石榴とルーデメラは 人喰いの悪魔が住む洞窟の
入り口に佇んでいた







「…見るからにまんまな洞窟だな、悪魔だかなんだか知らねぇが
丸腰の俺が怪物なんか退治できんのか?」


「まぁ本当にヤバくなったら、悪魔ごと君の遺体を
火葬しておくから気にしないでよ」


「勝手に殺すな!」





抗議の言葉をあっさり無視し ルーデメラは
落ちてた木の枝を無造作に二つ拾う





「けど、すぐ死なれてもつまんないから
せいぜいこれで頑張りなよ





言いながら一つを石榴に投げて寄越し、


もう一つに魔法で生み出した炎を灯して
松明を作ると それに魔法をかけて宙に浮かばせる





「俺の武器が只の木の枝かよ」


在るだけマシだと思ってもらいたいね、ほら行くよ」





何やら微妙な顔をする石榴を促すルーデメラ


彼は半ば諦め気味に溜息をつき、洞窟へ入ろうと…











〜No'n Future A 第六話 「予想外遭遇」〜











待ってください!







甲高い声に二人が振り返ると、そこには


お鍋を被り、鍋のフタ果物ナイフをそれぞれの手に持ち
足を震わせて経っている少女がいた





背丈はルーデメラよりも少し低めで、恐らくは
13〜4くらいだろう







「悪魔を退治しにきた旅人達ですよね?
わっ、私も一緒に連れて行ってください!


はぁ?ここはガキがくる所じゃねぇよ
足手まといになるだけだ 帰れ帰れ」


丸腰でよそ者の君が言えた台詞じゃないけどね」


うるせぇ黙れ…ここがどういう所だか
分かってんのか?」







茶化すルーデメラをキッと睨みつけてから、石榴は少女に問う





「分かってます、っでも でも私、私は
母さんを殺して、父さんをさらった悪魔を…!





言葉半ばで 少女は俯いて涙を流す







「…よくある敵討ちって奴か?
やめとけよ、そんなもん所詮叶いっこ」


「そこまで無碍にしないで 連れて行けば?





言葉を遮って、淡々と言うルーデメラ


少女が顔を明るくしたが 石榴は慌てて
彼を少し先の木陰に引っ張る








「おまっ…本気で言ってんのか!?


「別に構わないよ、本人が付いていくって言ってるんだし
いざとなったらクリス君が盾になってその子を
逃がすなり何なりすればいいし」


「あのなぁ、俺はあんな初めて会ったガキなんか
助けるほどお人よしじゃあ―





怒鳴る石榴に、ルーデメラは小声で付け加える





「気が合うね、僕も見ず知らずの他人を助けるほど
お人よしじゃないのさ」







微笑んでいる顔と裏腹に、目だけは冷たく凍り付いていた









「…あの、大丈夫 ですか?」







戻ってきた二人に 心配そうに少女が問い掛ける





「別に、付いてくる人数は多い方がだからね
逸れないようにね?」







ニッコリと笑うルーデメラが、苦い顔をした
石榴を先に行くように促す





「…足手まといになったら、何が何でも帰らすからな」







少女は顔を輝かせて頷いた





「っはい!ありがとうございます!!













洞窟に三人が入って、どのぐらい時間が経ったろうか







途中、何度か怪物が出てきたものの





雑魚ばかりなのが幸いし 石榴は松明
木の棒を駆使してどうにか怪物を倒していった







意外にも 少女も足手まといにならずに
数匹ほど怪物を退けてはいた為


三人は順調に奥へと進んでいく









「…予想外に頑張るねぇ 君ら」





少し驚きを含んだ声で 一番後ろのルーデメラが呟く







お前は何もしてねぇだろ、つかこの洞窟深すぎだろ…」





肩で息をしながら、石榴が恨めしげな声を上げる







「そうですね…あ、奥に灯りが見えますよ!?







遠くに目をやっていた少女が、急に声を上げた







前方を見ると 確かに奥の方が明るくなっている







「あの先に 悪魔がいんのか…?」





石榴の顔に少なからず緊張の色が混じる





「おや、急に怖くなったのクリス君?」


「別に おら行くぞ!







声を張り上げた彼を先頭に 三人は灯りの方へと目指した









その場所は、今までの通路と違い
丸く抉れた広場になっているようだ





岩と白骨がそこかしこに転がり


辺りには微かに異臭が立ち込めている







真ん中には 大きな火柱があり、その横に―









「おっ、おい!





石榴が止める間も無く、少女は弾かれたように
火柱の横に倒れている死体に駆け寄る





「父さん…父さん……ああ…!


「先に行くな 危ねぇだ…」







側に駆け寄った石榴が、唐突に少女を弾き飛ばす





「きゃあっ!」







次の瞬間、先程まで二人がいた場所の地面に


突然現れた怪物の爪が突き立っていた







「人間にシテは、中々反応ガ鋭イナ…」





怪物は二人の方を向くと、爪を引き抜いてニィと笑う





「テメェが、悪魔か…!







自分よりも大きい歪な怪物へ 反射的に獲物を構える石榴





「ほう…そンナ物で我に立ち向かうツモリカ…
いいだろう、少しバカり遊んでヤロウ!





言うや否や、凄まじいスピードで
悪魔が間合いを詰めて飛びかかる







石榴は無意識に少女を背中に庇い、悪魔を睨みつけた









ルーデメラは離れた場所で一人 悪魔と彼の攻防を
面白そうに見つめている





「…下級だけど悪魔相手に、そんな武器で
よく頑張れるねぇクリス君」


「くっそ、見てねぇで手ぐれぇ貸しやがれ
この腐れ魔導師!








叫び声を上げる石榴の身体に、どんどん
悪魔の爪痕が刻まれていく







「くクク…中々しぶトイな、ならばこれならドウダ!









その呟きと共に 悪魔の姿が見る見る薄くなり―





三人の目の前で、悪魔が掻き消えた









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:はい 引きを裏切る形でスイマセン!
木の枝武器で石榴が奮闘!の第六話です


石榴:いい加減まともな武器持たせやがれ!(飛び蹴り)


狐狗狸:ぎゃあ痛いー!作者を蹴るなんて、この
親不孝もん!!


ルデ:蹴られたのがお気に召さないなら、ボロ雑巾のようになるまで
召還獣に殴らせてあげようか?(ニッコリ)


狐狗狸:もっと嫌です!てゆうかそれ拷問だから!!


ルデ:遠慮しなくてもいいのに、普段よく眠れないだろうから
召還獣のストレス解消ついでに永眠…おっと


石榴:…ルデ、お前本当は魔導師じゃなくて
超鬼畜ドS魔人だろ?(ジト目)


ルデ:何処かの少年誌じゃあるまいし一緒にしないでよ
それに僕は実戦派の魔術導師(メイストリード)だよ?


狐狗狸:(影でコッソリと)いや、あんた間違いなく
某少年誌のキャラと同類だから




狐狗狸と石榴はルデに爆弾持って追いかけられている
しばらくお待ちください(何)


木の枝だけで戦ってる石榴は本当にスゴイと思います(笑)
…次回は絶対!まともな武器出ます!!