さぁさ雨天、さぁ雨天!


科学機関"ディア"より派遣されたチームの護衛と雑務を
務める傍ら、城下町にて情報を探り

冒険作家の足取りを掴む事に成功した少女と道化


雨へ直接干渉する為の機械の開発も順調に進み


試作機発動の出力に必要となる物資の受け渡しが
チームの内 若き科学者へ任命され

二人は彼の護衛に割り当てられる


不安を抱える科学者と共に一足先にゴブガへ渡り


近くの村で連絡を受けた人員と物資の受け取りを行うべく
彼らが移動を始めた矢先


"まやかし"のように前触れなく それは現れた―








呆然と佇む三人を嘲笑うように

虹色に瞬く黒雲は進路上で濃さを増す





「アレがまわどし雨の雲なのか?なんか、すげぇ…キレイ」


"まやかし雨"ね!てゆうか感心してる場合じゃないって!
昨日の話と違う、しかもこんな予兆もなく現れるなんて」


「落ち着いてくださいゴメス様」





想定外の事態に半ば取り乱しかけた若き科学者だったが





「私(わたくし)どもに出来る事も、時間も限られてます
なればこそ慎重なご決断を





淡々と告げた道化の言葉に冷静さを取り戻し

一呼吸おいてから、沈痛な面持ちで決断を下す


「…そうだね、村へ急ごう」





雨雲の範囲が不確定な現状では 港町へ戻る前に
自分達も雨の被害に遭う可能性が高く


合流予定のチームや外にいる村人らの安全も考慮するならば


三人には、村へ向かう選択肢以外残されていない







辿り着いた村はそこそこの規模がある以外に特筆すべき所など
何もないぐらいに普通の村であり


住人らしき人が長閑に畑や道端で作業をしている





「おや、息切らせてどうしたね?旅の方」


「皆さん!
急いで近くの民家や教会などに避難してください!」



訝し気にゴメスへ視線を向ける村人達は
迫りくる危機に対しあまりにも無防備な有様で





「まやかし雨が間もなく降るのです」





言いつつ道化が空を差し


天を仰いで、ようやく村を覆いつつある雨雲に気づく





しかし急いで避難を開始した者はほんの数人





「確かに雨雲が近付いちゃいるけどさぁ、避難とかオーゲサっしょ」


ヤバい雨だって聞いてるけど薬もあるって話だし
単に村を通り過ぎて海に行くのかもよ?」





元々雨が少ない地域であり、まやかし雨が降った記録や
周辺での目撃情報が無かった事もあってか


雨に対して楽観的な味方をする者





「まやかし雨に降られたらウチの畑はどうなる?!」





逆に、下手に情報を知っているせいか


雨が降る前に管理している畑へ布をかけたり
小屋の戸締りや家畜の避難を優先する者などが多く





悠長なことをしている場合じゃありませんよ!
ああもう、これだから大陸端の田舎は…!」


「言ってるバビャイじゃねーぞオッさん!
おい早くヒナンしろっ!!危ねーんだってば!!」






辺りを警告して回っていた三人を


フィーグの紋章がついたマントローブを纏う
白衣の二人組が見つけて駆け寄る





「ゴメス君、間もなく例の雨が降るぞ
我々も退避しよう」


「よ、予備の防護服とかは」


生憎と持ち合わせていない
持参した分も宿に置いたままとなっている」





村の上空をすっかりと暗雲が覆い尽くし


三人が村唯一の宿へなだれ込み、扉を閉めた直後





湿った風が吹き 虹色のきらめきをたたえた滴が落ちる











〜五十幕 涙雨〜











間を置かず数を増やす滴によって 窓から見える景色は
金剛石で彩ったように幻想的でありながら





…ゴメス達の忠告を無視し


或いは自らの資産を護るため外に居続けた者達へ降り注ぎ





「何だよただの雨じゃ…

痛っ!な、何かピリピリし…!?」





虹色の滴に濡れた皮膚を 乾いた土へ水が染みこむように
じわじわと黒く爛れさせてゆき


雨を受けた彼らが身体へ走る痛みへ
悲鳴を上げながら苦悶の表情で倒れて悶え





いだいぃぃい!誰かぁぁ…誰か、助けて…!」


安全な室内に立てこもる者達へ助けを求め





「開けろ!中へ入れろぉおお!!」


口や目の端から血を流しながら、息を荒げて
群がった扉をあらん限りの力で叩くその有様は





聖書にて語られ畏れられる"亡者の国"を
地で行くようなおぞましい光景でもあった








「絶対に開けるな!」


扉を塞ぐんだ!雨が入って来たらおしまいだぞ!」





宿へ退避した村人達は閂をかけ、必死の面持ちで
手当たり次第の家具やモノを積み上げて入口を封鎖していく





それを手伝わされながら グラウンディはゴメスへ訊ねる





「外にいるヤツ苦しんべるぞ
…雨かがかったら助けられねぇのか?」


「多少の濃度なら洗い落として清潔な布で拭えば
二次被害は防げるけれど あまり雨を浴び過ぎたモノに
触れてしまえば、そこから病が感染するから…」





更には まやかし雨での被害が少なかったことも災いし

物資受け渡しに派遣された二人は特効薬を常備しておらず





辛うじて民家や建物内に避難した人々には


人体のみならず、周囲の木々や土を不自然な虹色を貼りつけ
じわじわと汚染していく雨が過ぎるまで


ただじっと身を潜める事だけしか出来る事は無い







強まる雨音に、段々と外にいた者達は声すらも喰われ


やがて高熱と腐食されゆく身の痛みに負けて動かなくなる





うそだろ…明日、一緒に町まで飲みに行こうって
約束したじゃねぇか…」





避難できた村人達は補強のため一階の窓へ板を打ち付ける際
聞こえてしまった犠牲者の 聞き覚えのある声に心を痛め





「ねぇお母さんペティがいないの」


「大丈夫よ あの子頭がいいから
きっとどこかに隠れて雨をやり過ごしているわ」


「パン屋の旦那さん、避難できたかしら…」





室内にいない者達を案じて空気は重みを増していく





自然に引き起こされた災害だと理解していても





アンタらディアの人間だろ!どうしてもっと早く
雨を知らせてくれなかったんだ!!」


「申し訳ありません、こちらも現地へ到着する寸前で
雨の到来に気が付いたモノでして…!」





むしろ理解しているからこそ、白衣を纏う三名へ
行き場のない憤りをぶつける村人もいて


段々と 室内での会話は少なくなっていく







自然と距離を取った五人は村人達をなるべく刺激しないよう
声を潜めて本来の目的を相談し始める





「物資はどれぐらいの量がありますか?」


「一抱え程の大きさで木製の箱に「木製!?
雨害による腐食の危険性は重々承知のハズだろう!」


「仕方なかろう、こちらとしても急な連絡だった
…無論 物品は全て布で包み厳重に保護してある」


「それでも確実とは言えないよ、この雨だって
想定外だったんだ…予期せぬ事態があるかもしれない」


「慎重も過ぎれば身の毒かと…中身は、機械の部品数点と
実験用の試薬でお間違いございませんか?」


カフィルの問いに派遣された二人の内の一人が頷き

ちらりと村人達の方へ目をやる





「それと念の為の特効薬があるが…一人分しかない」





声量を落とした、雨にかき消されるほどの呟きだったが


直後 誰かが息を飲む音が村人達の方から聞こえた





「クスリ少ねぇんならたんくさん持ってきてもらおうぜ?

雨が止んだら村のヤツがちゅっとでも助かるかもしれねぇし」





科学者達は 揃って少女の提案に難色を示す





「こちらは余所者な上、感情的な者の多い現状では
申し出ても断られる可能性が高い」


「それにあの特効薬は効き目が限られてる
…アレだけ雨を浴びてしまったら、十分な効果は期待できない」





板を打ち付けた窓の外にいるだろう犠牲者は
既に全身が黒く変色している可能性が 極めて高く


彼らの為に出来る事と言えば


汚染の拡大を防ぐために遺体及び雨を浴びたモノを
真水で洗い清め、罹患したモノを隔離し

然るべき処置を行う事のみだと告げられ


少女は 何も言えずに口を閉ざす







……沈黙した空間を埋めるように雨音が大きさを増す





雨に比例して増え続ける罪悪感や不安、恐怖に耐え
室内の者達はじっと雨止みを待っていた







けれども虹色の災害は


そんな人々の抵抗を嘲笑うように新たな牙を剥き始める







「っ冷た!…ウソだろ、室内なのに!





雨害どころか目撃情報すらなかった辺境である事が災いし


集中した豪雨にさらされ続けた屋根や壁面は
じわじわと侵食され…室内まで雨の侵入を許してゆく





なし崩しに増え始める雨漏りに被害が増え


応急処置に奔走するも、原因となる雨とその腐食は
ゆっくりと家屋や建物ごと中の人間を蝕んでゆく






悲鳴が 再び村の中で上がり始めた







「やっぱり防護服やイア並みの建造物でないと
完全に防げないんだ…!」



「マズいぞ、例の物資はこの上の階にあるんだ
雨に濡れる前に急いで確保しないと」





階段の中ほどにいたゴメスがすかさず
彼ら二人の泊まっていた部屋へと移動しようとした矢先





「痛い!痛いよ!!」


運悪く左目へ虹色の滴を受けてしまった少年が
その場で苦痛を訴え、悶え転がる





「しまった感染者が…!」


「いや 数滴ならば発症の確率は低い、誰か急いで
その子を地下室か雨漏りの少ない個室へ隔離して洗浄を」


「それでもアンタら人間か!」





たまりかねたとばかりに数人の村の男がディアの面々へと
詰め寄って、一人が発言者の白衣を乱暴につかむ





「村の連中や子供が苦しんでるってのに何て態度だ!」


こちらだって最善を尽くしての結果です!
被害の拡大を防がねばここにいる全員が死にかねない!!」


「だからって子供を見殺しにする気か!
いいから薬をよこせ!!」






バキリ、と乾いた音が窓の方から鳴る





反射的に全員が視線を向けた先には、破壊されゆく窓と
ドアへ食い込んでゆく斧





そして隙間から侵入しようとする

まだらに黒い肌の人々が見えた





「痛い…痛い、痛ぃぃ!


「せめて、妻だけでも中へ…他の家はもう、ダメだ…!」





扉や窓が破壊され、なだれ込む人々のもたらした
二次被害によって 悲鳴と共に村人に病が広がり


掴みかかられていた為 逃げ遅れた科学者の一人も
また二次災害のあおりを受けて床へと転がる





「ひっ…!」





恐怖から本能的に身を竦ませるゴメスへ

身に付けていたローブを差し出しカフィルは言う





「気休めですがこれを、ここは私(わたくし)達で食い止めます
お二方は今の内に品物を確保して退避を」



「…っ、そうさせてもらうよ」





ローブを受け取り ゴメスともう一人の科学者は
客室がある方へと駆けだしてゆく







「やめろよ!それ以上こここ壊したらダメなっだよ!

ああもうお前ら神のヒャナシを聞けぇぇぇ!!






少女の叫びは雨音と村人達の怨嗟に塗れた呻きにかき消され
ロクに届く事は無い





「痛いぃ…いだ、いだいぃ!」


「くすり、ディアの、薬をぉぉ





侵入し増え行く被害者に伴い

宿の内部に滴る虹色の滴が量を増してゆき


どちらを先に対処すべきかで軽くパニックを起こしかけている
グラウンディを庇うように カフィルが前へ出る





普段の奇抜な道化衣装の上から金属製の軽装鎧を身に付けた
その装いは滑稽そのもの





「俺の鎧を天幕にして防げ!」


だが、彼のその一言が 当人の装いに必然性をもたらした





みなまで問わず少女はその鎧へ手の平を振れて祝詞を唱える





「"すべての意思はここにあり(レェサニサ)!"」





その言葉と当人の意思に従い、金属鎧は彼から剥がれ


ぶわりと広がると半球状の傘と化して二人の頭上を雨から護る





「気休めが役に立ったが、備えを早々に失ったのは痛いな」





未知数の雨害相手に 即席の傘がどれだけ耐えられるか
懸念している道化を他所に


少女は 床伝いに無事な部分を材料とした半球のカゴ
迫る村人達へと生み出し続けるが





彼らの抵抗と雨による腐食を受けて


作りだす端から、無残に壊されてゆく





「…作るなら、俺達の周囲にするべきだ」


「っうるせえ!もしかしたら 雨がやんがら
村のヤツらだって助かるかもしれらいだろ!」






声だけでなく その小さな身体も震えていたが
少女は祝詞を唱えるのをやめなかった





しかし当人の願いも不器用な努力もむなしく


雨は轟音を伴ってその場に染み入り村を 人を壊して行った









…半日ほどの時をかけ


ようやく、雨足が遠のいて陽の光が差しこんだ村は
燦々たる有様と化していた





土地も建物も人も ほぼ例外なく黒と虹色に染まり


辛うじて息がある者もただただ呻くだけしか出来ない







そんな中、運よく地下室などの雨の被害を防げる場所に
避難できた幸運な村人達は


かつて唯一の宿があった廃屋で


崩れかけた廃材に覆われた軽度や重篤の村人数名と


錆びて所々に穴の開いた金属傘の下にいた
道化と少女の姿を発見した





おいアンタら!大丈夫…っ!」





駆け寄った村人は、傘で防ぎきれなかった雨を受け

まだらに爛れた道化の鈍色と半透明の両腕を目にして固まる





「見苦しいモノをお見せしてしまいました」


申し訳なさそうに一礼をし、彼はほぼ無傷の少女へ問う





立てるか?行くぞ」


「どこにだびょ…それよりウデ」


「後にしろ、避難した二人と物資の確認が先だ」





強く言い切られた事と

軽度とはいえ雨による発病を防ぐには
薬が必要である事を思い出し 少女は黙って頷く





村人達を背に 二人は瓦礫と虹色の滴を避けながら
雨の腐食で所々を抉られた階段を上がり


頭上と足元に注意を払いながら


いくつもの穴から光が差し込む二階の部屋を順に覗いて







一番奥の部屋で、倒れた備え付けの家具に
頭を潰された白衣の科学者と


ローブと防護用らしい布でぐるぐる巻きになった何か…

おそらくは荷物を抱え虫の息で横たわっている
団子鼻の青年を見つけた





身体のほぼ半分が黒く爛れ、いくつかの引っ掻き傷が
生々しく残る彼の側には


どす黒い猫の死体が一つ転がっている





オッジャン!しっかりしりょ今オレ治して「ダメだ」





苦しげな息の合間に ゴメスは呟く





「雨に…触れた者、に、触ったら…君、までこうなる
わかるんだ、僕は もう…」





物が散乱した室内の惨状と合わせて考えれば


雨に侵され発病した猫と、降り注ぐ雨による諸々の被害から
最優先で荷物を護ろうとした
が故に


彼が助かる術はもうないのだと 二人は気づいてしまった





「…私(わたくし)どもに出来る事は?」





ゴメスが最期の力を振り絞り 抱えていた荷物を持ち上げる





「これを…ルシロ、さんに…」


「承りました」


「絶対これをルシロに届けるきゃらな」





しっかりと布越しに、雨の滴や自身の手に触れぬようにして
荷物を受け取った二人へ


ゴメスは弱々しくも口角を持ち上げて微笑み





「頼む、よ 一日でも早く…この雨を、病を…止めてくれ


その言葉を最後に血を吐き ぐったりと力尽きた







無事だった荷物袋から水筒を取り出し
腕を洗うカフィルへグラウンディがおそるおそる訊ねる





「なあ…薬さ お前と
それからあと、もう一人むらいは使えねぇかな」


「試作の、それも半端な分量で効力が…」





言いさして、彼は少しだけ言葉を変えた


「…村人達次第だな」









辛うじて生き残った村長へ荷物の件と薬の事を
含めた今後の予定について話したところ


思う所こそあれど、この一件が不可抗力でしかない事態であり


式刻法術を持つ少女が 曲がりなりにも自分達を
雨から庇おうとしていたのを村人達も理解していたのか





「分かった、ならば子供を助けてやってくれ」





左目に雨を受けた子供と分け合う形で
道化が科学者達の残した薬を使うことが認められ


残された者達と共に遺体や汚染された建物などの洗浄

まだ息のある被害者の隔離を手伝った道化と少女は





「申し訳ありませんが、丈夫な外套を頂けますか?」


「あ、ああ…分かったよ」





比較的無事な家屋のタンスから提供されたローブをまとい


残された村人達の沈黙を背負って、村を後にした













…重苦しい灰色と黒だけに彩られた暗雲を背に
スエンサへと戻って来た二人を





「良く戻って来てくれた、報告書は拝見させてもらったよ
…ゴメスの件については残念だったとしか言いようがない」


沈痛な面持ちをしたドメスがルシロと共に出迎えた





「面目次第もございません」


君達では到底どうしようも出来ない事故だったのだ

ゴメスの遺体も 後ほど連絡を受けたマノレーグの人員が
村に向かい、引き取る手筈になっているから安心したまえ」





受け取った木箱を、しっかりと抱えながら





「気に病む必要はない、長旅で疲れただろう
今日の所は少し休んでおくと」





心情を慮って二人を労うドメスの言葉を遮るように


険しい顔つきをしたルシロがグラウンディへと近づき


小気味のいい破裂音を響かせて頬を張り飛ばし
胸倉をつかんで怒声を放つ






「やはり オレ様 行くべきだった…

お前 人 救えない どこが 神!







あまりウマが合う相手では無くても


チームとして、同じ期間に所属する仲間として
共に働いた同士の死は覚悟していてもショックで


論理的ではないと彼女も頭ではわかっていても

後悔からか、相手を責めずにはいられない







「式刻法術 神の力 やはり 使えない!
神 言うなら お前 人 生き返らせ「オレだっで!」






けれども…胸の裡にわだかまる憤りは





「オレだってっ死んだヤツぐらり生び返らせてぇよ!
死にそうなヤツ救ってだりでぇよ!!」



涙声で叫び返す少女とて同じだった





古来に多く存在した最高峰の治癒の術式でも、病の平癒は
当人の体力と抵抗力に依存していた


故に少女が自らの命を差し出して式刻法術を行使しても


重度の症状を 打ち消すコトは出来ない





「でもできねんだよ!神なおに、生きかえぜねぇ!
悔しくがいとでも思ってんのか!!



「だったら 何で 神 名乗る?





問われて、ぐっと彼女は唇を噛みしめ涙をこらえる





「出来ないコトがあってもオレら神だ
神として…生き続けながいけないんだ





そんなグラウンディの様子に気圧され
それでも何かを言おうとルシロが口を開くが


どうしてか言葉が出ず 結局口を閉ざす







「あまり助手を責めないでやってくれませんか?」





黙って成り行きを見守っていたカフィルが
そこでようやく、二人の間へ割り込んで言葉を紡ぐ





「ドメス様の言う通り 雨の襲来は著しい事故でした

熟知して無いとはいえ、助手は式刻法術で少しでも
村の方々を助けようと奮闘してもいました」





色違いの瞳が 互いに交差し合う





「道具や機械も万能ではありません、あの場にいたのが
アナタでも望まぬ結果になってやもしれません」


「…確かに 一理ある」


「起きた事を悔いるのは大事です、しかしそれを振り切り
糧として前へ進まねば真の贖罪とはなりますまい」







しばらくの沈黙を置いて


わだかまる怒りを飲み込んで、ルシロが口を開く





「悪かった 言い過ぎた」





痛みを噛みしめるように 叩かれた頬へと手を当てて





「構わねーよ、オレだって失敗しまくって生きてんだだ
次は絶対助けてみせる





青い瞳に決意を満たしてグラウンディは答えるが





「…とにかく ルシロ主任も君達も今は休息が必要だ」





波乱を含んだ不穏な気配は、いまだ彼らに
じっとりとまとわりついていた








――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:雨での被害やらゴメス死亡やら、本当筆が進まず
苦しみました…ここまで長引かせるつもりなかったのに


ゴメス:僕の扱い軽くありません?


狐狗狸:むしろ大役です 土壇場で自分の身よりも
部品の方を護ったワケですから


ドメス:…墓にはきちんと酒を備えに行くからな


ゴメス:いや死にたくなかったですよ僕だって!
まだ女の子とロクにお付き合いした事も無かったのにぃ!


グラウ:つか、おっしゃん何でここで会話できていんだ?


カフィル:更新時期がちょうど"生者""死者"の境が
曖昧になる時期だから、という著しく適当な理由かららしい


狐狗狸:いいんだよ どこの国でもそういう現象やら
時期があるんだし異世界とかにもあるでしょ?それぐらい


カフィル:面倒が増えるから次回からやるな


狐狗狸:わ、分かったから真顔で迫るの止めて




今月か来月辺りには大陸に渡りたい、いや渡る!(予定)


次回 街に見舞う嵐に逆らい海を渡るべく彼らは…!