室内は四階建ての建物がすっぽり入りそうな位の大きさで、
壁のあちこちに埋まる光る石がぼんやり辺りを照らす







入り口から奥の台座まで 一直線に伸びる褪せた絨毯







周囲のあちこちひび割れた柱や散らかる瓦礫が
埋まっていた年月の古さを思わせる









「あ、あれが遺跡の宝物ですか…?」


「なんか それらしい感じの台に置かれてるよな」









五人の視線は、台座の一番上





宝珠のある祭壇に集中していた









不思議な文様が刻まれた守護像はかなり大きく 威圧的で







それに守られるよう安置された宝珠の輝きはまさに
遺跡の宝にふさわしいものだ







台座が、段差の一番上にあるだけに余計











〜No'n Future A 第二十五話 「泥棒猫と腹黒の策」〜











「僕としては 宝珠よりも石像の方が興味あるなぁ」


「…もう少し近寄ってみるか」







ルーデメラとカルロスの二人は台座の階段を上ろうとするが





シャムがその前に立ちはだかる







気をつけるニャ!宝のまわりには
ニャにかしらワナがあるのはジョウシキだニャ!!」





鋭く、真剣な眼差しでそう言って胸を叩く





「だから、オイラが宝をとってアンゼンカクニンするニャ」


「でっでもシャムくん 一人で行くのは危険ですよ」







不安そうにたずねたシュドに、自信満々に胸を張り







だいじょうぶニャ、オイラはプロからちゃんと
おそわってるから まっかせるニャ!」









言い切って意気揚々と宝珠へ向かうシャム







…の首に巻かれたチョーカーを 歩み寄った
石榴が後ろから引っつかんだ









「とか言って、そのまま宝だけとって
遺跡からトンズラしねぇよな?」


「そっそんニャことはしニャいって オイラを信じるニャ」







さっきの自信ありげな態度は何処へやら







肩を大げさにビクつかせ声のトーンも1オクターブ高く、
目も泳いで 明らかに汗まで出ていた








「泥棒猫君 嘘つくの下手だね、正直に吐いたら?







クスクス笑いながらルーデメラが自分の生み出した
明かりをシャムの顔面に近づける





当然 石榴も被害にあい、両手で顔をおおう







「うわまぶしっルデやめろこのヤロわざとだろっ!」


「とっ、とにかくお宝をとるニャ!じゃまするニャ!!」







明かりから逃げるように シャムが
一直線に階段へと足を一歩踏み入れる









まるでそれが合図だったかのように台座全体が
地響きを起こしだした







「まさか、また罠が…!」


「おい 戻れシャム!


やだニャ!確かにまずいフンイキだけど
宝を目前に引き下がれニャいニャ!!」







シャムが段を駆け上がって宝珠がある壇上へ
たどり着くより早く





祭壇のある段が地響きを起こしてせり上がった







「ニャアァァァァァ〜!!」





勢いでシャムはバランスを崩してひっくり返り
階段から逆さまに落下する







彼の体が段差に叩きつけらるより早く







素早く駆けつけたカルロスが受け止める









「シャム、あまり無茶をするな」


「あっ ありがとニャ、カルロス」











台座は完全に 天井近くまでせり上がり切って
遺跡の柱と同じようにそびえ立っている





それでも地響きは止まず 部屋を揺らしつづけている







遠くからの音に振り向いたシュドが気付いた







「みなさん 出入り口が!!









入ってきた出入り口の下から 石の壁がせり上がり
部屋を完全に閉ざそうとしていた







慌てて駆け寄る五人の目の前で、







無情にも壁は部屋を完全に封鎖した











「ありゃーまた出入り口が封鎖されちゃったね〜」


ニ゛ャーーーーこれじゃ宝のワナがハツドウした
ドサクサまぎれでにげられニャいっ…あ」





しまった、という顔でシャムは口を押さえるが時すでに遅し







頬を思いっきり石榴の右ストレートが直撃した







「やっぱ宝を持ち逃げする気だったじゃねぇか
この嘘つき泥棒猫!」



ニ゛ャっ!?思いっきりグーでなぐるニャんて
ひどいニャ イシャリョウはら…っ!!





文句を言っていたシャムの言葉が途中で止まる





「どうかしたんですかシャムく…」







続いてのシュドの反応に、石榴も嫌ーな顔をして
二人の視線の先を見る









せり上がっていた台座の上から 巨大なものが落ちてきた







遺跡の床に巨大な地響き大きなひび割れ
作り出したにもかかわらず





ビル四階ほどの高さから落下してきたそれは
さしたる破損もなく ゆっくりと身を起こしていた









それは祭壇の宝珠を守るように設置されていた守護像だった







「なっななななんじゃありゃっ!?


「あれはさしずめ 宝を守る守護者と言った所か」


さすがエルフの遺跡、結構古いのに罠も魔物も
ちゃんと作動する魔力が残ってるとは」







カルロスとルーデメラが冷静に感想を述べる







「落ち着いてる場合かよお前ら!!」









ツッコミ入れつつも 重い足音を響かせて近づく
守護像から目を離さぬまま





宝珠を取り出して、石榴はあの言葉を唱えた







「リオスクアーク!」







石榴の言葉に答えるように 宝珠は輝きを増し
右手に銀色の魔術銃が出現した









「よし、銃は使える…"爆ぜろ"っ!!







引き金を引き、三発の光球が守護像に直撃した







しかし 着弾と同時に弾丸は掻き消えてしまった









「全然効いてニャいっ!?」









守護像は攻撃を察知してか 駆け足で五人へと走りよった





「早いっ…!?」





眼前に迫った守護像が無造作に腕を振り上げた







「みんな、天使君を中心にして集まれ!」







ルーデメラの鋭い声が飛ぶ





即座にシュドを中心に全員が固まり、シュドが術を唱えだした







守護像の腕が振り下ろされる





「ホワイティガーディアル!」





間一髪のタイミングで シュドの術が完成し
見えない壁に守護像の腕がぶつかる







五人を包むような半円状の光の障壁
守護像の攻撃は全て弾き返される









「これで…しばらくは持つはずです」







シュドの言葉を皮切りに、ルーデメラが腕を組んで言う







「さて、天使君の術がヤツの攻撃を防いでる間に
何とかしてヤツを倒す方法を見つけないとね」


「別にアイツたおさニャくても、宝をとって
こっからにげればいいじゃニャいか」


「いや…逃げるにしても奴を倒さねばならんことに
代わりはないだろう」


「そっそんニャ…こんニャことならイセキに入らず
トンズラしときゃよかったニャ〜!!」







わめくシャムを見て ふと石榴が浮かんだ事を口にした







「…こういうファンタジは テレポートみてーな魔法
あるよな?それでこの遺跡から外に出られねぇのか?」





四人が信じられない、という顔で見つめてきたので
石榴は思わずたじろいだ





「そんな、空間移動の魔法なんて 今までに
誰もあみ出せたことのない究極のものですよ!?」



「え、そうなのか…悪かったよ」





いつにないシュドの剣幕に 石榴は自分の言った事を後悔した





「出来てたらとっくに使ってるよ 空気読みなよクリス君







半笑いのルーデメラに石榴は悔しさを噛み締める







「じゃああのデカブツどうやって倒すんだよ
魔術銃が全然効いてなかったんだぞ!」



「そりゃ 術の使えなかったあの壁の文様が
石像に刻まれてるからねぇ」









言われてよく見れば、守護像の文様は
魔法を無効化していた壁の物と全く一緒だった









「ふつうのコウゲキでたたいてクダくニャ!」





シャムの言葉に、しかしカルロスがかぶりを振る





「通常 あの高さから落下したらどんな鉱石でも
ヒビの一つは入る…にも関わらずこの石像には傷一つない







その事実は、目の前の石像がかなり頑丈である事を示していた







「恐らく並大抵の攻撃では破壊できないだろう」


「魔法が一切通じなくて固くて攻撃もまともにきかねー…
って反則だろ!?これだからファンタジーは!!











打開策が見つからない五人に追い討ちをかけるように
防御壁の光が薄れてきていた









「みなさん、そろそろ術の効き目が切れます…!」









シュドの悲痛な叫びに比例して、守護像の攻撃は激しくなる











黙っていたルーデメラが ようやく口を開く







「泥棒猫君 君は罠をつくるの得意?」





戸惑いながらもシャムは答えた





「時間があれば…けどこのイセキにころがる
ガレキとかじゃ ろくニャもんはつくれないニャ」


「つくれるなら十分さ みんな、僕に一つ案がある







ニヤリと笑い、ルーデメラが四人を呼び集め







「泥棒猫君の罠と僕の精霊が喚べるまで、君らには
サポートと時間稼ぎをお願いしたいんだけど?」







石榴とカルロスとシュドを、順番に指差し 手短に作戦を話した













シュドの術が解けたと同時に五人はその場から
それぞれ別の方へと散る









守護像は迷うことなく
台座へ向かって駆けるカルロスを襲った







「なるほど…たしかにルーデメラの言った通りだ」









―船長さんは奴の足止めを頼むよ、多分あいつは
宝に近づく奴優先で倒しにくるから―









先程のやりとりを思い出しつつ カルロスは
左手の義手剣を抜き放ち、守護像の攻撃を受け流す







「ラピッドフィード!」







カルロスの横手へ回り込んだシュドが、呪文を唱える









―天使君はアイツの相手をする奴に術をかけて
サポートしてね―









呪文の効果により、カルロスの剣撃が見る見るうちに
素早さを増し 守護像の攻撃を推していた











守護像の足止めがなされている間、





台座から少し離れた柱の影に 石榴とシャムは罠を作っていた







「石榴、次はこれをとってほしいニャ」


「これだな?」









―クリス君は泥棒猫君の罠作りとその後の行動の補助
それくらいは役に立ってよね?―









ルーデメラのその言い方に多少むかつきはしたものの
他に策もないため、石榴は大人しく従う事にした











「…じゃ、頼んだよ?」







シャムと石榴が隠れている柱とは対極の場所に
身を潜めたルーデメラは 喚びだした何かに命令を終える







「アイツを召喚するの 正直嫌なんだよね
でも、仕方ないか」







憂うつそうに呟いてため息を一つこぼし





彼は新たな呪文を唱え始めた








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:本当ゴメンなさい…大変長らくお待たせしました
シャム話の続きでスグバアァッ!?(殴られ)


石榴:遅えぇぇっ!!


狐狗狸:ゴメンなさい ちょっとマジでスランプでっ
かーなーり筆が進まなかっぎゃっぼう!(術が被弾)


ルデ:版権モノは散々書けてて白々しいよね


狐狗狸:オリジだけ異様にスランプっただけです、
戦闘シーンがうまく浮かばな、ギャアァァ!(引っかかれ)


シャム:しかもオイラのハナシまだおわらせてニャいって
どんだけメイワクかける気ニャ!!


狐狗狸:本当にごめん!次でゼッタイ終わらせるから!
ちゃんとケリつけて次の話書くからあぁぁ!!


カルロス:……うるさい眠れん!!(斬撃)


狐狗狸:カネガネェエェェ!!ヒデブッ(倒)


ルデ:あースッキリした、天使君 作者の治療
頼んだよ〜続き書かせなきゃだから


シュド:は、はい…(怯)




本当 かなり遅くなってマジでスイマセンでした!


次回 守護像を倒すための策が動き出す!