「ったく 何なんだあのって奴は!








見知らぬ土地にて呟いたのは 彼女の式神である六花の









大分苛立っている原因は 最近自分の闘神士となった
 の、自分に対する態度にある











 今日の戦いは大変だったわね」


「どこか怪我した所はない?」


 一緒にケーキでも食べましょう


「見てみて に似合うドレスを作ってみたの!
















とまぁ こんな様子で四六時中構われる











彼女にしてみれば そんな扱いは初めてで
最初は わけが解らず威嚇したりもした







でも 少しずつ日がたつにつれ、一応は信頼するように
なったものの 今だにの態度に戸惑いと疑問が残る














実は、が今見知らぬ土地にいるのも 
「新作のドレス」を勧め、逃げ出したうちに迷ったからである












「あんな服を着せようなんて 何考えて…誰だ!





突然ハリセンを構え 近くの岩陰を睨みつける












〜「白兎の黒笑み」〜













「隠れてるのはお見通しだ…出て来ないなら燃やすぞ









すると 岩陰から白いウサギの式神が現れる







「随分と威勢のいい小娘だが…ケンカを売る相手
間違えてないか?」





鋭い一睨みをものともせず、むしろ逆に睨み返す








「……盗み聞きとはいい度胸だな 柊族」


「トウベイだ…同じ流派なのだから覚えておいて貰おうか」





「俺は他人には興味ない」





突っぱねるように短く言ってから、







「言っとくが 俺がここにいる訳とか月並みな事を聞くなよ?」









と トウベイが口を開く前に淡々と告げる












「ほう…流石は予測の式神、こちらの質問を先読みするとは」





感嘆の声を漏らしたトウベイの態度に 
誇らしげに鼻を鳴らすが、








「しかし、世話を焼く闘神士と連携を取りきれていない
所を見ると まだまだ私の敵ではないな





後に続いたこの一言で 一気に表情が不機嫌に歪む







「世話はあいつが勝手に焼いてんだよ、大体偉そうに
言うがなぁ お前こそ闘神士と一緒じゃない時点で
連携取れてないだろ?」









お返しだ、と言わんばかりのの指摘に







「こちらは単にそれ相応の見返りがあるから契約して
やっているだけの事だ、個人行動について互いに
口出しされる言われも無いし…使えなければ見捨てればいい





トウベイは事も無げにあっさり返した









「…お前 白兎の外見に似合わず、腹真っ黒だな」






思ったことを率直に述べただけであったが 
その台詞にトウベイは少し眉をしかめた







その言葉を言えた立場か?お前のその姿は
というより どう見ても人間に近しいぞ」









途端に 今度はが眉をしかめる





「…言うな


図星か 全く持って分かりやすい」







ニヤニヤと笑うトウベイの様子が気に障るらしく
益々の機嫌が悪くなる







「うるさい 元からこんな姿なだけだ!
こんな姿じゃなきゃもあんなしつこくは――!!














の言う通り 彼女の兄弟を含む六花族は


狐の獣人、もしくは顔が完全に狐などの者が大半を占め





割と女性は人間に近いが、程人間に近い者は少ない方だ













「そういきり立つな…所で、話は変わるが
お互いに組んでみる気はないか?










唐突なトウベイの問い掛けに は少し首を傾げたが





すぐに意図を理解したらしく、神妙な顔つきになる









「…協力して式神と闘神士、互いの情報を交換しあって
仕事をやりやすくしようって事か?」


「中々物分りがいいな、実際その方が効率がいいだろう」





しゃべりながら トウベイは一歩に近づく








「お前達の実力は聞いている、お互い色々と協力した方が
都合がいいだろう…どうだ?お前も闘神士を説得して―











しかし トウベイがもう一歩近づいた所で
持っていたハリセンを振り下ろした





紙一重で飛び退ったトウベイを ギロリと睨みつける








俺に命令できるのは一人だ、他の奴と協力する気も
させる気もさらさらねぇ」









これ以上話す事は無い、といいたげなの様子に





トウベイは溜息を漏らしながら苦笑して―









「やれやれ 折角穏便に済ませてやろうと思ったのだがな
こうなったら無理やりにでも協力させるか」





「やっぱり何か企んでやがったのか!」


「何、噂に聞く とその式神を上手く
利用させてもらいたかっただけだ」







臨戦体制のに 臆することなくトウベイは言葉を続け、










「……それに、実力が低くとも その容姿なら
使い道は十分
ありそうだからな」







そう付け加えると 妖艶な笑みを浮かべた








自分に向けられる正体不明の悪意
言い知れない悪寒を覚えた









「…っ 何考えてんだっ!?







戦う事しか分からない彼女にとって その悪意に


どう対処していいかも分からなかったらしく
は慌てて逃げようとしたが 一瞬早く





トウベイが闘神符をの額に貼り付けた








「な…と 闘神符!?





「モズがくるまで 大人しくしていてもらおうか」









動きを封じられ いよいよ危機感を感じる





「そうやって黙っていれば 随分と可愛らしい顔をしている…」







愉快気にトウベイが目を細めて笑い、彼女に向かって
白い手が伸びた―その時だった










突如噴出した殺気が トウベイに突き刺さる










「トウベイさん…に何をしているんですか?







彼の背後には 闘神符を構えたが立っていた











同じ流派同士 ただ話をしていただけだ…
その闘神符を仕舞ったらどうだ
騒ぎを起こしたいなら別だが?







笑みを称えたまま キツイ一言を放つトウベイ







「…幾ら同じ流派の方の式神でも
に危害を加えるのでしたら
私は容赦いたしませんよ?





こちらも笑みを崩さぬだが、目は全く笑っていない


むしろ 戦う気満々といった雰囲気だ










どうやら の重圧が勝ったらしく





トウベイは冷や汗を一筋垂らし 
の両方から距離を取る












「…洒落の通じない連中だ 付き合いきれんな」





そう言い捨てて トウベイは二人の前から姿を消す













直後 の表情が心配そうな顔に変わりに駆け寄る





ごめんね?大丈夫だった?







言いながら 額に張り付いていた"止"の符を剥がす





そんなの態度に、は少し罪悪感を感じた









「…心配すんな、俺の方こそ ゴメンな?





心配かけさせて、と言う呟きが途中で途切れた







言葉半ばには に抱きしめられ
彼女の胸に顔を埋める体勢になったからだ









「ちょっ…おま、何してんだよ!?





イキナリの行動に 目を丸くして驚いている
を両腕に抱きしめたまま、は言った











「安心して、は私が 絶対守ってあげるからね


「……逆だろ 普通式神の俺が守るんだよ;







ニコニコしているに が呆れてツッコんだ









「いいのよ、私が守りたいだけだから」







「…なぁ 人間みたいな俺の姿って、変?


「そんな事無い、可愛いわよ…でもどんな姿でも
私にとっては大好きなだからね」









愛しそうに眼を閉じるに は照れくさそうに
頬を僅かに朱に染めた







「…ほんっと 調子狂うな、どいつもこいつも」









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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:この話は さんの式神になって
そんなに間もない設定という事になってます


トウベイ:私の役回りが悪役だと言う事も、何故こんな
駄文に登場するのかも不満があるが…まず第一に
また設定を追加している事について聞こうか(黒オーラ)




狐狗狸:はい ゴメンなさい、またやっちゃいました
勝手に設定追加(爆)


いや、でも絵を描いてる時ずっと気になって気になって
しょうがなかったんですよ…で、やっちゃったと




モズ:今回名前ぐらいでしか出番の無かった私が言うのも
なんですが、出来心で済むと思うんですか?


狐狗狸:え〜でもこれはオフィシャルの女性式神が
わりと人に近めだからいけるかな〜と…やっぱダメすか?


モズ:そんな事は問題じゃありませんよ、勝手に設定を
コロコロ追加するなんてそもそも非効率じゃありませんか


トウベイ:それに読者にとっても百害あって一利なしだと
そこまで頭が回らないのか?(見下し)


狐狗狸:…どうせ頭の回らないだめ人間ですよーっ!!
(開き直りながら退却/性質悪っ謝)