「ルーデメラ様!次の勝負は!!」


「そうだねぇ…」







意気込むに、ルーデメラは思案顔で石榴を見やる







「異界から着た彼は 衣服をさほど持っていないんだ
可哀想だとは思わないかい?」





何か言いたげにしていたが、無駄だと悟って
石榴は口をつぐんだ





「次は彼を満足させられる衣装を持ってくること
見立ててもいいし、腕があるなら仕立てもいいよ」









二人が行動を起こし、少し時間が経ってから
お互いが服を用意し終え







先んじて持ってきたのはまたもや







「どうでしょうルーデメラ様!」


「うーん、いいねこれ 新しいルーニヴルの衣装として
発表しても差し支えないんじゃない?」







ゴテゴテ派手派手の悪趣味衣装を半ば強制的に
着せられた石榴に、町の人達の同情的な視線が刺さる







「もういいだろ、次はシュドの服を…」


「そ、それが…」





済まなさそうにシュドが差し出した服を見て
石榴の目が 点になる





「何だコレ…」







シュドが作っていた服は、シンプルながら動きやすい作りの
シャツとズボンのセットだった





…だが、目の前にあるそれは所々がアウトロー風
ビリッビリにあちこちが破れ


オマケにヘンな色と飾りが施されている







「途中で物音に気を取られて、目を離したら
いつの間にかこんなことに…ごめんなさい!


「いや お前が謝ることはねぇよ」





宥めながら、石榴がワザとらしく視線を外す
楽しげに笑うルーデメラを見やった









ボロボロのその服にも袖を通し、またもや
判定がシュドへと下されるや否や







着替える前にからの投石攻撃を喰らい
石榴は服よりもボロボロになった











「うーん、どうやらこの勝負も天使君の勝ちみたいだね」


「ああん そんなぁルーデメラ様〜アタクシ
アナタ様を本気で思ってますの、諦められませんわぁ」







必死にしなだれかかるを尻目にルーデメラが
倒れている石榴を チラリと見やる







シュドに傷を回復してもらっていた彼は





自分に注がれた蒼い視線の意味を、理解してしまった







(コイツ…端っから仲間うんぬんより、俺を
イジることを楽しんでやがる……!)










「それじゃ 最後の勝負は」


「付き合ってられるかぁぁぁ!!」







言葉半ばで耐え切れず、とうとう石榴が逃げ出した







「ざ、石榴さん!?







呆然とするシュドに構わず ルーデメラは言葉を続けた





「たった今逃げ出したクリス君を傷つけず
僕の所まで誘導すること」


「それってどんな手を使っても大丈夫ですか!?」





恐ろしいことを言うに、彼は微笑んで頷いた





もちろんさ、これが出来たならドラ猫ちゃんを
仲間にしよう 出来なきゃ天使君が仲間って事で諦めてね」











二人は 町の人達に石榴の行方を尋ね







石榴が外の方へ逃げていったことを突き止めた









追いかけて木々の方へ入り、は背負った袋の中から
匂い袋ようなものを取り出し 封を解く





そこから人にとっては余り良いとは言えぬ異臭が漂い


そのニオイに釣られ 木々の間から彼女へと
巨体を揺らして近づいてくるのは―オーガ







袋の口を閉じ、は右手を動かし空中に複雑な魔法陣を描く







「陣によりて因果の鎖を繋ぎ、我が元に仕えよ!」







詠唱と共に 彼女が魔法陣越しにオーガを指差す





陣と共に袖に隠された腕輪の部分が光り輝き
そこから伸びた光が オーガを包む







程なくして光が消え、オーガはの前に跪いた







「アンタがやるのはアタイの護衛と
あの異界ヤローのホカクよ、絶対傷つけんじゃないよ





命に頷き移動を始めたオーガと共に も行動を再開する









一方、シュドは彼女と反対の方向で辺りを散策していた







「石榴さーん、どこですかー?」





呼びかけるように声をかけ、おっかなびっくり辺りをうろつく







しばらくそうしていると どこからか返事が帰ってきた





「…シュド お前だけか?」


「はい、あの どこにいらっしゃるんですか?」


「こっちだ」







視線を上に向けると、側の木の枝から
石榴がこちらを見下ろしていた





「どうせルデの事だから、お前ら二人に
俺を自分の所に連れてくるように言ったんだろ?」


「その通りです よく分かりましたね」


「まぁアイツの考えそうなことだからな」







ふぅ、と石榴がため息を漏らした









「アンタら やっぱりグルだったんだね」







その声に二人が顔を向けると、オーガを
先頭に連れたが険しい目を向けていて







「ルーデメラ様に取り入ろうとしやがって
このドロボウ猫!やっちまいなオーガ!!」






けしかけに ガァっと一つ吼えてから、オーガが
シュドに向かって突進してきた







「うわぁぁぁっ!?」





突進をかわされ、オーガは勢いで側の木にぶつかる







「どわぁぁぁっ!!?」





振動で足を滑らせ、木の上から石榴が落ちる





バカヤロウ!異界ヤローは傷つけんなって
言ってんだろ 何聞いてたんだい!!」







の叱咤に頭を垂れるも、再びシュドの方を向いて
今度は間合いを詰めて腕を振り回す





「ホワイティガーディアル!」





素早く詠唱し、防御壁を発動させたシュド







「ちっ シールドなんか張りやがって
先に異界ヤローからひっ捕らえな!!」





くるりと方向転換し、石榴へ間合いを詰めるオーガ





無差別かよテメェ!
これだからファンタジーはぁぁっ!!







木から落ちたダメージが尾を引いているのか


少し足を引きずりながら 石榴は後退さり





転がっている石などを手当たり次第
近寄ってくるオーガへと投げつける







それをうっとおしそうに弾くオーガだが





弾き飛ばした石の一つがのすぐ側をかすめ
短い悲鳴の後に再び叱責が飛ぶ







「こっちにもコウゲキが飛んできたじゃないか
気をつけなこのカラ頭!!」






防御壁を解いたシュドが へと駆け寄ろうとする





「やめてくださいさん!」


オーガ うるさいそいつを黙らせな」





一声鳴いて、シュドの前に立ち塞がり
オーガが腕を振り上げた







「う、うわあああっ!」


「シュド 危ねぇ!!」





叫び、何とか石榴が宝珠を取り出しながら
シュドとオーガの間へ割って入ったのを見て





「今だよ そいつをとっとと捕まえな!!」





が命令したその途端







オーガの動きが 止まった









「どうしたんだい、さっさと動きな!」







命令に返ってきたのは耳障りな雄たけび





身体の向きを変え、オーガは彼女へ襲い掛かった







「ちっ 暴走しやがったか!」







繰り出される攻撃を避けて 舌打ちをしながら
距離を取ったのも束の間





信じられないスピードで間合いを詰められ


オーガのキバが の眼前に迫る







「やば…っ!」


「フィクスホルダル!」





シュドの術が、オーガの動きを押し留めた





さん 早くそこから逃げてください!!」


「え、ああ」





言われ 急いでその場から離れるも、


動きを止められているはずのオーガが彼女を
追う様にぎこちなく身体を動かす





「術が聞いてないじゃないかい!」


「おそらく 先にかけられた術との干渉で
効き目が薄まってるんだと思います」







尚も執拗にを追い続けていたが





「"爆ぜろ"!」





石榴の放った弾丸が飛来し 直撃を受けて
オーガは堪らず昏倒した







「…アンタが持ってるそれ まさか魔術銃!?
それにその赫い目は一体……!!」


「話すと長ぇし 俺もわかんねぇから聞くな」







銃を宝珠へと戻し、瞳の色も元の茶褐色へと
変化した石榴を はまじまじと見つめていた







「大丈夫ですかさん、どこかおケガはありませんか?」





心配そうに駆け寄るシュドに頷いて
信じられないという目で二人を見ている







「あ、アンタ達…どうしてアタイを助けたのさ」


当たり前じゃないですか!
魔物に襲われている方を放ってなんか置けませんよ」


「俺も 襲われてるガキを見殺しにする
趣味なんかねーしな」








ハッキリと言い切る二人の顔をしばし見つめて







「負けたわ…アタイの完全敗北ね」





頭を垂れて、がそう呟いた













「お帰り どうやら決着はついたみたいだね」





町の広場で待っていたルーデメラは、
三人の表情で何があったかを察したようだ









「アタクシの負けですから、今日の所は引き下がりますわ」





しおらしく頭を下げ 間を置かずには続ける







「でもっ、次にあった時は必ず
ルーデメラ様の仲間にしてもらうんだから!」





猫のような目を 真っ直ぐにシュドへと向け





「アタイはあんたみたいな女に絶対負けないんだから
覚えてなさいよ!!」








それだけ言って、彼女は彼らの前から去った









「ったく 懲りろよ」


「だから僕 男だって言ってるのに…」







呆れたような石榴とシュドの呟きに、
ルーデメラは ただただ笑っていたのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:遅くなりました&勝手に2ページ
作ってしまいスイマセンでしたぁぁぁぁ!


石榴:いや ありえねぇだろ普通!


ルデ:話が意味なく長ったらしいからねぇ
ホント 君って才能ないよねー


狐狗狸:悪かったなどーせ意味なく長ったらしいよ(暗)


シュド:でっ、でもさんのルーデメラさんに
対する思いは読んでる方に伝わったと思いますよ?


狐狗狸:本当 シュド君って優しくて健気


石榴:つーか今回の話はぶっちゃけ
とルデが俺を苦しめる方重要だったろ?(怒)


ルデ:そーいう歪んだモノの見方は良くないよクリス君?


石榴:いけしゃあしゃあとこのクソ魔導師


シュド:お二人とも、ケンカしちゃダメですよ


狐狗狸:…そーいうケンカの仲裁とかしちゃう
甲斐甲斐しさが、君をだと思わせてるよね


シュド:僕は男です…!(泣)


石榴:お前 励まされた恩を仇で返してんじゃねぇよ!


ルデ:ドラ猫ちゃんよりも酷い仕打ちだよね
僕もコレは流石にどうかと思うなぁ


狐狗狸:悪かったから二人で結託して責めないで!




出来上がった話が予想よりもやたら
長ったからしかったので ページを区切りました


様のキャラを生かしきれてなくてスイマセン


こんなんでよろしければ野良ネコ様に
進呈させていただきます!