村は 正に壊滅寸前の状態だった







石榴がおびき出されたのと入れ替わりに、


人狼達率いる魔物の群れが村へと雪崩れ込んだ





村人の抵抗も空しく 家々は荒らされ
周囲には戦った男達が何人か重傷で転がっている











「よくも楯突いてくれたねぇ〜こうなったら
女全員こっちに来てもらおうか!


きゃああああああああああ!







魔物の一人が 娘の一人に手をかけようとしたその時





一発の光球がその魔物に命中し、


勢いで魔物は吹き飛ばされていった





続け様に二度、三度攻撃を受け
魔物と村人達の動きが止まる







そして 皆の視線が、攻撃のきた方向へと集まる









「随分派手な攻撃だねークリス君」


「そう言うお前はどうなんだよ、ルデ」





少し小高い崖の上には 石榴とルーデメラが佇んでいた







「なっ…テメエら いったい何者だ!


「魔物風情に教えてあげる義理はないね」


「村の奴等に手を出しやがって!後悔させてやる!!









石榴とルーデメラが崖から飛んで


それぞれ 術と銃の効果で着地する







そして 背中合わせに二人は周囲から襲いかかった
魔物の群れに攻撃を開始した







轟音が アウィト山中に響き渡った











〜No'n Future A 第十四話 「鉱石と茸」〜











「…あとは あのデカイ狼野郎だけだな」







石榴が 一人残った人狼を睨みつける









二人の攻撃により 他の魔物たちは
例外なく 地面に倒れ伏している









「何と弱っちい奴等だ…たかだが人間に
傷一つすらつけられぬとは」







人狼が 忌々しげに倒れた魔物と二人を交互に睨みつける







「それにしても 人狼なんかが通訳の術を
知っているとは驚いたね」





唐突ともいえるルーデメラの台詞に、
石榴は腑に落ちない顔をする





「何言い出すんだよいきなり、アイツ術なんか使ってねぇだろ?」


「あのねクリス君 人語を理解できる魔物でも
異界人と術無しで話せる奴なんか普通いないんだよ?」


「そうなのか…ってことは…」







石榴の答えを待たずにルーデメラは不敵な微笑を浮かべて







「つまり、それなりに術についての知識と力がある
魔物が こいつらに術をかけ続けてるって事さ」





佇む人狼を 青い目が鋭く射抜く





「アレンジされた術なのか何らかの魔法道具の効果か
分からないけど…聞き出せばすむ話さ」











含んだような笑い声が響く







人狼が 口を歪めて笑っているのだ








「オレ様はあの方に力を余分に分けてもらったのだ
だから、他の奴と一緒にするな!


「…あの方?誰だよそいつは」


「貴様如き異界の人間に聞かすも恐れ多いわ
…ましてや 今から死ぬ奴にはなおの事!







石榴の問いに嘲笑し 人狼は術を唱え始めた







見る見るうちに 人狼の体が変化していき―





5メートルほどの大きさの 異形の狼の怪物となった









「このまま 貴様等を食い尽くしてくれる!







怪物が腕を振り上げる





咄嗟に二人が避けるも 石榴の右肩に、爪痕が刻まれる







「くっ…これでも喰らっとけ!







痛みに顔を歪めながらも 石榴が果敢に
怪物に銃を突きつけ、連射する





だが、銃弾が身体を貫いても


怪物は平然と笑って立ちはだかっている









「無駄だ無駄だ オレ様はどんな攻撃だろうと
死ぬ事は無いのだ!」



「んだと偉そうに!」


「無茶だ旅の方!あの頭領は不死身なのですぞ!?」







村長の叫びに 石榴はロコツに嫌な顔をして毒づいた







不死身の魔物だと?ったく、これだからファンタジーは!」





尚も銃口を向ける石榴に、ルーデメラが小さい声でささやいた





「クリス君 今から時間を稼いでくれる?」


「…何か勝算があるのか?」







ルーデメラは 不敵な笑みを口元に浮かべ







「当たり前でしょ、あんなの不死身でも何でもない
僕に言わせれば正に子供騙しだね」





「…その自信がどっから来るのかしらねぇけど
まかせたぞ、ルデ」








ルーデメラが呪文を唱え始めると同時に







石榴が怪物に向かって自分を指し示した









「俺を殺せるもんなら 殺して見やがれこのデカブツ!


「…いいだろう そんなに死にたいならな!











怪物の攻撃が石榴へと集中する







振り回される腕を時にはかわし 時には防いで





応戦しながら石榴は怪物から逃げ回る







攻撃こそ効かないものの 決定打を与えれず


怪物は徐々に苛立ち始めた









執拗に石榴に攻撃を続ける怪物







石榴が防戦一方の状態になった―その時!







「ヴィジョニレイス!」





ルーデメラの唱えていた呪文が完成し 彼を中心に
青い光が周囲に広がり―





今まで石榴と対峙していた 巨大な怪物の姿が掻き消える







「な…オレ様の幻術が解けただと!?





少し離れた所に佇んでいたのは、先程の人狼







どうやら幻術を使い "不死身の魔物"の幻を見せていたようだ









「色々術に詳しいみたいだったけどその幻術はいただけないね
"夢幻の使者"にそんな物が通用すると思った?」







不敵に笑うルーデメラに 人狼は今だうろたえる







「バカな オレ様の幻術は普通の術消しなどでは
解ける訳が…!!」


理解力のないバカは嫌いだよ、その術は僕のオリジナルに
決まっているじゃないか」









今の言葉に逆上した人狼が ルーデメラに襲い掛かる


しかし、ルーデメラは微動だにせず笑う





瞬間 人狼とルーデメラの間に石榴が割り込んだ







君の負けだよ 犬畜生」


「お前なんかとっとと滅却ろ!」







石榴の連弾が炸裂し、人狼は跡形も無く消え去った













村人達の歓声が しばし村に響いた直後









「どうせなら このままやつらのアジトを
皆で叩きに行かない?







と ルーデメラがとんでもない提案をした







「僕等が魔物を相手にして、君達が村人を
助ければいいと思うけど?」






たじろぐ村人にルーデメラは尚もこう言った









やがて、村人の一人がこう言った







「……この人達がいればあいつ等に勝てる!
皆 奴等のアジトに行こうぜ!!







釣られて一人、二人と頷き


いつの間にか全員が賛同していた











ルーデメラの言葉に活気付いた村人達を率いて
彼と石榴は 魔物たちのアジトへと攻め込んだ








…もちろん石榴が活気付いた村人やルーデメラ
逆らえるわけはない







生き残った魔物に吐かせた所 アジトの洞窟は
意外とすぐ近くにあり、





残党が人狼を含めて何匹かいたが





何故か弱っている上、ルーデメラと石榴が表立って
活躍した為 全員なす術もなく倒されたのだった







奴隷生け贄にされていた村人達も無事に保護し





皆は 村へと戻ってきた
















村長が、伏し拝むように石榴とルーデメラにお礼を言った







「あなた方のお陰で 村の者も無事に戻ったし
人狼どももいなくなり、平和に暮らせますじゃ」


「いいって別に 単に俺達が成り行きで
あいつ等ぶっ倒しただけだし」


「そうそう お人よしだからね君は」







ルーデメラの言葉に少しカチンと来たが


村長のいる手前 石榴は我慢する事にした









「これはほんのお礼ですが、受け取ってくだされ」





そう言って村長が差し出したのは 人狼のアジトから
手に入れた、鉱石と茸全てだった





「いやいいよ、俺達そういうつもりじゃねーし!
俺の怪我も手当てしてもらったし!」


「何 気にしないで下され、わしらには無用の品ですじゃ」


「せっかくイイって言っているんだから、遠慮なく
全部もらっといたら?」







別に悪いことしてないし、と付け足すルーデメラ





けれど、石榴は首を縦に振らなかった







「でも 全部は流石に多いし、悪いから…
少しだけにしておこうぜ?」


「……君は本当にお人よしだねクリス君、まぁいいけど?」









結局 お礼の品を少しだけ受け取り、
石榴とルーデメラは村を 山を後にした












道すがら 石榴はルーデメラに問いかけた







「所でテメェ…俺と別れたあと、一体何してやがったんだ?」


「ああアレ?単にあいつ等のアジトを叩きに行っただけだけど?」


はぁ?ど、どういうことだよ?」







ルーデメラが石榴に 噛んで含めるように





「あの村は敵に監視されていた それを逆手にとったのさ」


「監視を逆手に?





オウム返しに聞いた石榴に ルーデメラが頷いて





「僕がわざと君とケンカ別れすれば、奴等が
君に集中して アジトが手薄になるからね」


「テメェ 俺を囮にしたのかよ!つーか
アジトに先に行ったって事は、まさか…」







ルーデメラは石榴の推測を裏付けるように







「まぁ 必要分ぐらいは鉱石と茸を頂いたね」





悪びれもせずさらりと言い放った





「ピンハネしやがったのかテメェ!!」


奴等を退治して村一つ救った代償なら安いだろ?
まぁ…お礼として貰えるとは思わなかったけど」









石榴の非難の眼差しを 平然と受け流しながら







「それにしても不可解だね 普通は人狼ごときが魔術を
使う事なんて、ない筈なのに」


「…人狼っていや、あの時気になったんだけどよ」





ルーデメラの呟きに 石榴が問いかける





「奴が言ってたあの方って 一体誰なんだ?









少し ルーデメラが考えて、口を開く







「…少なくとも 背後に魔物達に力を貸す強力な存在
要るみたいだね "赫眼の覇王"みたいな」







初めて出た単語に、石榴が眉をしかめた









セキガンノハオウ?何だよ、それ」





問いかけに ルーデメラは答えず





「まぁ興味があるのなら 追々話してあげるよ」







それだけ言うと、再び地図に眼を落としたのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:遅くなりましたが ようやくこの話が終わりました〜


石榴:前回は次の日に更新してやがったのに
今回えらく時間かかったなオィ


ルデ:何か 五月病だやる気ないとか言って
サボってたんだよね 執筆


狐狗狸:…えー作中に出てきたルデのオリジナル術ですが
アレはどんな幻術でも効果を消し去るという物で


石榴:話を逸らしてんじゃねーよ!


狐狗狸:"赫眼の覇王"につきましては 後々話に
関わってくるので今は言えませんが


石榴:オイ 無視してんじゃねーこのヘタレ作者!!


狐狗狸:石榴の台詞は「滅却ろ(きえろ)」と言ってます
あの人狼一団は少し特殊な力で村人達の言葉を理解してます
(普通は出来ない)ルデは後で通訳の術こっそりかけ直してま


ルデ:…クリス君 ここに僕の新薬があるけど
それぶっかけてみたら?(薬差出し)


石榴:そうする(薬受け取り)


狐狗狸:無視してごめんなさいっ!!(平伏土下座)




本当に話が遅くなってスイマセンでした…


次回 何とルデがになる?!(ヲィ)