逃げまとうあの娘を ようやく袋小路に追い込んで







「…鬼ごっこは 終いですかぃ?」





あっしは 溜息混じりに吐き捨てる









目の前のさんは何も答えず


ただただ睨みつける眼に 敵意を込める











さんとは、久々にまともに顔を合わせる





原因は…大分前のくだらねぇ口ケンカ











「いつもいつもいつもいつも俺に
突っかかりやがって!一体何考えてんだっ!








妙にカリカリしたさんに、いつもの調子で答えてみせた







「そりゃあまぁ、どういう風にさんを
からかおうかな…とかねぇ」


ばっ…かじゃねぇのか お前、頭大丈夫か?」


「アンタに心配されるほど、あっしはまだ衰えちゃいやせんよ」





クツクツ笑うと、あの娘は黙ってそっぽを向いた












〜「遠くて、近い」〜













後で知ったけど この時ゃさんは


ガシンの旦那にしてやられたらしく、かなりお冠だったとか







「お前と話してると腹が立つ、帰る 俺は帰る!


「連れないねぇ、冷たくしないでくだせぇよ」


「うるせーよ 俺達、敵同士だろ? 元々この方が自然なんだよ」


「…とりあえず 早ぇとこ帰った方がいいだろうから、送りやすよ」







差し出した手を ピシャリと弾いて







「別にいい、寄るな てか気安く触るな!









聞き慣れた筈の台詞が いい加減腹に据えかねた









ああ そうかぃ、じゃあそうしやすよ」


「…え?」





驚いた顔を 正面から睨みつける





近寄らなきゃいんでしょ?いい加減あっしも
同じ文句ばかりでうんざりでさ」







見る見るうちに 可愛らしい顔が怒りに歪んだ







「…っ ああそうかよ!だったらこっちだって
金輪際お前になんか近寄るかっ!!」














そう言ったそれっきり、しばらくまともに
顔を合わせてくれなかった







例え合わせても、口を利こうとしてくれる様子はまったく無く


それどころか、早々に逃げられていた





だからこうして追い詰める必要があった









少しずつ 頭は冷えたように見えるけど
中々素直に謝ろうとしない





…この娘も 意地っ張りだからねぇ







でも、ここの所 ちょいと口が悪すぎるから


謝るまでは折れるつもりは無い











まだ だんまりを決め込むつもりのようですねぇ」







じっと見つめるけれど さんは答えない







「…アンタがそのつもりなら、ずっとそうしてりゃいい
もうこれ以上は関わりやせんから









顔色が 変わった


けれど、気づかないフリをする







「それじゃ あっしはこれで」





そのまま踵を返そうとした時、







「っ ちょっと待てよ!





ようやくあの娘は重い口を開いた









「…あの時の事、やっぱまだ怒ってんのか?」







何も応えず、今度はあっしが口をつぐむ







「確かに その、あの時は俺も言いすぎたと思うけど…っ」









しどろもどろに弁解する様を ただじっと見つめる











「何で黙るんだよ……なぁ 何か言ってくれよ」







黙ったままのあっしに不安を感じてるのか





少しずつ、泣き出しそうな顔になる









しばらくそのまま 見つめていると







「っごめん…ごめんなさ……」







とうとう、泣き出しちまった









ずるいお人だ





初めから素直に謝りゃいいのに
これじゃ、あっしの方が悪人じゃねぇか







そんな消え入りそうな声で謝られたら


何だって許したくなる









どうも…泣かれるのは苦手だ





それが あっしの大切な想い人なら、尚の事









そっと近づくと コートの裾をぎゅっと握られる





俯いたままの頭にそっと、手を乗せて







金輪際、近寄らないんじゃなかったんですかねぇ?」





ビク、と震えながら 弱々しい声音が聞こえる







「ほ…んとうは……側にいてくれないと、落ち着かないんだよ」







ずるいのは―あっしも同じだった









「でも…つい 寄るなとか言ったりするんだ……ごめんな」


敵同士が自然って、言ってやせんでしたっけ?」


「それでもっ…辛い時は、側にいて欲しいんだ…!







頭に乗せた手を、撫でながら呟く





「…それくらい、ちゃんとわかってやすよ」









分かりきってる あの娘の気持ちを、





わざと本人の口から吐かせたくて


ようやく安心させて そのホッとしたような微笑を見たくて





つい 意地悪しちまう









アンタに謝らせるためたぁ言え…





「あっしも ちょいと大人げなかったねぇ…すまねぇ」





「……バカヤロ 言うの遅ぇんだよ」







その言葉と共に、胸に当たる軽い頭突きさえ


この娘らしくて可愛いと思った









抱きしめようと腕を交差させたら


そこにある筈のさんの感触が無かった







「お前 さっき言ったよな?鬼ごっこはお終いか、って」







振り向くと いつの間にか、背後に回ったさんが





「だったらもう一度、捕まえて見ろよ?俺の事
簡単に捕まってやる気はねぇけどな」





口許にいつもの不敵な笑顔を見せた







「…望むところですぜ さん」









そしてまた いつかの追いかけっこが始まる











捕まえて 今度こそ気付かせたい







あの娘の中にもきっとある


遠くて近い、その気持ち








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:久方ぶりにと二丁様の掛け合い書きましたけど
展開脈絡ないし、無駄に甘いし駄作…(泣)


オニシバ:確かに…要点絞りゃ、単にあっしがさんを
謝らせつつ本音を聞きだしたって話ですねぇ


狐狗狸:二行で分かる説明ありがとよ!どうせそれ位しか
書きたい部分なかったんだい!!


オニシバ:さんが怒ってたガシンの旦那の事とかは?


狐狗狸:機会があったら書くかもだけど…基本はご想像に任せるし


オニシバ:だったらもっとネタを消化したらどうですかぃ
名前変換の話とか 旦那との掛け合いとかとか


狐狗狸:…あの、後半の方 マジ顔で言われると
ちょっと怖いんですけどー


オニシバ:何か文句でもおありで?(懐に手を伸ばし)


狐狗狸:いえいえいえ何でもありませんから
懐に手を入れる動作などをなさらないようにぃぃ(滝汗)




久々の夢がこんなんでスイマセンでした
言葉責めといい やっぱ二丁はSだと信じて疑がいm(強制終了)


次は…もう少しギャグ強めで行きたいです 多分