「…っな!


「父さんのときと一緒だ!
あの悪魔が消えて父さんが…!





怯えた声で震えながら、少女が呟く





「…っどうでもいいから、お前はとっとと
あの魔導師の方に逃げろ!





彼女へ叱咤した次の瞬間


石榴は頭に物凄い衝撃を受けて 真横に弾き飛ばされた











〜No'n Future A 第七話 「伝説の銃」〜











「……っぐ、うぅっ」







土埃を巻き上げ、頭から流血しながらも


フラフラと石榴は身を起こす





スゥ、と少女の目の前に姿を現した悪魔が
彼を不思議そうに見る







「我の攻撃を喰ラッテ死なぬトは…頑丈な人間ダ
少し力を使イスギて腹が減ッタ」







悪魔は少女を見下ろし ニヤリと笑う





「いい所ニ食料がアル


「っきゃああっ!!」





恐怖に囚われ動けぬ少女へ 悪魔の手が迫る





「っやめろ!魔導師テメェ 見てないで何とかしろ!!







ボロボロの状態で ルーデメラに向かって吼えるも
反応は至って冷淡だった





「…僕が?冗談 お断りだね、君が何とかしなよ勇者様」


「俺は勇者なんかじゃっ…」


「やああっ 助けて、助けてお兄さん!!





悪魔の腕に掴まれて高々と掲げられた少女が
涙を零しながら助けを求めた







「…っ!頼むルーデメラ
俺はどうなってもいいからあのガキを助けてくれ!!







すがるような必死の石榴の叫びに反応して





ルーデメラが ゆっくりと何かを取り出す







「まるで勇者みたいに甘っちょろい台詞を吐くね…
君が本当に勇者ならば、発動させてみなよ」







そう言って 彼が石榴へ投げ渡したのは―





「何だ、これ?水晶球か…!?」





手のひら程の大きさの 七色に光る球体







「いいや、ただの宝珠(オーブ)さ…発動するまでは、ね」


「発動?何のことだよ一体!?


「それよりほら 早くしないと彼女が
悪魔に食べられちゃうよ、勇者様?





石榴はハッとして少女の方を向けば







「きゃあああああああああっ!!」





悪魔が大きな口をあけてその牙を彼女へ―







"間に合わない"







石榴の頭に、その言葉が駆け巡った瞬間


手の中の宝珠が光りだす









「光ってる…!?」





宝珠に視線を向けると 石榴の頭に低い囁きが流れ込む







"リオスク……リオスク………アーク…"









一秒にも満たない刹那の合間で


理由は分からずとも、彼は理解した





それが"発動させるための呪文"である事を










「……リオスク アーク!





呪文と共に宝珠の輝きが一段と強くなり―







手の中に、不思議な形をした白銀色の銃が現れ


石榴は迷わず 悪魔にその銃口を向ける







ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ


ガガガガガガガガガガガガン!












まさに、一瞬の出来事だった







通常では在り得ないほどの速さで銃口から
光球が撃ち出され





それを受けた悪魔は 断末魔の悲鳴を
上げる間すらなく、この世界から消滅した







同時に少女が地面へと倒れこみ
石榴は急いで駆け寄る









「…よかった、単に気絶してるだけだ
それにしても、何だよコレ…」


「それは僕が聞きたいね







銃を見ながら呆然としている彼に、近寄りながら
訊ねるルーデメラ


その表情は険しい







本当に、君は一体何者なんだい?
何故そんな眼をしてる



「眼?何の事だよ?」


「よく見てみるんだね…自分の顔を」





ルーデメラが口の中で呪文を唱え 彼の目の前に
鏡のようなものを出現させると


そこに写っていた石榴の"眼"は……







「眼が、赤く……!?





普段の茶褐色が見る影も無く、まるで血のような赫い眼
石榴自身も驚きを隠せなかった







だが それ程時を待たずして、眼の色が元へと戻る





「何だってんだよ 一体…」







いまだ事態を理解出来ず戸惑う石榴に


鏡を消したルーデメラが 静かに語りかける







「どうやら君は 本当に"勇者様"だったみたいだね…
"魔術銃(メイストガン)"を発動させたようだし」


めいすとがん?この銃の名前か?」


「そう、それは伝説の武器でね
勇者だけが使う事の出来るものさ」







石榴は眉をひそめた







理由はふたつ、一つは伝説の武器などという
ファンタジーお決まりの代物が手の中にあるという事





もう一つは…それを告げたルーデメラの声音に


何故か皮肉気な響きが雑じっていたから









しげしげと蒼い目が魔術銃を眺める





「銃から伸びるこの管と腕が繋がってる所を見ると…
原理は精神力魔力を媒介にして、弾丸を打ち出す仕組みか…」


「…お前 この武器の事知ってんじゃねぇのかよ?」


「僕も実物を見るのは初めてなんだよ…どうやら
撃つ時の思念で弾丸の効果も代わるみたいだ」





面白いな、と呟いて 彼が興味深げに微笑む内


唐突に銃が光りだし 元の宝珠へと戻って
石榴の手の平に収まる







「うぉっ…戻りやがった、どうなってんだこれ?」


「さぁね、どうせ君しか使えそうにないし
ちょうどいいからそれを武器にすれば?







ルーデメラのつんとした言い方に違和感を覚えながらも





「…丸腰よりゃましか、じゃあそうしとく」







渋々ながら 石榴は宝珠をポケットにしまった








「さって、早く町に戻ろうか!
クリス君の初給料で 奢ってもらいに♪」





急に明るい声を上げて ルーデメラは歩き出す





「ああ…はぁ!?





納得しかけた石榴が、慌てて彼を見る





「あれ 言ってなかったっけ?実は僕も悪魔退治の依頼を
街で聞いててねーちょうどよくクリス君もその話を
聞いてたみたいだし 便乗させてもらってたんだよね







あっけらかんと話すルーデメラの態度に 石榴はただただ
呆然と立ち尽くすのみである







「そう言う訳で、ご苦労様クリス君 僕の取り分は
夕食奢ってくれるだけでいいからね?」


「お前結局何にもしてねーだろ!!」


「ふぅん、魔術銃を渡してあげたのに
その恩をもう忘れちゃうんだクリス君って」





ぐっ と文句に詰まった彼へ
更に畳み掛けるように言葉が続く







「別に奢ってくれなくてもいいよ?ボロボロの身体で
その子を抱えて街まで行けるならね?









これまた時間にして、一秒に満たぬ刹那


さっきの悪魔より 目の前にいる緑髪の魔導師の方が
余程性質が悪いと石榴は理解した







「…分かったよ 奢りゃいいんだろ!


「そうそう、人間素直が一番ってね」





言いながら、ルーデメラが呪文を唱え
地面からゴーレムのような物を作り出した












三人がゴーレムに担がれて街に戻った後


少女の証言で悪魔が退治された事が
証明され 町長から報奨金が支払われた







―尚、報奨金の8割
ルーデメラへの奢りで消えた事は言うまでも無い









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:第七話まで引っ張りましたが ようやく石榴に
まともな武器を出させました


石榴:色々ツッコミ所はあるとして、まず目が赤くなる設定
今やると別の話のパクリにしかなんねぇぞ?

狐狗狸:…うん、多分信じてもらえないかも知んないけど


銃を発現させた時の設定は、あの某漫画が始まる
随分前
…私が中学か高校の頃につけた奴なんだよね(汗)


ルデ:随分って言うより 2〜3年前じゃないの?
あと、クリス君 普通より随分頑丈だよね?


狐狗狸:まー普通の高校生なら初めのウシの怪物となんか
戦えないし、木の棒と松明なんかで怪物を倒せないし
悪魔のあの攻撃で死ぬからね確実に


石榴:おい 俺のツッコミたかった台詞取んな作者!!


ルデ:……クリス君こそ、本当は人間じゃなかったりして?


石榴:人間だっ!しかもその台詞は
お前にだけは言われたくねーよっ!!



狐狗狸:……石榴のその辺は 展開上何も言えないけど
私に言わせればどっちも人間離れしてるぞ♪


石榴:ケンカ売ってんのかこのクソ作者が!(銃発現)


ルデ:クリス君 僕も手伝うよ?(薬構え)




二人の男を敵に回した為 狐狗狸は逃げます


本当にパクリじゃないんです…でもスイマセン(謝)
次回は新展開です やっとあの人が書ける…!