流行り病とか多い今日この頃、みんなはちゃんと
手を洗ったりして気をつけてるかな?
普段からの生活だけじゃなく魔物との接触にも
気をつけてないと 僕みたいに風邪引くよぉー
「それはさんだけですってば」
「うっわー辛辣な相方…全くもう、僕はそんな
薄情な子に育てた覚えは無いよ?」
「ええ、あなたのお陰で自分でもずいぶんと
逞しくなったと自負してますよ」
それもそうだねぇ…つくづく時の流れは早いもんだ
頼りなかったあの時の若造が、今じゃ立派に
いっぱしの剣士として僕と肩を並べてる
こないだなんか一人で仕事片付けて帰ってきたし
「本当、成長したよねぇ…」
しみじみ呟くと、彼は緑と青に彩られた瞳を細める
「にしても今度からキチンと節制してくださいよ?
また一人で船に乗る羽目になるのは嫌ですからね」
「わーかってるって、まったく心配性だなぁ」
色々小うるさくなったとはいえカナヅチな所は
相変わらずって言うか 何と言うk
「おわっ」
「あ、悪いねネェちゃ」
ぶつかって来たオッサンが笑顔で駆け去ろうと
するよりも早く足を引っ掛けて蹴倒し
起き上がりかけた額と腹に銃口を突きつける
「3数えてぶっ放す前におサイフ返して?」
「ひっひぃぃ!スイマセンでしたぁぁぁ!!」
「ちょっとさん!?
せめて人目の少ないトコでやってくださいっ!!」
無事にスリからおサイフは取り返したけど
旅路に余計なケチがついたなぁ…
まあとにかく 目指すは再びアダマス大陸!
狙うは竜鱗族率いる盗賊団の根城とウワサのある塔に
溜め込まれたお宝!!
〜No'n Future A 番外 「とある旅人の追跡記録」〜
……と、意気揚々と向かったトコまでは
よかったんだけどねぇー
「ああーあの塔ならこの間、妙な旅人の奴らが
進んで行ったと思うけど?」
モルダはどうやら壊滅したらしいから
他の所から上陸して、塔から程近いイールで
腹ごしらえがてら作戦立ててたら
客の兄ちゃんが僕らにこう言ってきた
「あの…どういった人達でした?」
相方の話にやや酔っ払いながら店の人々が
口にした"旅人達"の特徴がそれぞれ
赤いコートで眼帯をした銀髪の男
黒い髪の異界者らしき少年と
緑色の髪の魔導師風の少年
それに猫獣族に、金髪と紫髪の少女二人組
「…後の子達は分かんないけど、最初の三人って
明らかに石榴達だよねぇ?」
「ええ、恐らくは」
ちょっとイヤーな予感を感じつつも僕らは
望みを託して 現地へと赴いて
……進む内に、悪い予感の方が正しかったと知った
「外側も内側も 上から下までボロボロですね
…完膚なきまでに」
「うん…そうだね」
所々焦げてたり 鋭利な刃物で斬ったアトとか
転がってる矢とかでっかい破壊痕とかが
嫌でも目に付いていて
旅人達=石榴達が先にここに来ていたと確信
…ついでに、お目当てのお宝があったらしき
隠し部屋にはニャンコイン一つ無い
うすうす 分かってはいたんだ
あのルーデメラが見つけたお宝ほったらかす
なんて行動取りっこないって…でもさぁ?
「ちょっとぐらい残しといてくれたって
いいのに…石榴達のバカァ!」
「それ八つ当たりですからさ…げ」
眉をしかめたその顔を向けられているのは
退治された盗賊団達の残党っぽい奴ら
あー適当にあしらったのがマズかったな〜
でも弾丸だってタダじゃないし
「メンドくさいから、処理頼むよ〜」
相方はあからさまにイヤな顔してたけど
迫ってくるむさいツラのオッサン達あっという間に片付けてくれた
うーん、つくづく強くなったもんだ
「それにしてもさ、石榴達はどうしてこの塔に登ったんだろうね?」
「町で聞いてたじゃないですか お仲間の
女の子が"宝を取り返す"って叫んでたって」
ああーそうだっけねぇ…
しかしそのフレーズ、てゆうかそんな勝気な娘
どっかで見たような気がするなぁ
何にせよ期待してたお宝取り損ねちゃって赤字なのは事実
なので…僕らはその分をせびるついでに
依頼を多くもらえそうな街を目指して
直線距離の森を突っ切ろうと進み
「や…やっぱり遠回りでも、この森を
さけて通ればよかったんじゃ…!?」
既にかなりの時間をさ迷っていた
「正直…この森を甘く見てたかも…」
「当たり前です!ここは"惑わしの森"と
呼ばれている地域なんですから、気をつけないと
あっという間に出られなくなるんですよ!!」
「まーまー怒らないの、これも金になる
依頼の為だと思えば苦になんないでしょ?」
「……誰のせいで毎回
財政が火の車になってると思ってるんですか?」
いやーだってあの町のご飯スッゴイおいしかったから
ついついお代わりしたくなったし
それに旅の名産品とか面白いもの多かったし…
「女の子は色々物入りって事で許してよ?」
手を合わせてもツレの表情は沈んだまんまだ
「それに、この森で珍しい植物や生き物があれば
すぐに懐なんか潤っちゃうって〜ねっ」
「…どうせ見つけるのであれば、賞金がかかってる
アスクウッド王国の王女の方がまだ手間が
少なくて済みそうですけど」
それは絶対にない、って言おうとして
"クケェェエギェェェェェェェ!!"
鼓膜が破れそうなくらいのスゴい鳴き声と共に
風を巻き起こしながら 頭上を通り越して
僕らの前に…一匹の生き物が舞い降りる
大きさは大体僕らと同じかやや小さめで
女の顔と上半身を持ってはいるけれど
両腕の部分は大きな翼に変わっていて、腰から
下は完全にワシみたいなカギ爪のある鳥の脚
「あれってもしかして…ハルピューア!?」
「間違いないと思います、以前読んだ文献の
記述と特徴が合致してます…!」
性格は凶暴 聞いた話では使い魔みたいな
低級の動物を呼び出せるらしいけど
それ以外の生態はいまだに研究中で
羽根や爪だけでも 素材として割合高値で売れる
「ちょうどいい…依頼をせびる手土産代わりに
アレを生け捕って連れて行こう!」
「手持ちの装備が十分じゃないのに無茶ですよ!」
「ほらよそ見しない!」
存外素早く飛びかかった動きをお互いかわし
連続で繰り出される爪が、剣で弾かれた隙間を縫って
詰め込んだ麻酔弾を翼にいくつか撃ち込んでやる
「…って意外としぶといなぁ〜
大抵ニ、三発ほどで効いてくるのに」
「まっ…まずは足止め対策の網でも
かぶせてからにしてくださいよ!」
抗議する相方の息は 結構荒い
スピードと体重の乗った突進を剣で
捌き続けるのって大変なんだなぁ
…そういえばあの人も
"斬るより受け流す方が技量が要る"って
言っていたような気がするし 昔
なんてボンヤリと考えていたら
「…ハルピューアの様子が!」
上がった声に、僕の思考は引き戻され
目の前を見据えると 羽根を大きく広げ
天を仰いだハルピューアが
悲鳴にも似た鳴き声で叫び始めた
と同時にその足元の空間がいくつか奇妙に歪んで
現れたのは 尾の代わりに頭がついた鈍色の蛇
「うげっ…アイロスビーナ!!」
「アイロスビーナって…確か防具に使われるほど
鱗や皮の硬度が高い蛇ですよね?」
そう、高山に主に生息してるからか
やたらと表皮が固いんだけど
割と地中で生息する性質とそれなりに少ない個体数
あと独特の移動・攻撃方法に手を焼くからか
本体の知名度は案外マイナーだったりする
「その通り〜毒は無いけど手強いから
気をつけて捕まえるように」
「はい…て、アレも捕獲対象ですかさん!?」
「当たり前でしょ その筋に素材を売れば
そこそこいい値段するもん…あ、あと」
最大の特性を語ろうとしたけど時既に遅く
両頭蛇は、互いの頭を天高く持ち上げ
器用にも丸まりながら口を口で挟み合い
輪っかみたくなった身体で突進してきた
鋼みたいに硬い鱗を持つ、兜ほどの
大きさの物体がいくつも転がってきたら…
誰だって落ち着いてなんかいられない!
「「うわわわわわぁぁっ!!」」
慌てて二人で左右に避けるけれども、一旦通り過ぎた
蛇達は器用に方向転換して
何でか僕の方を目がけて迫ってくる
「ぎゃあぁぁっ!何で僕!?」
「お、落ち着いてくださいさん!」
声をかけながら、賢明に僕を蛇達から
守ってくれていたツレだったけれど
「ぐっ!?」
蛇と同時に飛びかかった鳥獣の一撃に
たまらず少し吹き飛ばされ、木の幹へ身体を叩きつけられた
「っくそ!よくも…!!」
数発弾丸を撃ち込んで 怯んだ隙をつき
彼の側へと駆け寄るけれど
強烈な一発だったらしく気絶したまま
しばらく起きそうな気配は無い
…しかも翼に弾が当たり 弱ったハルピューアが
怒りに任せてアイロンビーナを増量して
こっちに襲いかかろうとしている
「流石の僕でも、一人でこの数はキツいなぁ」
頬を冷や汗が伝うのを感じながらも
僕は、倒れたままの相方を庇うようにして
奴らと対峙し銃口を揃えて構える
「でも…ツレを置き去りにするような奴は
冒険屋として失格だって教えられてるし
それに折角の獲物を前に逃げ出したら
"二丁銃の"の名が廃っちゃうじゃない!」
そう…僕はもう、あの頃の小娘じゃない
あの人と同じ 立派な"冒険屋"なんだから!
けたたましい鳴き声で飛びかかる鳥獣へ引き金を引き絞り―
「…おそろしやぁぁぁぁぁぁ〜!!」
その背後から唐突に情けない声を上げて
ツルッパゲでマッチョな上半身の、何でか
ズタボロなケンタウロスが駆けてきた
まさに転がろうとしてた蛇達を踏んづけ
直線コース上にいたハルピューアとモロにぶつかって
…そうして 皆まとめて静かになった
「なんだか知らないけど…ラッキー」
ぶっ倒れた鳥獣と両頭蛇、ついでに人馬まで
逃げられないように縛っておいて
倒れたままのツレのマフラーにロープをくくり
ケンタウロスが来た方へと駆けていけば…
「やっぱりいた!」
木々の隙間に小さく見えるのは、石榴と
ルーデメラとカルロスの顔や頭
他にも何人かいるみたいだけど
とりあえずは声をかけてから、と近寄って
―ある一人の少女を見つけてしまった
「あ…あの娘は…!!」
紫色のゆるくウェーブがかった髪に金色の瞳
弓を背負ってるし服装も狩人風の軽装だけど
あの顔にはハッキリと面影がある
家出して現在絶賛捜索中のおてんば王女
ノーリディア=ユーム=アスクウッド…!
何で見覚えがあるかって言うと
むかーし彼女ん家(てか城)のお宝を仕事で
ちょっと取ってきちゃった事が…ありまして…
その際、兵士の皆さんと小さかった彼女に
追っかけられた苦い思い出が
…しかもあの娘、矢とか撃ってきてたし
相当幼い頃だったから僕のことを忘れてると
思うけれど…万が一バレたらヤバイ
取れる元は取ったし…ここは逃げるが吉!
慌てて元来た方向へと戻って
ロープをしまったりコートに銃を収めたり
準備をすれば、折りよくツレも復活する
「あ、起きた?」
「ええ…ってケンタウロスまでいるし!
これさん一人で捕獲したんですか!?」
「まっまーね!僕は君よりこの稼業長いもん!
それより、怪我も無くてよかったよ」
胸を張りつつ言えば 久々に尊敬したような
熱意に満ちた眼差しが返る
これはこれでまぁ…悪くないかな、なんて
"…ありがとう 森樹族!"
思ってたら風に乗って聞こえてきたのは
今一番合流したくない相手の声
「あ、今の声って石榴さん達の…」
「気のせいだよ!とにかくこれで元は
取れたしこの森を出よう、今すぐに!!」
「うわわっ!」
慌てふためく相方をけしかけ、ふんじばった
動物どもを引きずって
僕らは遠回りのルートへと進路変更したのだった
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あとがき(というか楽屋裏)
狐狗狸:三十五話辺りの時間軸と動物ハントのリクを
どうにか守れるよう奮闘…しましたが
ルデ:ダメだったんだね、結局
狐狗狸:はい…スイマセンでした、許容範囲を
間違いなくオーバーしまくってると思います
石榴:アレを動物扱いしていいのかはともかく
…の奴、ノールんトコで何やらかしてんだ
狐狗狸:仕事だし仕方ないかと…これも年齢が
決まってた出来事ながら、若干ぼかしました
シャム:お前ヒドイやつニャ…それよりも
ってヤツ、マジでコワいニャ…!
カルロス:ああ…それと今回相棒のアイツの
名前が出ないのは何故なんだ?
狐狗狸:仕様です(キパ)
ノール:なんと…あの時の桃色頭の盗人が
あの時近くにいたと申すか!!
シュド:のっノールちゃん!
ダメですチャクラムはしまってください!!
毎度グダグダな展開ばっかりでスイマセン
本当…こんなんでよろしければ野良ネコ様に
進呈させていただきます!