ぎに発展して

処理に若干手間はかかったものの


見事に突き立った包丁は、見た目ほど深くは
刺さっていなかったらしく


引っこ抜いて包帯を巻く程度で処置は終わり

程なく当人も意識を取り戻したので







「そもそも、どうしてこうなったワケ?」





和室に用意された鍋を囲む卓に座る
の瞳が、鋭さを持って男達へと注がれた





「ぼ、僕らはただ普通の鍋が食べたくて
さんを止めようとしてただけなんです」


そうとも!決して悪気はなかったんだ!!」


「いや半分はオメーのせいだろーが」


「言い訳はいいから経過だけを話せ」


「「「はい」」」









万事屋二人が鍋の準備をする横で

手持ち無沙汰の彼女は表情を変えず訊ねる





「…私も買出しについて行かずよかったのか?」


「ガキの使いじゃあるめーし、アイツだって
具材ぐらいキチンと買ってこれんだろ?」


「そうか…なれば準備を手伝おうか」


「いや、お気持ちは嬉しいんですけどね
ジッとしていてくれた方が十分助かります」





せっかくの鍋ぐらいは穏やかに食べたい彼らは
死亡フラグの予防にも気を配っていた







「オイ銀時 ダシを取るなら昆布はさっと
ニ、三回湯に潜らせる程度にしておけ」





言われて当人は、

鍋の様子を見守っていた桂の襟首をむんずと掴む


「ってオメーは呼んでねぇのになんでいんだよ


「いいではないか、時期は鍋が旬
それに今月は"鍋の日"もあるのだからな」


「手ぶらで鍋だけつつこうったって
そーは問屋がおろさねぇんだよ」


「落ち着け、私の材料を桂殿に分ければ文句無かろう」


「おお ワザワザすまんな…やはりお主は
そこの貧乏侍と違って心が広い」


「そーかい、じゃ心の狭い家主なんで
呼んでもいねぇ部外者はお帰り下さい


「まあまあ…大勢で食べた方が鍋もおいしいでしょ」





新八のとりなしにより桂の同席が許された所で





「そうとも、これだけあれば皆の分も足りるしな」


言いつつ彼女は持ってきた小さなつづらを
開けて中身をグイっと見せ





覗いた三人の表情が リアルに固まった







竹製のつづらの中には…ウゴウゴとうごめく
カエルとタガメと、何かの卵&幼虫





「「「ソレらを
入れるのだけはよせぇぇ!!」」」






トリプルシャウトに若干身を引きながらも
彼女は平素の無表情で淡々と答える


「何故ゆえ?採りたてだから鮮度もいいぞ」


問題はそこじゃないから!取って置きの材料
頼んだのに何ゲテモノ持ち込んでんのぉぉぉ!?」


「見た目で判断はいかぬぞ、食せば何でもうまい」


「見た目以前の問題ぃぃ!」


「そうか、一口大にせねば食べにくいのか

…しばし台所と包丁を借りるぞ」


「イヤアァァァ!それだけはやめてェェェ!!」





まな板が地獄絵図と化すのを阻止しようと
止めに入った桂がつづらを


掴み損ね、もんどりうってぶつかった拍子に


宙を舞ったつづらが頭にジャストフィットし


「むぐおっ!?前が見え…ぐっ、ぐぅっ!!





唐突にもがき出して暴れ回り
その場に倒れこんだの背中に


これまた見事なタイミングで落下した包丁が

刃を下にしてぐさりと突き刺さった









「とまあ、オレ達から見た概要はこんな所か」


「まさかカエルが決死覚悟で私の息の根を
止めてこようとは…不覚だった」


「大丈夫よ、あのカエルは自然に帰したから」


窓からポイ捨てとも言うアル」





色々と問題はあるながら、持ち込まれた
ゲテモノ類の処分は無事になされたのであった





「なるほど…つまる所悪いのは小太郎なワケね」


「まっ、待て紅!誤解だ話せば分かr」


「だーかーらだっつってんだろーがぁぁ!!」





―テロップが流れる程度のリンチが行われております

しばらく、お待ち下さい―








桂が再起不能に陥ったのを見て取ると





「とにかく、せっかくの鍋気分を台無しにした
ピーマン娘には一番いい具材を用意してもらいます」


「一体何が気に入らないというのだ…」


「異論は認めませーん あと
監視の意味も含めてこいつの付き添いを頼む」


「分かった頼まれようじゃない」


早っ!決断早すぎません!?」





銀時の命により、二人は新たな具材探し及び
買出しへと向かったのだった







「何故カエルや虫を忌避するのか…私は
あれで幼少の飢えをしのいだというのに」


小さい頃そんな食生活送らされてたの!?

どういう教育してたんだあのシスコン兄貴…」


兄上は悪くない、あの頃は仕方が無かっただけ故」





首を横に振られての一言に 溢れる黒き波動は止まり





「な…なんて健気なのちゃん!

もう食生活に困ったらいつでもお姉さんを
頼んなさい!たらふく食べさせてあげるから!!」



は、往来にも関わらず彼女を抱きしめていた





殿…気持ちだけで十分故 それより
早く材料を買って万事屋へ戻ろう」


「うん!」







そうして再び万事屋に戻った時には…





鍋を巡ってのバトルロイヤルが繰り広げられていた





「な…何やってんのあんた達!!


三人が動きを止め 咎める金眼に気まずさを表す





「いや、これアレだよホラ
神楽と新八が待ちきれねーって喰い始めてさ」


「アンタだってノリノリで肉奪おうとしてただろ!
何僕らのせいにしてんのさ!!」



「お主ら…ちゃんと材料が人数分あるなら
きちんと分ければよかろうに」


「鍋を囲んでの争いは万事屋じゃ日常茶飯事ネ」


「じゃあ争いが起こらないようにしてあげる」





言いながら、が室内の電気を落とした





おわっ!?何でイキナリ暗くしたっ」


「具材が見えなきゃ、みんなで公平に
分けれるしスリルもあって楽しいんじゃない?」


「それもそうアルな さっすが!」





こうして二人と新たな具材を加えての
仕切り直した闇鍋大会が開始されたのだが…







彼らがいかに材料を人より多く取るか


または何を取れるか 思考を巡らせている中





「一度ハシで掴んだモノはちゃーんと食べてね〜」


ただ一人、闇鍋提案者だけは別の思惑で動いていた





当然の如く 材料を取るフリをして彼女らの
どちらか一人ないし二人をハシで掴む"下心"






(このサラっとした感触は髪…しかも長いって事は…!)





む?誰だオレの髪を引っ張っているのは」


「いつの間に復活しやがった!テメェは
お呼びじゃねぇんだよひっこんでろぉぉぉぉ!!」



「理不尽ッ!!」





ちゃっかり復活していた桂がしばき倒される横で





「おぉっ、なんかイキがいいの入ってんじゃん
どれどれどんな味かな〜


ハシで摘んだそれを口に含んで







―…どうだ その後の人生は?


感謝しているぜ、こんな姿だからこそ…
手に入れた味もある!





ほう…貴様がベストポジションを…

だが今度は他の具材達が、足手まといに
ならなければいいがな





黒い鍋が またゆだりはじめた…


よかろう、かかってこい…





食われる覚悟が出来たのならな!!







「って、またカエル入れやがったな
このバカ娘ぇぇぇぇ!!」






脳裏に浮かんだ光景とBGMもろとも
口内の物体を吐き出し、の頭を叩く銀時





その気配&物音を察知して


「女の子叩くなアホ天パぁぁぁ!!」


「攻撃目標間違ってますさんっ!!」





彼女は思い切り新八に幻の左を浴びせた





「いや…面構えがよかったのでつい」


「ひょっとしてあの時しゃがみこんだのは
カエルを拾うタメだったの?!」


「油断もスキもないアルな」





…この後、繰り広げられたのは正に
"恐怖の闇鍋"と語り継がれる出来事なのだが


(食卓の 法則が 乱れる!)








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:二万ヒット記念贈呈ということで

舞様リクにより、万事屋メンバー+ヅラでの
こってりギャ…ってアレ?後半がなくなってね?


銀時:って演出じゃねーのかよぉぉぉ!!


狐狗狸:くそっ、せっかく鍋回に匹敵するような
心理戦が詰まってたのに…許すまじレジデn


桂:その組織名だけは止せぇぇぇぇ!
捕まったら最後、洗脳改造手術を施されるぞ!!


新八:ねーよ!アンタら揃いも揃って
陰謀説と電波マンガに踊らされ過ぎだぁぁぁ!!


神楽:そもそも心理戦があったかどうかすら
怪しいアル、本当はシャクとネタが無いから誤魔k


狐狗狸:ちなみに鍋に投下されてたカエルは
彼女の命を狙ったカエルと同じヤツです




鍋だけにいつも以上にグッダグダなネタです


本当、誰得すぎて申し訳ないですが
舞様へと捧げさせていただきます!


様 
読んでいただきありがとうございました!