シャムの案内によりたどりついたのは温泉のあった場所から
少し離れただけの山のふもと辺り







そこと温泉とロウライツの街を結ぶと、ちょうど
逆二等辺三角になる位置だ











「通った時に この山にこんなものがあったなんて
全然気がつきませんでした」







遺跡は、ふもとの山肌から現れた岩壁に
埋め込まれる形で入り口が現れていた







「これがその遺跡か…雰囲気あるな」


「そうだろニャ いかにもお宝がねむってそうニャ
フンイキがプンプンするニャ〜」







シャムが自分の立場を忘れ 意気揚々と言う







「とにかく、まずは入らなきゃね」









ルーデメラやシュドが呪文を唱えて灯りを用意し、
それに習って石榴やカルロスも 灯りを取り出した











遺跡は入ってすぐに下への階段に続き、







そこを降りると真っ直ぐ通路が伸びていた













壁の文様などから察するに…この遺跡は
大分昔にエルフが造ったもののようだな」







灯りを壁にかざしながら、カルロスが呟く







「そうだね、大分作りもしっかりしてるし
宝が保管されている可能性は高いかもね」


「やっぱりオイラのカンは正しかったニャ!」







側で大声を出され 石榴は耳を塞ぐ







「隣で叫ぶなよ 声が響くだろ」


「それにしても 何処まで続くんでしょう
少し怖くなって…







通路の先から 少し大きな広間に出て、シュドは声をあげた









入ってきた通路の向こう側に同じように通路の入り口が見える







部屋の壁には先程とは違うパターンの文様が描かれていた









何だ?この部屋は?」


「先程とは違う文様が刻まれているようだが
暗くてよく見えぬな…」


「あれ?いつの間にか僕と天使君のかけた灯りが消えてるね」







ルーデメラの一言で 一行は灯りの数
減っているのに気がついた







「本当だ、効果が切れたのか?」


「おかしいですね まだ効果が消えるまで
時間があるはずなんですけど…」







たずねる石榴や首を傾げるシュド







「とにかく前にすすむのが先ニャ!
ニャんか早くしないとヤバイ気がするニャ!」


「ヤバイ気ってなんだよ…?」







シャムは次の通路へと四人を手招きし、
五人が部屋の中央に集まった その瞬間









ガコン、という音と共に両方の出入り口が閉ざされ







同時に壁の一部が開き 魔物が出てきた











〜No'n Future A 第二十四話 「泥棒猫の特技」〜











「出入り口が塞がれました!」


ニャー!ままままま マモノだニャー!!
やっぱりイヤなヨカンどうりニャーー!!」







慌てるシュドと怯えるシャム、







ルーデメラと石榴とカルロスの三人は戦闘態勢に入る









「リオスクアーク!」







石榴の言葉に反応し、手の中の宝珠が光りだす









しかし、光が消えても 魔術銃が具現化されず
宝珠のままで石榴の手の中にあった







「魔術銃が…発動しねぇ!?







その様子に石榴だけでなくシュドやカルロスも驚く







「一体どうして…何が起こったんですか!?」


「魔術銃が発動せぬとは…!!」


クリス君が役に立たない以上、僕が
何とかするしかないみたいだね!」







魔物に向けて ルーデメラが呪文を唱えて手をかざす









手の平から光の球が生まれ出て









プシュ、と風船から空気が抜けるような音とともに
光の球が煙みたいに掻き消えた







「おや 魔法が…?」


「お前もかよぉぉぉぉ!!」


「ぎゃあぁぁ 死ぬニャー!もうダメニャー!」







シャムが叫んで目をつぶった、その刹那











向かい来る敵を カルロスの左腕が薙ぎ払った







「大丈夫か 皆」


「たたたたた助かったニャ」


「ありがとうございます、カルロスさん」







カタカタとまだ震えるシャムとシュドは カルロスにお礼を言う







「どうやら 魔法が使えないみたいだねー
いやーさすがエルフの作った遺跡」


感心してる場合か!危うく俺ら死ぬとこだったじゃねぇか!」









へらへら笑うルーデメラに必死の形相で掴みかかる石榴







ルーデメラはすかさずその手に薬品を引っ掛ける







「あづっ!?」


「ざっ石榴さん!?」







手を抑える石榴に駆け寄って 治療をするシュド









「けどハッキリしたよ、この文様がある
エリアでは呪文魔法道具もマズいね」







その一言に ルーデメラに皆の視線が集まる







石榴でさえ、手の痛みを忘れて問いかける







「もしかして…魔術銃もか?


「無理して使ってもまた不発か暴発だと思うよ?」









それは事実上 場所による戦力の低下を意味していた









「それに…さっきこの魔物が出る前に
どこかからガコンって音がしたんです」







更に そこに追い討ちをかけるように
不安げなシュドの言葉が滑り込む







「もしかして…さっきのは、ってことか?」


「だろうな、この遺跡に宝があるならこの先
魔物や罠が大量に仕掛けられている可能性は高そうだ」







カルロスの呟きはもっともだ









しかし、彼らの中で盗賊などの罠に詳しい人間は
一人もいない…











その上 術が使えないエリアまであるとなると
遺跡の探索はかなり困難を極める











それぞれが頭を抱えて沈黙して…いや、











ワナニャら オイラ、ニャんとかできるかもしれニャいニャ」







思いつき、意外な一言を漏らしたのはシャムだった







「それは本当か?」







シャムは首を縦に振って続ける







「実はスラム仲間にトウゾクギルドの奴がいて
オイラそいつにイロイロおしえてもらったニャ
だから それでニャんとかできると思う


「トウゾクって…あの罠とか解除する盗賊か?」


そうニャ!カイジョだけじゃニャくワナを作るのもできるニャ」







シュドが目を丸くして驚く







「罠を作る技術も持ってるんですか すごいです!」









ルーデメラがニッコリ笑うと、カルロスと
シャムをそれぞれ指差して







「そしたら術の使えないエリアや罠は船長さん
泥棒猫君に任せちゃおうか」


「…だな 術が使えないと何も出来ないしな」


「何も出来ないのはクリス君だけだよ、僕は
最悪 薬品でフォローできるもん」


んだと!俺だってなぁ!!」







二人の間にシュドが入り込んで







「お二人ともケンカはやめてください、
僕らも最大限 お二人を援助しましょうよ!」







明るくこう言うと、石榴とルーデメラの両人が
互いに大人しくなり 頷いた









「わかった、術の使えない場所では私が力になろう」


「オイラもお宝のためにがんばるニャ!」









二人も自信満々に請け負い、







シャムとカルロスを三人がサポートするという
陣形で遺跡の探索を開始した









並び順は様子見などから先頭を石榴、間に
ルデとシュドが並び、後ろをカルロスとシャムが歩いて







その時の状況に応じて位置を変える…という形だ













それから一行が進むごとに 罠も激しさを増していった











「両端の壁が迫ってきてます!」


「しかもご丁寧にトゲまで出やがった!」







迫り来る壁の罠に シャムが辺りを見回して







そこ!二だん目の石にのっかってすぐに
1メートル右の石にのっかるニャ!」









指示に従い 石榴とシュドがそれぞれ
石に乗ると、壁がその場で止まり 元の場所へと戻る









「おおっ、罠が止まった!!」











シャムの目と罠の知識が役に立ち、ある時は魔法で







またある時は自分達の力で 罠を潜り抜けていく









魔物達も罠以上に手強く、魔法の使えぬ
エリアでの戦闘も多々あったが







カルロスの剣技が幾度となく役に立った









「アンタスゴいニャ…一体なにものニャんだ?」







シャムが感心したように カルロスに視線を送る







「大した事はない、ゴロツキどもの集まりを
束ねる 一介の船長だ」







淡々と返し カルロスは剣を治めた













一行は、ようやく一番奥へと辿り着こうとしていた









暗く 長い通路を石榴が先頭を歩き
シャムとカルロスが後ろに気を配っていた











「どうしてカルロスはマチなかで
オイラをかばってくれたんだニャ?」








移動しながら カルロスに問い掛けるシャム







「逆に聞くが、何故そんな質問を?」


「だっだって 気になったんだニャ」







口ごもりながらも、シャムは続ける







「石榴がいい奴ニャのは見ててわかるニャ
でもカルロスまでかばってくれるニャんて…」









戸惑うシャムに、フッと笑って







「理由があるとするなら、お前が昔の私に
重なって見えたせいかも知れない」







カルロスはそれだけ言うと 三人と同じ方に向き直った









「それって カルロスもオイラと同じ―」







言いかけたシャムの呟きは、石榴の歓声に遮られた







「おい、ここが一番奥か ひょっとして!?











五人が辿り着いたのは、神殿を思わせる広い作りとなった空間で







その奥に 一体の守護像に守られるように







キラキラと不思議な輝きを放つ宝珠が安置されていた








――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:大分遅ればせながら 新年一発目の小説にノンフュを
書き上げました


ルデ:本当はこれ、年末に書くはずだったヤツだよね?
何がどう間違ってこうなったんだろうねー?


石榴:…こいつが風邪食当たりで体調崩さなきゃ
もしかしたら間に合ってたかもな


狐狗狸:だーかーらぁぁ、内輪の話はやめてちょーだいって


シュド:シャム君もすごいですけど 船長さんも
剣の腕前がお強いんですね


シャム:オイラはトウゾクギルド出の仲間におしえてもらった
チシキを生かせてるからニャ…カルロスはマジで強いニャ


カルロス:大したことはない、海賊としての下働き時代
利き腕の義手を生かせる技があると聞いてな…


狐狗狸:あ、船長が起きてる


石榴:そりゃ起きるっつーの


ルデ:へぇー船長さんは左利きなんだ〜


狐狗狸:そこ 感心する所なの?


石榴:つかルデ 俺に何の薬かけたんだよ
それと何で俺が先頭なんだよ!


ルデ:ああ、あれは大した薬じゃないよ それに
君が先頭になった方が犠牲も少なくて済むし


石榴:やっぱりそんな役割かよ!!


シュド:お二人とも ケンカしちゃダメですよ


シャム:あ、二人が大人しくなったニャ


カルロス:…シュドはケンカを収めるのが上手いな


狐狗狸:……無意識に聖のオーラが出てるんだと思います




カルロスの過去は…まぁ機会があればそのうちどっかで
語られるかもしれませんね(適当すぎ)


次回 宝を前にした一行に襲いかかる最悪の状況!?