こっくりさん こっくりさん…
お出でになりましたら、"はい"へお進みください










伏魔殿の奥深くにしつらえられた宮殿の一室にて





とタイザン、マサオミ、ショウカク、という
何とも奇妙な面子が文机を囲んでいた







四人の指は 文机の紙の上に乗せられた
十円玉に置かれている











こっくりさんこっくりさん…」









の声が室内に響き渡る





彼女は十円玉に意識を集中させているようだ







だがタイザンは憮然と口を閉ざし


ショウカクはどうして良いやら戸惑っている





マサオミはとりあえず回りの雰囲気に合わせて
何も言わないで傍観しているようだ











「こっくりさんこっくりさん…」









三度目の復唱を行った後、不機嫌そうに
が顔を上げて皆を見回す







「ちょっとー、皆も復唱してくんなきゃ
こっくりさんが答えてくれないじゃない!







どうやらその言葉に堪りかねたらしく、


タイザンが開いている手で机を叩いた





「…やってられるかこんな事!











〜「狂気の証明」〜











何故 私が低級霊の降霊術などに
付き合わねばならん!!



『まぁまぁ旦那 落ち着いて…』





諌めようとするオニシバを一睨みで黙らせ





「とにかく私は止めさせてもらう」







十円玉から離れようとするタイザンの手を


とマサオミが開いている手で抑える









「ダメだよ タイザンも一緒にやろう」


うるさい放せ、大体何故こんな事を…」


「だって最近 皆で遊ぶ事少ないから、
何か楽しめる事はないかなってガシンが言ったから」





そう言いながら、見つめてくる
マサオミが苦笑交じりで助け舟を出す







「そうそう、それにから聞いたんだけど
この遊び 途中で勝手に止めたら祟られるらしいぜ?」


『そうだよタイザン〜ここはウツホの力が働いてんだから、
もう側にいるかもよ?こっくりさん』






マサオミの言葉にキバチヨが続くと、





これ以上ないってほど ショウカクがガタガタと
肩を震わせている







Σ聞いてないぞそんな事!
よ 何故私までこの遊戯に付き合わせたのだっ;」


「人数が足りないと盛り上がらないから ゴメン、ショウカク」







その言葉とは裏腹に 微塵も悪びれた様子が見られない













マサオミやタイザン達と同じく 現代で活動をする
の最近の趣味は、ホラー系





一体何処で覚えたのか、小説 ゲームでは飽き足らず
このような呪術めいたものまで行う始末







本人には至って悪気は無く たまに
他の者まで巻き込む事もあるから性質が悪い





まさに、今回のように













とマサオミの説得(?)に何とか
タイザンもそこに留まって参加することになり





ようやく皆が復唱をして、十円玉が"はい"へ移動する









「じゃー初めに僕が 気になることを
こっくりさんに質問するよ?」







が皆の顔を見回してから、一息ついて質問した







「こっくりさん タイザンの好きな人を教えてください」







空気が一瞬 凍りつき







「やっ…やってられるかあぁぁっ!!





顔を赤くして十円玉から指を離し、その場から
退散しようとしたタイザンの頭に







が投げた手燭の台クリーンヒットした









『だっ旦那ぁ!?





倒れたタイザンの側でオニシバが青ざめる









その様子を マサオミとショウカクは呆然と見ていた











「ほら 途中で止めるからバチが当たった」


「いっ…今のはがやったのでは」







言いかけたショウカクに グリン、と勢い良く振り向き





何か言った…ショウカク?」





張り付いたような笑みを浮かべてが問いかけた









「…な、何でもないっっ!





『……触らぬ神に祟り無し、だな』







慌てて訂正したショウカクを隣で眺めながら


聞こえないぐらいの小声で ヤタロウが呟いた













「よーし手本はあんな感じだよ 次の質問は…誰がやる?







明るく微笑んで が男二人に問い掛ける









「んーじゃあ、ショウカクやれよ」


「なっ 何だとガシン!お前がやればよかろう!!







低級霊とは言え 得体の知れないもの
質問するのはやはりあまりぞっとしないらしく


お互いに押し付けあっている







…もっとも 怖いのは答えられない時の
の報復だろうけれども









『ボクもショウカクがいいと思うけどな〜ねぇ







マサオミを助けようと キバチヨがにささやく





はちょっとだけ悩む素振りを見せた後







「僕もそれに賛成〜と言うわけでショウカクに
質問権が与えられました〜」





明るく宣言した


同時にショウカクが顔を強張らせる







だが、途中で逃げるとタイザンの二の舞になる為
答えるしかなくなったようだ











「こ…ここ、こっくり殿 この宮殿で起こった
出来事の犯人は…?」









ショウカクが質問したのは、最近この場所で起きた
大量の怨霊が出没した事件の事だ





何とか神流の者達で片付けたものの





ウツホにも覚えがなく 未だに原因が不明になっている
まさに謎の事件とも言えよう









「おっ…十円玉が 動き出したぞ!







紙の上を十円玉が滑り出し 次々と文字に止まる







「あ・の・じ・け・ん・の・は・ん・に・ん・は…」





「あれ酷かったよな〜犯人誰なんだろうな 







ショウカクが文字を読み上げる横で、マサオミが
軽い感じでに話しかける





は 何故かうつむいたまま返事をしない









「ん、どうした


ホワィ?具合でも悪くなったの?』







不思議そうにマサオミとキバチヨが
覗き込んでいる間に、





犯人の名前を示し 十円玉が止まる









それに気付いたらしく マサオミが文机に視線を戻す







「あ、名前見てなかった 犯人誰だったんだーショウカク」







聞かれて ショウカクは一旦喉を引きつらせ





…恐る恐る、呟いた









「………」









そこで皆がを見ると、彼女は







ホラー映画さながらの怖い笑みを浮かべていた











バレちゃったねぇ…」





ひぃっ おおおお前…!


ア、アハハ オーバーだよショウカク〜
ジョークでしょ 悪趣味なんだからもー』







しかし キバチヨの言葉にも、は返事をせず
ただ笑みを張り付かせるのみ











場の雰囲気に耐え切れず、マサオミが質問をした







「こっ、こっくりさん は今何を考えてる?





十円玉の動きを マサオミとショウカクは
しばし目で追って…







やがて、出来上がった答えに顔面蒼白となる









ゆっくりと、マサオミがに顔を向ける





苦し紛れの笑顔を 精一杯取り繕って







「じょ…冗談だよな ?」





「……こっくりさんに聞いてみたら?







普段の明るく 能天気な声と打って変わって


別人のような声に 全員の背中が凍りつく







「「こっくり(さん・殿)!は本気ではないよな!?」」











二人の思いも虚しく 十円玉は"いいえ"に止まった…













二人分の男の絶叫が、室内に響き渡った















三人の男と式神達は、その後
その室内で起こった事を絶対に他言することは無かった







――――――――――――――――――――――――――――
あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ホラー少女何気に気に入ったので再登場!
そして一度やってみたかったネタですがグダグダでスイマセン!


タイザン:いきなり手燭をぶつけるとは…私を殺す気か?
それよりあの後 二人に何をしたんだ あいつは?


狐狗狸:それは読者のご想像に任せます(汗)
あとの起こしたあの事件はフィクションです


オニシバ:ちなみに何で起こったんですかね ありゃ




狐狗狸:んーその時見たホラー映画で悪魔召喚があって
見様見真似で儀式やったら間違って怨霊が大量に出ちゃって
とりあえず証拠を全部隠滅して 退治に加わった…と




ショウカク:この宮殿でそんな事が!?(滝汗)


ヤタロウ:…何を考えているんだ


狐狗狸:きっと何にも考えてないよ(爆)


マサオミ:ちなみに手燭文机は オレ達の
時代でのモノの名称だぜ


キバチヨ:現代風に言えば キャンドルスタンド
デスクって所かな?


狐狗狸:説明ありがとう二人とも、あと 紙と鉛筆
十円玉はが持ち込んだことになってます




さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!