四方八方からのセミの鳴き声の大合唱と
上を下をと注がれる熱気が


今がこれ以上無く"夏"だと実感させられる





濃く茂った森に切り取られた鮮やかな青空を
見上げ は汗を拭いながら呟く


「こんな日はプールとかで泳げたら
楽しかったろうなぁ〜…」





涼しげな水辺にあちこちではしゃぐ

眩いばかりのいたいけな少年少女達


ああ、何て至福の光景…





だがそんな天国はカナヅチという自らの枷と


すまぬ…今度侘びとして川辺で
古式泳法をお教えしたい」


「いや、気持ちだけで十分だから」





平素の無表情を崩さぬ


スキューバスーツしか持っていないという
現実によって打ち砕かれた







とはいえ当人はそれで意気消沈せず





「じゃ、みんなに早速これからの作戦を
おさらいしまーす!」


『はーい!』


神楽や近所の子供達を加えた団体人数で

近所の森で昆虫採集を実施していた





「まずはクヌギやコナラの木に、渡した蜜や
ゼリーを塗りつけます」


先生ー!神楽ちゃんが既に
全部食べちゃったそうでーす」


「ええっ!?何で食べちゃったの!!」


挙手した子供のいきなりな告白に彼女は
目を白黒させながら神楽へ問いかける





「だってお腹空いたからつい…」


でもあれ昆虫用だから!
人が食べたらダメだからっ!!」


、そっそうだったのか…!?」


ちゃんまで!?」





昆虫採集の秘密兵器を早くも平らげられ
強く眩暈を感じてはいたものの


(…いや、この程度でめげるもんか!)


と固く拳を握りは闘志を新たにしていた





彼女の目的はズバリ 子供達といかにして
この夏をエンジョイするかである











「夏は四季で一番、テンション
上がって許される時季…かも」












―八月某日の江戸へ夏特有の熱気と同時に


前触れ無く、天人のウィルスがもたらされた





「前触れと違ぇぇぇぇ!今回の話は
夏っぽいネタど真ん中じゃないんですか!?」






そこはまあよく言う叙述トリックという奴で


「すませられるかぁぁぁぁ!」


「うっさいネ黙るヨロシ新八…お前が
叫ぶと江戸の気温が三度上がるヨ」


「いや気温の高さは僕のせいじゃ…って
かかか、神楽ちゃんんん!?


「だからうっさ…ってアレ?お前
どうしたねそれ、趣味悪い作りモンアルな」


「え…ウソ、ウソォォォォ!?





自らの状態と目の前の相手に起きた状態とに
驚き戸惑う新八へ駄目押しに







「んだよ朝っぱらから…」





襖を開けた、寝ぼけ眼の銀時の"変化"


万事屋従業員の二人は揃って釘付けになった









…一方、似たようなことは万事屋だけでなく
真撰組の屯所でも既に起こっていた







「天人のもたらしたウィルスが原因らしいから
当然っていえば、当然なんだろうけど…」





昼に差しかかる頃合にTVで事実を確認すれば





『現在政府で対策を採り、症状を抑えるための
薬の製造に取りかかっております』


深刻な面持ちで告げる結野アナの頭には


見事なまでの鹿の耳がぴょこりと生えている





…もちろん、普通の人間の耳もついているので
パッと見何かのおふざけとかにしか見えないが





画面を見つめるには…いや


江戸中にいる人間なら誰もがそれは

おふざけではないと理解していた


「さーて、どうしたもんかな」





眉をしかめながらもどこか余裕の表情で彼女は

黒い尻尾を揺らめかせた





そう 目を覚ましたにはバッチリ
黒猫の耳と尻尾が付加されていたのだ







今朝方、自らの身体に付与されたそれと


元々からの部屋の主・土方にもつけられた
シェパードっぽい犬耳&尻尾を確認し


始めは沖田の悪質なイタズラかと勘ぐったが


すぐにそれが間違いであると認識された





……当人の頭ににょきりと生えた

丸っこいパンダの耳を目撃して







「しかし副作用とか懸念すべき点はさて置き
…これはこれで中々愉快な光景かも」


ちらりと周囲へ金色の視線を走らせれば


仕事へと行動を移すも、未だにショックから
抜け出せずおどおどする同僚達の姿が





彼らの耳や腰の辺りからは


様々な種類の 動物の耳やら尻尾が飛び出て

本人の動きにあわせてぴこぴこ動いている


……ついでに言うなら、近藤の腰に
ぶら下がってるのは恐らくゴリラの尾であろう





「見慣れた風景も こんなだと妙に和むな〜」





にんまりとした顔は 逆に他の面々が
和まされるような雰囲気を醸している





が、当人はすぐさま顔をしかめて





「うー…市中見回り行きたい…!こんな
紙の束でなく子供達とかを見に行きたい!


悔しげに手元の書類を睨みつける





勿論、事務仕事を命じたのは他でもない土方だ







赤髪に似合う猫耳と尻尾をつけた彼女

隊士達以外の周囲に見せるのは腹立たしい


そして何より…逸脱しすぎた子供好きが
ひと犯罪起こすだろうという確実かつリアルな
予想の元 取られた予防策らしい





予防策って何よ!失っ礼ね!
人を犯罪予備軍みたいな扱いしちゃって…

あーあ、何か適当な事件が起きないかなー」


耳と尻尾とをパタパタ動かしながら
ロクでもない発言をかました直後





『―緊急事態発生!緊急事態発生!』





図ったようなタイミングで無線が屯所内に響いた











「いい具合に通報されるなんて、ナイス小太郎!





テロリスト・桂捕縛の為の出動に便乗し

江戸の町を闊歩する大義名分を得て





彼の姿を探す振りをして


犬に猫にリスに熊…色んな動物の耳と尾をつけた
いたいけな少年少女達を思う存分眺めていた



てゆうか至福に浸りまくってニヤニヤしていた





特に、ひいきにしている花屋の少年


和馬君なんかは可愛らしいゾウ耳で

うっかり拉致したくなった…と彼女は思った





「おっと鼻血が…とにかく、目指すは万事屋!





ぐっと握り拳をつくった彼女の脳内には





桂は銀時を攘夷浪士へと常々勧誘を呼びかけて
いるので万事屋に顔を出していてもおかしくない

…という真撰組隊士としての職務を負った思考と





獣耳をつけた神楽や、あわよくばの姿を
拝み倒せるんじゃないかという


個人的かつ欲に溢れた願望があった







「神楽ちゃんはウサ耳かな〜…夜兎だし

ちゃんは…犬耳が似合うかもしれない
ふっさふさで垂れてるヤツがいいな〜」


なんぞと妄言ダダもれしながら階段を駆け上がり







「「あ」」





玄関に立つ、柴犬の耳と尾を持つ桂と鉢合わせた


しかも背に担ぐのはぐったりした作務衣の―


「小太郎アンタ…よりにもよって
か弱い少女を拉致だなんて…見損なったわ!」



小太郎じゃない桂だ!いや違うぞ紅っ
これはやむを得ない事故があって」


「問答無用ぉぉぉ!とっととその娘を放せ
このロリコン変態テロリストぉぉぉぉ!!」



鬼の形相で有無を言わさずは太ももの
ホルスターから銃を取り出し 彼へと発砲





「ちょちょちょ待てぇぇぇ!弾当たる!
オレだけでなくにも当たるって!」



「大丈夫よ!これでも腕前には自信あるから
アンタだけ仕留めれるモン!!


「そうかそれなら…いやいやいや良くない!
オレは無実だってばぁぁ!!





わたわたと狭い廊下で器用に弾丸を避ける桂と


構わず これまた器用に弾丸を桂にだけ
当たるように発砲し続ける







そんな割って入るにも勇気のありそうな争いを





「玄関でうるさいネ!何やってるアルか!」


勢いよく戸を開けた神楽の一言が止めた





「りっ…リーダー!」


かかかかカワイイぃぃぃぃ!
神楽ちゃん可愛い超カワイイ激カワイイ!!」






予想通り、見事なウサ耳を生やした神楽に
銃を収め満面の笑みで抱きつく彼女





その転身の早さに瞠目しつつも


「と…所でリーダー、出来たら少々
お宅にあがらせてはくれないだろうか」





ソワソワと尾を振りながら、視線で
負ぶったままの少女を差して桂は言った









買い物に行った二人の代わりに家を
任されていた神楽が、三人を家に上げ





「…桂殿をはじめとする皆の者には
真に迷惑をかけた」





ようやく復活したは ピンと尖った
耳を若干前へと倒しながら淡々と告げた


恐らくこれはドーベルマンのそれらしい





「いいのよ気にしないで、あなたは
何にも悪くないんだから〜」


宥めるは獣耳少女二人を両脇に侍らせ

実に恍惚かつご満悦の表情





…それだけに向いの桂の渋面が際立つ


「お、オレだって悪くないハズだ…
てゆうかズルいぞ獣耳を独り占めなどっ」


うるさいド変態 大体この娘が
三途行ったのも小太郎のせいでしょーが」







この状況は極度の動物好きでもある
桂にとっても、ある意味至福の状況であり


目の前に現れた知り合いが犬耳だったなら


ついつい撫で回したくなるのは至極当然で





その妙なオーラにたじろいだ彼女が
身を引いた所で、切れた電線に感電したのも


流れとしては致し方ないのだろう







「ま…まあ少々責任は感じているが
しかしだな、オレはあくまで動物好きとして」


「黙れ犯罪者 とりあえず私は仕事もあるし
大人しくしてないと容赦なく撃つから」






笑顔で銃口を突きつけられ怯える桂を

哀れに思い、彼女達二人が口々に言う





…それ立派に恐喝ネ」


「あの、桂殿も悪気があったわけでもなし
許してはもらえまいか…というより放」


「いいのよ"カワイイは正義"って名言が
世の中にあるし、アレは犯罪者なんだから!」






力の限り叫ぶ暴君王女さながらの彼女を





「お前ぇーが言うな犯罪予備軍んんん!」


白い猫耳を生やした銀時が後ろから
思い切りどついたのだった








――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:サイト一万ヒットの記念として舞様へ
リクによるギャグです…えーと様を
イジめ倒…てーかイジり倒しましたスイマセン


新八:イジりすぎでしょ!それより冒頭のネタ
あれ完全にいらないじゃん!!


狐狗狸:ちなみにスキューバスーツは一部の
特別なプール以外、着用禁止になってます


新八:意見無視!?そのムダ知識もいらないし!


神楽:へー、なんであのゼリー食べちゃダメアルか


狐狗狸:無害ではあるけど、基本人間が
食べないように注意書きがあるからです


銀時:そこ答えんなぁぁぁ!つーか何で
オリストリスペクトで獣耳ネタ!?


狐狗狸:書きたかったからです、獣耳は正義!


桂:確かに、しかし耳と尻尾もよかったが…
肉球もつけれなかったのか?(ソワソワ)


銀時:何顔赤らめてんだヅラぁぁぁぁ!(蹴)




個人的にはゾウ耳も萌えポ(黙れバ管理人)


祝ってない&ヒロイン崩壊でスイマセン
…が舞様へと捧げさせていただきます!


様 
読んでいただきありがとうございました!