怪物"コンクーアン"の印象は 一言で片付けるなら


気色の悪いタコであった







恐らくは8M程ある巨大な胴体





ヌメヌメと光るそれには 大きな魚の頭が幾つもあり、


その全てが船を見ている





海中からは 何本もの触手がはみ出し


波を立てながら蠢いていた









そのお陰で船は大揺れし 転覆しないよう
船員達が右往左往している











「っオイ ルデ!
聞いてたより怪物のサイズでか過ぎんぞ!







何とかバランスを保ちながら立ちつづけ 





見上げ気味に"コンクーアン"を見つめたまま
石榴が抗議の声を上げる







「どうやらこの"コンクーアン" ラノディヘリングの
大型亜種の中でも、かなりの変異種みたいだね」


「ってテメェ…何やってんだコラ





後ろを振り向いてからずっと 顔を引きつらせる石榴







「言ったろ?こんなに揺れる船の上じゃ
ろくな術が使えない 防御を張るだけで精一杯だよ…」





言いつつ ちゃっかりバリアーを作り出し


青い顔のルーデメラは、隅の方に退避していた











〜No'n Future A 第十一話 「狩りの勝利者」〜











「タコもどきのせいで気分悪化したから、
さっさと片付けてね あー気持ち悪い


「だぁっ もうテメェは当てにしねえ!」







石榴は怪物を真正面に見据え









「やるしかねぇか…リオスク アーク!





ポケットから出した宝珠を魔術銃へと具現化し







船へ巻きつこうとする触手の一本に
弾丸の一発を喰らわせた














「くっそ…戦いづれぇ…!」







額に流れる汗を拭い、石榴は焦りを感じていた









荒波によって只でさえ不安定な足場





主な戦力が 自分一人という状況





更には、本体への攻撃が触手に阻まれたり


頭の一つに当たっても しばらくすると再生する事もあり







石榴は"コンクーアン"を倒す所か


船を沈められぬよう防御するのが精一杯だった











"爆ぜろ"! "爆ぜろ"! っだあぁぁ
触手うぜえええぇぇぇぇ!!







爆発効果の弾丸で触手の侵食を留めながら
石榴は苛立った声を上げた







「何効率の悪い事してんのさ、さっさと連発すれば片付くでしょ?」


「こんな足場の悪い所で使ったら、すっ転ぶに決まってんだろ!」


「でもこのまま行くと、君がへばって戦えなくなるのも
この船が沈むのも時間の問題だけど?」


「そう思うんだったら 何とかしやがれ!
何が"夢幻の使者"だ、このカナヅチ能無し男!!







石榴のその言葉に ルーデメラは僅かに片眉をあげる





「心外だな、揺れと不快感で術が使えなくても
僕は君より役に立つよ





石榴が激昂して反論しようとするのを遮るように





「仕方ない 面倒だから君に任せてたけど
そろそろ僕が手助けしてあげようかな?







溜息つきつつ、ルーデメラがいつの間にか


手に持っていたスイカ大の爆弾らしきものを
軽く上へと放り投げる





投げた物体が中空から甲板へと落ちきる直前





「……バンプソニック!







ルーデメラの放った衝撃波が 物体に命中し


ものすごい爆音と閃光が船に響き渡った









ふっ船が 船が沈むうぅ〜〜〜!!


「スマイルクラッカーが暴走したぞ!!」


「たたた助けてくれ!まだ死にたくない〜!!





何が手助けだ!泳げないんじゃなかったのかよ!
テメェこの船壊す気か!?








船員たちがパニックを起こしかける中、石榴が
ルーデメラに掴みかかるが





彼は態度を毛ほども変えずに 悠々と言った







「落ち着きなよ アレは只の目暗まし、僕が作った魔法道具だよ」


目暗まし?だったらあの怪物にやれよ!」


「船やあのタコに直撃させる気も無いさ
…さて そろそろ起きたかな?







ルーデメラの言葉に続いたのは、





船室から響いた物凄い轟音 そして――









「……私の眠りを邪魔したのは どいつだ!





右手に義手用の剣を携え


鬼気迫る顔をしたカルロスが 船室から飛び出した









カルロスの登場により 船員達が全員動きを止めた





バンザ!眠りを邪魔したのはどいつだ!
八つ裂きにしてやるから言うがいい!!」







怒鳴りかけられたバンザは しばしうろたえ―







「あの魔物のせいにしちゃわないと、君のせいにするよ?





ルーデメラの囁きを耳にして、咄嗟にこう口走る





船長!!あのタコ野郎です!!!







その言葉と共に 彼は左手の義手に剣をはめ込んだ





「刺身にしてくれる!!」





カルロスがその叫びと共に "コンクーアン"の
触手を掻い潜りながら本体へと飛び掛る


そして 左手が見えないほどの速さで翻った







ザ…ザブンザブンドブンボチャン!







彼が船に着地し 剣を鞘に収めた直後、


怪物の触手がぶつ切りの形で海へと沈む









「デタラメだなオィ…って、呆けてる場合じゃねぇ!









触手を全て失ってもがき 船に体当たりしようと
迫る"コンクーアン"







"爆ぜろ"!





石榴の渾身の一撃が炸裂した











怪物の動きが止まり、船の揺れが静まった
刹那の間隙を縫って







"神の紡ぎ糸 捕縛の鎖 礎を絡めとれ"!







ルーデメラの投げた 手の平サイズのコインから、





光る網のような物が飛び出し まるで生き物のように
"コンクーアン"に絡みつく







それによって"コンクーアン"は完全に身動きを封じられ


力なく海上に浮かぶのみとなった













『な…何だよそれ!』







皆が"コンクーアン"を縛る 光の網を指差す







「それも僕の魔法道具 "光使の投網"、捕獲道具だよ」









唖然とする一同を余所に





「君達のお陰で上手く捕獲に成功したよ
雑魚にしては役に立ったね ありがとう」





得意満面の笑みを浮かべ、体液を収集するルーデメラ











「テメェ最初からこれが目的だったろ!
こんな道具持ってんだったら 先に使いやがれ!」





「戦うのは君の役目 だから僕は弱った所を捕まえただけさ
文句はあるかい、雑魚海賊の諸君?







ルーデメラの問いかけに 船員は全員首を横に振った











「一人でおいしい所だけ持って行きやがって!
これだからファンタジーはあぁぁっ!!」








石榴の力一杯の叫びが その場に木霊した








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:これにて海上話は終了です 勢いで書いちゃって
ホンットすいません


石榴:てか何も考えねーで書くから説明不足になってんぞ作者!
今回の怪物の事といい ルデの術といい…


狐狗狸:うぐっ…でも ここでそれを補えばプラマイゼr


石榴:この場所は補足説明の場所じゃねーぞゴルァ!


狐狗狸:キャー!ごーめーんーなーさーいーっ!!(謝)


ルデ:まぁまぁクリス君 折角このダメ人間が謝ってんだし
実験室送りって事で水に流そうよ


石榴:それ水に流してねぇだろ


狐狗狸:(このままじゃヤバイ…)ね、ねールデ
今回使った魔法道具ってどんなものなの?


石榴:だからココは補足説明の場所じゃ…


ルデ:クリス君は黙ってて まず目暗ましのは"ダミーバレット"
作中でも言ったけど音と光だけの奴、見た目より軽いんだ


狐狗狸:フンフン それでもう一つの奴の概要は?


ルデ:"光使の投網"は先に魔力を込めて 解放する為の
呪文を唱えれば発動する仕組みなのさ


狐狗狸:ほほう あ、後"コンクーアン"の元の種の
ラノディヘリングについて


ルデ:さて もう聞きたい事は聞いたろう?("光使の投網"発動)


狐狗狸:い゛ーやー!!




毎回毎回こんな感じの楽屋裏 補足説明の場にしてしまい
色々な意味でスイマセン(汗)


次は 石榴とルデが仲間割れ…!?