さぁさ群集、さぁ群集!


流れ着いた孤島からミサン諸島の本島へと
たどり着いた少女と道化


あるきっかけにより漁師につれられた食堂で
村民や村長と交流を深める中

不可思議な"宝"の伝承を語りだす村長


そんな折、村へと襲いかかったのは


黒い雲と見紛うほどの虫の群れだったが―








辺りに残っていた虫も無事に駆除され


村はひとまず平穏を取り戻した


キュアヌと呼ばれた村長の孫娘は
あちこち噛まれてはいたものの、幸い傷自体は浅く


他の者達への被害も無いようだった





「すまなかったキュアヌ…無事でよかった…!


「おじいちゃん、こわかったよ…!」





涙ながらに飛び込んだ幼子を節くれだった腕で
しっかと抱きしめた村長は


立ち上がり、腰にすがる孫の青い髪へ軽く手を置いて

二人の様子を見ていた少女と道化へ向き直る





「孫を助けてくれて、本当に感謝してもしたりない」


「神にかきゃればこれぐらい何てことないぜ
もっとホメたたててもいいんだぜ〜?」


「そうじゃな、ほれキュアヌも礼を言いなさい」


「うん…ありがとうございます」


幼子に礼儀正しく頭を下げられご満悦の少女だったが





「だが気を悪くしないで聞いてくれ…」


沈んだ面持ちで村長が言い放ったセリフが

和みかけていた空気を一瞬で打ち壊す





「アンタらが追い払ったのは
奴らの…虫どもの群れの、ほんの少数に過ぎないんだ」





始めは、他の島に点在する村や大陸などでもよくある
作物への虫害で済んでいた





外来の種らしきあの虫"ケスタ"が発生し始めた頃も


従来種同様に虫除け用の薬草も効き

村の住人達で巣を回り、ある程度の駆除をする程度で
さして大きな被害はなかったのだが





数十年ほど前…諸島の端に位置するナサフィで


ケスタの大発生が起きてから状況は一変した











〜三十六幕 蠢ク群生〜











「始めは木々や作物だけじゃったが、段々と
食い荒らされる範囲が広く大きくなって…

ついには人にまで牙をむき始めた


「む、むしり食われたヤツはいるのか?」


「それはいまだにないが、奴らは噛む力が強く 顎は鋭い
おまけにあの数で来られれば大人とて一たまりもない」





実際 話に出たナサフィをはじめとするいくつかの島では


虫害による森林や田畑だけでなく、傷口を介して
病気の発症や 腕や足が腐る事態が起き


結果、廃村へと追い込まれている





「そしてこの本島でも、奴らが現れる頻度や
数が日増しに増えておる…
国は余計な揉め事を嫌い 見て見ぬふりじゃ」


「おじいちゃん あたしたち虫に食べられちゃうの?


「大丈夫じゃよキュアヌ、今度はじいちゃんが
ちゃんと守ってやるからな?」


しがみつき、不安げに見上げる孫の頭を
村長は優しく撫でる





…しかし 虫達による襲撃の跡


奥まった畑や家屋の壁などに生々しく刻み込まれている





「虫どもとたかきゃうか、村から逃げるかしたらどーだ?」


「あの数が相手ではとてもじゃないが
燃料が足りんし手も回らん

それに、まだ村を棄てる事をためらう住人も多いでな」





かくいうワシもその一人だ、と


呟く彼の どこか倦んだ面持ちがジュケモ村
ひいてはミサン諸島の現状を如実に物語っていた







低く唸り、今まで沈黙を守っていたカフィルが訪ねる





「なるほど、アナタ方の
村や島への愛着は著しいようですね」


「それもあるが やはりあの遺言が気がかりでの…」


「ええ私(わたくし)も著しく興味を抱いております
その奇妙な遺言に護られた 宝石に





瞬間 村長は目をこれでもかというぐらいに見開いた





「アンタ…どうしてそれを!?」


「おや?当て推量でしたが図星だったようで
そこで折り入ってヌカ様に提案があるのですが」





うろたえる幼女と何か問いただしたげな少女を他所に
言葉を進める道化師の、張り付いたような笑みを見て


浮かび上がった不吉な可能性を ヌカ村長は口にする





「旅の人、もしアンタの頼みがワシの想定通りならば
それは聞けん あの宝は先祖代々の遺言で―


「どうでしょう?村を悩ます虫の討伐を成功させた暁に
ひと目その宝石を見せていただくというのは」


「「…は?」」





ずり落ちかけた茶色のくたびれ帽子を直しつつ

村長は、気の抜けた声音で問いかける





「み、見るだけでいいのか?
手に入れて売り払うとかでなく?」


「確かに路銀は乏しいですが、これは純粋な好奇心からの
申し出…決して宝を奪おうというような非道は行いません」


「いやいやいやいややややこっちょ待て!神待て!
あの虫ダイジて正気か!?お前が!?


「面倒だが我慢しろ これも芸のためだ」


「しょこじゃなくてだな」


それ以上口を挟むな、とばかりに手の平で口元を抑え





「思いがけず先程御覧に入れました通り
私(わたくし)は身のこなしに
この助手は式刻法術の技術に覚えがあります」


「ああ、確かにあれは見事だったが…」


「万一大事に至っても、余所者ならば
あまり気にやまれずとも済むかと」


「そ…そこまでは思っておらんが…」





言葉を並べて、進んで厄介事へ関わろうとする相方の姿を


グラウンディは信じられない
言いたげな様子で見つめていた









日が大分傾いた頃

彼の説得と、虫を追い払った功績が実を結び





「まぁ…見るだけってんなら、構わんよ」





ケスタを一掃し、証を何か一つでも持ち帰ったなら


己の同伴の元でなら宝の見物を許可すると村長は約束した







「奴らはまだ早朝から昼間に一度の周期で活動しとる
じゃが、暗くなって奴らの巣へ行くのは危険じゃからな」





それに孫の身も救ってくれたからの、と付け加え





「大した宿もないが泊まっていきなされ」


怯えた様子で成り行きを見守っていた青い髪の幼女へ
言い聞かせるように、村長が告げる





幼女は頷き ぱっと花が咲いたような笑顔で駆け出すと


村の中でも一際しっかりとした造りの
大きな建物へと先導し始めた







「あのねっウチの家はね、ホントは"おんせんやど"なの!
…じゃなかった なんです!」


「温泉あら知ってるぞ!
…て、温泉あんおかよ!?神初耳っ」


「まあ 観光の目玉になればと道楽で始めたんじゃがのぅ」





微妙に濁された村長の言葉を引き継いだのは







「ゴメンねぇーケスタの騒動でかじられたパイプ
直してたから お湯がまだ温まってないのよ」


そりゃねーよ!
オイラ汗と潮と虫の汁でベトベトなんだぜぃ?」


「あれももう長いコト使ってるからガタ来ちゃってて

お金があればエセル先生に頼んで修理してもらうなり
新調してもらうなり出来そうなんだけどねぇ」





建物、もとい村長宅兼"宿屋デュケイ"の入り口で
押し問答をしていた穏やかそうな女性と

少し前に別れた 粗忽な漁師である





「お母さん、漁師のおじさん!お疲れ様」


「キュアヌにお義父さん お帰りなさい…そちらh「おー!
道化師さんらじゃねぇか!
アンタらも風呂浴びに来たのか
初めてここに来たにしては中々お目が高いぜぃ!!」


「びょあくっさ!オッサン神くせぇ近寄んな!!」


    ここの水はすごいぞ〜なんせツムアーフェの間欠泉地帯から
      直接引っ張って沸かしてっから効能は保証済みでぃ!」






屈託のない笑顔で道化の肩を抱く漁師に悪気はない


が、染みついた体臭ともろもろのニオイに少女は
あからさまに鼻をつまんで逃げだし


肩を抱かれた当人ですらやや眉をしかめさせられた





がんげつぜん?うぉんせんでなくてか?」


「あの山のふもとにはいくつも温泉があってねぇ
その温泉が時々地面から吹き出してくるの ほら」





おっとりとした彼女の言葉に答えるように


指し示された山の近くから、かすかな水音とともに
吹き上がる水柱のようなものがちらりと見えた





ふぉあおぉぉすっげ!神すげぇ!
アレこの島の名物にしたらいいんじゃねーの!?」






初めて見る現象にやや興奮を隠せない少女だったが


村長をはじめ、漁師や孫娘 その母親の何とも言えない
薄暗い表情を目の当たりにして自らの失言に気づく





「そのつもりじゃったよ
ケスタの巣が、間欠泉の付近に出来なれけばな」





…飲み水用に確保していた冷水以外のパイプは
お湯を引く前に虫に齧られて 全滅していたのだそうな





まー沸かしてても風呂に変わりはねぇぜぃ!
てことで道化師さんもどうだい?オイラと裸の付き合」


「だからまだお湯が温まってないのよ」


「そもそもおまいはウチの風呂を使いすぎじゃ
も少し遠慮っつーモノを学べ」





能天気に振る舞っていた漁師の言葉通り


この後で入った風呂は、文句なしに気持ちよかった
部屋に戻った少女は道化へそう語っていた











村長一家のもてなしを受けて一泊した翌日…





と呼ぶにはまだ少しばかり暗い 深夜と明け方の合間





かろうじて原型を残す朽ちかけた柵を超えた少女と道化は


森と呼べる木々の連なりから、切り立ったボリグワ山

裾野に広がるツムアーフェ台地へと足を踏み入れていた





「こんなへんぴゅなトコに巣を作るなんて神おかしな虫だな」





じわじわと伝わる熱気のせいか、額に浮かんだ汗を
荷物袋を担いでいない方の手で拭い


グラウンディは言葉を続ける





「てかホントに大丈夫なのか?
巣にいる"女王"をチャオすの優先って作戦で」


"倒し"ておけば、たとえ今回の討伐が失敗しても
次からの面倒が少なくて済む」


カンテラを片手にカフィルは不安定な足場をスイスイと歩く







…宿にいる間ヌカ村長は 彼に

巣があるであろう地帯に印をつけた地図と


       壊滅した島の住人や逃げ延びた者づてに聞いた
    群れを統率する"巨大な女王種"らしき存在の情報を渡していた






『著しく貴重なご意見感謝いたします』


『構わんよ、しかし子供連れじゃしあまり無茶はせんでくれ
危険と思うたら引き返すのも勇気じゃ


『心得ております』







釘を刺されても笑みを崩さず頷く道化の様子を思い出し


昼間に口を挟めず
ついぞ忘れかけていた疑問を、少女は口にする





「なぁカフィルお前、なぐぎゅっ
…なんで、厄介ごのに自分から神つっこんだんだ」





カフィルは少しだけ歩調を緩め、思い切り舌を噛んで
ちょっぴり涙目になったグラウンディへ こう返した





「…忘れたか?あの船で聞いた話を」


「船…あっ!





そこまで言われて、流石に彼女も彼の真意に気づいた





そもそも彼らがミサン諸島へ漂着した原因

…例の"赤い宝石"が関わった船での出来事を





「恐ろしい目にあった水夫、譲り受けた宝の遺言
原因不明の虫の大量発生…

極めつけは 反応がある事だ」


「ちぇことは虫の巣にあの宝石が?」


「…可能性は高いだろうな」





彼の言葉に答えるように はるか遠くで飛沫が上がる





うおぅ!?きゃんけつセンて、夜れも出るんだな」


「一定の規則性はあるだろうが不安定なモノに変わりない
著しい高温を持っているから迂闊に近寄るなよ」


「近やれねーよ」





などと会話を交わしながらも


巣があると思しき地帯へさしかかった所で

ぼんやりとした黒い点が近づいてくるのを道化が指摘した





「どうやら進行方向は間違っていないようだ、行くぞ」


「えぇ…あんら豆粒みてーなのよく見えんなお前」





進むうちにグラウンディの耳にも 虫の羽音が聞こえ始め


辺りを見回すと、数匹の虫が奇妙な塊を中心に
旋回している光景があちこちで目に付く


足元の荒れた台地や
転がる岩石とは明らかに違う形状の塊は


どれもこれもグラウンディの身体ぐらいならば
すっぽりと入りそうなほどの大きさと横幅がある





「ひょっろして、これが"巣"なのか?
こんなもんあの虫どもが作ったのか…へぇ〜」





討伐を目的としていながらも

これには彼女も、少しだけ素直に感心していた





足を止めカンテラを足元へと置いた道化が


少女の担ぐ荷物袋から油袋を取り出しつつ
巣の一つへ目を向ける





「合図をしたら 手筈通り巣を壊せ」





同じように荷物袋から端切れを出して、少女もそれに倣う


「へーへー…相変わらず神ぢゅかい荒いぜ」





周りを警戒していた数匹がカフィルに気づき


顔面めがけ飛来した矢先、袖の炎に焙られたのを契機に

二人のケスタ駆除が始まった







自らの身体を盾に道化が、先に炎で巣を攻撃し


道化に虫の攻撃が集中しているのを見計らい
少女が法術で土台から巣を破壊して大半の虫を潰してゆく


逃れ、あるいは二人へ立ち向かう残りの虫を
丁寧に駆逐する事も忘れない





そんな地道な作業を繰り返し


村で見た黒い煙にも似た一群に何度か襲われながらも
難なく撃退しつつ二人は台地をさまよっていた







「女王がいるしゅっ、巣てどれだろな」





黒い虫だかりと化していた歪な小山
もとい構築途中の巣を砕いて


端切れを術で点火して投げ放ち グラウンディが訪ねる





「羽音や巣の増加から鑑みるに 近いだろうが…」


ダイガジョブか?眉間のシワ神すげぇぞ」


「噴出間近の間欠泉があるようだ、著しい轟音が
断続している…耳に痛いな」





油の残量をこまめに気にしつつも道化は額に手を当てる


羽織っているローブと道化衣装には所々虫食い穴が空き


へばりつく虫の死骸と穴から覗く半透明の皮膚に
刻まれた歯型の多さに


ほぼ無傷の少女は、不安と罪悪感を募らせる





「ここりゃで引き返した方が…
っと山のふもとまで来たのか」





うっすらと見えていたボリグワ山の切り立った山肌が
間近に迫った、と思って立ち止まる少女だが


すぐにそれは間違いだと気づく





「って何だこのガンダイ?やけに神デキョボコして」


目の前にある奇妙な壁面に触れようとした
少女の頭上に 影が差す





見上げた少女の腕を引き、道化が位置を入れ替えた直後


先程とは比べ物にならぬ大群の虫が

彼の上半身を埋め尽くす






「キャフィっ…」





集られながらも道化が動かした手を目にして


とっさに駆け寄りそうになるのを思いとどまり


自分へと向かう残りの虫と、道化を襲う黒い群れを
きっと睨んでグラウンディは端切れを取り出した





「"すべての意思はここにあり(レェサニサ)!"」





投げ放たれた端切れは炎の矢と化し


狙い違わず向かい来る虫と
道化師へまとわりついた虫を焼き焦がす



間を置かずにカフィルがローブを脱ぎ捨て


顔面へ集る虫を払いながら、グラウンディと共に
奇妙な断崖から距離を取り 再び空へと視線を戻す





そこには…

黒い煙の一群を従えた巨大な虫が浮かんでいた





赤子ほどの大きさもある薄黒い巨体を宙に支える
背に生えた同色の羽

鋏のようにも見える顎 がっしりとした外皮


感情など一切籠らぬ二つの複眼が自分達を捉えている


道化と少女は、何故だかそう確信していた





「でっでででゲッゲェ…神デデェ


「流石に想定外だな、引き返すか?」





鈍色とこげ茶の瞳を見返した少女の青い瞳は





「…いや、ぶっちゅヅブす!


生理的な嫌悪と 持ち前の闘志に満ちていた





「だろうな…双方罪はなくとも、殺さねば立ち行かん





いまだ燃え盛るローブの照り返しを受け


ギチギチと足を動かし睥睨する女王に従い
虫の一群が一斉に二人へ突撃する





しかし一瞬早くグラウンディが地面へと手を突き
法術を発動させたおかげで

岩で出来た傘が黒い群れを防ぐ





方向転換し傘に覆われていない空間へと殺到した虫達は


唐突に現れた炎の輪と壁に飲まれて焦げてゆく





あづえああづづづづっ!
神アッチィ!つきゃこれ苦しいぞ」



「我慢しろ」


それらは残る油を円形に撒いて


赫色の鎌を具現化したカフィルが、刃先に燃えるローブ
ひっかけて振り回す事により生み出されたものだ





虫の軍勢はやむなく傘へ取り付き
顎で岩を齧り 穴を開け侵入しようと試みる


だが開けられた端から炎が噴き出し 焼かれている合間に
その空間が埋められてしまっては意味がない





宙へ浮かぶ女王がぐるりと傘の周囲を見回し





…少し離れた地面に

ぽつりと開けられたいくつかの穴を見つけた





密閉された空間でないとはいえ、炎を燃やし続けていては
いずれ傘の内部の酸素が尽きてしまう


それを防ぐための空気穴だと 女王は本能的に気付くと


羽音と顎を鳴らし、巣から呼んだ新たな群れへ
炎の壁への突入と傘の破壊を命じながら


ケスタの中でも毒を持つ変異種を空気穴へ送り込む





数分後…傘の下にある炎の勢いが少しずつ弱まり


岩の傘に開けられた穴は、修復されることなく大きさを増す





間髪入れずに女王は 開いた穴から一斉攻撃を指揮し
黒き者達が傘の内部を容赦なく蹂躙していった





次に聞こえて来たのは 二人の断末魔の悲鳴―







ではなく、自らの巨大な巣から噴き出る炎の轟音だった





硬直するその巨体目がけ一筋の火の矢が飛ぶ


直感でそれを避けた女王の複眼には


「アヅいしキショム悪いし…虫のマネゴトは神こりごりだぜ





盛り上がった巣の側の地面から這いだした少女と


音を立てて崩れてゆく己の牙城を踏み台にして
飛びかかった道化師の


振り下ろした赫色の鎌が映っていた









刈り取られた女王の頭部と胴体が 力を無くして地へ落ちる





ガチガチと顎を鳴らす頭に構わず、まだもがいている体へ
鎌の刃が振り下ろされると


辺りを飛んでいた虫の群れは、散り散りに逃げていった





どーま!まいったか虫野郎っ」


「その台詞はやめておけ、面倒が増える」





言いつつ道化は 転がっている女王の頭を少女へ投げ渡す





「"宝石"は無かったがひとまず目的は果たした
一旦引き揚げるぞ


「だな…うぅ、オレしびゃらく虫みたくねーわ…」





先程 内側から破壊するべく術で地面から侵入した
"巣の中身"は少女に新たなトラウマを植え付けたようで


弱々しく痙攣している頭をなるべく見ないようにしながら


荷物袋から取り出した真新しい革袋へと詰め、口を締める





まさに その直後だった





「ん…なんきゃ聞こえ…えあわがうぃあえ!?


「どうやら、面倒は終わらんようだ」





崩れた巣の巨大な残骸から、遠くに点在する巣の数々から





ひどく耳障りでおぞましい羽音と…顎の刃をかき鳴らす
歯車の軋みにも似た警戒音が


白みだす空を黒く染めながら二人へと迫っていた









――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ケスタのイメージは蝗害とアリです
ただし巣はシロアリのモノを参照にしております


グラウ:調べむにゃよ!絶対シラエんなよっ!?


カフィル:実体験だけに説得力があるな


グラウ:言うなやおあぁわぁぁぁ!
ホントに調べんな!神キョウカイするぞオレみたく!



狐狗狸:…今度から安易に虫ネタとか考えないようにする


カフィル:こっちも著しく後悔しているようだな


キュアヌ:あ、あのーコーヒーいかがですか?
おじいちゃんが皆さんに持っていきなさいって


狐狗狸:おやありがとう、まだ小さいのに偉いね〜


グラウ:キュアヌあんま近じゅいちゃダメだぞ
こいつもあのメガネみたいら変態かもしれねーし


狐狗狸:ちょ!何で私にロリコン疑惑が!?




"ローブごと火だるま"は、討伐作戦の一環として
虫に集られた際に彼が想定していた対処法です


女王を失い暴走した群れの牙を 彼らはどうかわす!?