あたしのパートナーは 黙っていれば
モテそうな、結構カッコイイお兄さん





優しくて余裕があって大人っぽいんだけど


ちょっとズボラなのが 玉にキズ







「あれ…提出書類どこやったっけ?」


もう!また適当なトコに置いたんでしょ!!」


「ああ、あったあった…おや今度はカギが無い」


「えぇ〜またぁ?しっかりしてよ!」





こんな感じの探し物が日常茶飯事





寝床と食べる所と通路以外はみーんな
物やダンボールで溢れかえってる始末







そもそも引っ越してから、殆どのダンボールを
片付けないで いる物だけ出して生活してるから


邪魔くさいし見た目だってよくない







これじゃーいけない!と思ったあたしは





やっともらえた連休に、しつこくしつこく
部屋の掃除ダンボールの撤去をけしかける











〜「六畳のアパートの現実」〜











「多いお休みも最後なんだから、今日こそは
忙しいとか言って逃げちゃダメだよ!」


「分かったって…別にオレはこのままでも
それなりに使い勝手いいんだけどねぇ」


ダーメっ!こんな部屋で生活してたら
息が詰まっちゃうでしょ?」







いまだに不貞腐れたように呟く
ちょっと睨みつけながら、発破をかける







「さっ、まず手近なトコから始めましょ!」


「…そーだな じゃネネは食器とか頼むよ
オレは重そうなのとかやるから」


うん!任せといて!!」





元気一杯に頷いてから、あたしは"食器"
書かれた段ボール箱に手を伸ばした











…最初のうちは張り切って片付け始めたけど


ダンボールの量の多さと、中身の分別と
それぞれの整頓は結構大変だった







思ったよりも体力使う…





二人でやれば楽勝!って思って
片付け 甘く見てたかも〜







しかも問題はそれだけじゃない







「なーネネ、カッターってどこあったっけ?」


「知らないよ〜こっちも忙しいんだから
悪いけど自分で探して〜」





がチョコチョコあたしに備品の場所を
聞いたりするのは序の口







「それオレの秘蔵ブロマイドコレクション!
何で勝手に捨てようとしてんだよ!!」


こんな古いのもういらないでしょ!
いい加減諦めてバッサリ捨てた方がいいの!!」





ゴミだと思って一斉に片付けようとすると


待ったをかけて、要る要らないの
論争が始まるし







「うわっ…何コレ!?」


え?…あーあーあーあー
それ、お袋が詰めてた奴だと思う」





並み居るダンボールの中にトイレットペーパーのみ
詰め合わせ箱が混じってたり





はたまた砂糖一キロが13束も入った箱や


ちょっと危ないリンゴだらけの箱があったりして





分別により一層の苦労をさせられ







「…これ、ヤバイよ流石に」


「いやいや まだいけるってその調味料オレ
結構好きだしこの辺じゃあんまり売ってないから」


無理だよ!だってこんなにヘンな色なんだよ!?
こっちだって怪しい色してるじゃない!!」





ラベルと中身の違う調味料群のいくつかが
かなりヤバそうな色をしていて





「これはそう見えるだけで熟成されてるんだよ
現に、時々料理で使ってたし


「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」







知りたくなかった事実を聞かされ





鳥肌を総毛立ちさせながら、ニオイを嗅がないよう
鼻をつまみながら


疑わしい中身全部、無理やり流しに捨てて







ひと心地ついたかと思いきや





「何で期限が三年前に切れた同じメーカーの
醤油が三本も棚の上にあるの?」



えっマジ?…あ本当だ 何でだろ?」







地味に棚に並んだ調味料すら危ない事が
判明して 一気に片付けへ奔走させられるし…









あたしが契約する前まで、ったら
一体どんな生活してたんだろ?





うう…あんまり考えたくない…







やや落ち込みつつ、それでも黙々と片付けてる所に







「ネネ、今度はビニール紐が見つかんない」


「ねぇ あたしだって忙しいのわかんない!?」


「あのな…オレだってちゃんと片付けてるだろ?
自分だけ忙しいみたいな言い方止めてくれよ」


「何よっ!
がズボラなのがいけないんじゃない!!」






間が悪くやって来たと、ついつい
ケンカしちゃって







しばらくお互い険悪になっちゃったりもした











「……ネネ、ちょっと休憩入れよう
流石にちょっと疲れたよ」







が声をかけてくれたのは、部屋のダンボールが
やっと半分くらい消えた頃







「そうだね…休もっか、お茶入れる?」


「いや、お茶はオレが入れるよ」





その言葉に甘えて、あたしはがお茶を入れる様子を
適当に開けたテーブルについて見つめる







割としっかりした体つきしてるけど


の手ってキレイで、指も細いんだよね…







どうした?こっちジッと見て」


へっ!?な、何でもないよ!!」





慌てて顔を戻すけど、ちょっとだけ顔が熱い







「熱いから 気をつけて飲めよ?」





言いながらがあたしの前に小さな湯飲みを置く







調味料とか部屋の掃除はズボラだけど
洗濯と食器洗いはそこそこキレイだから安心できる







ちょっと不思議だったから、前に聞いてみたら


"実家でのオレの担当区分だったから"って
なんて事無く答えたのを覚えてる







料理だってちゃんと作れる(しかもおいしい!)し





…これでズボラさえなかったら、どこから見ても
完璧な旦那様になれるのにね


けど 完璧じゃなくてもはカッコいいけどね







「うん、ありがとう





息を吹きかけて チビリチビリお茶を飲む







熱いの大丈夫なと正反対に、あたしは熱いの
ダメだから大変…







「あのさネネ さっきは怒ったりして
本当にゴメンな?」


「んーん、気にしてないよ
あたしの方こそ怒鳴っちゃってゴメンね」





怒りに任せてひどい事言っちゃってたのに
は責める事無く謝ってくれた







思えば、いつも大抵あたしがケンカを
引き起こして 二人で機嫌悪くなるけど





時間が経ってから 必ずが先に謝って
許してくれるから


あたしも素直に謝れる







こういうさり気なく優しいトコ、好きだな…







は微笑んで お茶を一気に飲み干す





「この調子ならあと少しで終わると思うから
それまで、片付けがんばろうな?」


「…うん!」











休憩を終えて、残り半分のダンボールに手を付け





それなりに四苦八苦したけれども







「ネネ それ向こうに持ってって
…こっちはオレが何とかするから」


「分かった、お願いね?」







お互いに力を合わせてがんばったおかげで







日暮れ頃には…すっかりダンボールが
一つも無いキレイな部屋に変わっていた







『ほーら、二人でがんばったから
部屋のダンボール キレイに片付いたでしょ?』





掃除が終わって、神操機に戻ったあたしは
宙に浮かんだままそう言った







けどが感心していたのは片付け終わった直後だけ





途中から 微妙な顔をして首を捻ったり
何か唸ったりし始める







『…なぁに?どうしてそんな顔してるの?』


「いや、何か落ち着かない…てーかこんな急いで
片付けなくたってよかったと思うんだよなぁ
それに色々捨てさせられたし」


んもう!手伝ってあげたのにったら
文句ばっかりなんだから!!』





それに散々ゴネてはいたけれども、アレは思い切って
捨てちゃった方がよかったんだって!


場所も広く使えるようになったし


の身体にも危険が迫ったり 物を
無くしにくくなったりして、いい事尽くめ!







…あと、あたし以外の女の人の写真
集めて楽しそうにしてたなんて





ちょっとだけ 許せなかったし







頬っぺたを膨らませたあたしを見て
面白そうに笑ったあと





「…そうだな、ネネのおかげだもんな
本当にありがとな





すごく大人っぽい顔で、がささやいた







ズルイ そんなカッコいい顔





あたしがいつものこと、どう思ってるか
分かってて不意打ちでそんな顔されたら





どうしたらいいか分かんなくなっちゃうよ







「お、顔が赤くなってるぞ…風邪か?


『ちっ違うよぉ…の意地悪ぅ』


「ハハハ ごめんごめん…
さて、明日からまた頼むぞネネ


『こっちこそ、よろしくね








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あとがき(というか楽屋裏)


狐狗狸:ネネみたいな妹キャラにはマイペースな
お兄ちゃん系が似合うかなと〜と妄想&執筆


ネネ:についてもっと語ってよ〜!
ズボラだけど 本当にカッコいいんだから!!


狐狗狸:しかし、ズボラな所は誰に似たんだか
…あー私か(爆)


ネネ:あとトイレットペーパーとかお砂糖とか
調味料とか 何か驚きの連続だったんだけど


狐狗狸:そーだよねー…あの下りが80%ほど
実話だなんて、誰も思わないよねー


ネネ:えぇぇぇぇぇぇぇ!?




引越し荷物片付け的な、二人の様子をお送りしました
えーと…色々とスイマセン!(身内ネタも含め)




さん そして読者様、ここまで読んでいただいて
ありがとうございました!