「…あれ ここどこ?」





見覚えのない空 大地 風景があたしの周りにあった


あたしは一瞬自分がどうすればいいかも忘れていた







とりあえず落ち着いて 思い出せることから









「あたしの名前は 天流の闘神士でヤクモ様一筋
確か また迷子になったを探しに来てて……」





そうだ、を探しに伏魔殿をうろついてたら
何か変な感じに イキナリ周りが歪んで―







気がついたら ここにいたんだっけ












見覚えのない空 大地 風景…







でも、場の空気と雰囲気は 何となく覚えがある







何だか 前の式神の契約の時のような―あれ?











まさか、







まさかまさかまさか





「ここって 式神界!?





ひょっとしてあたし のせいで式神界にまで
迷いこんだってこと!?








普通ありえないけど そう考える以外あたしが
ここにいる理由がわかんない












〜「歪みのしわ寄せ」〜













「あーもう どうすればいいのよ」





あたしは思わず頭を抱え込んだ







伏魔殿や名落宮だったなら、何度も迷い込んでるから
脱出方法とかも何とかなるけれど…





式神界にくる事なんて 本来なら絶対に無いから
帰る方法なんて知らない









いや 普通だったら伏魔殿や名落宮だって
滅多に来られないんだけど、





リク君とかユーマ君とかマサオミさんとか
ヤクモ様とか
を見かける事が多いのと、


の方向音痴のせいでほぼ日常になってるのよねー









でも、今は顔見知りが誰もいないから不安で仕方ない







何が出るか分からない状況だし、
おまけに当の本人は 見当たらないしっ!














…とにかく落ち着こうあたし、こういう時は
パニックになっちゃいけないのよね







そうよ、ここがまだ式神界だって決まったわけじゃないし







ヤクモ様だったらこんな時こそ冷静に持ち物や
周囲を確認するだろうし、


ユーマ君達だったら
とにかく動きまわっていると思うし…









あ、そう考えたらちょっと気分が落ち着いてきた









まずは辺りを調べなきゃ、それで上手く
見つけられたらたあっぷりお仕置きしてやらなきゃね☆









「闘神符 使えるかな…」





ズボンのポケットから闘神符を取り出した時
すぐ近くで弱々しい感じの声が聞こえた







「おや 殿ではないです…か…」





そっちを向くと おじいさ…じゃなく同じ天流の
テルさん
が杖を突きながら歩いてきた





「え……あ!テルさん 何でここに!?


「いや〜修行に夢中になってたらいつの間にか…
それより殿 何か食べるものはありませんか?」


「へっ 食べるものっていわれても…」







あたし テルさんには片手で数えるほどしか会ってないから
印象かなりうっすいんで忘れてたけど





そういえばユーマ君に負けず劣らずの修行バカ
いつもお腹空かせてる人だったっけ


っていうか 生きてたんだ







ちょっと本人に失礼かもしれない?事を考えていると
テルさんがその場にひざをガックリとついた









「あ…スイマセン もう目がかすんで……」





えええっ こんなところで倒れられても困るよ!?


あたしは慌ててポケットの中を探る





すると中から、チュッパチャップスのイチゴ味が出てきた







「アメがあったので 今はこれで
飢えをしのいでくださいっ!!









見捨てるのも後味悪いので、あたしは迷わずそれを
テルさんに渡した





「か…かたじけない…」





テルさんは弱々しくチュッパチャップスを受け取ると
包みを開いて 口の中にほおりこんで―







即座に噛み砕いていた










「Σえええっ 噛み砕いちゃうんですか!?







普通 飴玉はなめる物でしょ!?
いやそれより、噛んだらお腹膨らまないですよ!!?






噛み砕いた音が止んで 口から飴玉の棒が吐き出されると
テルさんはすっくと起き上がった











「いや〜ありがとうございます、助かりましたよ殿」





Σえええええ〜復活早っ!





すごいなー あんなアメ一個で足りちゃうんだー
さすが修行バカ







…って事は ユーマ君もアメで飢えがしのげるのかな?









なんて事を考えつつも、あたしは返事を返した







「いえいえ どう致しまして〜それにしても
たまにはちゃんとご飯食べないと、いつか
修行しすぎて死んじゃいますよ?


「ハハハ、どうも修行に熱が入りすぎてしまって
つい周りが見えなくなるというか…」





照れながら頭をかいてるテルさん


…うーんほんっとうに修行バカなんだなー







よくよく考えれば ユーマ君の方がまだ
ちゃんとご飯のこととか
考えてた気がする









「所で殿こそ、どうしてこんな所に?」





頭筋肉で出来てるのかな?なんて事をふと
考えたときに、いきなりそう聞かれてあたしは焦った









「ああ、を探しに…あ、そう言えば
聞きたかったんですけどここって式神界ですか?」


「いや ここは伏魔殿の奥深くの辺りですよ?」





帰ってきた答えに あたしは少しほっとした







え、でも 何か違う気がするような…?


こう 伏魔殿の雰囲気って言うのとは何処か違う感じがー…





「ただ…常人では滅多にこられない所らしいので、
もしかしたら式神界に深い関わりがあるんでしょうねー」









あたしが考えてることがわかったのか、それとも
単にただしゃべってるだけなのかわかんないけど


テルさんの言葉がそう続いた











「へえ〜じゃあ 意外との住んでいた所も
近かったりして」





元々式神界ってどんな所か知らないし、


やっぱり自分の式神が住んでいる場所とか
ちょっと気になったりする









前の式神は一度だけ 蓮の花が咲き乱れるって
うっとりしながら語ってくれたのに





は何度聞いても、何も言わずに
ただ顔をしかめる
だけだから つまんないの











「そうかも知れないですね、ああそうだ」





手を胸の前でポン と打つと、思い出したように





「六花族と言えば、ヤクモ殿に聞いた事のある
話がありましてな」


「えええっ、や ヤクモ様が!!?







まさかこんな所で しかも筋肉頭のテルさんから
ヤクモ様のお名前が出ると思ってなかったから


あたしは目玉が飛び出るほど驚いた







「ぜぜぜぜぜひっ ぜひ聞かせてください!!





殿 そこまでかぶりよられても困ります…;」







ああそっか、あたしったらまたやっちゃった☆


失敗失敗と思いながら 少し離れた所に距離をとると
お互いに闘神符で椅子を出して腰掛けた





うーん、闘神符って便利









咳払いを一つしてから テルさんは話を始めた











「丁度前の大戦辺りの話らしいですが 確かこの近くに
ただ一人で 妖怪を滅ぼして回っていた六花族
封印した祠があったそうです」


「へぇ〜たった一人で?」


「何でも 解いた人ともお知り合いだったらしく
簡単な経緯も聞いたのだとか」


「…どんな感じだったんですか?」
















どうやらヤクモ様も その人から聞いた限り
一度しか語ってくれなかったらしいけれども







その六花族は 力をろくに扱えぬ、と里の実力者だった
実の兄弟から疎まれて 式神界から追い出され





彷徨いながらも妖怪に狙われ続ける内に


いつしか妖怪とその兄弟を憎み始め、式神界に
帰る手立てを探しながらも


妖怪を手当たり次第滅ぼしていた





やがて世界の均衡を崩した報いとして封印されて


その人が封印を解くまで ずっとそのままだったらしい
















そう語るテルさんの言葉を聴きながら、あたしは何故か









過去の話を嫌がるの顔を 頭に浮かべていた









まさか、あのが そんな事…







でも 過去を話さないのはもしかして………?









もしも がその六花族なら





一体どの位の時間を、たった一人で―?














どうかされましたか?殿」





はっと気がつくと テルさんが不思議そうに見つめていた





「何でもないですよ?」







あたしは手を振りながら いつもの
無邪気な笑みをへらっと浮かべる







「いや でも何か気にされている様な様子でしたが…
もしや、ご自分の式神の事を…?










Σ筋肉脳みそなのに 変なところ鋭い!!?







それよりもあの顔じゃ 何かこの後、


"ご自分の式神を疑っていては信頼関係がうんぬん"とか


かなり熱血なことを言い出しそうな気がすごくする!





なんたってユーマ君と似たもの属性だから!









うーあーどうしよー











「あ…っ」





笑みを引きつらせていたその時、
まるで 最初から見ていたかのように







何か微妙なタイミングで が後ろに現れた


でもそんな事はこの際よし!









…何処行ってたのよ、心配したんだから」





何故か怯えだすの手をガシっと掴んで、





「それじゃあ見つかったんで帰ります
お話ありがとうございました〜


「あ、いやいや お気をつけて殿」







呆けたような顔で手を振るテルさんを残して
あたし達は伏魔殿を後にした


ああよかった、熱血談義を聞かずにすんで















「…あのさ やっぱり怒ってる?





神操機から出てきた状態で おずおずと
が答える







「決まってるでしょ…でも 今日はもう驚く事だらけで
疲れちゃったから お仕置きはナシにしてあげるわ」





その言葉に これでもかってほど目を丸くする







何よ そんなに意外?って言おうとしたら





当たり前だろ、大抵お前 許してくれねぇもん」





先手を打たれたので ちょっとムッときた











「… 覚えておいてね」


「なんだよ?」





あたしは 怪訝そうな金色の目を見つめ返した









「契約満了したって 
ずっとあたしの式神なんだからね?」








「…喜んでいいのか それって?」


「なによ 嬉しくないの?」










あたしのその言葉に は少しだけ
表情を柔らかくして、笑った









「いや 嬉しいけどさ」









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:そういやテルさんの話ってないなーなんて
思いながらついつい書きました 扱い酷くてスイマセン


テル:確かこの話は とあるお方に私の絵を描いたついでに
書きたくなったと…


狐狗狸:そうなのよ〜 でも出来上がったらギャグだし
夢じゃないし、その上夢主ウェイト(笑)


イソロク:どんだけどんやどん溺愛なんでゴワスか
それにテルはこんなキャラではないでゴワスよ


狐狗狸:だだだだってテルさん印象薄いし、夢主の過去ネタ
きちんと消化させたかったし 実はこの話シリーズ物の
「ランプ」の前辺りって言う結構適当な設定だし


テル:とゆうより かなりツッコミ所が…それよりも
どうせならナヅナ殿やイソロクも出してほ


狐狗狸:却下!そんな事したら収集つけらんないし!


テル:……(おもっくそヘコみ)