ここの所 あたしは妙についてない







「最近 ついてないなぁ…」


「なんだよ、元気ねぇな
いつもウザイくらいヤクモ様連呼してるのに」







あたしがため息ついてるのに、
無神経にそう言ってきた







「ウザイくらいって何よー あたしだって
ヤなこと続きだとへこむのよ?」









情報収集もうまくかないし







お気に入りのキーホルダーをどっかに落として
無くしちゃうし







妖怪退治中に別の奴に不意討ちされかけて転ぶし







ヤクモ様にも会えないし









思い出しただけでブルーになってきたので
別のことを考える事にした







「あっでもねぇ 聞いてよ


「何だよ?」


「昨日 夢にヤクモ様が出てきたの〜
もうすっごくいい夢でさあぁ〜!」



「ああそう、で どんな夢?」







聞かれて あたしは少し戸惑った









起きた時は覚えてたはずなのに 今では半分も思い出せない…











強烈に印象に残ってたのは







ヤクモ様とラブラブだったことと、何故か
リンゴがたくさん出てきた











「ふぅん…」







それを聞いたが目をつぶって考え込む







「どうしたの?」


 もしかしたらその夢…」





言いかけて、急に口を自分で抑えながら





「いや、何でもねぇ」


「ちょっ 言いかけてやめないでよ
そういうのすごく気になるんだから!!


「本当に何でもねぇからっ気にすんなよ な?」







詰め寄ったあたしに手を振って
は必死に否定してた







「まったくヘンな所で頑固なんだから…まあいいわ」









聞けなかった内容はあとでシメあげてでも
口を割らせるとして…







あたしはエコバックとチラシを取り出す









「ねぇ 買い物行って来て〜
今日は駅前のスーパーのシャケが食べたいな」







いつもなら ため息つきつつも
エコバックとチラシを手にとるのに







はあたしの顔を見て







「…やだ、今日だけは行きたくない」


「えぇ〜買い物はの日課でしょ?」


絶対やだ!何と言われようとやだ!!」







さっきといい 続けざまのその態度に





温厚なあたしもカチンと来た







「そういうワガママ言っていいと思ってんの?」







ホッペを膨らましながら一歩詰め寄ったその途端





が怯えた顔をして、神操器へと引っ込んでしまった







こらー!出てきなさいよ!」









いくら振っても 全く返事が返ってこない









め…買い物終わったら覚えてなさい」







神操器を睨みつけ、しかたなくあたしは
買い物へと出向いた












〜「夢リンゴ」〜













けど 真っ直ぐいけるはずのスーパーへの道は道路工事で通行止め







しかたなく遠回りさせられて、何度か迷いかける







犬を散歩してる人とすれ違う前に犬に吠えられたし









うにゅ〜やっぱりついてないよう!











「や やっとスーパーについた〜」







もうさっさと買い物終わらせて帰りたい…









鮮魚売り場までたどり着くと シャケの切り身に手を伸ばす





と、誰かの手がぶつかって あたしは伸ばした手を引いた







「あっごめんなさ…や、ヤクモさん!







買い物カゴを抱えたヤクモ様が隣にいて
あたしは面食らった









「お、珍しいな 今日はちゃんが買い物?」


「はい、が行きたくないってごねてて…ヤクモさんこそ」







普段なら伏魔殿とかでお会いするし







修行とかならともかく、買い物とかには
縁のなさそうな感じなのに…







「オレもたまには家事ぐらい手伝わないとね」









考えてた事が顔に出ちゃったのか





ヤクモ様があたしを見て 苦笑いした









「そ、そうなんですか…」


「けど、買い物のコツが中々わからなくてね
ちゃんさえよかったら、教えて欲しいな」







滅多に買い物に来られないなら無理もないかも







あたしでさえ、ちょっとしたコツしか知らない









でも これはチャンスかも!





勢いで あたしはヤクモ様にこう言った







「任せてください これでもから
お買い物のコツを聞いてますから!」



「それは頼もしいな、ぜひお願いするよ」











あたしとヤクモ様が二人で並んで 買い物するなんて…







まるで夢と同じようなシチュエーション!!







ぜひともここは買い物上手を演じきって
夢を現実にしなくっちゃ…!













けれど あたしの熱意は見事に空回りしまくった









「それ、塩じゃなくて砂糖だよ?」


「はわっ間違えました!!」







塩と間違えて砂糖を取ってくるのは序の口で







「賞味期限がなるべく長いものを買う方が お得なんですよ?」


「そうなんだ…あれ?それよりこっちの方が
日にちが後だよ?







よりによって五日違いの商品を取ったり







「うーん やっと取れ…きゃあっ!?


「危ないちゃん!」







缶商品を 背伸びして取った直後に
積んであった山を崩して下敷きになりかけるし









オマケにスーパーから出たすぐその場で







荷物を持ったままこけて 鼻をちょっとすりむいた











ヤクモ様の前でこんなにドジしまくるなんてっ…!







ちょっぴり涙目になりながら、ふと隣にいた
ヤクモ様がいないことに気付いた







…あたしのドジに愛想つきて帰っちゃったかな









落ち込むあたしのすぐ近くで、急にリンゴの匂いがした





ああ これ近くのアイス屋さんからの…







顔をそっちに向けると、目の前には
アイスを持って微笑むヤクモ様がいた









「ヤクモさん…どこに行ってたんですか?」







答えの代わりに、右手に持ったアイスがあたしに差し出される







「これ、期間限定のリンゴアイスだってさ」


「…え あたしに、ですか?」







こくりと頷くヤクモ様の左手にも





同じアイスの乗ったコーンがある







「買い物付き合ってくれたお礼だよ
一緒にそこのベンチで食べていこう


「は、はいっ!」









アイスを受け取って ベンチにヤクモ様と並んで座った





すぐ隣りで座るのは恥ずかしくて出来ないから





あたしは荷物を間に置いて ちょっとだけ距離を取った











リンゴアイスは甘くておいしくて







アイスと一緒にヤクモ様のやさしさも噛み締め
同時にちょっと申し訳なく思った









「今日はゴメンなさいヤクモさん、買い物のコツを
教えるどころかドジ踏んでばかりで…」


「そんなことないよ、ちゃんのお陰で
買い物について少し詳しくなったし」


「あっありがとうございます…の受け売りですけどね」







つい照れてしまって、


手元をおろそかにしたのが 間違いだった





温かい陽気で溶けかけたアイスの固まりが
ズルリとコーンから落ちてゆく







「ああぁぁっ!」







思わず叫んだけれど、滑り落ちたアイスが
地面にボタリと着地するまで 一瞬だった









ま、まだ一口しか食べてなかったのに







やっぱり今日のあたし 厄日なのかなぁ?







とろけていくアイスを見つめながら、





残ったコーンをかじりつつ
思わず目に熱いものが吹き出し始める











「オレの食べかけでよければ…リンゴアイス、あげようか?







ヤクモ様がすっと 自分のアイスを
あたしの目の前に差し出した







「ええっ いいですよそんな悪いですし…」


「いいよ、ちゃん泣くほど
アイス落ちたのが悲しそうだったから」







あぅ〜 やっぱりヤクモ様やさしい!





でも、もらうのはやっぱり悪いかも……













散々悩んだけれども、断りきれず結局





あたしは食べかけのアイスを受け取った





申し訳なさと自分への情けなさと
ヤクモ様のやさしさに胸が一杯になりながらも







あたしは アイスを手にドキドキしてた









こっここここれって…間接キス だよね?







ヤクモ様との間接キスだと思うと、
リンゴアイスがさらに甘く感じてしまう









どどどどどうしよ 顔熱い、絶対顔真っ赤!







何考えてるかヤクモ様にバレバレかも…!?







ダメダメあたし 余計な事を考えないで
早くアイス食べ終わんなきゃ…!











「食べ終わったみたいだね…あ、ちゃん
ホッペにアイスついてるよ」


「えっえっ、どこですかっ!?







慌ててぬぐおうとしたあたしの手を取って







ヤクモ様がホッペを ペロって―











…………え?今 何されたのあたし?









信じがたい事実に思わず思考停止したから







「リンゴみたいな真っ赤なホッペしてるよ
そんな可愛いと 食べちゃうぞ?







ニンマリと笑ったヤクモ様のその言葉を
理解するために少し時間がかかった











…………え?





えええ?







ええええええええ!?









ギャ―――――――っ!!!











何これ夢なの?夢!?





思わずホッペをつねってみるけどやっぱり痛い







ででででも、普通に考えたらちょっとおかしいよ!
ヤクモ様がヤクモ様がホッペペロってペロって!!









「冗談だよ ちゃん」







楽しげにクスクス笑うヤクモ様







じょっ冗談にしても刺激が強すぎます〜!!









ダメ、これ以上ヤクモ様の隣にいたら
ドキドキしすぎて死んじゃうかもっ











あたしは自分の荷物をつかんで立ち上がり







「そそそそれじゃっやくも、さん、また明日!
さようならぁっ!!」








そのまま猛スピードで家までダッシュで
帰り着いたのだった













家に帰ってからも あたしはずっとニヤニヤしてた







だって憧れのヤクモ様にあんなことまでされたら
もーお嬉しさが止まらない止められなーい!









「うへへ今日は幸せだったぁ…ヤクモ様に
可愛いって言ってもらえたし関節キスできたし」








でも、さっき逃げ出したことが頭をよぎって
とたんにすごく不安になる







「あーでもあんな風に帰ったら 逃げ出したみたいに
見えたかも…もーあたしのバカバカバカァ!









そう言えば帰る時、ヤクモ様が
悲しそうな顔をしてたような…ああああ!







パニックになったからってあんな事しなきゃ良かった









「嫌われちゃったらどうしよう!でもでもでもっ…!」







あうぅ〜次お会いするのが怖いよぅ〜!











「……、お前 何があったんだよ
そのモモ顔負けの百面相は」


「ほっといてよ!







引きつった顔をするにあたしはそう叫んだのだった








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:久方に〜ヤクモの話を書きました〜
展開ベタで しかも遅めだ〜


ヤクモ:なんで短歌調なんだよ…しかしまぁ、陰陽の話が
一ヶ月以上たっての更新とはね 説明不足多いし


狐狗狸:ううう…手厳しいなぁ、いつも通り


ヤクモ:ところで、しばらく書いてなかったせいか
オレのキャラ かなり違ってない?


狐狗狸:……ごめん、普段より夢要素を割増しました


ヤクモ:やるならせめてホワイトデー前にやれよ
ちゃん かなり待ってたんだぞ?


狐狗狸:す すいませんでした


ヤクモ:所で話は変わるけど、ちゃんが買い物に
来なかったのってどうしてだい?


狐狗狸:ご想像に…といいたいけど 流石に毎度だと
アレなんでお答えします


ヤクモ:殊勝な心がけだと思う


狐狗狸:まー言ってしまうといつもの予測で
ヤクモの二人が買い物してるのが見えたって感じです


ヤクモ:……ああ そういうことか(納得)




ちなみに蛇足になりますが、が言いかけた
言葉は「もしかしたらその夢…正夢かもな」です


言わなかったのはへのサプライズでしょう


それでは 失礼しました〜