地球の人間の住む世界とは別の"異世界" ラノダムーク


人々が剣を取り、魔法を使い様々な文明や国を築いて営む一方


魔物や人と異なる様々な獣・種族が生きる世界…





争いは絶えぬまでも、絶妙なバランスをとりながら
今でこそ平和を謳歌しているこの世界にもかつて


遥か昔…ラノダムークの人々を震撼させた存在があった







それは 配下の魔物を自在に生み出し、扇動し

人々に阿鼻叫喚の地獄を見せていた存在


それは長い長い時の中 人々の恐怖を受け継ぐように
数々の滅びを行った存在





そして 悠久の時の果てに ついには滅ぼされた存在







その者は"赫眼の覇王(セキガンノハオウ)"と 呼ばれていた…











〜No'n Future A 第一話 「非日常の始まり」〜











日本の東京の、どこかのとある地域で





「お〜い ク〜リ〜ス〜





やたらと間延びした声が夕方の夏の空に響き渡って


その声に、「クリス」と呼ばれた高校生くらいの
黒髪で釣り目の少年が振り向いた





「やっぱクリスだ〜、途中まで一緒に帰ろうぜー」


お前な いいかげんそのあだ名やめろよ」





ニコニコとした笑顔で走りよる少年に、クリス少年は
呆れ交じりでそう返す


彼らはどうやら友達らしい





「いーじゃん、だってお前の名前って
クリスマスカラーそのまんまな色だもん!」


もんじゃねえよ!男のくせに可愛い子ぶるな!ったく…」


彼は一通りツッコミを入れると 額に手を置いて
ため息をついた


その様子に、友は不思議そうに見やって問う





「なークリス〜なんかいい事でもあったのか?
いつもよりツッコミ少ないじゃん」


「まあな 欲しかった最新モデルのプラモガンが
やっと手に入ったんだ」





ニッと笑って、"クリス"は右手に持っていたカバンを軽く掲げる





「へ〜よかったじゃん ああ、そうそう 最近のニュースでさ
また未確認物体が確認されたって…」





が、友のその他愛ない一言で急に眉を吊り上げる


「そんなもんに決まってんだろ
そうポコポコ未確認物体が出没してたまるか!

ったくオカルト好きの奴らはこれだから…」







嫌悪感たっぷりに吐き出したその様子を黙って見つめ


友はクスクスと小さく笑って見せた





「クリスは相変わらす変わらないな〜
ファンタジーとかオカルトなものを嫌いな所」


「当たり前だろ ファンタジーやオカルトなんて所詮
人が作り出した夢想の世界の産物なんだよ!

俺はそんな世界も、そんな世界を本当にある
信じている奴らも嫌いなんだっ!


そんな都合のいいことばかり起こる世界 信じてたまるか!


「まあまあそう怒るなよ〜そういう世界だって
信じてる人だって、悪くは無いんだぜ?」


「とにかく!俺の前でファンタジーの話なんかすんな!!」





友は彼が喋り終わったのを確認し なだめるように言う





「そんなカッカすんなよクリス〜
あ、ところでお前 もう夏休みの宿題ってやった?」


「当たり前だろ?とっくに終わってるぜそんなの」


やったーーー!じゃあ明日 お前ん家行くからさ
そん時写させてくれよ!頼むよ!!」





大袈裟に喜ぶ友の隣で、思わず"クリス"は脱力する




はあっ!?お前はなから写す気かよ!
これからガンバって宿題終わらそうって気はねえのかよ!」


「うん 毛頭ない!つーか宿題もらった瞬間から
写す気満々だったし」


「もうちょっと根性見せろ!少しは!!」





反射的に、友のこげ茶髪に向かって裏手チョップがかまされるが





それを受けながらも怯むことなくにっこりと
満面の笑みを浮かべた友は


十字路での別れ際に差し掛かった辺りで

"クリス"から離れながら、こう言った









「本当に頼むぜ神様石榴(ざくろ)様〜! ってことで、じゃあまた明日な〜!!」







答えも聞かずに走り去っていく友の後姿を眺めながら


"クリス"…いや、"石榴"は苛立ち交じりに呟いていた





「ったく虎目の奴…休みが近づくたびに毎度毎度
俺に面倒ばっかりかけやがって…

少しは自分で勉強しやがれーーーっ!


と言うか 本人が自覚しないうちに叫び声
変わっていたけれど







けれどもこの時


石榴はこれがまさかこの"日常の世界"での
最後の会話になるとは 夢にも思っていなかった…









"イマコソ…今こそ、時は来た"







そのまま家へと帰路を歩いている途中で





「わーい わーい こっちへおいでよ…





楽しげな子供の声が高らかに辺りに響き
石榴は、辺りを見回す


「…ん?」


いくら夏とはいえ、そろそろ夜が迫りつつある夕暮れ時に
子供が遊んでいるのは違和感があったのだろう





「わーい わーい こっちへおいでよ…


「どっからだ…?」





注意しながら声を聞き、数歩移動した所で


彼は声が 少し先の石段の上にある神社の方から 聞こえる事に気がついた







「こんな時間にガキが神社で遊んでんのか?
ったく…最近は色々ブッソウだってーのによぉ」





愚痴をこぼしつつも 石榴は子供へ一言告げようと
石段を駆け上がっていく







登りきった先には、石の敷かれた通路と二つの石灯籠


赤い鳥居と奥に古ぼけた神社の社
それと小さな社務所のような建物が側に一つ





社の側には裏手に回れる空間と大きな御神木があり
至って普通の神社なのだが





周りを囲むように茂るうっそうとした木々のせいか

それとも神社全体の建造物が古めかしいせいか


時間帯と相まって、どこかうら寂れているようにも見える







…周囲をざっと見回す石榴だが


辺りには子供はおろか 生き物の気配すらない





「一体どうなってやがる…」





戸惑いを浮かべ、石榴が呟いたその途端







アハハハ こっちへおいでよ……」





お社の裏手から 笑い声が再び沸き起こって


チラリ、と小さな影らしきモノも社の裏から覗いて
再び引っ込んでいくのが見えた







「隠れてんのか!まったく近頃のガキはっ!





まなじりを釣り上げながら、悪態つきつつ社の裏へ回り





彼は………信じられないものを目の当たりにした







社の裏手の、草が生い茂る土手の中空に


いかにも怪しげな黒い空間がポッカリと穴を開けていた







石榴はしばらく何も言えずに佇んでいたが





やがて顔つきを大きく歪ませて 叫んだ





「何だこりゃ なんかの特撮か!?




あまりにも荒唐無稽な出来事をそのまま受け入れられず

彼は、自分なりの結論を取り付ける


「ったく どうせどっかの特撮マニアかなんかのいたずらだな…
おい!いいかげん出てきたらどうだ!





黒い空間から目を逸らし 近くの草むらへ
腹立ち紛れに怒鳴り散らす





「オイ!聞こえてんだろっ、わざわざガキまで使って
仕込みしやがっていい加減にしやがれよ!?」



更に土手へ踏み出しながら 辺りへ目を走らせて







瞬間、背にしていた黒い空間から音もなく手が伸びて


石榴を掴み 空間の中に引きずり込む







なっ!わっ!ウワアアアアア―――――……」





唐突なそれになす術も無く


黒い空間の中に取り込まれ、石榴は落ちていく







"アハハハハ…


一緒に遊ぼうぞ 石榴……


ワシと共にこのゲームをな…
"







彼を飲み込んだ黒い空間は静かに閉じられて





後には、当人のカバンだけが残された








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:はい NO'n Future A(ノンフューチャーエー)
第一話ようやく書きました!長ったらしいのでノンフュと呼びます


石榴:そんな事どうだっていいだろ作者!


狐狗狸:うわっ いきなり出てきて怒鳴らないでよざくろん


石榴:その呼び方はヤメイ!


狐狗狸:じゃ虎目みたくクリスって呼ぼうか?
それとも次に出てくるルデ風に勇者様


石榴:どっちも断る!普通に石榴で十分だ!!


狐狗狸:はいはい…で 石榴は何でイキナリこっち来たの?


石榴:決まってんだろ?話を考え始めたのが大分昔なのに
やっとこさ書き初めてっ事と、内容のヒドさ
文句いいに来たんだよ!!


狐狗狸:……え〜と……… じゃ、続きはまた次回〜(逃走)


石榴:待ちやがれこのクソ作者っ(追いかけ)