「ちっ…信じるしかなさそうだな、けど
どうするんだよこんなバケモン!







怪物と対峙しながら 恐怖を振り払うように石榴が叫ぶ







「下がってた方がいいよ 君、丸腰だから
足手まといだし正直邪魔だよ」





笑いながら言った少年の言葉は 彼の神経を
思いっきり逆撫でした









怪しい男に足手まとい呼ばわりされる筋合いはねぇ!
こんな牛もどき俺一人で追っ払ってやるっ!!





先程からの怒りで逆上しかかってる石榴の様子を
眉一つ動かさずに見つめながら


少年は静かにこう答えた





「じゃあ やってみれば?







この一言を合図に 牛もどき怪物VS石榴
戦いのゴングがなった





「あーあ やってやらぁ!!





少年に怒鳴り返すと 彼は手近にあった
ガレキを拾って牛もどきを睨みつける





相手も石榴が向かってくる事を理解したらしく


そちらを睨み返して鼻息を荒くする





「牛もどきに負けてたまるかああぁぁっ!!」







吠えて石榴は牛もどきへと突進していった











〜No'n Future A 第三話 「協力者」〜











両者の力量は、意外と拮抗しているようだった


石榴は側に転がるガレキの石や棒で


牛もどきと互角の勝負をしている





かたや牛もどきも肉弾戦しか出来ないらしく


自分より素早く動く相手に手間取っていた







さほど時間が経たぬ内に、段々闘いが白熱して行き







「うおおおおおおおおおお!」


"ガアアアアアアアアアア!"





お互いが次の一撃で勝負を決めようと向かった瞬間







「メルティボム!」





づとおおおおおおおおおおん!!







傍観していた少年の唱えた攻撃呪文が牛もどきに直撃し


そのただ一発が、怪物を跡形も無く消滅させた









唖然としている石榴へ 彼はにこやかに言う





「いや〜見てて楽しかったけど もう飽きたから


「ざけんな横手から茶々入れるんじゃねえよ!
大体飽きたからって何だよ!!」






横槍に憤る最もな意見へ、あくまでも少年は
冷静に言葉を返す





飽きたのは飽きたんだよ それにやっぱり
呪文で吹っ飛ばした方が早かったでしょ?」


「…なんでも魔法とかで済ませようとしやがって
これだからファンタジーはぁあっ!!








石榴の叫びは島の隅々まで木霊した









叫び終えて気持ちが落ち付いた所で、





「もういい とにかく俺は帰る!」





彼はくるりと少年へ背を向け歩き出す







「どうやって元の世界に戻る気だい、たった一人で





少年の一言は痛い所を突いたらしく
石榴がぴた、と足を止める





「うっ…うるせぇ!テメーには関係ねーよっ!!


「ところが僕は君に用が在るんだよ 勇者様?


はぁ!?





思い切り眉をしかめ、彼は少年へと振り返る







"伝説の起こりし大地に、異なる次元より
新たなる勇者が現れん


そなたの役目は 勇者を導くことなり"



「…いきなり 何だよそれ?」


「さっき言ってたお告げさ、通りすがりの
みすぼらしい預言者が僕の顔を見るなり
そう言い出してね…気が向いたから来てみたのさ」







言いながら石榴に近づくと、少年はにっこり微笑む









「そう言えば、まだ名乗ってなかったね
僕の名前はルーデメラ ルーデメラ=シートルーグイさ」





「長ったらしい名前だな…俺の名前は、緑簾 石榴







ルーデメラ少年が片眉を上げる





リョクレン ザクロ?珍しい名前だねぇ」


「ああ 名前に緑と赤が入ってるせいか、友達が
クリスとかふざけたあだ名で」





そこまで呟いて 石榴ははっと我に返るが
時既に遅し


相手はニヤリと笑っていた





「それは素敵なあだ名だねぇ…じゃあ僕も
クリスって呼ばせてもらおう」


「俺の名前は石榴だ!!」


「クリスが嫌なら勇者様でもいいけど?」


「…好きに呼びやがれ畜生!!





よほど"勇者様"がお気に召さなかったのか
ものすごい不機嫌面で返す石榴





彼はその反応を面白そうに笑ってから
笑顔で問いかける







「お互い名前も知ったことだし 僕と協力してみない?


「協力?はっ 何で俺が見ず知らずのお前とー」


「君を元の世界に戻す方法を知ってる、って言ったら?」





セリフを遮って、さらりと言われた思わぬ一言に
彼の顔色が変わる


表情を変えぬまま ルーデメラは続ける







「その代わり、君には必要な分の魔法道具の
材料を手に入れるために働いてもらう
悪くないだろ?


「……ハッタリじゃねーだろうな?」





半信半疑な石榴を彼は鼻で笑って





「僕は出来ないハッタリはかまさない主義でね


君が本物の勇者であろうとなかろうと、これなら
お互い損はしないはずだよ クリス君?









うっすらと微笑んではいるものの


相手の眼と態度が真剣である事に、石榴は気付いた









しばらく目を瞑って考え込み








やがて、決意したらしく彼は目を開く





「…どうやら、俺に選択の余地はねぇみたいだな


いいだろう 胡散臭いがやらねぇよりマシ
乗ってやろうじゃねぇか!


交渉成立、だね よろしくクリス君」







―こうして石榴は元の世界に戻る為
ルーデメラに協力する事となった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:やっとこノンフュ三話目 ようやっと石榴の進む目的
ルデの名前を出せた〜これからだなぁ大変なのは(汗)


石榴:ほんっとに俺に選択の余地がねーよ…


狐狗狸:仕方ないでしょ?そういう筋書きなんだから


ルデ:それにクリス君にはもっとキッツイ運命が待ってるしね


石榴:俺が何したって言うんだあぁぁーっ!!(叫)