「それじゃ交渉も成立したし そろそろ呼ぶよ?


「は?呼ぶって何を?





ワケが分からず問いかける石榴を尻目に







「この島は瓦礫しかないからねー
近くの街まで飛ぶために 乗り物をね」





それだけ告げると ルーデメラは呪文の詠唱を始めだす





(…乗り物って何だよ)





のっけから嫌な予感がひしひしとしている石榴を他所に


ルーデメラを中心に 空気が渦を巻く





「……サモン グリフィスク!







言葉と同時に呪文が発動し 上空に光る魔法陣が出現し―





魔法陣から現れたのは 巨大な鳥のような獣だった











〜No'n Future A 第四話 「混血召還獣」〜











獣は上空で二、三回羽ばたいてゆっくりと
翼を動かしながら


召喚者の目の前の空間に 降り立った







ワシの頭と翼 獅子の身体 蛇の尾と
ここまではファンタジーでよくあるグリフォンと同じ姿なのだが





獅子の身体についた、ウロコに覆われた爬虫類のような足に
二股に分かれた少し太めの蛇の尾



そして閉じられた頭部のワシの目が


少々異質さを感じさせた









「っ…何だよこれ





やっと硬直が解けたのか 石榴が恐る恐るルーデメラにたずねる







契約した乗り物だよ 正確に言えば
グリフォンとバジリスクのハーフかな


こいつは僕に一番忠実だけど、怒らせないように気をつけてね」


「……何のハーフか知らねぇけど 召還獣って奴かよ」





顔をしかめながら呟く石榴へ





「その通り よく知ってたね〜スゴイスゴイ





ワザとらく手を叩くもひと睨みされ
やれやれ、と肩を竦めてルーデメラは言った





「それじゃ〜乗って乗って、ちなみに
落っこちたら泳いででも自力で街を目指してね





さりげに恐ろしい事をさらりと述べつつ獣の背に乗り
彼は微笑みながら、手招きをする







色々言いたそうな顔をしていたが


今は島から出る事が最優先だったので
石榴は黙って ルーデメラの後ろについた





「さぁグリフィスク ここから近くの街まで運んでくれる?」







語りかけられたワシの頭部が
前を向いたままこくりと頷いてから


翼を広げて空へと舞い上がっていく











「……すげぇ







飛び立ち始めた時は不安だったが 思ったよりも
安定して飛んでいた為





石榴は改めて周りの風景を見渡した










先程まで二人がいた島が遥か下方に小さく見え





広い海の前方の方にぼんやりと
米粒程度に 別の陸地が見えてくる







「君の世界には こういった乗り物はないみたいだね」






風景に見入る石榴へ ルーデメラが問いかける





「いる訳ねぇだろ、こんなデカイ生き物
ま、似たようなもんならあるけどな」


「ふぅん ちょっと興味あるなぁ…
グリフィスクとどっちが大きいかな?」


「ハハッ冗談、こいつよりもデカイよ


「そうなんだ、そんなに大きいの…他には?


「何たって何十人も乗れる上に、意外と快適だし
長旅でも疲れないよう色々工夫されてて 便利…」





そこで 石榴の言葉は途切れた









獣が空中で静止し、ワシの頭がぐるりと
こちらを向いていた
からだ


そのワシの頭から 言い知れない敵意が突き刺さる











「…クリス君 言ったろ、怒らせるなって?
こいつは人語くらい理解できるし意外とプライド高いよ?」





少し小バカにしたような顔で 彼が続ける





「早く謝ったほうがいいよ〜じゃないと
目が開いちゃうからね」









ルーデメラの言葉通り


ワシの頭の両目がゆっくりと開いて―







「お、俺が悪かった!許してくれ

ごめんなさい!!」






何か恐ろしいものを感じ取り 石榴は慌てて謝った







しばらく目を半開きにして ワシの頭は固まっていたが





やがて怒りを納めたらしく、目を閉じて
前に向き直り飛行を再開した









「…た、助かった


「やれやれ、今度から気をつけてくれないと
命がいくつあっても足りないよクリス君?」


うるせぇ 元はと言えお前が話振ったからだろ」


「僕のせいにしないでくれるかな 僕はただ
君の話を聞きかえしただけだよ」





咎めたてても ひょうひょうと切り返し





「それよりも…もうすぐ街に着くよ?」







彼は進行方向のやや下を眼で示す





獣は 港町の外れへと徐々に下降していた









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ノンフュ四話目 空の旅…てか間休話題?
次はいよいよ、本格的に二人の冒険になります


石榴:…ってか ルデの召還した召還獣、目が開いてたら
どうなってたんだよ


狐狗狸:あーグリフィスクね…死んでたよ(さらっと)


石榴:死!?


狐狗狸:だってバジリスク混ざってるから
開ききった眼光のヒト睨みで死んじゃうでしょ〜?


ルデ:ちなみに僕は死なないよ?
グリフィスクは攻撃対象のみを睨むから(ニヤニヤ)


石榴:ってか 何で飛行機の説明してただけで殺されかけんだよ


ルデ:だから言ったろ、プライド高いって…


グリフィスクは奉仕大好きだから、自分より優れているって
言われると嫉妬するんだよ?


狐狗狸:……そういう風に調教したくせに(ボソリと)




二分後 ルデの魔法によって狐狗狸はボロ雑巾