さぁさ曇天 さぁ曇天!


悪魔の塔を後にし、冒険作家の足取りを追って


西の大陸ゴブガへ渡るべく
シムー国城下にして港町スエンサへ到着した道化と少女


技術大国の街中を歩む二人は


ゴブガを襲う雨に立ち向かうべく

隣国から王国直属科学機関"ディア"に所属する
科学者達とそれぞれの邂逅を果たす


互いの思惑や予期せぬトラブルの果てに


不本意ながらも彼らは 道化と少女を雇い入れ―








見ようによって虹色に輝いて見えるその雨は


土地や草木へ降り注げば、恵みを与える所か
精気を奪い無残に枯れ果てさせ


人へ降り注げば僅かな量でも皮膚がただれ


多く浴びてしまえば高熱に浮かされ運が良くても数日

悪ければ時を待たずして血を吐き、痛みにのたうち回った挙句
身体が変色しながら崩れて死を迎える





まさに災いを具現化したような奇妙な雨は


意外にも、存在自体はゴブガの地に古くからあった





「あっちじゃ風土病って扱いだったのには驚いたけどねー」


「とはいえ頻度は稀、しかもその情報を知っていたのは
ネイツの長老による口伝と古文書の僅かな文だけ

…おかげで調査に無駄な時間がかかった」





曰く、数少ない情報源と雨の特徴や土地などの被害
病死者の症状を慎重かつ念入りに照らし合わせ


極めて同一に近い現象と認められたのだと科学者は言う





「差し支えなければ古文書の内容について
詳しく教えていただけますか?」





道化の問いに科学者の一人は尖り眉毛を更に吊り上げ





「えーっと確か"月消える夜、墓の木の枝に炎が灯り
虹の雨が死の病を運ぶ"
だったかな?」


団子鼻の部下があっさりと貴重な情報を口にしたコトで
余計に渋い表情を浮かべる





「月が消える夜に炎が…中々に興味深いですね」


くだらん!自然発火か何らかの光源が枝の辺りで
見えただけだろう」


「確かに、ただ新月と前後して例の雨が発生する点は
古文書の文言と合致してるんですよね」


「…とにかく!君達は情報提供者兼護衛として
イアに正式帰還するまでご同行願うとするよ」





科学者の紹介により、門番に怪訝な顔をされながらも
城門を潜り抜けた二人が見たのは





荘厳な歴史を感じさせる城の内側から
けたたましく響く叫び声と怒号と


もうもうと立ち込めている白い濃霧だった





「なんだあれっ!きゃきゅっか火事か!?」


「煤の臭いはない…どころか逆に著しく清々しい香りだ
それに火の手も見られないようだが」





戸惑う少女とはうってかわって、科学者二名は
青い顔をしながらも原因に見当がついていたようで


「間違いない…あのバカ女だ!





現場となった中庭へと駆け付けると





お客人!城内に奇妙な薬品を散布されては困ります!」


「安心しろ これ 水 噴き出しただけ
時間 経てば 消える!」


そういう問題ではない!勝手に城内へ霧を作るなど
前代未聞の振る舞いですぞ!!」






そこには城の庭師や衛兵に囲まれて怒鳴られながらも


もうもうと香草の匂い漂う白煙を吐き出す
滑車が付いた腰丈ほどの箱の天辺へ

革製のグローブを嵌めた手を置く
仮面に似たゴーグルを首から下げた白衣の女がいた





四人の眼前にいる茶髪かつ褐色と緑の瞳を持つ彼女こそ


まやかし雨対策に派遣された者達の責任者であり


発明の才に秀でた、直属科学機関"ディア"最年少科学者
ルシロ=マルラックその人である











〜四十九幕 俄雨〜











「ウチのルシロがご迷惑をおかけして誠に申し訳ない」





集まった者達へドメスが頭を下げて謝罪をしている合間
二人を連れたゴメスが小さく耳打ちする





「ルシロさーん、流石にコレはマズいですよ」


「空気 悪い スラム 試す 邪魔された
仕方なく 城で 試した」


「城内での揉め事これで通算十二度目ですよ?
これ以上やらかしたら出禁食らいますってマジで」


「科学に 失敗 つきもの
それより 何故 そいつ いる?」





視線を向けられカフィルが恭しく一礼をするが





「私(わたくし)はアナタ方の研究に対し
文献の提供と護衛の形で協力させていただきたく」


護衛?いらん 帰れ」





すげなく断り、彼らに背を向けたルシロは
箱を押して歩き出す





あぁちょっと!どこへ行くんですか!!」


「まだ 改良 余地ある お前 他の奴と 資料 探せ」


おいボサボサ!お前神ワギャマナがすぎるぞ何様だ!
ちょっこ痛いめ見やがれ!!」






普段の自分を棚に上げ、相手の高圧的な態度にキレた
グラウンディが彼女を凝らしめようと


祝詞を唱えて路面へと手をつくよりも早く


振り返ったルシロはためらいなく左脚に携えていた
奇妙な銃を引き抜いて 引き金を絞った





拳大程の銃口から勢いよく噴き出した赤い霧のようなものが
顔面へと直撃した、その直後





にぎゃがっ!?な、何だこれ辛っ神辛ららっ痛っ!?」


グラウンディは顔を激しく掻き毟り その場に転げまわる





「どうだ!オレ様 特製 ペッパー弾!」





勝ち誇る同僚と悶える少女とを遠目に見ながら
呆れたように団子鼻が呟く


「…あんな感じで自分が作ったモンなーんでも
試すもんだから、前雇ってた傭兵も逃げちゃってね」


「なるほど」





彼らは城の兵を何人か護衛として拝借する事を
大臣へ打診してもいたようだが


毎年この時期は南側の住人による密航や密輸が盛んであり


昨今の図書館騒動の一件もあって揉め事も増え
対応に追われて手が回らない、と返されたのだとか





「なんでまぁ君らみたいのでもいないよりマシかなーと
思ったんじゃない?ドメスさんも」


「…ご期待に添えられるよう尽力いたします」





率直ながらも辛辣な発言に

カフィルはややワザとらしく肩を竦めて苦笑した











…こんな形で雇われた二人ではあったものの





「雇用の取引としてこちらを進呈いたします、どうぞお納めを」


道化が所有していた指定図書"シムー寄贈 マノレーグ発明
図案年間〜スコール歴1950年代〜"
を手渡した途端





「人手 使わない もったいない
せいぜい オレ様 邪魔するなよ」


発明家は頑なな態度を若干軟化させて二人を許容し





「お前神ムカちゅきけど、その銃はスゲーな」


そう!これ 一つで 足止め 捕獲 思うまま!
いざという時 攻撃 出来る 自慢の噴射銃!!」


「ほー…だったらオレの神力でそこ性能
確かめてやらぁ!ついっでに今度こそ一発なぐーる!


「なら かかってこい 科学 無敵 教えてやる!」





恨み半分、物珍しい発明品についての興味半分で


彼女につっかかる(そしてその都度仲裁される)内
少女は発明家との距離を縮め





「傭兵の方に手伝ってもらえるなんて助かります

ルシロ主任だけでなく、ドメスさんやゴメスさんも
手が塞がっちゃうこと多くって」


「こちらこそ、ディアの皆様への助力が出来る
のみならず書架の閲覧まで特別に許可して頂けるとは
至極光栄の至りでございます」





必要資料の整頓や材料、発注された備品の受け取りや
地元工場への依頼などなどの雑務をこなす傍ら


書庫にある伝承の類へ目を通し


"芸の為の知識"を蓄える道化師へ科学者達だけでなく
城内の者達も徐々に信頼を覚え始めていた









「オッサン何してぷっだ?その土何か変だぞ?」


僕はまだ世間的に見て若者の部類だよ!てゆうか
コレは例の雨害を受けた土壌のサンプルだから触らないで!」


「こんな神ミョーな色した土とっひょくのか、何に使うんだ?」





机に置かれたガラス製の平べったい円形の器に盛られている
光彩を放つ黒土を、グラウンディはしげしげと見つめる







姉妹都市提携しているだけあって


城にはディアの一員が使用できる研究室や発明品を置いておく
専用の倉庫などが用意されており


ルシロと手伝いの数人は主に倉庫で寝泊まりしながら
機械づくりに精を出し


研究室はもっぱらドメスとゴメスの二人が使用している





「色々だよ、密閉して持ち帰って成分調査したり
中和剤を試したり…ルシロさんが予定通り大人しく
発明にだけ集中してれば僕の作業も捗るんだけどねぇ」





皮肉をこぼしながらも意味不明な器具を次々と手に取り
作業をする様子を、少女は興味深そうに見つめている





「著しく生き生きしているが…楽しいか?」


神楽しいな!意味は全然わらなないけど
フャスミラセの勉強とかよりキカイのが断然面白え!」





どうやら科学者達の作業はグラウンディの琴線に触れたらしく


暇さえあれば倉庫か研究室でじっと作業を眺めている事も多い





面倒を見る手間が減る反面、体よく式刻法術の勉強から
逃げている現状をカフィルは正しく認識しているが





興味津々な青い瞳に見つめられ
若干年若き同僚に不満を抱いていた科学者二人は


道化師の内心など知らず満更でもない様子で少女に構う





「ゴメスは私の部下でね、本来なら本国で薬開発を
担当するチームで働いているのだよ」


「なるほど、新たな試みのため編成されたチームと
マノレーグ国の方々との連携のため派遣されたのですね?」


「賢い君の言う通り 人手不足のせいで僕は定期的に
チーム間の物資運搬と情報伝達で大陸を行き来してるのさ」





雨害の原因究明と根絶を目指して動く複数のチームの内
現在シムー国へ派遣されたチームが担うのは


雨雲や空気へ干渉を試み、雨そのものを止める機械の発明





その設計と製作のほとんどはルシロが担っているが


出力調整の計算や完成した際の大型化図案の作成


材料や資料の調達に必要な経費の管理などはドメスが
外交やチーム内の指示と平行して行っている





「キカイで雨をちょ止めれんのか?!」


「驚いたかね?かつて天候操作は式刻法術の領分だったが
躍進する科学はいずれ全てを可能にするのだ!」


「ファスミャラセでも雨止めれんのかっ…想像できねー
にしてもスゲーな科学、神スゲー」


だが科学は一日にしてならず!我々とて休息が必要なのだ
差し当たって気分転換に城下町での情報収集に勤しむとしよう」


尖り眉を上下させ自信たっぷりに言い切ると


机の器材を整理してドメスは白衣を翻し部屋を出ていく





あぁズルいドメスさん!僕だってシヒカちゃんの
笑顔とおっぱいの為に大陸往復してるのにぃぃぃ…!」





あわててゴメスも机を片づけ後を追うが


二人の顔は、共通して鼻の下がだらしなく伸びていた





「あのオサァンども何で神やらしいカオしてんだ?」


「面倒だから今は知るな」


道化師君!君には我々の情報収集の補佐及び必要資材
調達の任務を与えよう、助手君は城内で待っていたまえ!」






…男二人が南側の比較的安全な通りにある
娼館まがいの酒場の常連だと知っているのは


同じディアのチームと、使命された道化師だけである







ともあれ上記のような理由も含めた護衛などで
彼らに頼まれ城下町へ出る機会は案外多く





道化や少女の求める情報もディアの知名度のおかげか
比較的スムーズに集まり





「やったらよくしゃべる人でねぇ、ええよく覚えてるよ
ちょうどその子みたいな髪の色の弟さん連れててねぇ」


弟?!コジじじゃねーのか?」


「ああいや、弟みたいな助手さんだって言ってたねぇ」





冒険作家ジニア=ガレーシが草色の髪の少年を連れ
マノレーグとネイツを見て回り


アロク大陸一とも言われるライアル山脈を越えた広大な雪原で
神来光を見るのだ と話し合っていた事を
想定していたより すんなりと入手した





「シンライキョ、シンライコウてなんだ?」


「雲の中の氷晶、つまり細かい氷に太陽光が反射して
出来た光が柱のように見える現象だけど条件が重ならないと
観測出来ないから "神が来る前兆だ"って言われてるね」





一方で、南側のスラム街に関しては
快く思わない意見も多かったが


科学者達からも警戒対象となっているルーカス一家の
評判自体は以外にも肯定的だった





「取り仕切ってるボスが人間出来てるって言うの?
おかげでここいらも昼間は安全なのは事実かな」


「こっちが下手な干渉しなきゃ堅気は見逃してくれるねぇ」


「さすがに夜はおっかないけど、ロクでもないのは
ほとんど見かけなくなったかな?」





とはいえ恐ろしい存在である事は北側でも南側でも変わらず


どちらの住人も深く関わるのは避けているらしい





「あの科学者のお嬢ちゃん、大丈夫だったかい?」


「ええ穏便に済ませましたから」





統括者の意向からなのか、はたまたルシロ達が
国賓である事を考慮しているからか


以前のような柄の悪い連中が因縁を付けて来る事もなく

護衛で街を歩いても彼ら絡みの問題は起きなかった





「散布 出力 足りない 今のまま 雲 届かない」


「じゃあ火力を足してみようぜ?そどれかオレの神力で」


式刻法術 など 頼らん!だが 前者の案 面白い 試す!」


「「お前達に足りんのはまず自制心だ」」





城内中庭での実験でボヤ騒ぎや未遂も含めた
数件の爆発騒ぎを起こしたコトを除いて


道化と少女が護衛らしい活躍を見せる場面も訪れず
比較的穏やかに日々は過ぎてゆく







科学者達の発明も順調に進み


雨に干渉する機械の完成まで、あと一歩となっていた





「どうも難航しているご様子ですね」


「お前 持ってきた 本 ある程度 参考 なった
しかし まだ 電力 足りない…」





そのあと一歩となる試作機の、出力の問題に
ルシロはボサボサの茶髪を掻きながら唸る


経過報告を兼ねた息抜きに集った研究室にて

同僚の二人も 同じように難しい顔をしていた





「やっぱり電池形式も組み込んだのが無茶だったんですよ
アウク鉱石式一つにするべきですって」


式刻法術 頼り切り 出来るか!出力切れ 想定 当然」


とゴメスの意見を一蹴するも





「君の意見ももっともだが、出力方式にこだわった結果
振り分け構造によって出力不足が起きているのだ」





ドメスからも理論的な反対意見が出た事により

彼女は出力の構造見直しへ思考を切り替える





「…なら せめて 緊急発電 残す」


「そうだな、出力切れの予備として手回し式は残して
現時点ではアウク鉱石式ひとつに切り替えるべきだ」


「不本意 だが 仕方ない 電池式 切り捨てる」


「あっさり諦めだんだな、てかデンチってなんだ?」


「切り替えの速さも科学者に必よ「電池ってのは最近出来た
電力を蓄えたアイテムでね、鉱石に内蔵した術式エネルギーや
自然の力による大規模発電を使わず出来る新しい「ゴメスぅ!」





滑稽なやり取りを挟みつつも、咳払いをして彼は
尖った眉を上下に動かし二人を呼んだ理由を口にする





「失礼した、とにかく君達の次の仕事は彼の護衛
必要物資をゴブガで受け取り 速やかにここへ帰還したまえ」





道化師はある程度予想していた為、特に驚かず頷く


少女はお使いであっても別の土地を見れるから賛成するが





「えぇ!?本国のチームに部品発注の連絡をしてから
一週間と経ってないじゃないですか!」



「こうしてる間 雨 降る確率 ある!病の患者
次々 死ぬ!待てない!オレ様も 行く!!


残る二人は 彼の言葉を承服しかねて反論する





だがその反応も想定内だったのか、最年長の科学者は
慌てた様子もなく彼らへと言い放った





「責任者及びチームとして務めを果たせと所長からも
重々承っただろう?職務を果たしたまえルシロ主任、ゴメス」






未だ納得は行かない様子ではあったものの





「それとも自ら職務放棄し国を離れたと
所長に報告が成されても問題ないと言うつもりかね?」


「わ、わわわ分かりましたよぅ!やります!


「…城 残る 部品 お前達 任せる」





重ねて告げられ、若き科学者二人は仕方なく承諾する


その様子を満足げに眺めて年かさの科学者は
護衛の道化師達へと向き直って言う





「さて君達には早速出発してもらいたい

無論食料等はこちらで用意するが、他に希望するモノが
あるのならば申請次第で許可しよう」





道化師は、一つ頷いてこう返した





「では板金鎧を一つ、鍛冶屋で買いますがよろしいですか?」


「鎧 見て どうする?」


「私(わたくし)どもの旅路は著しく物騒でしたので
気休めながら備えておこうかと」


「ふむ…時間も惜しいが、護衛として不測の事態に
備える点から見ても必要な投資と言えよう」





科学者達が納得し、鎧の代金を受け取って二人が
研究室を出た所で


側にいた少女がこそりと呟く





「…お前ヨロイなくっつも神強いだろ」


「心得があるだけで俺は道化だ、兵士じゃない」









薄く軽量ながらも鍛え上げられた金属で胸部を覆う板金鎧を買い


食料や必需品の準備を整えた彼らは、メントモウ大橋を渡る





「せめてもう数日ほど後にして欲しかったなぁ…」


「今さら神グチってもしょーだなねぇだろゴメスのおっさん」


だってもうすぐ新月だよ?君達だって雨に遭遇して
命を落とす事になったら嫌でしょ、僕だって同じだよ」


「心配しすぎだって!雨なんて早ショウこねーし
来たらオレの神力でバチャイリ防いでやるって!」






平たい胸を叩いて見せる少女の自信も
しかし団子鼻の科学者には全く持って響かないようだ





「そんなんで防げたら苦労しないって、年々雨の被害が
強まってて並の防水や撥水設備じゃ間に合ってないのに…」


「病に対しての特効薬は完成していないのですか?」


「あるにはあるけど数が希少な上に原液を薄めて使う
用法のモノしか今は作れないから、普及しやすいように
別のチームが目下改良中なんだよ」


「なるほど…では面倒になる前に、急ぎましょう」


「うう…せめて防護服の修繕が終わってたらなぁ〜…」







やや過敏に怯えているゴメスの不安とは裏腹に


旅路は順調に進み、何事もなく三人は
今回物資を受け取る橋の近くの港町へとたどり着く





やだな〜まやかし雨なんて、この辺りじゃ一度だって
降ったことないですよ」


「た、確かにこの辺りでの雨害や目撃情報などは
報告されてないようですね…」





町長から渡された資料へ目を通しつつ

朗らかなその発言に嘘がない事を確かめ


指定された宿にて他のチームとの連絡をつつがなく行い


新鮮な魚介と酒を味わい、何事もなく一夜を明かした事で
二人と共に疲れを癒したゴメスは落ち着きを取り戻したらしく





「どうやらここからさほど離れていない距離の村で
僕等の到着を待っていたようです、行きましょう





旅立つ前の陰鬱ぶりが嘘のような 晴れやかな顔で指示を出す





町から村までの距離は徒歩で約1時間半の距離であり


砂利混じりながらも整備された街道を歩く三人の頭上は
青く晴れ渡り、煌々と太陽が輝いていた





「雨なんて降りそうにんにゅーな、やっぱりおっさん
神気にしすぎだったんだよ」


「そうだね この所土壌調査とかで移動が多かったもんだから
ちょっと神経質になってたみたいだ」


「心中お察しいたします」


「ありがとう、ひとまず早いとこ物資受け取って帰ったら
防護服が治るまでしばらくスエンサにいようと思うよ」


「そうやいずーっと言ってるボウゴ服てどんな服なんだ?」


「読んで字の通り、例の雨から身を守る為に作られた
防水・撥水技術の結晶とも言える服だね」





今一つピンと来ていない少女へ、道化師が補足をする





「平たく言えば水を著しく弾く服だ」


「んー何かどきゅ分かんねーけど神スゴい服なのは分かった」


「興味ある?ならスエンサに戻ったら見せてあげるよ

ついでにウチが開発した建築用の防水・撥水塗料や
建材についても色々聞かせてあげよっか?」


「神こみゅじかしくなけりゃ聞いてやるぜ」





などと笑いあいながら、村までの道のりを
のんびりと歩いていた彼らの視界が







前触れもなく薄闇へと包まれてゆく





「え…?」





首を上げ、顔色を一変させた若き科学者に釣られ
彼らもまた天を仰いでソレを目にした





ほとんど雲などなかったはずの空にいくつもの雲が

急速に浮かんでは晴天と日差しを見る間に侵食していく



だが異変はそれだけにはとどまらない





雨雲の色は通常、概ね灰色か黒と相場が決まっている





だが彼らの行く村を覆うように 遠方から迫りくるソレは
宵闇のような黒に星のような虹色の光を瞬かせており


その巨大さと相まって 幻想的な怪物のようにも見えた






湿った空気を孕んだ向かい風が頬を撫でる中
悲鳴じみた若き科学者の声が響く





「マズい!例の雨が降り始める兆候だ!!」








――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:年内最初のCFG、遅くなりましたがようやく進展


グラウ:神遅いのは後で神バッチとしても ルシロのソレ
オレと初めて会った時つけてなかったろ?


ルシロ:ゴーグルと手袋 つける 作業中だけ
普段 邪魔 外す


ドメス:まあ当然だな、装飾品などではなく必要に応じ
溶接や精密な部品の扱いを行う際に装着するモノなのだから


グラウ:必要っつったらさ、おっさん達の街ティヨーさも
やたら神多いけど必要なのか?あれ


ゴメス:ひ、ひひひ必要だよ!決してシヒカちゃん会いたさに
あの店に通い詰めてるってワケじゃ


ドメス:本来なら!グロウス図書館にて国王直々の許可の元
禁止区域内の蔵書の閲覧を予定していたのだが、いやはや
まさかあんな事になるとはね…本当に残念だ


カフィル:ええ、その影響も著しく この城の書庫で一般に向けて
解放されていた閲覧区域さえ極端に制限が課されましたからね


ルシロ:オレ様 図書館 燃やした犯人 許さない
あそこ 色んな科学 知識 保管されてた


ゴメス:ルシロさんもあの図書館、アウク鉱石による式刻法術の
施錠に任せきりは危険だって言ってましたもんね


グラウ:ファシディラセ溜めれて使える石だっけ?
あれっと一体どーいう石なんだよ、神いまいちよく分からねぇ


狐狗狸:あーアウク鉱石の話については短編でやるから
もうちょい待って、てゆうかここでツッコむのやめてまとめきれない




短編や拍手とかで本編の疑問点をちょこちょこ消化予定


次回 災厄を呼ぶ虹の雨が、彼らへ降りかかる…