「それでルデ 目当ての"ラグラド鉱石"ってのは
あの山にあんのか?





村の料理屋で名物パスタをぱくつきながら


石榴が窓の外に見える山を目で指した







間違いないと思うよ…最近は魔物が活発なせいか
年々採れる量も減ってるらしいけど」





問いかけにルーデメラが 紅茶をすすりつつ
早速地図を手元で広げ


彼の指した山と照らし合わせて答える











兎にも角にも"コンクーアン"の体液をゲットし、


ついでに近くの大陸まで運んでもらった石榴とルーデメラ







カルロス船長率いる"スリーパーズ"とそこで別れ





野宿を繰り返しながらも 二人は目的地である
アウィト山に入るための休憩地点として


山のふもとから少し離れた、クロコス村へと辿り付いたのだった











「お前それ 今どっから出した!?」







石榴は、手ぶらに見えるルーデメラが
いきなり地図を広げていた事に目を丸くする







「ああこれ?勿論自分の荷物入れからだよ」


「って お前手ぶらじゃねーかよ!







ルーデメラは小ばかにしたように笑うと





何やら指を空中に回し 何かを抱えるように
両腕を胸の前に持ってきて、小さく呟いた





すると、その腕の中に空間から
大き目のザックが浮き上がるように姿を現した









「色々と荷が多くなると持つのが面倒でね、透明化
自動浮遊追跡の能力を持つ袋を使用してるのさ」


「…それもお前が作った魔法道具って奴かよ」


「まぁ そんな所かな?」







あっさりと言うルーデメラに対し、石榴は軽く溜息をつき





"これだからファンタジーは"と小さく呟いていた











〜No'n Future A 第十二話 「隠れ村」〜











「お客さん アウィト山に行くつもりかね?」







二人の食べ終わった食器を片付ける
ウェイトレスのおばさんが尋ねる







「あーまぁ そうだけど…」





「何でもあの山には隠れ里があるらしいけどね、
あそこは立ち寄らない方がいいよ」









皿を重ねて持ち上げながら おばさんは続ける







言葉の通じない凶暴な村人達らしくてね、前にも
この村の者が襲われたって聞くよ」





言葉が通じない、ねぇ…」


「何か物騒な村だなオィ」







二人の呟きに おばさんは声を少しひそめる





「最近じゃ人狼(ワーウルフ)もうろついてるって言うし…
あんた達も気をつけなよ?


「忠告ありがとな おばちゃん」


「僕らもそろそろ行こうか…ごちそうさま」







席を立って代金を支払い 二人は店を後にした












今回二人が探す材料"ラグラド鉱石"


山の中にある洞窟や崖の途中など、少し採掘に
手間取るような場所にあることが殆んどだ





しかし 魔力をある程度蓄積するという
特殊な性質を持つためか


通常の鉱石よりも高値で取引され
採掘しようとするものは意外と多い







アウィト山も起伏に富んでいるからか ルーデメラも
"ラグラド鉱石"が発掘しやすいと踏んだのだろう











「思ったよりも広いねこの山…クリス君
ちゃんとついて来れてる?」


「お前に心配されるまでもねーよ」









ほとんど道らしい道が無い山の中、





息すら切らす様子なく後ろをついてくる石榴を
ルーデメラは感心したように見つめる









「前々から思ってたけど 君って案外体力あるよね
魔術銃の扱いも慣れてきてるみたいだし」


「そりゃあんだけこき使われりゃ嫌でも慣れるっつの
それに俺は 山道とか割と歩きなれてっから」







自信があるのか 少し自慢げに話す石榴








「ああそう、ちなみにこの辺急勾配になってるから
気をつけた方が」





振り向きもせずにルーデメラが注意する言葉半ばで





先にそれを言えぇぇぇ〜…」







足を踏み外して 石榴は下の方へと転がるよう
滑り落ちていった





「全く だから気をつけろって言ったのに
ドジで間抜けなんだねクリス君は」









石榴が滑り落ちて止まった地点まで、
ルーデメラが降りて来ると…





そこは どうやら小さな集落のような場所で


石榴の周りを村人らしき者たちが囲んでいた









「オイ ここって…店のオバちゃんが言ってた
隠れ里なんじゃねーか?」


「みたいだね…何か険悪な雰囲気だし
流石にこの数で襲われたら危ないよね」







ルーデメラが小声で石榴に答えつつ、ちゃっかり
自分だけバリアーを作り出していた


石榴が立ち上がってルーデメラに文句いうよりも早く





またよそ者がやって来た 何なんだこいつら?」


「まさか あいつ等の手先じゃ…」


「やっちまえ!!」







取り囲んでいた村人達がナイフや斧などを手に、
石榴達へと殺到し始めた









石榴は咄嗟に横へ逃げ 村人の振り回す
武器や農具を何とかかわす







「ちょっ、待て!何でイキナリ襲ってくるんだ!!
とりあえず話を聞きやがれ!!!








石榴が一声叫んだその途端


急に 村人達の動きが一斉に止まった





「え…一体 どうなってやがる?」









石榴が戸惑っていると 顔を見合わせて
小声で喋っていた村人のうちの一人が声をかけてきた







「お前…オレ達の言葉がわかるのか!?


はぁ?何言ってんだ こうやって普通に
会話できてんじゃねーか…そうだろ ルデ」







振り向いた石榴に いつの間にかバリアーを解いた
ルーデメラが静かに首を振る







「そうだろって言われても…僕には村人達の会話
クリス君の今の会話も 理解できないんだけど」


「なっ…どう言う意味だそりゃ?


「先に立ち寄った所で聞いてただろ?
言葉の通じない村人達が住む隠れ里があるって」





そう言うや否や ルーデメラは早口で呪文を唱え―





「スポクディアロ!」







一瞬 ルーデメラを光が包み…


それが収まって、彼は口を開いた







「これで僕の言葉も そこの村人達に分かるんじゃない?」





ルーデメラの一言に、村人達はざわめきたった









「テメェ…最初からそー言う術あんなら使えよ」


「この術 動物だろうと何だろうと会話できるけど
精々一時間ぐらいしか持たないから面倒でね」











石榴とルーデメラが言い合う間も、村人達は
半信半疑の面持ちで二人を見ている







「オレ達の言葉が通じてるって事は こいつ等は
敵じゃないんじゃないか?」


「いいや騙されるな 言葉が通じるからって
あいつ等の仲間でない保証はどこにも無い!





「なあアンタ等 さっきからあいつ等って誰の事―」







石榴が村人に問い掛けた その言葉を遮って





「ごきげんよう 奴隷どもの諸君」









村の奥の方から 魔物の群れがやって来た





たちまち村人達は、恐れおののきながらその場を離れる










あ〜?何だか見慣れん奴がいるな…見たところ若いし
新しい働きアリとして連れて行くとするか」







魔物の群れの奥から 一匹の人狼が先頭に立ち
石榴とルーデメラを眺めて偉そうに言う







「随分おかしな事を言う犬畜生だね…ご主人様に向かって
礼儀知らずな口の聞き方からして、やっぱり野良か」





ルーデメラがさらりと辛辣な事を言い放つ





犬畜生だと!?人間のくせに生意気な!
この人間達に我等の恐ろしさ思い知らせてやれ!!」








激昂した人狼の叫びを合図に 魔物の群れが総攻撃をかけた









「お前って 相手の神経逆撫でる言葉しか吐けねーのかよ…」


「どうせ結果的にはこうなるんだから 別に構いやしないさ」





お互い短く交わすと それぞれ攻撃態勢に入り―







襲い来る魔物の群れは、ものの五分で殆んど片付いた









「数だけで歯ごたえ無いね もっと楽しませてよ
少しはご主人様に対する礼儀もわかった 犬畜生?」


「倒れた相手に 鬼かお前は」







ヘラヘラと笑いながら 自分の魔法で倒した人狼を
足蹴にしながらの台詞に


石榴は冷や汗たらしつつツッコミを入れる









「あわわわ…お お頭に報告だ〜っ!!









魔物のうち一匹生き残っていた 鳥の姿に似た奴が


一目散にもと来た方へと飛び去っていった








――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:海上編も終わり カルロスと別れて二人に戻った話です
船長もっと書きたかった…


石榴:また登場させる予定だろーが その為にさっさと
話し進めろっつーの(呆)


ルデ:今回もまた長くかかりそうだね…余計なエピソードのせいで
二話で終わらせるつもりが一話余計に伸びたし


狐狗狸:それは言わないで毎度の事だけどっ!!


石榴:というか 前回の話といい今回といい…
ルデの魔法道具って都合よすぎねー色々と


狐狗狸:そうでもないよ 確かに色々便利なものを
開発してるけど、ある程度ルールがあるし


ルデ:それにバリアーを作り出す物も今回のザックも
元々の魔法道具を改造して作った物だし


石榴:あんなモンが元からあんのかよ!?
これだからファンタジーって奴は…


狐狗狸:それにしても作者が言うのもなんだけどさ
石榴ってどんどんタフキャラになってるよね


石榴:俺の場合は元々よくサバゲーとかで体動かすのと
そこにいる腹黒ダメ作者に振り回されるせいだろ?


ルデ:まぁ頑丈でいてくれた方が 僕も色々
都合がいいから、助かるよ


狐狗狸:…(主に実験動物兼手下としてでしょ/うわ)




ルデの使う術が自由度高いのは 彼の実力ゆえです(暴露)


前回の次回予告は外しましたが 今度こそ二人が仲間割れします